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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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2022年5月の記事一覧

[2022.5]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ㉒】 サモアで香水?! ―聴覚と嗅覚―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授) 「♪君のドルチェ&ガッバーナのその香水」というセンテンスが繰り返される、瑛人さんの「香水」。2019年SNSで広まり、数々の音楽チャートで1位を獲得、2020年12月31日の『NHK紅白歌合戦』に瑛人さんが初出場したのは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。口語調で日常をうたった歌詞のなかで、繰り返される「ドルチェ&ガッバーナ」というブランド名の固い響きがインパクト大ですよね。 『世界の香水ガイド』によると、ドルチェ&ガッバーナ(

[2022.5] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉓】ドラマ放映に間に合わなかった歌詞 - 《Anos dourados》

文と訳詞 : 中村 安志 texto por Yasushi Nakamura  ブラジル最大手テレビ局のグローボ(TV Globo)は、ブラジル全国のお茶の間に向けた数々のテレビドラマを生み出していることでも知られます。日本でもどこかで用いられた「テレビ小説」のような意味の「Tele-novela(テレ・ノヴェーラ)」という名称で広く知られ、高い人気を誇り、同じ言語圏のポルトガルにも輸出されてもいます。  この連載の20回目でご紹介したガブリエラのように、ジョビンが

[2022.5]【著者 & 編集者インタビュー】 宮沢和史『沖縄のことを聞かせてください』

インタビュー・文:中原 仁   宮沢和史が沖縄を訪れ、太平洋戦争を体験した人から聞いた話に衝撃を受けたことをきっかけに「島唄」を作詞作曲、THE BOOMで発表したのが1992年。空前の大ヒットとなり、国内外で数多くカヴァーされ、今も愛されて続けている。  以来、30年。奇しくも沖縄の日本復帰50周年にあたる2022年。宮沢和史が自身の文章と、沖縄に生きる10人の人々との対談・鼎談を通じて沖縄と向かい合った書籍『沖縄のことを聞かせてください』(双葉社)が刊行された。全て書き

[2022.5]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉕】カーニヴァルでの苦々しい再会 — 《Quem te viu, quem te vê》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ブラジルにおいて、カーニヴァルは、多くの市民の節目となる年中行事。日本の夏祭りの夜の幻想が、それまでの暮らしの回想や、その先の夢をもたらすことがあるように、ブラジルの人々にとって、日々暮らすコミュニティでの生活や人間関係の変化、夢に描いていることが更に膨らんだり消えてしまったり。お祭りとは、そんな様々なことが起きる、非日常のひとときなのかもしれません。 ↑この曲の最初の録音

[2022.5]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年5月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Oumou Sangaré · Timbuktuレーベル:World Circuit / BMG [-] 19位 The Good Ones · Rwanda… You See Ghosts, I

[2022.5]ラティーナ流 おいしいワールド・レシピ⑰ ペルーと沖縄の融合〜豆腐ちゃんペルー!〜

文と写真●アルベルト城間(ディアマンテス)  久しぶりのレシピ記事です。すっかり不定期連載となってしまいまして、申し訳ありません!  今月は、ディアマンテスのアルベルト城間さんのレシピ「豆腐ちゃんペルー」をご紹介します。アルベルトさんならではの、ペルーと沖縄が見事に融合したレシピです!(編集部) ◆  ペルーで有名な料理の一つである、ロモ・サルタード(Lomo Saltado:牛肉と野菜の炒め物)のうちなーバージョンです!作り方はとっても簡単!

[2022.5]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り22】 歌の変遷 古謡から節歌、新民謡へ−《安里屋ユンタ》を例に− 

文:久万田晋(沖縄県立芸術大学・教授)  沖縄の歌として全国的にもっともよく知られているのは《安里屋ユンタ》であろう。しかしこれは昔から地域で伝えられてきた民謡ではなく、沖縄県南端の八重山諸島に伝わる古謡を元に昭和初期に創作された新民謡なのである。「新民謡」とは、大正期から昭和初期に創作された民謡調の歌謡のことで、当時勃興し始めた流行歌の一大潮流ともなった。新民謡《安里屋ユンタ》は古謡《安里屋ユンタ》をもとに昭和9 (1934)年に創作され、日本コロムビアからレコードが発売

[2022.5]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑩】戦後の移民社会と救済活動②

文●月野楓子  のんびりペースの連載も10回目。始まった時は「内地」(沖縄から日本本土・他の都道府県をあらわす場合によく使われる)にいて、そのあと沖縄に引っ越し、気がつけばそれなりに時間が経っている。この期間に変わらなかったことといえば、コロナの話題が途切れなかったことだ。  こんな状況ゆえに気付いたこともなかったわけではないけれど、行きたい場所に行けないという事態は想像以上のダメージをもたらし、思考や判断もなんだかおかしくなっていた気がする。移動が制限され、もちろんラテ

[2022.5] 【島々百景 第71回】 加計呂麻島(鹿児島県) 

文と写真●宮沢和史  自分の旅は基本的に音楽を絡めたものであることがほとんどである。シンガーソングライターという職業に携わっているわけだから、旅=音楽の旅 になるのは当然のことだが、振り返ってみると海外への旅もほとんどがコンサートやイベントへの出演やプロモーション、もしくは、レコーディングが目的の渡航だった。そうでなかったとしても、曲作りのための取材だったり、実際に作曲するための旅がほとんどだった。国内外問わず、他人よりも多くの旅をしているはずであるが、バカンスであるとか、

[2022.5]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉒】初のヒット曲に冠された妻の名前 ⎯ 《Tereza na praia》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução : Yasushi Nakamura  まだプロ活動を開始していなかった1947年当時、音楽を習っていた恩師から与えられた課題の一環として、20歳のジョビンが作曲した「Imagina」が、彼のほぼ最初の作品ではないかというお話を、この連載の18回目で申し上げました。今回は、その後音楽家としてのキャリアを徐々に築いていった過程で作られ、ジョビン初のヒットと位置付けられてもよい、「Tereza na praia(浜辺のテレ

[2022.5] 『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』 ⎯ サリンジャーに導かれて開く、新たな人生の1ページ。

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』 サリンジャーに導かれて開く、 新たな人生の1ページ。 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  20世紀のアメリカ文学を代表する作品の一つ「ライ麦畑でつかまえて」の作者J・D・サリンジャーは、“気難しい世捨て人”としても知られている。1951年に出版された「ライ麦畑」の成功後には、静かな生活を求めてライフラインもないような場所で暮らし、1965年の「ハプワース16,1924年」発表後に引退してからは、何十年も人前に現れなかったという。もし

[2022.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ㉒」】 Verônica Ferriani 『Diário de Viagem Cantado』

文:中原 仁  2013年に初来日公演を行なった、サンパウロ州内陸出身のヴェロニカ・フェヒアーニ(1978年生まれ)。2003年、作曲家/ギタリスト、シコ・サライーヴァとの共演でプロ活動を開始した。サンバの名曲も歌い、ダニ・グルジェルを中心とするノヴォス・コンポジトーリスの一員としても活動。2009年、ビヂのプロデュースでデビュー・アルバム『Verônica Ferriani』を発表。シコ・サライーヴァとの双頭でシコ作品集のアルバム『Sobre Palavras』も発表した

[2022.5]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉔】女性を力強く代弁した歌 — 《Sob medida》

文と訳詞●中村 安志 texto & tradução por Yasushi Nakamura  70年代、各国社会において女性が不利な立場に置かれることが多かった中、ブラジルでは男性のシコが女性に成り代わり、一人称で歌う形式の歌をいくつも創作してきたこと。この連載の初期において、そうした例をいくつかご紹介しました。  今回は、女性が遠慮がちに語るかもしれないと想定される場面で、自身の存在や気持ちを、男勝りな勢いで主張してみせた歌、「Sob medida」をお送りしま