見出し画像

[2024.6] 【映画評】アウシュビッツが照射する現代の非情 『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』

アウシュビッツが照射する現代の非情
『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と
『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』

※こちらの記事は、6月12日(水)からは、有料定期購読会員の方が読める記事になります。定期購読はこちらから。

文●あくつ 滋夫しげお(映画・音楽ライター)

『関心領域』新宿ピカデリー 、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

 現在公開中の『関心領域』は、昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリ、今年のアカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞している。そしてアウシュビッツを描いた作品として、これまでにない画期的な表現によって映画史にその名を残す傑作になったと言えるだろう。

 カメラは強制収容所内で行われていた行為を一切映すことなく、壁を隔てた隣の豪奢な屋敷で暮らす収容所所長一家の日常を淡々と、そして延々と描き出す。しかし壁の向こうには時折不穏な音や煙突の煙が微かに見聞き出来て、その底知れぬ不気味さが恐れとなって広がってゆく。やがて屋敷内でも人間が本質的に持っている様々な悪が少しずつ炙り出される。

『関心領域』新宿ピカデリー 、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

ここから先は

3,945字 / 10画像

このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…

この記事が参加している募集

#映画感想文

68,115件