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[2021.06]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑪】前景の音、後景の音 ―パプアニューギニア in 1993 その3―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)

 私たちが第1日目に泊まった村は、ウォンブン Wonbunだったと後で村人に聞きました。東セピック州に点在する精霊の家(haus tambaran)は、成人男性の神聖な場所。薄暗い中で、男性たちは指孔のない太い竹笛で、高音と低音を交互に吹いて合奏します。その音で森の精霊が呼び込まれ、竹笛に憑依して男性たちに語りかけるそうです。外国人訪問者の私が精霊の家に入ったせいで、怒った精霊が昨晩暗闇の中で騒ぎたてたのだろうか…。

 そんな私の思いをものともせず、ホウキのような民具で蚊を追い払う西洋人同行者たち(写真1)。彼らと再び船外機付きカヌーに乗り込み、セピック川本流に入ると、「きっとこんなのに乗るよ」と聞いていたクルーズ船が停泊しているではありませんか(写真2)。私たちの船外機付きカヌーは、それを後目にスイスイとセピック川を下っていきました。

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写真1 蚊を追い払いながら船外機付きカヌーに乗り込む
(於:東セピック州、パプアニューギニア1993年4月22日 撮影:小西潤子)

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写真2 クルーズ船が見える
(於:東セピック州、パプアニューギニア1993年4月22日 撮影:小西潤子)

 2泊目のタンバナム Tambanum のゲストハウスには自家発電装置があり、トイレ、シャワー完備。調理人のコロンバは、コンロでご飯を炊いて、チキン、ニンジン、グリーンピースを焼いてくれました。まるで天国のように思われ、みんなもようやくくつろいで自己紹介や名刺交換をしました。ドイツ人の二人連れは人類学者と家庭裁判所裁判官、アメリカ出身のニュージーランド人は人類学者、オーストラリア人は造形作家、そして私。ポートモレスビー出発後4日目にして、お互いの素性を知ったのです。

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