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WEB版創刊! 2020年11月

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#映画

[2020.11]【特集 私の好きなアジア映画】圷 滋夫 旅をするように映画を楽しむ〜独特な文化や芸術が描かれた5本の作品〜

選・文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  映画の楽しみは人それぞれで多くの理由があると思うが、そのうちの一つが行ったこともない国や地域の、見たことも聞いたこともない文化や風習への扉を開いてくれる、ということだろう。秀れた映画はごく限られた場所で行われる固有の文化や風習をモチーフに、そこから世界に向けて広がる、普遍的で力強い物語を紡ぎ出している。ここではそんな独特な文化や芸術が描かれた作品を、アジア諸国の中から過去作を含め何本か紹介しよう。 ◆ 『アイヌモシ

[2020.11]圷 滋夫【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  “アジア映画”と一言で括っても、それぞれの国の映画には独自の歴史や特徴があるので、それをひとまとめで語るのは難しい。それでも一つ確実に言えるのは、どの国にも新たな才能が現れては過去の作品群と接続し、その国の映画のイメージや特徴を少しずつ深め、広め、そして更新してゆくということだろう。そんな今この瞬間にも生まれているであろう新たな才能の中から、ここでは3つの国の新作を紹介しよう。

[2020.11]大石 始【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●大石 始  90年代の僕はエドワード・ヤンや侯孝賢を通じて台湾のことを知り、ウォン・カーウァイの作品で香港のことを知った。インターネットの広大な世界が広がる前、映画は音楽と同じように世界を知るツールのひとつでもあり、アジアに対する僕のイメージの大部分は(少なくとも2000年代初頭までは)映画を通じて育まれたものだった。インターネットであらゆる情報にアクセスできるようになった今もなお、その網の隙間からたくさんの歴史や物語がこぼれ落ちている。ここに挙げたのは、インターネ

[2020.11]石郷岡 学【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●石郷岡 学  あまりに瑞々しい「冬冬の夏休み」(ホウ・シャオシェン監督:台湾)や、鮮烈な「紅いコーリャン」(チャン・イーモウ監督:中国)、スタイリッシュな「欲望の翼「(ウォン・カーウァイ監督:香港)、これらを体験して以来、私は彼らの作品にすっかり魅了され、常に東アジアの映画を追い続けている。同じ東アジア人であるが故に、これらの映画に託されたテーマは、日本人の情感にも親和性が高く、説明が多くなくとも共感し得るものが多い。上記以外にも代表的な監督をざっと挙げれば、台湾の

[2020.11]宮沢和史【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●宮沢和史  ウェブ版として生まれ変わった”e-magazine LATINA”では、音楽だけではなく世界の映画についても語り合える場を作っていきたいと思っています。第一回目の今回は様々なフィールドで活躍されている方々から”アジア映画”をご紹介していただきます。アジア映画といっても必ずしも「製作がアジア圏内の国」でなくてはいけない。ということではなくて、アジアをテーマ・舞台にした作品も含めての紙面映画祭と考えています。今後は同様な括り方でユーラシア、ヨーロッパ、中南米

[2020.11]中江裕司 【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●中江裕司 アジアの逆襲 映画は、フランスで生まれハリウッドで育った。思春期の頃はイタリアのネオリアリズモやフランスのヌーヴェルヴァーグで多感な時期を経て、やはり王道はハリウッドであった。アジアといえば、映画においては辺境でしかない。韓国映画「パラサイト」がアカデミー賞を受賞し、大ヒットしたのはハリウッドの力が弱まっている象徴だろう。「パラサイト」がハリウッド的なのに対して、同じポン・ジュノ監督の「母なる証明」や「殺人の追憶」は、もう二度と撮ることができない気配が漂う

[2020.11]野田隆司【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●野田隆司  いわゆるアジア映画を見るようになったのは1980年代後半あたり。ワールドミュージックのブームと同じ頃のこと。沖縄からたまに上京する機会があると、”ぴあ“でスケジュールをチェックして、ミニシアターやライブハウス、CDショップを訪ね歩いた。  「紅いコーリャン」(チャン・イーモウ / 中国)や「友だちのうちはどこ?」(アッバス・キアロスタミ / イラン)は、ユーロスペースで見た記憶がある。アジア映画を見るという意識はあまりなく、なんとなく都会で評判の映画を見

[2020.11]手塚るみ子【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●手塚るみ子 アジア映画に対して思うところ アメリカやヨーロッパには描けない、アジア独自の文化や風俗、宗教観や美徳から生まれる作品がある。残酷さを表す所作ひとつとっても違うだろう。ものの哀れが描ける。そして妖精ではなく妖怪を導き出せる空想力が独特のリアルとファンタジーのマッシュアップを創るのではないかと思う。 是枝監督の『万引き家族』がカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、ポンジュノ監督の『パラサイト~半地下の家族』がアカデミー賞はじめ各国の映画祭で数々受賞する昨

[2020.11]辺土名直子【特集 私の好きなアジア映画】

選・文●辺土名直子 沖縄映画への誘い 幼い頃は、大人たちがご近所で集まることも多く、ブルーシートを敷いて、オードブルに持ち寄りの三合瓶に一升瓶、唄三線が夜更けまでお構いなしに鳴り響いていた。大学進学を機に大阪へ10年、沖縄へ帰ってきた時にはそんな光景は薄れつつあった。  私は1976年生まれの44歳だ。沖縄口(ウチナーグチ)も話すことは出来ないし、「御願(ウガン)」(先祖崇拝や自然崇拝からの祈りの行事)
だって身についていない。でも、それらを直接学ぶことが出来るぎりぎりの世

[2020.11]映画評|『燃ゆる女の肖像』|18世紀を生きた女性が現代へ伝えるメッセージと深い愛、 そしてめくるめく映画的興奮に満ちた傑作!

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  本作はある絵画についての物語だ。そしてその一枚の絵「燃ゆる女の肖像」に込められた、不思議な逸話と秘めた想いが少しずつ明らかにされる。  18世紀のフランス。ブルターニュ地方の孤島にやって来た画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、伯爵夫人の娘エロイーズ(アデル・エネル)の肖像画を依頼されていた。まだカメラが発明される前で、婚約者に渡す見合い写真の代わりになる絵だ。しかし以前エロイーズが結婚を拒んで画家に顔を見せなかったた