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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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2020年6月の記事一覧

[2020.04]映画レビュー:人生で最も“厄介な関係”にハマる。

この春観るべき“親と子の関係”を描いた3本の傑作映画。 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』『コロンバス』『在りし日の歌』 文●圷 滋夫 text by SHIGEO AKUTSU  全ての人間には必ず親が存在し、その関係は友人や恋人、夫婦とは違い、血縁という逃れられない繋がりによって死ぬまで付きまとう。たとえ断絶をして物理的に遠ざかったとしても、心の鎖を断ち切る事は難しい。親子関係が良好な人には、〝厄介な関係〟と言われても何の事か分からないだろうが、世間には様々な出来事

[2020.04]主宰・大柴 拓の鬼才ぶり、マルチぶりの宝箱 大柴が素晴らしいメンバーたちと 緻密に作り上げた一大音楽劇「ゆめくい」

 「ゆめくい」と言われて、すぐに人の悪夢を食べると言われている伝説の生きもの「獏」と連想する人はどのくらいいるのだろうか? 大柴より小学校1回分ほど年上の筆者は、年上の姉さんが当時のメジャー・シーンを駆け抜けたアイドル的ロック・バンド、BAKU(谷口宗一、車谷浩二、加藤英幸)のファンで、「獏は悪夢を食べる生きものなんだよ」と繰り返し聞いていたので、すぐに結びついた。「ゆめくい」=「獏」のことね、と。こんなところで、姉さんとの30年くらい前のやりとりを思い出すとは思わなかったよ

[2020.04]キューバの第一線で活躍するユーコ・フォン

〜それぞれ感じてください。タイコの音が気持ちいいとかなんでもOK!〜 文●山本幸洋 text by TAKAHIRO YAMAMOTO  超一流ミュージシャンと製作したコンテンポラリー・キューバン『ハバナ、夢の恋人』を1月にリリースしたユーコ・フォン。2000年からキューバで暮らし、プロの舞踊家、歌手として活動している日本人だ。彼女の名前が最初に知られるようになったのは13年リリースのCD『オカン・ヨルバ』、キューバの民族宗教音楽サンテリアというディープなものだった。

[2020.04]《100チェロ》を成功させたイタリア人チェリスト ジョヴァンニ・ソッリマ

文と写真●松山晋也 text and photo by SHINYA MATSUYAMA  熟練のプロから8才の初心者まで、公募で集められた百人以上のチェロ奏者が一堂に会して演奏する壮大なプロジェクト《100チェロ》のコンサートを昨年東京で大成功させたイタリア人チェロ奏者/作曲家ジョヴァンニ・ソッリマ。その鬼才が来る5月に再来日し、各地でコンサートをおこなう。前後して最新アルバム『ナチュラル・ソングブック』も日本リリースされるので、ソッリマに対する関心はますます高まるはずだ

[2020.04]沖縄の四季を詩情豊かに伝える 交響組曲「沖縄交響歳時記」 琉球交響楽団を指揮した大友直人に聞く

文●北中正和 text by MASAKAZU KITANAKA   琉球交響楽団が、沖縄の人気曲を集めた『琉球交響楽団』以来15年ぶりに、新作『沖縄交響歳時記』を発表した。「かぎやで風」「谷茶前」「てぃんさぐぬ花」「唐船どーい」「久高」など、沖縄民謡や古典曲を素材にした清冽なオーケストラ組曲だ。作曲者は『題名のない音楽会』『SONGS』などで知られる萩森英明。その指揮・音楽監督をつとめる大友直人に話を聞いた。 ▼ ── 琉球交響楽団との関わりから教えていただけますか。

[2020.04]レオナルド・ブラーボ 近藤久美子 『Tango』

文●徳永伸一郎 text by SHIN-ICHIRO TOKUNAGA  アルゼンチン・ロサリオ出身のギタリスト、レオナルド・ブラーボの演奏を最初に聴いたのは、クラシックギター専門誌を発行する現代ギター社が主催するコンサートだった。プログラムはすべてクラシック。見事なテクニックを備えた一流のクラシックギタリストとして知ったのだ。その後、タンゴ・シーンでも大活躍であることは、本誌読者もよく御存知だろう。作編曲家としても活動しており、自作品の他、編曲者としてタンゴ名曲集、キケ

[2020.04]ブラジルポピュラー音楽にヴァイオリンの居場所を開拓した 踊るヴァイオリニスト、ヒカルド・ヘルツ

文●宮ヶ迫ナンシー理沙 text by NANCI LISSA MIYAGASAKO  マルチ・プレイヤーでソングライティングでも注目されるアントニオ・ロウレイロや超絶技巧ギタリストのヤマンドゥ・コスタ、ブラジルインスト音楽界の最重要グループの一つであるパウ・ブラジルでの活動で知られるピアノのマエストロ、ネルソン・アイレスなど目を引くデュオ作品の数々をリリースし、ブラジルポピュラー音楽におけるヴァイオリンの存在を新たに確立したと言われる奏者、ヒカルド・ヘルツ。サンパウロのノ

[2020.04]発見された スピネッタ晩年のスタジオ録音 『YA NO MIRES ATRÁS』

文●フアンホ・カルモナ text by Juanjo Carmona 1月23日、アルゼンチンの音楽家の70歳の誕生日に7曲を込めたこのアルバムがリリースされた。  アーティストの没後に発表されるアルバムは疑問符を投げかけられがちである。こういった音楽業界の商業的な慣習にはサプライズは少ないが、このアルバムに関しては商業性というものを超越し、個人のUSBドライブに残されたトラックが発見されたという以上の意味を持っている。『パラ・ロス・アルボレス(2003年)』、『パン(2

[2020.04]音楽の未来 世界は音楽でできている Vol.5 多国籍音楽

月刊ラティーナの休刊前最終号の1つ前の号にあたる本号では、改めて、世界の音楽の現在を知り、音楽の未来について考えられたらと思い、様々な国や地域の音楽について、執筆いただきました。こんな時だから、音楽の魅力を再確認したい。 副題「世界は音楽でできている」は、2007年に刊行された「世界は音楽でできている」(CDジャーナル刊、北中正和監修)からお借りしています。取り上げる地域の区分けをする際にも、同書を参考にさせていただきました。しかしながら、こちらの準備不足ゆえ、今回取り上げ

[2020.04]ジャルダンの片隅で〜五十路エイリアン在仏記〜 第7回 「NY出発!…の前に譜面と格闘の巻」

文●中島ノブユキ(音楽家) text by NOBUYUKI NAKAJIMA  今世界はパンデミック前夜。日本から伝わってくるコンサートの開催断念のアナウンス。友人知人ミュージシャンやコンサート企画に携わる方々の苦渋の決断。そしてフランスでも少しずつ感じる公演キャンセルの嵐の予兆。こんな状況の中、果たして何を書けば良いのだろうか? 色々頭に渦巻く中、原稿に向かうにあたり前号に予告したとおり、ニューヨークでの出来事をノンシャランに書くこととした。 コンサート会場「ビーコン

[2020.04]ブラジルフィールドワーク #23 サンバの力

文・写真●下郷さとみ text & photos by SATOMI SHIMOGO カーニヴァルはバカ騒ぎ?  ブラジルがカーニヴァルに沸いていた2月の終わり。日本のSNS上で一時、ある批判が巻き起こったのに驚いた。サンパウロのカーニヴァルで優勝したエスコーラ(カーニヴァルチーム)「アギア・ジ・オウロ」のパレードの中で広島に投下された原爆がモチーフとして使われたことへの批判だった。

[2020.04]タンゴのうた 詩から見るタンゴの世界 連載第27回 バンドネオンと私(ミ・バンドネオン・イ・ジョ)

1964年に歌手フリオ・ソーサが不慮の自動車事故によって人気絶頂で世を去った時、タンゴ界は若い世代をひきつけるリ-ダー的存在を失ってしまった。しかしその5年後、タンゴの新世代を代表できる「時代の声」が登場した。これはそのルベン・フアレスの1969年のヒット曲である。

[2020.04]島々百景 #49 台北

文と写真:宮沢和史 台北  初めてリオデジャネイロに渡ってから25年……。もはや、はっきり数えられないが、その間に30回近くは南米を旅しているはずだ。首の椎間板に問題が生じ何年間かのブランクはあったが、このところ年一回のペースで訪れている。当たり前の話だが、ブランクの間にすっかり変化したなと感じた部分もあれば、相変わらずだなぁ、と妙に安心する部分もある。南米の旅だけで単純に30周近く地球を回っていると考えると感慨深いものがあるが、南米と一言で言い切るのもどうかと思う。何

[2020.04]【連載 TÚ SOLO TÚ 239】 快進撃止まらない バッド・バニー 〜社会問題にも向き合う若きアーティスト〜

文●岡本郁生  殺されたのはアレクサで、〝スカートをはいた男〟なんかじゃない(MATARON a ALEXA, No a Un Hombre Con Falda)  去る2月28日、ジミー・ファロンが司会をつとめる人気番組「ザ・トゥナイト・ショウ」に登場したバッド・バニーは、ニュー・アルバム『YHLQMDLG』を翌日にリリースすることを電撃発表したあと、パナマのレゲトン歌手セチを迎えて新譜からの「イグノランテス」を生演奏で披露した。4人のバンドでの人力レゲトン演奏をバック