[2021.12]【シコ・ブアルキの作品との出会い ⑭】貧富が同居するリオの街で — Estação derradeira
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
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お知らせ●中村安志氏の原稿の方は編集部に順調に送られてきているのですが、担当編集部員の都合により、掲載がしばらく途切れてしまいましたことを深く、深くお詫びいたします。大好評連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」についても、今後まだまだ素晴らしい記事が続きますが、今回はこの連載「シコ・ブエルキの作品との出会い」の方を掲載しています。今後も、何回かずつ交互に掲載して行きます。両連載とも、まだまだ凄い話が続きます。乞うご期待!!!(編集部)
リオ生まれのシコは、2歳当時に一家が転居したサンパウロで育ち、歴史学者の父セルジオの仕事で9歳から2年間はローマに在住。その後サンパウロに戻り、大学卒業(建築学専攻)後、1966年(22歳)以降、生まれ故郷のリオで暮らすようになります。このリオの美しい風景と街並みとともに、そこで暮らす必ずしも恵まれた身の上にない人々を思い、彼が捧げた素晴らしい歌がいくつもあります。
本日は、そのような作品の中から、Estação derradeira(最終の駅)をご紹介します。前回解説した「Vai passar」と同じ1984年のアルバム『Francisco』の中に収録されています。
↑リオのスラム街の様子を見せながら流れる名曲、Estação derradeira
リオデジャネイロという街は、高級住宅街のすぐ近くを含め、あちこちにスラムが存在し、社会格差を至近距離で見せつけられる場であると同時に、社会の共通する場所においては、様々な層の人々が共に過ごし、例えば近くのスラムに住む人が富裕層の家のお手伝いさんやホテルの従業員として働いていたり、恵まれた人も、こうした貧しい地域で育まれた文化を蔑むことなく楽しんでいる人々が多い、おおらかさを感じる場所です。3年余りリオで生活し、そもそも皆が同じという前提で物事が語られがちな日本で再び暮らすようになったとき、何か学ぶべきものを感じました。
そうした中で、麻薬密売などを行う犯罪組織がスラムに拠点を構えるなど、治安にも深刻な悩みを抱えるリオ。この歌に出てくる言葉を、少し見てみましょう。
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