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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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2020年10月の記事一覧

[2020.10]【谺する土地、響きあう聲 ⑵】ルイーズ・グリュックへの手紙

文●今福龍太 今福龍太 :文化人類学者・批評家。1980年代初頭からラテンアメリカ各地でフィールドワークに従事。クレオール文化研究の第一人者。奄美・沖縄・台湾の群島を結ぶ遊動型の野外学舎〈奄美自由大学〉を2002年から主宰。著書に『ミニマ・グラシア』『ジェロニモたちの方舟』『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』『ハーフ・ブリード』ほか多数。主著『クレオール主義』『群島-世界論』を含む新旧著作のコレクション《パルティータ》全5巻(水声社)が2018年に完結。  10月28日  

[2020.10]坂本美雨|アイスランド、「自分だけの聖域」としての音楽を求めて【特集 都市物語】

取材・文●安東嵩史 坂本美雨●プロフィール 5月1日生まれ。 音楽に囲まれNYで育つ。 1997年「Ryuichi Sakamoto featuring Sister M」名義でデビュー。以降、本名で活動を開始。 音楽活動に加え、執筆活動、ナレーション、演劇など表現の幅を広げ、ラジオではTOKYO FMを始め全国ネットの「ディアフレンズ」のパーソナリティを2011年より担当。村上春樹さんのラジオ番組「村上RADIO」でもDJを務める。 おおはた雄一さんとのユニット「おお雨(

[2020.10]【「ラ米乱反射」電子版 第3回】ボリビアで先住民中心政権が復活 チリでは民主憲法制定が決まる

文●伊高浩昭(ジャーナリスト)  2020年10月、同年のラ米で最も重要な2つの政治的出来事が成就した。ボリビア大統領選挙と、来年21年の新憲法制定を決めたチリ国民投票である。 ▼ボリビア大統領選挙 ボリビア大統領選挙は10月18日実施され、出馬した5人のうち最有力候補ルイス・アルセ元経済相(57)が得票率55・1%(338万票)で圧勝した。アルセは11月8日就任するが、それにより19年11月のクーデターでエボ・モラレス大統領(61)が追放されてから途絶えていた先住民主体

[2020.10]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ③】甘い誘惑、苦い過去 ―北マリアナ諸島のサトウキビ・プランテーションの盛衰と音楽―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  トマト、ジャガイモ、トウガラシなど、私たちの生活にもなじみ深い農産物の多くが意外にも南米原産で、大航海時代以降世界中に広まったことが知られていますよね。サトウキビの世界生産量トップは、ブラジル。だからそれも南米原産だと思いきや、およそ8,000年前サッカラン・オフィシナルム Saccharum officinarumという栽培品種が生まれたのは、太平洋諸島・パプアニューギニア。そこからインド東部、中東、地中海、ヨーロッパ、中国へと広

[2020.10]タンゴの父 ビジョルドに捧げる新作 Sciammarella Tango 『A Villoldo』(無料記事)

文●宇戸裕紀 Text by Hironori Uto  タンゴ界では異質な存在かもしれない。メンバーの国籍は5つ。日本からはピアノの大長志野を始め、バンドネオンのハネル・イェオン(韓国)、バイオリンのマリアナ・アタマス(ウクライナ)、バンドネオン&指揮シンディ・アルチャ(チリ)、歌手デニス・シアマレーラ、バイオリンのセシリア・フロレンシア・ガルシア、ベースのジェラルデーナ・カルニシーナ(アルゼンチン)。しかもメンバー全員が女性。  ファーストアルバム『シアマレーラ・タ

[2020.10]映画評|『おもかげ』『82年生まれ、キム・ジヨン』『ウルフウォーカー』|女性の秘めた想いに寄り添いエールを贈る、 3つの国の3つのストーリーと、その社会的な視点。

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  スペイン映画『おもかげ』は、まず冒頭で描かれる1シーン1カットの約15分に圧倒され、いきなり半ば強引に物語の中へと引きずり込まれてしまう。  主人公エレナに電話が掛かる。離婚した元夫ラモンと旅行中の6歳の息子イバンからだ。最初はなごやかに話しているが、すぐにイバンを置いてその場を離れたラモンが戻らず、一人浜辺に取り残されていることを知る。エレナは場所も状況も分からないイバンをなだめながら問いかけ、ラモンの友人や警察に連絡

[2020.10]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史②】沖縄移民の始まり

文●月野楓子  連載の初回を書いてから今回までの間に住む場所が変わった。たまたまのタイミングではあるが、沖縄に居を移した。  少しずつ、「引っ越しました」の報告メールを送る中、アルゼンチンからいただいた返信に「金武(きん)町を訪れるように」とあった。金武町は、「沖縄移民の父」と言われる當山久三の出身地である。  今回は、沖縄移民の始まりについて、書いてみたい。 ハワイへ 當山久三は沖縄の自由民権運動を担った人物としても知られるが、かねてより海外移民事業への関心を有してい

[2020.10]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り③】 沖縄のエイサー −若者の躍動するパフォーマンス−

文:久万田晋(くまだ・すすむ 沖縄県立芸術大学・教授)  沖縄の夏といえば、地域の若者達が大太鼓や締太鼓を叩きつつ、華麗なヘーシ(囃子詞)を交えて勇壮に踊るエイサーをまっさきにイメージする人は多いだろう。しかし今年は、沖縄各地でエイサーの太鼓の音が全く聞こえないという異常な夏を迎えた。  エイサーは、沖縄本島およびその周辺離島において、旧暦七月の盆の時期に先祖供養を目的として地域の若者達によって踊られる芸能である。一言で言うと沖縄の盆踊りである。 読谷村高志保青年会のエ

[2020.10]Yae|On The Border〜境界線の上で〜【特集 都市物語】

Yae●プロフィール 東京生まれ。故藤本敏夫・歌手加藤登紀子の次女。 2001年ポニーキャニオンからアルバムCD『new Aeon』でデビュー。 存在感あふれる「声」で各地にファンの和を広げ、NHKみんなのうたや人気ゲームソフト、ウォルトディズニー生誕110周年記念作品ディズニー映画「くまのプーさん」の主題歌を歌唱。 2020年10月7日に20周年記念アルバム「On The Border」をソニー・ミュージックダイレクトよりリリース 。同年11月10日には、東京渋谷伝承ホール

[2020.10]NORA|¡¡Salsa es mi energia!!【特集:都市物語】

文●NORA(オルケスタ・デ・ラ・ルス) NORA●プロフィール 世界的な人気を誇るサルサバンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」のメインヴォーカル&作詞作曲家。 1984年、オルケスタ・デ・ラ・ルス結成。1987年、単身デラルスのデモテープを持ってNew Yorkに乗り込み、ライブツアーの約束を取りつけ、1989年に自費によるNew Yorkツアーを決行。このツアーで大ブレイクし、1990年BMGビクターより「DE LA LUZ」で国内、海外デビュー。このアルバムが全米ラテンチ

[2020.10]ラティーナ流 おいしいワールド・レシピ③ ポンディケージョ~Pão de Queijo~

文と写真●飯田リオ 材料:(12個分)

[2020.10]6年ぶりに帰還、日本で再始動するフルート奏者、城戸夕果インタビュー

文●中原  仁  89年、小野リサのバンドにフルート奏者として参加し、自身もブラジル音楽に目覚めた城戸夕果。90年代前半から中盤は毎年、リオに長期間、滞在し、『XUXU』(93年)、『RIO SMIILES』(94年)『ARACUÃ』(96年)などのアルバムを現地録音。ジョイス・モレーノ、ジョニー・アルフ、フィロー・マシャードらとレコーディングやライヴで共演した。 ▲ジョイスさんのご自宅で ▼ブラジリアに来演したEduardo NevesとRogério Caetano

[2015.08]救いようのない人生に捧げる親密な歌 ─YOSHIRO広石、近作を語る─

文●石橋 純  スペイン語で説得力のある歌を聴かせる日本人は誰かと訊かれたら、私はまずYOSHIRO 広石の名を挙げる。  1965年ベネズエラ・デビューを皮切りに、ラテンアメリカ各国を股にかけての10年以上のツアー活動はもはや伝説の域にある。世界に向けて市場を拡大していた1960年代ラテン・ショービジネスの息吹が鮮烈に伝わってくる抱腹絶倒の自伝は、かつて本誌の前身『中南米音楽』に連載され、いまはYOSHIRO 広石の公式ウェブサイトでその一部を読むことができる。 ベネ

[2016.12]【YOSHIRO広石 LATIN CONCERT 2016】 LATINとJAZZとBRASILIANのカクテルで 自由と多様性を

文と写真●石橋 純 texto y fotos por JUN ISHIBASHI  YOSHIRO広石の歌手生活60周年記念ライヴに招かれた。50周年コンサートのあたりから、聴くたびごとに彼の歌から余分な力が抜けてきていることに感銘をうける。60年の節目もまた、自然体に磨きがかかっていた。その見事さは、武道の達人のような域にあるように思えた。音に身を任せ、詞と心の赴くままに歌うという佇まいだ。  10年前、50周年ライヴのとある曲中のセリフで、虚空を見つめたYOSHIR