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[2022.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ㉒」】 Verônica Ferriani 『Diário de Viagem Cantado』

文:中原 仁

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 2013年に初来日公演を行なった、サンパウロ州内陸出身のヴェロニカ・フェヒアーニ(1978年生まれ)。2003年、作曲家/ギタリスト、シコ・サライーヴァとの共演でプロ活動を開始した。サンバの名曲も歌い、ダニ・グルジェルを中心とするノヴォス・コンポジトーリスの一員としても活動。2009年、ビヂのプロデュースでデビュー・アルバム『Verônica Ferriani』を発表。シコ・サライーヴァとの双頭でシコ作品集のアルバム『Sobre Palavras』も発表した。

2013年、来日公演のフライヤー

 2013年の来日公演は、ホドリゴ・カンポス(ギター)、チアゴ・フランサ(サックス、フルート)といったサンパウロのアヴァン・ポップ&ジャズを代表する腕利きの曲者たちとの共演。同年末に発表したアルバム『Porque a Boca Fala aquilo que o coração tá cheio(それ心に満つるより、口は物言ふなり』(プロデューサーはクリオーロの『Nó na orelha』を手掛けたマルセロ・カブラルと、トゥリッパ・ルイスの弟グスタヴォ・ルイス)で初めて、シンガー・ソングライターとしての顔を見せた。『Aquário』(2018年)でも全曲、自作を歌った。

 アヴァン・ポップ、サンバ、ジャズ、さらにはガフィエイラ(Gafieira São Pauloのアルバムに参加)まで軽快なフットワークで歌い、サンパウロの音楽シーンで確かなキャリアを築いてきたヴェロニカの新たなプロジェクトが、“12 Anos em 6 Violões”。2021年2月から3月にかけて映像を配信した、6人のギタリストとの共演で12年間のキャリアを振り返るスタジオ・ライヴのプログラムをもとに、4月から9月まで6カ月連続でアルバムをリリースする、という壮大な企画だ。

Swami Jr.(左)と Verõnica Ferriani

 その第1弾が、4月1日にリリースした『Diário de Viagem Cantado』。パートナーは、7弦ギターの名手スワミ・ジュニオル。ヴェロニカは以前からスワミとライヴを行なってきた。

 スワミ・ジュニオル(1958年、サンパウロ生まれ)は80年代、パリで活動。97年、シコ・セーザルの来日公演にベーシストとして参加。ゼー・ミゲル・ヴィズニッキの名盤『São Paulo Rio』(2000年)にも参加した。多くの歌手をサポートし、音楽監督も歴任。キューバのオマーラ・ポルトゥオンドのアルバム、彼女とマリア・ベターニアとの共演盤でも音楽監督をつとめた。渡辺貞夫のサンパウロ録音盤『Outra Vez』(2013年)に参加し同年、来日してコンサートでも共演した。コンゴのロクア・カンザ、カーボ・ヴェルデのマイラ・アンドラーデとも共演しているワールドワイドなフットワークの主だ。

 リーダー作は少ないが、大勢の歌手をゲストに迎えた『Outra Praia』(2007年)も、インストゥルメンタルの『Mundos e Fundos』(2011年)も秀作。2022年、シンガー/ソングライター/マルチ弦楽器奏者、ジョエル・チモネールが日本語で歌った曲「お月さんの夢」の録音にも参加した。

 ヴェロニカ・フェヒアーニがスワミ・ジュニオルとのデュオで、主にブラジルの、さまざまな時代の名曲を歌った『Diário de Viagem Cantado』。“歌の旅日記” といったニュアンスだ。ヴェロニカは2018年の海外ツアー中、さまざまな場所でさまざまな曲をアカペラで歌った映像のシリーズ『Diário de Viagem』を公開した。そのレパートリーを軸に、スワミとのデュオで録音したアルバムになる。

 以前からヴェロニカは、伸びのある声質と豊かな表現力の持ち主だったが、9年前の来日当時と比べて声の色艶も表現のダイナミズムも一段、いや二、三段アップした手応えがある。自身の成長はもちろん、名手のスワミがパートナーをつとめ、プロデュース・センスも発揮して歌を支えていることの効果も絶大だ。“声とギター” のシンプルな編成を通じ、スワミの力量を実感できるアルバムでもある。

 では曲順に沿って『Diário de Viagem』のアカペラ映像、ヴェロニカとスワミのライヴ映像、聴き比べ用の音源・映像を交えて紹介していこう。曲名後のカッコ内は作者名。

1. Luz do Sol (Caetano Veloso) 太陽の光

 冒頭のアカペラ映像はパリで撮影。2番目の映像はスワミとのスタジオ・ライヴ。カエターノ・ヴェローゾが映画『Índia - a Filha do Sol』(1982年)のテーマ曲として書き下ろした。同年、ガル・コスタがカヴァーしてヒット。作者カエターノの弾き語りライヴをどうぞ。

2. O Céu (Marisa Monte, Nando Reis) 空

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