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[2021.07]連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い③】「おいしい水」が生まれたところ(私の見た荒野の仮の大統領官邸)

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

お知らせ●中村安志氏の執筆による好評連載「シコ・ブアルキの作品と出会い」についても、今後素晴らしい記事が続きますが、今は一旦、この新連載の方を掲載しています。今後は、何回かずつ交互に掲載して行きます。両連載とも、まだまだ凄い話が続きます。乞うご期待!!!(編集部)
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 南緯15度、乾燥した標高1000mの高地に、作物も育ちにくい赤土の荒野が広がるブラジル中央高原。1956年にそこで設計・着工され、60年に完成したブラジルの新首都ブラジリア。完成までの間、壮大な遷都計画の主ジュセリーノ・クビチェッキ大統領や側近らが、現地で工事を指揮する際の仮住まい(仮の官邸)として宿泊した木造の宿が、今もきれいに保存されています。現在のブラジリア中心部から、30km余り郊外。遷都前の首都であったリオの大統領官邸「カテッチ」(Catete)のジュニア版といった意味を込めた、「カテチーニョ」(Catetinho)と呼ばれる建物です。

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 ボサノヴァ初期の名曲「おいしい水」(Água de beber)が、優雅なリオの海岸でもアパートでもなく、海岸から1200km近くも内陸に入ったこの荒野の地で生まれたことは、意外と知られていません。(なお、この曲は「おいしい水」という日本語タイトルで広まりましたが、原題のポルトガル語において味などは一切表現されておらず、正確には「飲める水」という程度の意味になります。)

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