[2021.08]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年8月|20位→1位まで【無料記事 聴きながら読めます!】
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[2021.08]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年8月|20位→1位まで【無料記事 聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。

※レーベル名の後の()は、先月の順位です。
「Transglobal World Music Chart」は、世界各地のワールドミュージック専門家の投票で決まっているワールドミュージックのチャートです。主な拠点がヨーロッパなので、ヨーロッパに入り込んだワールドミュージックが上位にランクインする傾向があります。

20位 BLK JKS · Abantu / Before Humans

レーベル:Glitterbeat (24)

 南アフリカ出身の4人組アートロック・バンド、BLK JKSのセカンドアルバム。2009年のファーストアルバム『After Robots』以来、12年ぶりのリリースとなる。
 クワイト、ダブ、タウンシップ・ソウルをオルタナティブ・ロックで表現した独特のサウンドで注目を集め、デビュー作が国際的にも大きく評価された。2010年南アフリカで開催されたワールドカップでは、アリシア・キーズとのコラボレーション・ライブを行うなど、期待されていたバンドだった。だが、ヴォーカルの脱退や、前作レーベルとの契約終了などがあり、期待通りにはいかなかった。それでも残ったメンバーで活動し続け、彼らのサウンドを進化させていた。トランペットの名手であるTebogo Seiteiが新たなメンバーとして加わり、いよいよ新作を!ということで録音したのだが、その音源が盗まれてしまうという新たな災難も起きてしまう。1年後再びスタジオに入り、3日間で再録音を行いこのアルバムを完成させた。
 メインヴォーカルだったメンバーの脱退があったため、前作とは異なるイメージの本作だが、メンバー全員がヴォーカルを担当、ゲストヴォーカルにレソト出身のMorena Lerabaを迎えたりして新たな道を切り開いている。新メンバーであるTebogo Seiteiの激しいトランペットも彼らの新しいサウンドの一部となっており、前作よりも更にアフリカ色が強くなったように感じられる。
 自分たちの音楽的ルーツに対しての敬意と、未来への黙示録的ビジョンが込められており、ブランクを感じさせず前進する道を照らし出している。21世紀のルーツ・ロックであると言えるアルバム。

↓国内盤あり〼。

19位 Balkan Taksim · Disko Telegraf

レーベル:Buda Musique (7)

 ルーマニアのブカレストを拠点に活躍する、2人組ユニット(マルチ・インストゥルメンタリスト/アーティストのサーシャ=リヴィウ・ストイアノヴィッチと、エレクトロニカ・プロデューサーのアリン・ザブラウツァーヌ)のデビューアルバム。
 サーシャは、旅をしながらバルカン半島の音楽や文化を探求し、曲や物語、そして楽器を集めてきた。彼が収集した楽器の音と、伝統的な曲や物語を基にして新しい曲を作り、それをアリンのエレクトロニカのスキルと融合させ、「グルーヴィー・バルカン・ストーム」を生み出した。
 アルバム収録曲は、民族性とそれに関連する物語の背景を尊重しており、時にはロマンチックに、時にはメランコリックに表現している。サズ(ブズーキに似た3弦のリュート)、ネイ(先の尖ったフルート)などの伝統的な楽器とエレクトロニクスが見事に融合し、革新的な音楽となっている。「トラディショナル+エレクトロニック」が成功している作品と言えるだろう。とても魅力的な音楽が詰まったアルバムだ。

↓国内盤あり〼。

18位 Angélique Kidjo · Mother Nature

レーベル:Decca (-)

 先日のオリンピックの開会式にも登場した、ベナン出身でアフリカを代表するシンガー、アンジェリーク・キジョーの最新作。前作『Celia』はセリア・クルースへのオマージュアルバムで、グラミー賞を受賞するなど大好評を得たが、今回は7年ぶりのオリジナルアルバムとなっている。
 2019年からこのアルバムに収録する曲を書き始め、パンデミックで隔離されたこの1年間で制作されたもの。アフロビートやアフロ・ポップ、EDM、ヒップホップやR&Bといった様々なジャンルが融合し、アフリカを全面に表現、多数のアーティスト達がゲストとして参加している。彼女と同じベナン出身のLionel Louekeや、Salif Keitaなどベテラン勢をはじめ、ナイジェリアの Yemi Alade、Mr Eazi や Burna Boy、ベナンの Zeynab などなど… 総勢12組!現代アフリカを代表する若手アーティストや、アメリカ、フランスなどで人気あるアーティストたちともコラボしている。キャリアがあってもなお若いアーティスト達と新しいものを創りあげていく姿勢がとても素敵。
 アフリカへの愛が満載のアルバム。アフリカの伝統を受け継いでいることへの純粋な喜びがこちらに伝わってくるようだ。

17位 Sarah Aroeste · Monastir

レーベル:Aroeste Music (-)

 アメリカ生まれでセファルディ(主にスペイン・ポルトガルまたはイタリアなどの南欧諸国や、トルコ、北アフリカなどに15世紀前後に定住したユダヤ人)のルーツを持つ歌手、サラ・アロエステの6枚目のアルバム。
 クラシック・オペラを学んでいたが、1997年テルアビブで歌った時に、自身のルーツであるセファルディの音楽であるラディーノ(セファルディの言語であるユダヤ・スペイン語のこと)音楽に接し、それ以来本格的に学び、オリジナルと伝統的なラディーノ音楽を現代的なスタイルで世界中の聴衆に披露してきた。2017年、彼女の祖父の生誕地であるマケドニアのビトラ(旧モナスティール)に招待され歌う機会があった。その場所は、かつてセファルディが繁栄していた場所だったが、現在ではユダヤ人の生活は残っていなかった。でも現在の市民はユダヤ人でないにも関わらず、失われたユダヤ人の歴史に対する敬意と愛を持っていることを知り、マケドニアのユダヤ人音楽のアルバムを録音するプロジェクトを立ち上げた。それでできたのがこのアルバムである。彼女の長年のプロデューサーであるイスラエル人の Shai Bachar を迎え、30人以上のミュージシャン、5カ国、10曲、3言語が一堂に会して作られた貴重なアルバムである。この音楽の売り上げは、ビトラに残る古いユダヤ人墓地の修復など、ユダヤの歴史を守るためにビトラで行われている多くの素晴らしいボランティアプロジェクトに還元される予定。
 彼女は音楽活動の他にも、ラディーノ語を保存するための講演活動や、執筆も行っている。ラディーノ文化を守っていこうとする姿勢には、とても感銘を受ける。
 伝統的なラディーノ音楽ではあるが、現代的なアレンジになっている曲もあり、とても斬新。かつて栄えていた街モナスティールに迷い込んだかのような感じにもなれる美しい作品。

16位 Fadhilee Itulya · Shindu Shi

レーベル:Naxos World (-)

 ケニアのギタリスト・作曲家であるFadhilee Itulyaの最新作。2008年にナイロビの文化協力プログラムに参加したことからキャリアをスタートさせ、ケニアのアフロ・フュージョン音楽の普及活動に努めている一人である。昨年デビューアルバムとなる『Kwetu (Home)』をリリースしたが、早くも二作目となる作品をリリースした。ロックダウン中に制作されたため早く完成できたとのこと。
 ケニア西部のルヒヤ族が起源で、1950年代から1960年代に流行したフィンガーピッキング・ギターのスタイルであるオムティボ(Omutibo)音楽を自身の曲に取り込み演奏している。
 本作は、一作目と同様にオムティボ音楽ではあるが、更にアコースティック・フォークや、ポップ、ダンス、ワールド・ミュージックとうまく融合している。ブルース調なアコースティックもあれば、ダンス音楽もある。オムティボの音楽に現代的な要素を加えて、ケニアの新しい世代にオムティボを紹介しようとする意気込みが感じられる作品。
 彼はケニアで開催されるUtam Festivalの創設者であり、彼のガレージから始まったFadhilee's Garage(ガレージコンサート)を毎月主催している。現在はコロナのため開催できていないようだが、音楽やアートを文化として共有すべく活発的に活動している。今後の活躍が大変楽しみなアーティストである。

15位 Dagadana · Tobie

レーベル:Agora Muzyka (15)

 ポーランドとウクライナ出身の男女4人組ユニットによる、5枚目のアルバム。ポーランドのクラクフで行われたジャズワークショップで知り合い、2008年に結成された。それ以来、ジャズ、エレクトロニック、ワールドミュージックを通して、ポーランドとウクライナの文化の要素を見事に融合させている。2人の女性ヴォーカル、Daga Gregorowicz(エレクトロニクスも担当)とDana Vynnytska(ピアノ、キーボードも担当)の名前がバンド名となっている。2010年リリースのデビューアルバムはポーランド国内だけでなく、世界的にも評価され、今までに4大陸25カ国で1000回以上ライヴを行ってきた。
 本新作はあらゆる人たちと「やさしさ」を共有し、「やさしさ」を目覚めさせる必要性から生まれたとのこと。コロナ禍で世界が混乱していることを憂いたのだろうか。様々な国を旅して得られたスタイルの豊かさと、自分のルーツに敬意を払いながら音楽の世界を融合させることへの寛容さが込められたアルバムとなっている。
 伝統的で民族的なメロディー、ポリフォニーをベースにしつつ、ジャズのグルーヴやダンス・エレクトロニクス、ラップなどと融合し、現代的な音楽となっている。これはハマりそう!期待できるユニットである。

14位 Hamdi Benani, Mehdi Haddab & Speed Caravan · Nuba Nova

レーベル:Buda Musique (13)

 フランス系アルジェリア人のエレクトリック・ウード奏者、メフディ・ハダブと彼のグループ「Speed Caravan」が、アルジェリアのヴァイオリニストで歌手のハムディ・ベナーニを迎えて制作した作品。ハムディ・ベナーニはマルーフの巨匠でありアルジェリアの古典音楽の名手であったが、2020年9月にコロナにより亡くなってしまい、この作品が遺作となってしまった。
 アルジェリア東部の街コンスタンティーヌからチュニジアの地域で親しまれている伝統的な音楽、マルーフが、エレクトリック・ウードとミックスすることでロック調になっている斬新な作品。でもベースには、マルーフの精神が宿っており、伝統に忠実な側面も持っている。「マルーフ」はアラビア語で「伝統に忠実な」という意味があるそうだが、実際にそれをアルバムで表現している。
 ハムディ・ベナーニの歌も収録されているが、彼の息子が歌った曲も収録されている。このアルバムには父が守ってきた伝統を息子が引き継ぐという物語も込められている。
(動画は2019年にツアーを行った際の動画で、このツアーをきっかけに本アルバムの制作に繋がったものです)

13位 Coşkun Karademir, Tord Gustavsen, Derya Türkan, Ömer Arslan · Silence

レーベル:Kalan (-)

 トルコの伝統弦楽器バーラマを演奏するジョシュクン・カラデミル、ノルウェー出身のジャズピアニスト、トルド・グスタフセン、トルコの擦弦楽器ケメンチェ奏者デリヤ・テュルカン、トルコのパーカッショニスト、オメール・アルスランによるユニットのアルバム。
 アナトリア(トルコ東部)やアゼルバイジャンの民謡から、オスマン帝国の皇帝スルタンが19世紀に作曲した曲、そして彼らのオリジナル曲などが収録されている。曲数は9曲だが、合計1時間以上でとても聴きごたえある作品となっている。
 弓で弾くケメンチェの音色とカラデミルの弾くバーラマのコントラストがとても絶妙。そこにパーカッションとピアノが重なると、とても幅広いサウンドに仕上がっている。ジャズっぽいアレンジになっている曲もあり、トルコ伝統音楽とは一括りにはできない。インスト曲だけではなく、カラデミルが歌っている曲もあり、彼の伸びのある歌声(美声!)にも驚きだ。
 アルバムタイトルのように「沈黙」を表しているかのようなところもいくつかある。音楽の空間を使っているという感じか?のちの曲への誘導にとても効果的に使われており、じっくり聞かせるような仕上がりとなっている。トルコ伝統音楽とジャズとの組み合わせの可能性が広がったとも言える作品だろう。

12位 Ben Aylon · Xalam 

レーベル:Riverboat / World Music Network (5)

イスラエル出身のパーカッショニスト/音楽家であるベン・アイロン。国境を越えるミュージシャン、パーカッショニストとして定義されるベンは、自身のソロプロジェクト「One Man Tribe」において、彼の革新的なドラミング・スタイルを紹介しており、10種類のアフリカン・ドラムのセットを同時に演奏し、現地の音楽家たちをも凌駕してきた。
 2020年1月、ベンはセネガルの首都ダカールを中心に単独公演を行い、数百万人が視聴するセネガルの有名テレビ番組で紹介され、セネガルで全国的な知名度を得た。セネガルの「次世代パーカッショニスト」と期待されている存在。
 この作品は、7年の歳月をかけて制作され、国際的なデビュー作品となるもの。2018年に亡くなったマリの歌姫カイラ・アービーと、サバール・ドラミングの伝説的存在であるドゥドゥ・ンジャエ・ローズが参加している。セネガルとマリの伝統的な音楽と楽器を、新鮮で現代的なものに変えている。
 上記動画は、彼が過去10年間に西アフリカを旅したときの貴重な映像を使ったこのショート・ドキュメンタリー。このアルバム制作の過程がわかる非常に興味深い内容となっている。これからの活躍が期待できる「次世代」のアーティストだ。

↓国内盤あり〼。

11位 Kamel El Harrachi · Notara

レーベル:Kamiyad Music (-)

 アルジェリアの作曲家/シンガーであるカメル・エル・ハラチのアルバム。アルジェリアのシャアビ(音楽ジャンルの一つで民衆のための音楽)、音楽界を代表する有名な人物であり、作家、作曲家、演奏家であるダフマネ・エル・ハラチの息子である。カメルがわずか7歳の時にダフマネは亡くなってしまったが、1991年に正式に音楽活動を開始し、それ以降父が築いた音楽を忠実に継承している。
 1994年、カメルが21歳の時にフランスに移住し、父も行ったようにパリのカフェで演奏し、2009年にファーストアルバムをリリース。この作品はセカンドアルバムとなる。父の曲の美しいカバーが収録されており、父への多くの敬意が込められている。若くして偉大なアーティストの名前を背負い活動してきたが、その活動がしっかりと彼の才能に繋がっていることを認識できる作品。彼独自の作品として多くの聴衆を惹きつけることになるだろう。

10位 Boubacar “Badian” Diabaté · Mande Guitar: African Guitar Series, Volume I

レーベル:Lion Songs (-)

 アメリカ人のベテランギタリストであり、ジャーナリストであるバニング・エアが設立した新しいレコードレーベルからの最初のリリース作品。アフリカの偉大なギタリストたちの新しい録音シリーズの一環として制作されたアルバム。ギタリストは、マリのギタリストであるブバカル・"バディアン"・ジャバテ。バニングがマリでギターを学んでいた頃に出会い、バディアンの超絶なテクニックと叙情的なタッチはバニングにとって衝撃的だったとのこと。
 その数年後にバディアンは西アフリカのコミュニティで演奏するためにニューヨークを訪れるようになり、バニングにCD制作の協力を何度も頼んだそう。バニングは、バディアンがギターを弾くだけで、ボーカルやパーカッションなどの楽器を使わないという条件で承諾した。出来上がった作品には、ギターのデュオがあったり、1曲だけパーカッションが入っている曲も収録されている。
 インストのみで聞き惚れてしまい、収録時間である1時間はあっという間に過ぎる。ぜひ多くの人に聞いてほしい作品。
 バニング・エアによる新しいレーベルから、まだまだ続き新たなアーティストが紹介されていくことを期待したい。

9位 Sofía Rei · Umbral

レーベル:Cascabelera (12)

 ブエノスアイレス出身で、現在はニューヨークを拠点に活動し、グラミー賞にノミネートされたこともあるシンガーソングライター、ソフィア・レイの5作目となる最新作。今作は、アンジェリーク・キジョー、リチャード・ボナのプロデューサーでもある、JC Maillardのプロデュースによるもの。本作にも収録されている「La Otra」がシングルとして先行リリースされた。この曲は、チリの女流詩人であるガブリエラ・ミストラルの詩へのオマージュとして作られた。
 アルバムでは、チリのエルキ渓谷の山奥で、世界の中で自分の居場所を求めて戦う女性の姿を親密に描いている。エルキ渓谷は、ガブリエラ・ミストラルの生誕地でもある。実際に録音機材を詰め込んだバックパックとチャランゴを持って、エルキ渓谷を単独でトレッキングし、旅の途中で出会ったミュージシャン仲間から影響を受ける中で、民族音楽を収集・録音しながら旅を進めた。それをベースに作られたのが今回のアルバム。伝統的な民族性とデジタルな未来性を融合した傑作と言えるだろう。
 現在はニューヨーク大学でも教鞭をとっている。リズムトレーニングとラテンアメリカ音楽のスタイルや特性に焦点を当てたコースを開設したり、また南米の芸術に対する一般の認識を高めることを目的としたアート集団「El Colectivo Sur」の共同設立者も担うなど、活動の幅を広げている。そして彼女の根底にあるものは、故郷であるアルゼンチンをはじめとしたペルー、コロンビア、ベネズエラなど南米諸国の民族音楽を深く探求し続けていること。それらのサウンドをジャズ、クラシック、ポップス、電子音楽の影響と融合させ、独自の進化し続けるサウンドを生み出してきた。
 才能ある彼女の活動から得られた大きなエネルギーがこのアルバムに詰め込まれている。素晴らしい作品。

8位 Ballaké Sissoko · Djourou

レーベル:Nø Førmat! (4)

 マリの作曲家/コラ奏者であり名手である、バラケ・シソコのニューアルバム。今回はソロ作品だが、何人かのアーティストをゲストに迎えコラボレーションしている。ゲストは、デュオアルバムもリリースしている盟友のヴァンサン・セガールを筆頭に、マリの巨匠サリフ・ケイタ、フランス人歌手のカミーユ、アフリカ系イギリス人でコラ奏者のソナ・ジョバルテ、フランス人MCのオキシモ・プッチーノなど。コラの音色とゲストによる音(声だったり楽器だったり)の融合が素晴らしく、心に沁み渡る優しい作品。もちろん、ソロでの曲も素晴らしいことは言うまでもない。
 アルバム名の「Djourou」は、マリで話されている言語であるバンバラ語で「糸」という意味。バラケ自身とゲストや、リスナーたちと音楽の糸で繋がっているということを表している。まさに、このアルバムに織り込まれている糸を、聴くことによって感じられる名盤である。

7位 Natacha Atlas · The Inner & The Outer

レーベル:Wise Music Publishing (18)

 エジプト系ベルギー人歌手ナターシャ・アトラスの最新作EP。プロデューサーであるサミー・ビシャイとのコラボレーション作品。
 ナターシャは、イギリスのワールドフュージョンユニット「Transglobal Underground」のメンバーとして活動を開始、1995年にエレクトロニカのデビューアルバム『Diaspora』で大ブレイクし、ソロ活動に専念することとなった。西洋と中東の伝統的なヴォーカルを巧みに融合させることで知られており、様々な文化圏の多くのミュージシャンとコラボレーションしてきた。
 本作品は、COVID-19のパンデミックが始まって以来、社会が抱えている不安や不確実性、断片化された社会や、喪失感を反映した歌詞が特徴的で、社会のディストピアをテーマにした作品となっている。
 ジャズ、ヒップホップ、エレクトロニカを融合させた、ビシャイの実験的な領域に一歩踏み込んだ作品で、ナターシャの魅惑的なヴォーカルと見事に融合している。静寂と空間を巧みに利用し、想像力を掻き立てられ、リスナーを感情的で魅力的な旅に連れて行き、瞑想的な雰囲気で精神を充電させてくれるかのような作品。中東のサウンド、エレクトロニカ、ジャズが交差するこのアルバムは、大変美しい作品となっている。

6位 Namgar · Nayan Navaa

レーベル:ARC Music (-)

 ロシアのシベリア南部、モンゴルや中華人民共和国との国境近くにある小国ブリヤート共和国出身のシンガー、「モンゴルのビョーク」と呼ばれるナムガル。彼女名義のバンドによるアルバムである。
 バンドは、モンゴルやロシアの伝統的な楽器(ヤトガ(13弦の撥弦楽器)、チャンザ(3弦のリュート)、モリンホール(馬頭琴:2弦の弓楽器)など)と、エレクトリック・ベース、ドラムを使って独自のサウンドを生み出し、2005年に結成以来、ノルウェー、マレーシア、アメリカなど世界各地のフェスティバルのステージに立っている。2014年にも来日している。
 今回の作品は、サンクトペテルブルク、モスクワ、ブリヤートの古文書館で、忘れ去られたブリヤートの伝統的な歌(民謡)を100曲集め、その中から選んだ曲を収録している。伝統的な歌を伝統楽器で演奏する、というと伝統音楽っぽく仕上がると予想できるが、彼らの音楽はそういうことはない。ロック調のものあり、現代的なアレンジとなっている。そこに伝統的な発声や楽器などのスパイスが効いてる感じだ。
 この地方の伝統的な歌には、多彩で多様性に富み、自然が大きく関わっていることが彼女の声から想像できる。今後も大事に聞いていきたい作品。彼女の声の虜になることは間違いない。

5位 Dobet Gnahoré · Couleur

レーベル:Cumbancha (6)

 コートジボワール出身の女性シンガー、ドベ・ニャオレの最新作。本作で6枚目のアルバムとなる。2010年にグラミー賞を受賞し、アフリカの歌姫として愛されている1人である。2007年にアルバム『Na Afriki』をリリースして高い評価を得たアメリカのCumbanchaレーベルへの復帰作でもある。
 フランス在住であったが、コロナのパンデミックで地元コートジボワールに戻り録音したアルバム。地元の若い才能を活かすため、彼女は地元で人気の作曲家/プロデューサーである21歳のTam Sirに制作を任せた。現代アフリカの都会的なエネルギー、華やかさがあるアフロポップ作品に仕上がっている。
 また、女性の権利や、強さ、創造性、そして困難な時代にもかかわらず前向きで勇敢な女性を称えている作品ともなっている。アフリカの女性たちへの語りかけているような存在感のある歌声、グルーヴ感がとても心地よい。MVでの彼女のダンスはとても素晴らしい。そして何よりもアフリカン・ポップな色彩が溢れる作品ばかりであることにとても惹かれる。まさにアルバムタイトル『Couleur』(フランス語で色)通りの作品だ。

↓国内盤あり〼。

4位 Toumani Diabaté and The London Symphony Orchestra · Kôrôlén

レーベル:World Circuit (3)

 グラミー賞を受賞したマリのコラの名手トゥマニ・ジャバテと、レコードや映画、舞台でのオーケストラ演奏で世界的に活躍するロンドン交響楽団のコラボレーション作品。ロンドンのバービカン・センターの特別プロジェクトとして依頼され、ワールド・サーキットによって制作されたアルバム。
 何世代にもわたって音楽を受け継いできたグリオであるジャバテは、フラメンコ、ブルース、ジャズなどの異文化と交流し、マリの伝統音楽を現代に、そして世界へと発信し続けてきた。今回はクラシックとのコラボ。マリの著名な音楽家たちがいるジャバテのグループが参加し、ニコ・ミューリーとイアン・ガーディナーの編曲とクラーク・ランデルの指揮によるものとなっている。
 タイトルの「Kôrôlén」は、マンディンカ語で「先祖代々」を意味する。伝統的なメロディーとコラの音色の美しさが、西洋のオーケストラ・アレンジと見事に融合されている。アフロ・ネオ・クラシック・サウンドと言える作品で、とにかく美しい!
(ちなみに、今月8位のバラケ・シソコと共演しているコラ奏者のソナ・ジョバルテは、トゥマニ・ジャバテのいとこだそうです。凄いファミリー!)

3位 Antonis Antoniou · Kkismettin

レーベル:Ajabu! (1)

 キプロスの人気バンド、Monsieur DoumaniとTrio Tekkeのメンバーであるアントニス・アントニウの初めてのソロアルバム。
 アルバムタイトル「Kkismettin」は運命や宿命という意味である。紛争で分断されたキプロス島の二つのコミュニティに対し、この苦しい状況を島の運命として受け入れることはできないという政治的なメッセージを込めて作られた。またこのアルバムは、コロナでロックダウン中に制作され、分断されたこの国では、移動の自由やその他の基本的な自由が制限されていることを思い知らされたという。
 アントニウは、母国語であるギリシャ・キプロス語で、クラシック音楽からジャズ、ロック、伝統音楽、実験音楽、サウンドアートまで、サウンドスケープとテクスチャーを融合させている。キプロスの主要な伝統楽器のひとつであるリュートの中近東風のメロディーが、アナログシンセサイザーのグライドやエッジの効いたギターリフと共鳴し、境界線を押し広げ、独特の現代音楽のモザイクを形成している。分断された都市ニコシアの検問所の樽が、文字通り楽器となり、リズムの基盤となり、錆びたような陰鬱な雰囲気を醸し出している。
 今後、この分断の象徴とも言える樽が、解体される“運命”になることを願いたい。

2位 Canzoniere Grecanico Salentino (CGS) · Meridiana

レーベル:Ponderosa Music (2)

 Canzoniere Grecanico Salentino(CGS)は、1975年にイタリアの作家リナ・ドゥランテによって結成された、イタリア南東部サレント地方の伝統音楽アンサンブルグループ。その最新作。
 7人編成によるこのグループは、南イタリアの伝統的な音楽と踊りを現代風にアレンジしてパフォーマンスを行う。これまでに18枚のアルバムを発表し、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中東などで多くの公演い、高く評価されてきた。2007年には、バンドリーダーだったダニエレ・デュランテから息子のマウロ・デュランテに引き継がれた。
 アルバムタイトル「Meridiana」は「日時計」という意味。アルバムのデザインも日時計を表現、日時計の時間が12であるように曲数も12曲ということで表現している。今回のアルバムでは、サレント地方の伝統的な曲と、ピッツィカ(イタリア・サレント地方に伝わる伝統的な踊りで男性と女性によるペアの踊り)を使った現代的なオーケストレーション作品を収録している。過去と現在が重なり合い、時間が拡大したり縮小したりしながら、12曲が流れていくイメージのアルバムだ。
 アルバムのホームページを見ると、このアルバム自体が、時間をテーマにした幅広いプロジェクトとなっている。科学と文化の世界の著名人から提供されたビデオ、画像、テキスト、寄稿文が集まり、マルチメディアと学際的なオリジナルのモザイクを構成している。稀に見る困難な年だからこそ生まれたプロジェクトではないだろうか。全体を通して聴いてみると、物語の全体が見えてくるかのようだ。必聴です。

1位 V.A. · Henna: Young Female Voices from Palestine

レーベル:Kirkelig Kulturverksted (8)

 今もなお紛争が続いているパレスチナの新世代の女性アーティスト達による作品。7人の若いシンガーとグループが、それぞれ1〜2曲を収録。カヌーンや、ウード、ネイなどの民族楽器が使われ、占領下での生活を反映した歌だけでなく、強い抵抗の意志と永続的な希望についても歌っている。
 これらの若手アーティスト達が学んだパレスチナにあるエドワード・サイード国立音楽院(ESNCM)のディレクター、スハイル・クーリー氏によって制作されたアルバムである。録音はESNCMのスタジオで行われ、ノルウェーのレーベルKKVとの共同作業により8年間かけてつくられた。(スハイル・クーリー氏は、2020年7月にイスラエル警察により身柄を拘束されてしまった)
 このノルウェーのレーベルは、リム・バンナやテレス・スリマンなど、パレスチナの重要な他のアーティストの作品もリリースしており、今回のリリースは、ノルウェー外務省の助成を受けている。ノルウェーは文化的側面からパレスチナをサポートしていることがうかがえる。
 イスラエルの軍事占領下で最も影響を受けやすい存在である女性、しかも若い女性たちが、自ら歌を通して意思表示をしているということに強く応援したい気持ちになる。彼女たちをはじめとした若い人々に明るい未来があることを祈り続けたい。

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(ラティーナ2021年8月)

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