世界の音楽情報誌「ラティーナ」

[2020.12]映画評|『ニューヨーク 親切なロシア料理店』 『この世界に残されて』|家…

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  いつの時代でも、映画には家族が描かれる。そこには深い愛と強い絆、そして穏やかな安らぎがあり、これまで多くの観客の胸を熱く揺さぶってきた。しかしいつからか家族の在り方は多様化し、その関係性も変化してきた。今や綺麗事だけでは語れない…

[2020.11]映画評|『燃ゆる女の肖像』|18世紀を生きた女性が現代へ伝えるメッセージ…

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  本作はある絵画についての物語だ。そしてその一枚の絵「燃ゆる女の肖像」に込められた、不思議な逸話と秘めた想いが少しずつ明らかにされる。  18世紀のフランス。ブルターニュ地方の孤島にやって来た画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、…

[2020.10]映画評|『おもかげ』『82年生まれ、キム・ジヨン』『ウルフウォーカー』|…

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  スペイン映画『おもかげ』は、まず冒頭で描かれる1シーン1カットの約15分に圧倒され、いきなり半ば強引に物語の中へと引きずり込まれてしまう。  主人公エレナに電話が掛かる。離婚した元夫ラモンと旅行中の6歳の息子イバンからだ。最初はな…

[2020.09]映画『mid90s ミッドナインティーズ』『行き止まりの世界に生まれて』|この…

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  今、スケートボードで繋がる少年たちを描いた、まるで二卵性双生児のような2本の青春映画が公開されている。  1本は『mid90s ミッドナインティーズ』。いつもスケートボードを抱えてタムロしている悪ガキグループの仲間に入った13歳の少年ステ…

[2020.08]映画『ぶあいそうな手紙』|滋味深く奥ゆかしい人生の締めくくりを輝かせる …

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  冒頭、幼馴染と思われる二人の男の会話が聞こえてくる。やがて映し出されるその姿はぼんやり見えるだけで、手前にアップで映る老人の無表情な横顔にピントが合っている。まるで大胆な浮世絵のような構図だ。老人は一方の男から「パパ」と話しかけ…

[2020.05]ポスト・コロナの日を待ちわびて|当たり前のように音楽や映画や舞台に接す…

文●圷 滋夫  text by SHIGEO AKUTSU  コロナ禍により社会全体が全く先の見通せない状況の中、殆どの新作は公開予定が変更になる可能性があるが、ここでは3月末〜6月に公開予定で延期になった作品も含め、いつもより多く紹介しよう。3ヶ月分の中から厳選した作品なので、いずれも観応え充分の傑…

[2018.02]2本のドキュメンタリー映画『苦い銭』『サファリ』から読み解く、 決して交…

文●圷 滋夫 text by SHIGEO AKUTSU 苦い銭  近々公開されるドキュメンタリー映画『苦い銭』と『サファリ』は全く真逆の世界を描きながら、鑑賞後には頭の中でディストピア感がモヤモヤと渦巻いて何とも言えない苦い思いが残るという点で表裏一体の作品だ。またその映画的手法にも共通するものがあ…

[2020.04]映画レビュー:人生で最も“厄介な関係”にハマる。

この春観るべき“親と子の関係”を描いた3本の傑作映画。 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』『コロンバス』『在りし日の歌』 文●圷 滋夫 text by SHIGEO AKUTSU  全ての人間には必ず親が存在し、その関係は友人や恋人、夫婦とは違い、血縁という逃れられない繋がりによって死ぬまで付きまとう。…

[2020.03]『娘は戦場で生まれた』『プリズン・サークル』 『ビッグ・リトル・ファーム…

文●圷 滋夫 text by SHIGEO AKUTSU  〝アラブの春〟の翌11年にシリアでも始まった民主化運動は、やがて軍事的な対立、そして内戦へと移行し、第二次大戦以降で最悪の人道危機と言われながら、今も全く先が見えない状況だ。『娘は戦場で生まれた』はそんなシリア内戦を背景に、第二の都市アレッポで…

[2020.02]9人の翻訳家 囚われたベストセラー

文●圷 滋夫 text by SHIGEO AKUTSU  世界的な大ベストセラーが約束された人気ミステリー小説のシリーズ完結編『デダリュス』。物語はこの新刊本の世界同時発売に向け、他の言語へ翻訳するために集められた9人の翻訳者を描写する場面から始まる。彼らは依頼者の出版社社長アングストロームによって…