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[2025.1]Best Albums 2024 ③

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第二弾です。
(カタカナ表記のものは国内盤として発売されています)


●宇戸裕紀

南信州の田舎で山を眺めながらスペイン語関連の仕事をしています。

ここ数年間寝ても覚めてもずっと聴いているのがアルゼンチン、コルドバ出身のZoe Gotusso①。ポップながらどこか影も感じさせるゾワゾワがたまらない。ラ・プラタのピアニスト Franco Dionigi が年の初めにボソッと送ってくれたアルバム②はメロディが慎ましく、彼らしいアルバムだった。④は米国にいてもウルグアイらしさ満開。アルゼンチンの国宝級フォルクローレピアニスト、イルダ・エレーラのピアノソロは余韻が素晴らしい。選んでみるとインストであっても詩心豊かな「うた」ものを聴くことが多かった気がする。

① Zoe Gotusso / Cursi

② Franco Dionigi / Ginkgo

③ Sílvia Pérez Cruz, Juan Falú / Lentamente

④ Gastón Reggio / Michigan

⑤ Rita Payes / De Camino al camino

⑥ Lucio Mantel / Los Ancestros

⑦ Santiago Arias / Orinorauta

⑧ Hilda Herrera / La Iluminada

⑨ Carlos Aguirre / Melodía que va

⑩ Carlos Moscardini El Juego


●岡本郁生

FMラジオで番組制作を手掛けるほかラテン音楽Webマガジン「eLPop」を主宰。鎌倉FM「世界はジャズを求めてる」(木:20~21時:4週目)に出演中。

コロナ禍を経て、ラテン音楽(特にサルサ)界においては、オルケスタを維持しながら新作を発表し続けることによって自分たちの音楽文化を継承するという、これまでのやり方が、変化を求められる状況になっているようだ。そんな中でも、40周年のデラルスが新作を出し、マーク・アンソニーが相変わらずの素晴らしい歌声を聞かせ、さらにシーラEが初のラテン・アルバムをリリースし…と、ベテラン勢から新たな可能性を模索する作品が出てきているのが注目だ。またその一方で、メイ・シモネスやクマイルス、ブンガ・トロピスなど、これまでは考えられないような発想でとんでもない音楽を作る若者たちがぞろぞろ出てくるのにはビックリさせられた。これからも楽しみです!

(順不同)
● Marc Anthony / MUEVENSE

● Shiela E. / Bailar

● CRAZY KEN BAND / 火星

● SEPTETO BUNGA TROPIS / Kisah Tropis

● Mei Semones / かぶとむし

● クマイルス(Les Khmers)/ Rom Rom Rom

● 吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ / Sustainable Banquet

● Orquesta Akokan / CARACOLES

● Zaccai Curtis / CUBOP LIVES!

● オルケスタ・デ・ラ・ルス / Más Caliente


●Shhhhh

DJ / 東京出身。野外リスニングイベント、"EACH STORY"のキュレーションも担当。

今年はとにかく豊作であり、次の10年のヒントがあった作品が多かったように思います。アンビエントのその先、というか。エクスペリメンタルもテクノもフォークもいい意味でアンビエントに括れる10作です。スピリチュアル・ジャズがアンビエント・ジャズにも吸収されて再定義されたのも今年だったかも。
逆に、“辺境” というキーワードは影を潜め、それは世界情勢ともシンクロしている気がします。その文脈を無理にでも追うなら、Ganavyaの登場は “ワールドミュージック” という意味も思い出させてくれました。今年以降は彼女のようなインド系がさらに注目されそうな予感がします。
地方で活動されているらしい、Yuka Akastu さんのシンプルなピアノを聴き、秩父の笹久保伸の活動のような、日本ローカルシーンの今後の可能性を想像しました。

1. Nala Sinephro / Endlessness

2. Ganavya / like the sky I've been too quiet

3. Shabaka / Perceive its Beauty, Acknowledge its Grace

4. Tristan Arp / A pool, a portal

5. LI YILEY / NONAGE

6. Rafael Toral / Spectral Evolution

7. KIM OKI / LOVE JAPAN EDITION

8. Yuka Akatsu / Botanic

9. Catbug / Musjemeesje

10. The San Lucas Band / La Voz de las Cumbres (Music of Guatemala)


●谷本雅世(PaPiTa MuSiCa共同代表)

現地目線の南米音楽紹介。南米音楽関連通訳と執筆、タンゴ&南米音楽ラジオ番組MC・選曲(タンゴ以外を担当)、マテ茶アドバイザー。

「ディスク作品をクレジット読みつつじっくり選びたい」という理想方針が崩れ、サブスクからも選出(②③④⑨⑩)せねば成り立たない時代へ。ただ聞くだけなら良いが、古いリイシューも新作も登録日で更新、データが曖昧になりクレジット未記載も多いサブスクには困惑しつつセレクト。①クラシック界からもリスペクト高いベテランギタリスト初来日記念盤、演奏はライヴが最高だったが、曲の良さも聞き込むたびに深まる。②ピアノエラで待望のソロ再来日したカルロス・アギーレが参加する新ユニット音源、文句なし最高。盤は今後発売予定とか。③コロンビアの男女デュオによるアルゼンチン・コンテンポラリー・フォルクローレの影響を強く感じるフレッシュな良作。④毎回優れたアルバムを発表するアルゼンチン第二都市コルドバ拠点の稀有な才能SSW最新作は実にシック。⑤高音質録音に定評あるレーベル MA Recordings の独自企画盤(CDとサブスク)はタンゴ。リディア・ボルダ、マルセロ・モギレフスキー、サンティアゴ・セグレト、マリアノ・カンテーロ他、出演者・レパートリーも通り一遍でない個性が際立つ。⑥~⑧は近年熱いカタルーニャからアルゼンチン音楽の圧倒的影響深い3作品。⑥中南米ゲストを迎え各人生のステージを描いた大作で、なかでも人生の師にアルゼンチンのリリアナ・エレーロを挙げ、彼女に捧げた曲は来日ライヴでも披露。⑦エレーロとのデュオ共演作群でも知られる現アルゼンチン・フォルクローレ最高峰ギタリスト、フアン・ファルーとのデュオ秀作。⑧ジャズ・コントラバス奏者の父オラシオ・フメーロからのアルゼンチン音楽と、その他ラ米音楽のフォルクローレを自身のカタルーニャ文化と絶妙に昇華させたオリジナリティあふれる作。⑨ウルグアイ・アフロ音楽のアイコン、ルベン・ラダがゲストと紡ぎあげた最高な最新作。⑩ラダの娘の枠を超えた実力派歌手に成長したフリエタ・ラダのインターナショナルなアレンジのその名もカンドンベ・アルバム!

(番号は順不同)
① Carlos Moscardini / El Juego

② Almalegría / Melodía que va

③ Con Alma Dueto / Fukai

④ Lucas Heredia / Un temblor

⑤ SERÁ UNA NOCHE / Otra Noche

⑥ Sílvia Pérez Cruz / Toda la vida, un día

⑦ Silvia Pérez Cruz & Juan Falú / Lentamente

⑧ Lucia Fumero / FOLKLORE I & II

⑨ Rubén Rada / Candombe con la ayudita

⑩ Julieta Rada / Candombe

(ラティーナ2025年1月)


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