[2021.05]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年5月|20位→1位まで【無料記事 聴きながら読めまっせ!】
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[2021.05]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年5月|20位→1位まで【無料記事 聴きながら読めまっせ!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。

  20位から1位まで一気に紹介します!

※レーベル名の後の()は、先月の順位です。

「Transglobal World Music Chart」は、世界各地のワールドミュージック専門家の投票で決まっているワールドミュージックのチャートです。主な拠点がヨーロッパなので、ヨーロッパに入り込んだワールドミュージックが上位にランクインする傾向があります。


20位 Esma Redžepova and Nune Brothers · My Last Song: A Tribute to Macedonia’s Gypsy Queen

レーベル:ARC Music (-)

 2016年に77歳で亡くなったマケドニア(正確にはブルガリア王国で生まれ、亡くなった時には北マケドニア共和国だった)のロマの女王、エスマ・レジェポヴァの最後の録音が収録されたアルバム。彼女が亡くなる直前にヌーン・ブラザーズと録音したもので、“女王”への愛がこもったトリビュート作品として発表された。
 ヌーン・ブラザーズは、北マケドニア共和国出身の兄弟ユニット。父親と祖父が地元の有名な音楽家だったという音楽一家に生まれ、2人とも首都スコピエの音楽アカデミーに通っていた。エスマは彼女のバンドのバンドリーダーから彼らを紹介され、2015年と2016年に行われたエスマの最後のコンサートに同行した。これにより、彼らはマケドニアの人々に注目されるようになり、それ以来、ヌーン・ブラザーズはマケドニアで大きな成功を収めている。
 このアルバムには、エスマによる歌だけではなく、ヌーン・ブラザーズの曲も収録されている。北マケドニア、ブルガリア、セルビア、ルーマニア、そしてヨーロッパ中のジプシーコミュニティのバルカンサウンドに深く根ざした、生き生きとしたバルカンポップ、そしてサルサ、スペインのジプシールンバ、レゲエ、スウィング、スカなど、現代的にミックスされている。エスマの力強い歌声が何よりも素晴らしく、またヌーン・ブラザーズのエスマへの愛と尊敬が込められたアルバムであることがよくわかる一枚だ。

19位 Luís Peixoto · Geodesia

レーベル:Groove Punch Studios (28)

 ポルトガルで最も優れた弦楽器(カヴァキーニョ、マンドリン)奏者の一人であるルイス・ペイショットの最新アルバム。ポルトガルのコインブラ出身の41歳の音楽家で、学生時代からイベリア半島のフォークや民族音楽のシーンで活躍し、様々なアーティストやユニットで演奏してきたが、ソロ作品としては2017年『Assimétrico』以来、二枚目の作品となる。
 ポルトガルをはじめとしたイベリア半島の伝統的な音楽を学んできたペイショットによるこのアルバムは、その伝統的な音楽をベースとしたオリジナル曲で構成され、彼のマンドリンを中心としたアコースティックなサウンドで、2人の友人(ギター&ヴァイオリン)とのトリオでの作品となっている。また、イベリア半島、カナリア諸島、カーボベルデ、フィンランドなど各地からのゲストミュージシャンも参加。ガイタ(ガリシア地方のバクパイプ)、バウロン(アイルランドのフレームドラム)、ティン・ホイッスル(アイルランド発祥の笛)、オクタビージャ(6本の複弦を持つギターのような形の弦楽器)など、ゲストの民族楽器による音色が伝統音楽の世界をさらに広めている。ポルトガルやスペインの各地方の伝統音楽から、ケルト音楽までを巡る旅、そして最後は自身の子供たちに捧げた曲が我々の心に寄り添うかのように締めくくられている。弦楽器の響きが何とも心地よい一枚。

18位 Kady Diarra · Burkina Hakili

レーベル:Lamastrock (-)

 西アフリカ、ブルキナファソ出身で、隣国コートジボワールのアビジャンでグリオの家族として育ったカディ・ディアラの三枚目のアルバム。現在はフランス南東部アルデシュ地方の小さな村で生活しており、このアルバムはパンデミックでロックダウン中に自宅の庭で録音された。娘のアセットゥ・コイタ(コーラス)をはじめ、ミュージシャンとしても活躍している甥のムサ・コイタ(ベース、コーラス)、サンバ・ディアラ(パーカッション、フルート、コーラス)、マブーロ・ディアラ(バラフォン、ンゴニ、パーカッション、コーラス)も参加している。
 このアルバムでは、彼女の家族はブルキナファソのブワバ族であるためブワバ語、母親がマリ出身であることからバンバラ語、ブルキナファソの首都で話されているモレ語、ブルキナファソ西部のボボ・ディウラッソで話されているディウラ語、そしてフランス語と、さまざまな言語で歌われており、アフリカにおける多様性を表現しているかのようだ。
 タイトルの『Burnika Hakili』とは「ブルキナの精神」という意味。前作のアルバムから10年以上経過しており、彼女の中であたためてきたものをその精神をもって作品に体現している。古くからアフリカの伝統に根ざした音楽に、西洋的で現代的な要素が加えられ、さらに彼女の声が見事に融合している。
 上記動画の「Mousso」は、純粋なバンバラの伝統に基づいたグルーヴでアフリカの女性を祝福するために作られた曲。女性たちの表情がとても素晴らしく、見ているこちらも幸せになる。多様性文化と共に生きてきた彼女ならではのアルバムだ。

17位 Tania Saleh · 10 A.D.

レーベル:Kirkelig Kulturverksted (21)

 レバノン出身のシンガーソングライター、タニア・サレの7枚目の最新作。彼女が離婚して10年を経過したことで、その思いを綴るべく制作した。タイトルの『10 A.D.』とは「離婚から10年後」とう意味。またアルバムジャケットも彼女自身が手がけ、ロウソク10本立てたケーキを前にした女性が描かれている。彼女自身を表現している。離婚の喜びを歌うのでもなく、失われた婚姻関係を嘆くのでもなく、離婚した女性としての10年間を言葉と音楽で振り返り、人生のさまざまな場面を歌っている。また、彼女の両親も彼女が6歳の時に離婚しており、約40年前に彼女の母親が直面した困難(現在よりも女性の地位がさらに低い状態)を乗り越え育ててくれたことに感謝し、母に捧げるメッセージも込められている。もちろん同じような経験をしている女性たちにも。そしてそんな社会への批判も込められている。
 アルバムは、ノルウェーの弦楽四重奏団、エジプトのミュージシャン達が参加し、ノルウェーとエジプトで録音。ノルウェーのレーベルからノルウェー外務省のサポート受けてリリースされた。アラブの音と西洋のポップス、クラッシックの音のバランスが美しい。彼女は自身の音楽を「インディー・アラブ」と呼んでいるが、まさにその通り!彼女の経験から滲み出る心情と音が綺麗に融合している、見事な仕上がりのアルバムだ。

16位 V.A. · Edo Funk Explosion Vol. 1

レーベル:Analog Africa (29)

  ナイジェリア南部中心に位置するエド州ベニン・シティで、1970年代後半に、エド族の王国〈ベニン王国〉の伝統音楽の要素をいろいろな形で融合させる実験を始めたことから生まれたのが「エド・ファンク」。ハイライフ(西アフリカの英語圏で広まったポピュラー音楽)やファンク、ディスコ、西アフリカのナイトクラブからもたらされた新しいサウンド・エフェクトと融合させた。この活動を牽引していたのが、ヴィクター・ウワイフォ卿。1978年に故郷のベニンシティに伝説的なスタジオ「Joromiスタジオ」を建設し、そこでサウンドを追求し続け、「エド・ファンク」のゴッドファーザーとしての地位を確立した。
 このアルバムには、そのムーブメントを支えたアーティスト、オサヨモア・ジョセフ、アカバ・マンとヴィクター・ウワイフォ卿の12曲が収録されている。彼らがファンクをその本質にまで分解し、「エド・ファンク」の中心へ、そして音の錬金術の極限へと、彼ら自身が旅した感覚を同時に味わえる。聞いているとクセになる。次のシリーズも大変期待できるアルバムだ。

↓国内盤あり〼。(詳細なブックレット付き!期待できます!)

15位 Atine · Persiennes d’Iran

レーベル:Accords Croisés (-)

 パリを拠点に活動するイラン出身5人組の女性アンサンブル、ATINE(アティネ)のデビューアルバム。アラブ音楽で伝統的に使われてきた楽器、タール(ネックが長いリュート属撥弦楽器)や、カーヌーン(台形型の箱に多数の弦を張り巡らせ琴のようにつま弾く撥弦楽器)、トンバクやダヤラなどのパーカッション、そしてヨーロッパの古典楽器ヴィオラ・ダ・ガンバと、古典的な歌唱による深みのあるヴォーカルの編成となっている。
 イランの著名な詩人であり学者のシェイク・バハイの詩や、13世紀のイランの詩人サアディーのガザル(抒情詩)を曲に乗せ、古典的なペルシャ音楽を忠実に演奏しつつも、現代的に再構築しており、彼女達独自の音楽となっている。
 ペルシャの古典楽器と、ヴィオラ・ダ・ガンバの音色が重なるのが何とも美しい。そこに、節回しが見事な古典的歌唱が加わり、精緻かつ神秘的な作品に仕上がっている。これがデビュー作というのだから、これからの活躍がとても期待されるユニットだ。

↓国内盤あり〼。(日本語解説付き)

14位 V.A. · Zanzibara 10: First Modern, Taarab Vibes from Mombasa & Tanga, 1970-1990

レーベル:Buda Musique (11)

 ザンジバル(現在のタンザニア連合共和国)で生まれ、東アフリカのスワヒリ文化圏一帯の大衆音楽であるターラブ。他のアフリカ音楽とはかなり異なるテイストを持ったこの音楽は、東アフリカ沿岸のスワヒリ文化に花開き、ペルシャやインドの諸言語、またポルトガル語など交易を行なっている国・地域の言語の語彙なども取り入れられて発展し、様々な文化が混じりあって生み出された混血音楽とされている。そんな多彩なサウンドを持つターラブの魅力を存分に感じさせてくれるBuda Musiqueレーベルの人気シリーズ “Zanzibara” の最新作。本作で10作目となる。
 ケニアのモンバサと、タンザニアのタンガにおいて1970年代初頭からの20年間に登場したポップなテイストを持つターラブを様々な角度から紹介した編集盤。タンガのシーンで活躍した女性歌手シャキーラをはじめ、モンバサのマタノ・ジューマやズフラ・スワーレーといった歌手らの70年代音源のほか、80年代にシーンを席巻した女性歌手マリカやンワナヘラまで、この地域でもっともポップ・ターラブが盛り上がりを見せた時代をダイジェストに紹介している。アフリカ〜アラブ〜インド洋のテイストが絶妙に入り混じった上に、欧米音楽からの影響が加味され独自の混血サウンドを作り出した時代の勢いが凝縮されており、まさにワールド・ミュージック・ファンの食指が動く内容である。これは見逃せない一枚だ!

↓国内盤あり〼。

13位 L’Alba · À Principiu

レーベル:Buda Musique (16)

 フランス領コルシカ島の男性6人組ユニット、L'Alba(ラルバ)の最新作。2005年にメジャーデビュー以来、5枚目のアルバムとなる。アルバムタイトル「À principiu」はコルシカ語で「初めに」を意味する。
 コルシカ島伝統の音楽を尊重しつつも、3部構成のポリフォニー・コーラスと、インドの楽器ハルモニウムや地中海地方の弦楽器サズを使うなどして、伝統を進化させるべく新たな音の融合に挑戦している。
 一見すると男臭いが、彼らの美しい歌声と多彩な楽器の音色が心に響く。
北アフリカから東地中海まで、伝統的なものから現代的なものまで、様々な時代や地域を訪れることができるような印象。ポジティブなエネルギーを持った芸術的な作品である。

12位 Witch Camp (Ghana) · I’ve Forgotten Who I Used to Be

レーベル:Six Degrees (-)

 Tinariwenの大ヒット作『Tassili』をプロデュースしたことが評価され、グラミー賞の「Best World Music Album」を受賞したプロデューサー、そして作家でもあるイアン・ブレナンと、彼の妻であるイタリア系ルワンダ人の映画監督、作家、写真家のマリレーナ・ウムホーザ・デッリが共同で制作。ガーナで悪名高い「ウィッチキャンプ」(魔女として告発された女性たちが安全とコミュニティを得るための居住地)で行われたフィールドレコーディングを集めたアルバム。
 現代においてもガーナでは「魔女」と呼ばれている人々がいる。村の未亡人(生前の夫が貴重な財産を持っていた)、精神的・肉体的な病気にかかっている女性など、今でもその伝統に縛られ、コミュニティから排除され、「ウィッチキャンプ」しか行き場がないとのこと。イアンとマレリーナはその事実を明らかにするために、実際に複数の「ウィッチキャンプ」に足を運んで彼女たちの歌を録音した。トウモロコシの皮、ティーポット、ブリキ缶、木の枝、政治集会で余った風船など、身の回りにあるものを楽器として使用し、地方の方言で歌われた。これら22曲の短い作品は、民俗学的な伝統を記録したものというよりは、感情的な記録であるといえる。
 歌っている内容は理解できないのだが、彼女たちの苦悩や混乱、心からの叫びが胸に突き刺さる。このようなことがまだこの現代に存在していることを我々は知っておかなければならない。

11位 Katerina Papadopoulou & Anastatica · Anástasis

レーベル:Saphrane (17)

 ギリシャでは数少ない、伝統的な歌の巨匠たちの芸術を今も受け継いでいる歌手の一人であるカテリーナ・パパドプールの新作。アルバムタイトルの「Anástasis」はギリシャ語で「復活」を意味する。
 彼女は、様々なボーカルスタイルを自在に操り、独自のボーカルと音楽表現でそれらを融合させていることで評価されている。また、ギリシャの伝統音楽分野の著名な巨匠や、国際的に活躍している音楽家たち、スペインのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者/指揮者のジョルディ・サヴァールや、ヨーロッパのバロックグループ「L' Arpeggiata」ともコラボレーションしている。また歌うだけでなく、ヨーロッパでギリシャ語の歌唱セミナーを開催したり、ギリシャアテネ国立カポディストリア大学の大学院で、ギリシャの伝統的な歌とレパートリーを教えてもいる。才媛!
 このアルバムは、2020年3月にアテネ(ギリシャ)のバウムシュトラーセ劇場で行われたライブ録音である。ギリシャの音楽がどのように旅し、変化し、そして生き続けるかを表現している。彼女の歌声を引き立たせるのは一流音楽家によるアンサンブル。エーゲ海のリラ、クレタ島のリラ、カーヌーン、ウードなどの伝統楽器を使っている。エーゲ海、トラキア(バルカン半島南東部)、マケドニア、ポントス(黒海南岸)、南イタリアなどの歌や曲が収録されており、かつてギリシャ人が定住していた地域や時代に我々を連れていってくれるアルバムだ。

10位 Hossein Alizadeh & Rembrandt Frerichs Trio · Same Self, Same Silence 

レーベル:Just Listen (6)

 イランのペルシャ音楽巨匠ホセイン・アリザデと、オランダのピアニスト、レンブラント・フレリヒスのトリオとのコラボレーション作品。
 録音は古代の教会の中で行われ、ペルシャの旋律と東洋の音階がジャズの響きと混ざり合い、歴史や地理を超えた世界観を表現している。
 アリザデはペルシャのリュートの第一人者であり、この作品で弾いている聴けるシュランギス(shourangiz)は、タールとシタールを参考に彼が独自に開発した楽器である。レンブラントはアンティークのハルモニウムを、コントラバス奏者のトニー・オーバーウォーターは古典楽器のヴィオローネを演奏するなど、ペルシャ音楽の音色とリズムとバロック時代の楽器の融合を見事に作り上げている。
 曲は彼らオリジナルのもので、アリザデがイランの隅々まで旅をして、伝統的な民謡のメロディーを見つけては楽譜を書いていたものがベースとなっている。これらのメロディーと即興を組み合わせて4人で作成していった。「私たちが演奏を始めるとき、私たちは彫刻家になってステージ上で形を作り、少しずつ彫刻を彫っていくのです」とアリザデは言う。通訳がいないと言葉でのコミュニケーションは難しかったそうだが、まさに音楽が共通言語になっていると言えよう。
 アルバムタイトルは、イランの有名な詩から引用されているとのこと。それは音楽がもたらす共通の理解、文化、時代、言語の間の溝を埋め、人々を調和の中で一緒にすることを語っているように思える。

9位 Samba Touré · Binga

レーベル:Glitterbeat (-)

 ソンガイ・ブルースのスタイルを今に受け継ぐ正統な伝承者でマリ人ギタリスト、サンバ・トゥーレの最新作。2018年リリースの『ワンデ〜愛する人よ』以来3年ぶりとなる。コロナ禍の2020年夏にマリの首都バマコで録音され、ソンガイの伝統に根ざしたサウンドとなっている。
 タイトルの『ビンガ』とは、マリのサハラ砂漠の下に広がる広大な地域のこと。彼が育った場所であり、今でも彼の心の拠り所となっている場所で、彼のルーツとも言える。そのルーツを前面に押し出し、シンプルな編成で純粋なソンガイ・ブルースを表現している。また、故郷マリの現実、クーデター、反乱、民族間の虐殺が繰り返され近年は悪化していること、医療や学校のシステムはただでさえ非常に遅れているのに、コロナのせいで更に状況は悪化し、子供たちが教育を受けられていないことをこのアルバムで訴えている。シンプルなサウンドがよりその深刻さが伝わってくる。ソンガイ・ブルースの伝統曲とオリジナル曲で、今彼が世界に伝えたかったことをしかと受け取めたい。説得力のある傑作だ!

↓国内盤あり〼。

8位 Femi Kuti & Made Kuti · Legacy +

レーベル:Partisan (9)

 アフロビートを生み出した伝説のミュージシャン、フェラ・クティの息子であるフェミ・クティと、フェミの息子(フェラ・クティの孫)メイド・クティのアルバム・プロジェクト。フェミのアルバム『Stop The Hate』とメイドのデビューアルバム『For(e)ward』の2枚組とし『LEGACY +』としてリリース。
 フェラ・クティは自らの音楽で、故郷のナイジェリアの社会的不正や政治的腐敗を憂いてきた。ナイジェリア国内はもとより全世界にも影響を与えたが、息子のフェミとその息子のメイドにも受け継がれている。
 それはフェミの長年のキャリアを通して、さらに独自のものに変化しており、疾走感あるビートと社会的メッセージ性が込められた音楽は今回のアルバムでも存分に表現されている。
 そして今回がデビュー作品となるメイドのアルバムが、これまた良い!ヴォーカル、リズム・セクション、サックスなどほぼすべてのパートを彼自身で演奏しているそう(すごい才能!)。グルーヴ感は現代的だが、ベースには受け継がれてきたサウンドが感じられる。まさに三代にわたって繋いできた「レガシー」をさらにその先に繋いでいくアルバムとなっている。

7位 San Salvador · La Grande Folie

レーベル:La Grande Folie / Pagans / MDC (5)

 南フランスの小さな村サン・サルヴァドール出身である男女6人編成ユニットのデビュー作。彼らは、兄弟、友人同士で、子供の頃から一緒に歌っていたそう。だからこそのチームワークというか、阿吽の呼吸みたいなものが作品から感じられる。
 彼らが住む地方の民族音楽を、6人の声、2つのドラム、1つのタンバリン、そして力強い手拍子により、彼ら独自の音楽として生み出している。シンプルで、美しく、繊細、パワフルでもあり、そしてシャーマニックでもある。何しろ圧倒的なエネルギーを感じる。
 歌っている言葉は、フランス南部で使われているオック語(他にもイタリア・ピエモンテ州の一部やスペインのカタルーニャ州の一部でも話されている)。中世の頃から使われている言語なのだが、地方言語が弾圧され現在窮地に立たされており、若い世代にどうやって継承するかが問題となっている。その言語をあえて使うということが、エネルギーとして歌に表現されている気がする。6人によるポリフォニーが素晴らしい、エネルギッシュな作品だ。

6位 Omar Sosa · An East African Journey

レーベル:Otá (2)

 ジャズとアフロ・キューバンを軸に、アフリカ音楽やヒップホップを取り入れ活躍しているピアノ奏者/作曲家、オマール・ソーサの最新作。
 2008年の傑作『アフリーカノス』の発表後、2009年に東アフリカ7カ国でのツアーを行なった。同時に、各地で伝統音楽のミュージシャン達と出会い、録音(フィールドレコーディング)も行なっていた。今回のアルバムは、その録音にアコースティックピアノ、パーカッション、キーボードベース、ハープを微妙に追加し、編曲してできた作品。2010年のドキュメンタリー映画「Souvenirs d'Afrique」の中で、オマールは実際にこのプロジェクトを完成させるには10年かかるかもしれないと予測していたが、2016年から本格的に取り組みようやく出来上がった作品だ。
 オマールがツアーで訪れた多くの国の伝統的な音と、ジャズや西洋のクラシック音楽の微妙なタッチを絶妙に組み合わせた、「これぞワールドミュージック!」というべき作品が生まれた。

5位 Christine Salem · Mersi

レーベル:Blue Fanal (3)

 インド洋上、マダガスカル島東方にある、フランス海外県のレユニオン出身で、島の伝統音楽「マロヤ」を歌う代表的な存在であるクリスティーヌ・サレムの新作。6年ぶり7枚目のアルバムとなる。
 「マロヤ」は「セガ」と共にレユニオンの伝統音楽で、伝統的な打楽器と弓による伴奏、レユニオン・クレオール語で歌われる。1980年頃まで禁止されていたが、それを復活させた歌手でもあるのがクリスティーヌだ。
 アフロヘアに青い口紅と、とってもインパクトのあるジャケット(でも好き!)で、前方を見据えている瞳の強さにとても惹かれる。その強さが作品に表れているとも言えるだろう。シブい低音ボイスで、マロヤ、ブルースやロックなど多彩なサウンドとなっている。
 上記動画の「Tyinbo」は、DVの被害者である女性を支援するメッセージが込められており、彼女が幼少期に住んでいた街、サン=ドニで撮影されたもの。登場する女性たちの眼差し、馬に跨ったクリスティーヌを先頭に行進する姿はとても美しく、かつ強さを感じる。
 アルバム最後の曲でタイトル名にもなっている「Mersi」は、アカペラでマロヤの祈りを唱えており、彼女の重低音ボイスが、島の人々の鼓動や優しさを伝えているかのよう。しなやかな強さとマロヤに対する愛が込められた名盤だ。

4位 Antonis Antoniou · Kkismettin

レーベル:Ajabu! (8)

 キプロスの人気バンド、Monsieur DoumaniとTrio Tekkeのメンバーであるアントニス・アントニウの初めてのソロアルバム。
 アルバムタイトル「Kkismettin」は運命や宿命という意味である。紛争で分断されたキプロス島の二つのコミュニティに対し、この苦しい状況を島の運命として受け入れることはできないという政治的なメッセージを込めて作られた。またこのアルバムは、コロナでロックダウン中に制作され、分断されたこの国では、移動の自由やその他の基本的な自由が制限されていることを思い知らされたという。
 アントニウは、母国語であるギリシャ・キプロス語で、クラシック音楽からジャズ、ロック、伝統音楽、実験音楽、サウンドアートまで、サウンドスケープとテクスチャーを融合させている。キプロスの主要な伝統楽器のひとつであるリュートの中近東風のメロディーが、アナログシンセサイザーのグライドやエッジの効いたギターリフと共鳴し、境界線を押し広げ、独特の現代音楽のモザイクを形成している。分断された都市ニコシアの検問所の樽が、文字通り楽器となり、リズムの基盤となり、錆びたような陰鬱な雰囲気を醸し出している。
 今後、この分断の象徴とも言える樽が、解体される“運命”になることを願いたい。

3位  Jupiter & Okwess · Na Kozonga

レーベル:Zamora Label (7)

2017年リリースのアルバム『KIN SONIC』が大好評だった、コンゴのバンド、ジュピター&オクウェスの最新作。
 これまでのバンドの旅の成果とも言える作品で、世界で出会ったアーティストたちとのコラボレーションが収められている。ニューオリンズのプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド(Preservation Hall Jazz Band)、アメリカのシンガー、マイヤ・サイクス、ラティーナとしては、ブラジル人アーティスト、ホジェー(Rogê)、Marcelo D2、チリのヒップホップ・アーティスト、アナ・ティジュ(Ana Tijoux)が気になるところ。(4/24にMarcelo D2との動画が公開!カッコいい!)それぞれのアーティストのカラーになりつつも、彼らのバンドのサウンドは根底にあるのがすごい。
 アルバム名にもなっている「Na Kozonga」とは、コンゴの言語であるリンガラ語で「帰還」という意味で、同タイトルの曲は、先日亡くなったバンドリーダーのジュピター・ボコンジの父親に捧げられたものである。ミュージックビデオ(上記動画二つ目)が面白い!

2位  Kapela ze Wsi Warszawa / Warsaw Village Band · Uwodzenie / Waterduction

レーベル:Karrot Kommando (1)

 2018年に日本でもリリースしたアルバム『Mazovian Roots』が大好評で注目を集めたポーランドの若手ミクスチャー・バンド、ワルシャワ・ヴィレッジ・バンドの最新作。先月は2位でしたが、今月は堂々1位に!
 首都ワルシャワにて1997年に結成された彼らはポーランドを中心とした中欧の伝統音楽を、若い感性で現代化させた。ポーランドに生まれた古い弦楽器スカやポリフォニックなヴォーカル・スタイルなどを駆使し、伝統と現代の融合を図るミステリアスなサウンドを展開している。
 最新作のキーワードは「川」と「水」。アルバムジャケットも川を思わせるデザインとなっている。故郷ポーランドのヴィスワ川、その両岸に広がるワルシャワ近くの民族的に微小地域のウルゼッツェからも作品のインスピレーションを得ている。バンドのヴァイオリニスト兼歌手であるシルヴィアは「支流のある川は血流の一部であり、現代都市の憩いの場でもある。音楽でそれを捉えたかった」と語っている。筏によってマゾヴィア(ポーランド北東北部の歴史的な地域)にポーランドや世界との接触の機会を与えた。それは自由、近代性、独立性の息吹をもたらし、活気に満ちた文化的モザイクを作り出した。その様子がこのアルバムでは見事に表現されている。
 タイトル曲「Waterduction」では、ポーランド南部の都市クラクフ出身の詩人であり音楽家でもあるMarcin Świetlickiとのコラボレーションが実現した。彼は実際にヴィスワ川を筏で下り、魅力的なスポークン・ワードと詩でバンドをサポートしている。

1位  Ballaké Sissoko · Djourou

レーベル:Nø Førmat! (4)

 マリの作曲家/コラ奏者であり名手である、バラケ・シソコのニューアルバム。今回はソロ作品だが、何人かのアーティストをゲストに迎えコラボレーションしている。ゲストは、デュオアルバムもリリースしている盟友のヴァンサン・セガールを筆頭に、マリの巨匠サリフ・ケイタ、フランス人歌手のカミーユ、アフリカ系イギリス人でコラ奏者のソナ・ジョバルテ、フランス人MCのオキシモ・プッチーノなど。コラの音色とゲストによる音(声だったり楽器だったり)の融合が素晴らしく、心に沁み渡る優しい作品。もちろん、ソロでの曲も素晴らしいことは言うまでもない。
 アルバム名の「Djourou」は、マリで話されている言語であるバンバラ語で「糸」という意味。バラケ自身とゲストや、リスナーたちと音楽の糸で繋がっているということを表している。まさに、このアルバムに織り込まれている糸を、聴くことによって感じられる名盤である。

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(ラティーナ2021年5月)


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