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[2021.11] PIRY REIS(ピリ・ヘイス)〜ミニマル & アンビエント・リバイバルで急浮上する幻のブラジル音楽家 1995年、自宅訪問の回顧録 【前編】

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文と写真●若杉 実  texto e fotos por MINORU WAKASUGI

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 たいした音楽人生ではないが、それでもいろんな “ふしぎ” と出会うことが稀にある。最近ならブラジルのシンガーソングライター、ピリ・ヘイス。彼のリイシュー作業がこの2、3年のあいだに過熱していた。2017年にファーストアルバム『Vocês Querem Mate?』(1970年)が再発されたのを機に、2000年に『Piry Reis』(1980年)が、ことしに入り『Caminho Do Interior』(1984年)と『Piry Reis』(7インチ2枚組)があいつぎ市場に並んだ。このなやましい連鎖は、私情を挟む隙をあたえながら二十余年まえの記憶を呼びおこす。

『Vocês Querem Mate?』

 1995年2月初頭、カーニヴァル・ウィークを目前に、リオの住民はアイルトン・セナの死から半年以上を費やしこころの傷をケアしていた。おりから現地でCDをプロデュースしていたわたしは、春愁にも似た憂いを肌で感じながらもさまざまなハプニングと遭遇する。なかでもオフの日、リオのセントロからバスで3時間かけ単身マカエへ移動した記憶をかき消すことはできない。ぐうぜんそこで出会ったのがピリであり、おもわぬできごとに全身の震えがしばらくやまなかった。
 当時でさえ奇跡だったが、いまや伝説の珍事として語ったほうがいいかもしれない。冒頭で触れたように、この2、3年のあいだにピリは世界的な知名度を獲得していたからである。
 ここで注意しなければならない点がひとつだけある。1991年の『Coisa Rara』(アルトゥール・ヴェロカイ参加)以降、彼の新作の知らせはあいにく届いていない。その『Coisa Rara』は本人からいただき、その場でサインをしてもらった。

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