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【連載シコ・ブアルキの作品との出会い⑨】辛い日常を忘れ踊り明かしたワルツ —シコ・ブアルキ&ヴィニシウス・ヂ・モライス作《Valsinha》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

本エントリーは、9/22(水)からは、有料定期購読会員の方が読める記事になります。定期購読はこちらから。
お知らせ●中村安志氏の執筆による好評連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」についても、今後素晴らしい記事が続きますが、今回もまた一旦、この連載「シコ・ブアルキの作品との出会い」の方を掲載しています。今後も、何回かずつ交互に掲載して行きます。両連載とも、まだまだ凄い話が続きます。乞うご期待!!!(編集部)

 今回は、シコの、素朴で心温まるレパートリーをご紹介しましょう。イパネマの娘の作詞者でもある、ヴィニシウス・ヂ・モライスとの共作で生まれた「小さなワルツ(Valsinha)」です。
 好評を博していたトッキーニョらとのアルゼンチン公演中の1970年末、ヴィニシウスは、大方のメロディーを完成させたものの、まだタイトルもつけていなかった3拍子の自作曲を手紙でシコに送り、歌詞制作を依頼しました。シコが、自分の娘の名付け親になってほしいと、69年にヴィニシウスを招いて以降、2人で歌を作る協力関係は始まっていたようですが、ヴィニシウスの側では、既にジョビンとの素晴らしい共作を見せつけていたシコと、自分も何かいい曲を作りたい、といったライバル心があったとも言われています。

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