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[2021.02]【e-magazine LATINA】編集部が今週聴いてほしい世界の新譜からの5曲[2/19更新]

[無料記事]

文●編集部

 ちょっと間が空いてしまいました。編集部が気になった新譜の中から、厳選した5曲を紹介します。ブラジル〜 日本〜イスラエル&アルゼンチン〜スペイン〜ブラジル&ウルグアイというラインナップです。

1曲目。Antonio Loureiro「Saudade」

アントニオ・ロウレイロ「サウダーヂ」

 ジョビン-ヴィニシウスの名曲「A Felicidade (幸福)」に「Tristeza não tem fim(悲しみには終わりはない)」という有名なフレーズがあります。
アントニオ・ロウレイロは新曲「Saudade(サウダーヂ/郷愁」)で、「Saudade que não tem fim(サウダーヂこそ終わりはない)」とないと歌い、友人たちとの友情について歌いました。サビのフレーズでは、「どんなにコストがかかっても、友よ、会いに行くよ」と続きます。
 音源に続いてアップされたビデオクリップでは、アントニオのその気持ちがビジュアルでも伝わってきます。
 どんなビデオクリップかというと、アントニオと彼の友人たちが、それぞれの場所で、この曲に合わせて、思い思いに体を揺らしている映像です。
参加しているのダンサーではなく、アントニオの音楽家の友人たちなので、プロのダンスというわけではなく、それぞれに楽しんで体を揺らしているという具合なんですが、でも、そのリアルさで、アントニオの「会いたい」という気持ちが音だけで聴くよりも増幅されています。

 ビデオに参加しているのは、アントニオ他、こちらのミュージシャンです→Luana Saggioro e Pedro, Fred Heliodoro, Luiza Burian, Gisella Gonçalves, Sandra Rheier, Priscila Torres, Luis Sartori, Felipe Continentino, José Moacir, Raul Misturada, Lia Petrelli, Angelo Mundy, Tarita de Souza, Tatiana Parra

関連アーカイヴ↓


2曲目。林正樹「Under The Open Sky」

映画『すばらしき世界』オリジナルサウンドトラック 収録

 現代日本が誇る名監督の1人、西川美和監督の最新作『すばらしき世界』の音楽を、ラティーナの「日本の新しい室内楽」特集などで何度もインタビューさせていただいている林正樹氏が担当!映画も音楽も素晴らしい作品となっています。
 この美しい曲「Under The Open Sky」は、エンディング曲となっており、この曲だけでも美しいですが、鑑賞後に聴くと、また違った景色が広がります。YouTube映像は、林氏の自宅でのピアノ独奏、音源verは弦楽を加えたアレンジです。

↓林正樹氏へのインタビュー & 映画『すばらしき世界』の映画評

関連アーカイヴ↓


3曲目。Yotam Silberstein & Carlos Aguirre「Tanto para agradecer」

ヨタム・シルバースタイン&カルロス・アギーレ「タント・パラ・アグラデセール」
アルバム『En el Jardín』収録

「この曲は、私が長年尊敬し、彼の歌の美しさや彼が弾くピアノ、そしてその強烈な歌い方を通して愛することを教えてくれたミュージシャン、イヴァン・リンスに捧げられています。彼の音楽を聞いて涙が流れるほど、感動したことをいつも感謝しています。」(カルロス・アギーレ)

 アルゼンチンの現代の「クワイエット・ミュージック」の音楽家たちが注目されるきっかけを作ったマエストロ、カルロス・アギーレの新作は、NYで大活躍するイスラエル出身(テルアビブ生まれ)のギタリスト、ヨタム・シルバースタイン(2019年には来日公演)とのデュオ作品。NYで知り合った2人はお互いの音楽性に共鳴、ヨタムがスペイン語を勉強し、スペイン語でのコミュニケーション介して、本作を完成させたそう。お互いの代表曲の再演ではなく、全8曲をそれぞれ4曲ずつ書き下ろすという時間をかけた本格的な共作アルバムになっています。
 今回聴いてもらったのは、アルバムの最後を飾るカルロス・アギーレの書き下ろし曲。タイトルは「たくさんの感謝」という意味合いですが、上記のコメントにもあるように、イヴァン・リンスへのトリビュート曲です。

 つい先日、本国でのリリースレーベルであるSHAGRADA MERDAのYouTubeチャンネルで、本作に関する2人の曲解説がついた番組が放送されました。アギーレの要望で、今回は日本語字幕のついた番組になっています。あと2〜3日で、アーカイブが見られなくなるということなので、気になる人はぜひ、急いで観てください!



↓インパートメントより国内盤がリリースされています。

↓関連アーカイヴ


4曲目。Rita Payés & Elisabeth Roma「Nunca Vas A Comprender」

リタ・パイエス&エリザベス・ローマ「ヌンカ・ヴァス・ア・コンプレンデール」

 現在21才。スペインのカタルーニャ出身のトロンボーン奏者かつ歌手のリタ・パイエス(Rita Payés)。彼女が2019年にクラシック・ギター奏者である母親(エリザベス・ローマ|Elisabeth Roma)へのプレゼントの意味も込めて一緒にスタジオに入りデュオで録音したアルバム『Imagina』は、昨年から今年にかけて、日本でも音楽ファンに大切に聴か始めています。『Imagina』は、ボサノヴァなどのラテン音楽を中心としたカバー曲で構成されていましたが、来月発表予定のニューアルバムで彼女はオリジナル曲に挑戦しています。
 そのアルバムから先行して公開されたシングル曲が「Nunca Vas A Comprender(あなたは決して理解できない)」。リタ・パイエスが自作したボレロです。ユニットの編成は、母娘のデュオから、母娘を含む4人編成に拡大。アルバムのプロデュースは、ベネズエラ出身の音楽家のJuan Berbinが務めている。2021年は、リタ・パイエスが更に注目される年になるでしょう。

5曲目。Gal Costa & Jorge Drexler「Negro Amor」

ガル・コスタ&ホルヘ・ドレクスレル「ネグロ・アモール」
アルバム『Nenhuma Dor』収録

 ガル・コスタが、自身が1967年~81年に録音した10曲を、若い世代の男性シンガーと再解釈したアルバム『Nenhuma Dor』がリリースされました。中原仁さんのe-magazine LATINAの人気連載の今月のテーマにもなっています。解説を読みながら初出の録音と比較もできる記事になっています。↓

 今回聴いてもらった曲は、ボブ・ディランの「It's All Over Now, Baby Blue」のポルトガル語ヴァージョンで、共演相手は、ウルグアイ出身で現在はスペイン在住、スペイン語圏のスター級シンガーソングライターのホルヘ・ドレクスレル。2人の歌声の相性の良さが光ります。弦楽を含む重厚なアレンジにも、耳を奪われてしまいます。


 以上、編集部が今週聴いてほしい世界の新譜からの5曲でした。また聴いて下さい! ではでは!

(ラティーナ2021年2月)

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