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[2021.05]黒人の視線からの「ブラジルの歴史」も学べる音楽ドキュメンタリーの傑作『エミシーダ:アマレーロ - 過ぎゆく時の中で』を見る前に知っておきたいこと

エミシーダの変幻自在の芸術 ⎯ A arte transformadora de Emicida

文●ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz) 写真●ジェフィ・デルガード(Jef Delgado) 翻訳●花田勝暁

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 Netflix で配信されている Netflix 制作によるドキュメンタリー映画『エミシーダ:アマレーロ - 過ぎゆく時の中で』が、観る者に前進するエネルギーを分けてくれる素晴らしい音楽ドキュメンタリーだ。紹介する機会を逸していたが、今月のe-magazine LATINAはブラジル映画特集ということで、この機会に、ブラジル人ジャーナリストのヂエゴ・ムニスに紹介記事を依頼した。
 映画は、サンパウロの伝統ある市立劇場で、アルバム『AmarElo』をベースにしたコンサートの準備〜当日の内容を中心にストーリーが進んでいく。ブラジルの黒人がどれほど権利のために闘ってきたか、エミシーダがその道に続くために、今でもどんな思いで努力を続けているかが、非常によく分かる映画となっている。

 映画の原題は『AmarElo - É Tudo Pra Ontem』。『AmarElo』は、エミシーダの2019年のアルバムのタイトルでもあり、「amar é um elo | entre o azul e o amarelo(愛することは繋がること/青と黄色の間)」という詩人パウロ・レミンスキ(Paulo Leminski)の詩から引用している。同アルバムのタイトル曲「AmarElo」のリフレインで歌われるのは、「過去に苦しんでばかりはいられない/もう十分血を流したし涙も流した/去年は死んでいたけど/今年は生きている」というメッセージ。

 『É Tudo Pra Ontem(直訳:全ては昨日のために)』は、映画の公開に合わせ、12月10日にリリースされたニューシングルで、アルバムには収録されていない。ジルベルト・ジルが、参加し美しい詩と歌声を披露している。「(ないがしろにされた)過去のために、今、やるべきことをやること」というメッセージが込められている。

 『AmarElo』と『É Tudo Pra Ontem』に込められたメッセージからわかるように、邦題『エミシーダ:アマレーロ - 過ぎゆく時の中で』から受ける印象よりも、未来に向けられた映画である。(以上、編集部。以下、ヂエゴ・ムニス)

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 Netflix で公開されているドキュメンタリー『AmarElo - É Tudo Pra Ontem(エミシーダ:アマレーロ - 過ぎゆく時の中で)』で、サンパウロ出身のラッパー、エミシーダ(Emicida)が、ブラジルの過去100年間の文化と黒人運動の歴史を解放し、紹介しています。

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 ドキュメンタリー映画『エミシーダ:アマレーロ - 過ぎゆく時の中で』の最初のシーンは、この映画が、エミシーダのキャリアの紹介と、サンパウロ市立劇場で行われたショー「AmarElo」の記録に過ぎないという印象を与えるかもしれません。しかしながら、ラッパーであり活動家でもあるエミシーダが、世界で最も人気のある映像ストリーミングサービスであるNetflix上でやったことは、ブラジルの黒人文化の遺産を讃えることでした。

 2020年12月に公開されたこの作品は、「植える(Plantar)」「水をやる(Regar)」「収穫する(Colher)」という3つのパートに分かれており、ブラジルの黒人史における3つの重要な出来事にリンクしています。それは、1922年の近代芸術週間(Semana de Arte Moderna)、1978年の黒人の文化と権利の尊重を目的とする「黒人統一運動」(Movimento Negro Unificado|MNU)の設立、そして、黒人意識(Consciência Negra)月間です。「AmarElo」の公演は、2019年の黒人意識(Consciência Negra)月間(11月)に行われました。

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