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[2024.3] 【映画評】『美と殺戮のすべて』 〜人気カメラマンが巨大企業と美術界に仕掛けた滅法面白い闘争の記録!

人気カメラマンが巨大企業と美術界に

仕掛けた滅法面白い闘争の記録!

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文●あくつ 滋夫しげお(映画・音楽ライター)

『美と殺戮のすべて』
3月29日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、
グランドシネマサンシャイン池袋ほかロードショー
© 2022 PARTICIPANT FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 ナン・ゴールディン(Nan Goldin)をご存知だろうか。1953年にアメリカで生まれ、14歳で家出、18歳頃から共同生活をしていたドラァグクイーンやアーティスト、親しい友人、そして自分自身のスナップ写真を撮ってスライドショーを披露。それをまとめた初めての写真集「性的依存のバラード(The Ballad of Sexual Dependency)」(86 ※同名のスライドショーは現在に至るまで何度も更新される)がセンセーショナルな話題を呼び、一躍時代の寵児となった写真家だ。当時は日常の何気ない一場面をパーソナルな視点から切り撮った“私写真”とも言うべきスタイルはとても斬新で、その後の写真家たちに大きな影響を与え、今では誰もがスマホを片手に当たり前のように日常を記録して楽しんでいる。

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 その被写体だったゲイやレズビアン、トランスジェンダーたちは、当時は社会的に日陰の存在であり激しい差別の対象でもあったが、今の多様性の時代にはその存在や権利が認められる方向にある(日本を含めまだまだ道半ばだが…)。またゴールディンの写真からはセックス、ドラッグ、エイズ、暴力、DV、家族などがテーマとして浮かび上がり、赤裸々な被写体の姿からは愛や友情、喜び、悲しみ、憎しみ、孤独、絶望、諦念、葛藤などの感情が滲み出て、その背景に様々な物語を喚起する。これらのテーマや感情は、今もあらゆる芸術分野で繰り返し描かれ、各々の表現によって独自の作品が創り上げられている。

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