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#映画評
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[2025.2]【映画評】激動の1960~1970年代を走り抜けた男たち - 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』『ヒプノシス レコードジャケットの美学』『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』
激動の1960~1970年代を走り抜けた男たち 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 『ヒプノシスレコードジャケットの美学』 『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) フォーク・リヴァイヴァルが全盛期を迎えた1960年代は、後半になるとロックが台頭し、ロックは70年代を通じて音楽的な広がりだけでなく、様々な角度からあらゆる実験が試みられる。今月はそんな激動の時代を、音楽と関わりながら走り抜けた男たちが主人公の、3本
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[2024.10]【映画評】『ECMレコード サウンズ&サイレンス』〜創立55周年を迎えた名門レーベルの “静寂の次に美しい音楽” が生まれる瞬間
創立55周年を迎えた名門レーベルの “静寂の次に美しい音楽” が生まれる瞬間 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) シンプルなインテリアの美しい白い部屋で、一人椅子に座り、物憂げに俯く精悍な顔つきの男。マンフレート・アイヒャー、1943年生まれのドイツ人、1969年に創立され今年55周年を迎えるECMレコードの主宰者だ。ECMは音楽的にはジャズを中心としながら現代音楽や民族音楽を取り込んだものが多く、それらの要素のバランスはミュージシャン次第で、結果的に各々独自の多様なサ
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[2024.10]【映画評】『シビル・ウォー アメリカ最後の日』〜現実と地続きの“もしもの世界”で描かれる 一生モノのトラウマ級の恐怖を体感する
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 現実と地続きの“もしもの世界”で描かれる 一生モノのトラウマ級の恐怖を体感する 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) 本作の監督/脚本家アレックス・ガーランド(1970年ロンドン生まれ)は26歳の時に「ザ・ビーチ」(レオナルド・ディカプリオ主演で03年に映画化)で小説家デビューし、後に脚本家、さらに監督としてのキャリアを始め、『28日後…』(02 脚本)、『わたしを離さないで』(10 脚本)、『エクス・マキナ』(15 監督/脚本)など
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[2024.8] 【映画評】酷暑の夏に観る長尺の傑作2本〜『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』
酷暑の夏に観る長尺の傑作2本 『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) インド映画が長いのは、自宅にまだ冷房が完備されていない庶民が、暑さをしのいで涼むのを目的の一つとして映画館を訪れるからで、短いと早く外に出なければならないのでクレームが入る。と、真偽の程が分からない話を聞いたことがあるが、日本でもこれだけ暑い日が続くと、こんな話ももっともらしいと信じたくなってしまう。さて相変わらず猛暑が続
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[2024.6] 【映画評】アウシュビッツが照射する現代の非情 『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』
アウシュビッツが照射する現代の非情 『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と 『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) 現在公開中の『関心領域』は、昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリ、今年のアカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞している。そしてアウシュビッツを描いた作品として、これまでにない画期的な表現によって映画史にその名を残す傑作になったと言えるだろう。 カメラは強制収容所内で行われていた行為を一
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[2024.1] 【映画評】まったく真逆の表現で心を揺さぶるヨーロッパから届いた2本の冒険物語 『哀れなるものたち』『ゴースト・トロピック』
まったく真逆の表現で心を揺さぶる ヨーロッパから届いた2本の冒険物語 『哀れなるものたち』『ゴースト・トロピック』 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター) もうすぐ公開される、ヨーロッパから届いた2本の映画を紹介しよう。1本はギリシャ、もう1本はベルギーの監督による作品で、いずれも女性が主人公の冒険物語だ。 『哀れなるものたち』(23)は、『籠の中の乙女』(09)がカンヌ国際映画祭ある視点賞を受賞して以来、発表する作品すべてが主要な国際映画祭のメイン部門でノミネート/受