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[2020.10]連載 レオナルド・ブラーボ【リズムで旅するアルゼンチン音楽③パンパ編】


文と映像●レオナルド・ブラーボ (ギタリスト) 

Text & Video By Leonardo Bravo(Guitarist)



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 パンパはアルゼンチン中央部に位置する。恵まれた立地を生かして、国の政治的、経済的、文化的、そして人口の中心となった。パンパの音楽は19世紀後半、「砂漠の征服」の舞台となり、政府は現地に住んでいた原住民を抹殺し、数百年の時間をかけて形成された文化的財産が解体されていった。この地域の音楽は様々なルーツがありながらも、インディヘナのものはない。その中でも最も影響が強いのがスペインとクレオール(ヨーロッパ人のこどもで、アメリカ大陸生まれ)と国内の移住者である。20世紀初頭にはブエノスアイレスの港はスペイン、イタリア、ロシア、ドイツからの移民を受け入れ、特にタンゴに強い影響力を持つようになった。 

 「砂漠の征服」で実際に起こったのはインディオたちから土地を収奪し数千年に及ぶ文化を捻じ曲げたことであった。インディオたちの文化で残ったものはいくつかの民芸品のみで、音楽に関してはほとんど残ったものはない。その後インディオたちへのジェノサイドに加担して富を得て土地を購入した征服者やエスタンシアの歩兵が最初の入植者としてこの土地にたどりついてきた。

 彼らの到着によって音楽だけではなく関連する慣習(ミロンガ、トゥリステ、エスティロ、シフラ、ウエージャ、衣装、食事、馬の使用)ももたらした。新しい地平線と可能性を探りにアルゼンチンにやってきた移民も加わり、パンパの空間的形成に寄与してきた。

 スペイン人の植民地化は美的感覚、技術、ヨーロッパ音楽に特徴的な楽器をもたらした。文化の混淆は舞踊、楽器、クレオール音楽の技術の向上を促し、アルゼンチンフォルクローレにとって欠かせない影響力を与えた。

 ヨーロッパ人がもたらした最も大きな影響はクレオールギターで、土着のボンボやボンボ・レグエロ、北部アルゼンチンで非常に重要なチャランゴ(アルマジロの甲羅を用いて作成されたミニギター)に取って代わっていった。

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