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Web版 2022年3月

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2022年3月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9…
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#ラティーナ

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで③】 Asas ⎯ 失意の果ての空へ ⎯

▼ Asas ⎯ 失意の果ての空へ ⎯ 文●松田美緒  私は大都会にはことごとく向かない人間らしい。特にデビュー当時、いろいろな問題を抱えながら東京で暮らした後、心を病んで、諦めて一度京都に帰ることにした。心の中は人間不信やら自己不信やらに陥っていて、心配した家族がブラジルに送り出してくれた。  当時ブラジルに行けば水を得た魚のように野生が蘇っていたのが、なかなか心の雲は晴れず、バイーアの内陸シャパーダ・ヂアマンチーナに行って、ひたすら大自然を歩くことにした。ガイド付

[2022.3] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑲】 これはショパンのプレリュード? - 《Insensatez》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ボサノヴァの人気レパートリー「Insensatez」(愚かなこと。1961年作)は、元恋人らしき相手が去ったことを悲しみながら、「僕の繊細な心を傷つけた君は、なんて愚かなのだ」と独白する内容で歌われる名曲。どこか寂しげなトーンと、ゆったりと流れるシンプルなメロディーが心を打つのでしょうか。ブラジル内外の多数のアーティストに、演奏されています。    ⬆名手ジョアン・ジルベル

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで②】 『Pitanga!』 ⎯ 赤い実に魅せられて東西奔走⎯

▼ Pitanga! ⎯ 赤い実に魅せられて東西奔走 ⎯ 文●松田美緒  私の目標だったアンゴラの歌手ヴァルデマール・バストスのアルバムに『Pitanga Madura』というのがあって、彼に「ピタンガって何?」と聞いたら、「とっても美味しい果実なんだ、アンゴラで学校の帰り道によく食べた故郷の味だよ」と答えた。それからブラジルで1作目を作った後、レシフェのカルナヴァルに行った時だったか、ピタンガの木と初めて出会い、その果実を食べた。甘酸っぱくてなんとも言えない甘みと、ヴ

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで①】 『Atlântica』 ⎯ 大西洋は深かった ⎯

▼ 【松田美緒の航海誌 ⎯ 1枚のアルバムができるまで①】 『Atlântica』 ⎯ 大西洋は深かった ⎯ 文●松田美緒  2004年夜な夜なファドを歌い歩いたリスボンの留学が終わる頃、7月にブラジルのミナスジェライス州の冬の音楽祭出演の仕事と、8月にはカーボヴェルデのホテルに歌いに行く仕事をもらった。  ブラジルはポルトガル語圏の国々のミュージシャンが一堂に会するイベントで、カーボヴェルデ、サントメのミュージシャンと赤土の大地300キロを旅した。リオ発着だったため

[2022.3]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉑】 女性のために歌ったが、批判を受け、歌わないことを宣言した作品 – 《Com açúcar, com afeto》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  今年1月の終わり頃、リオから意外なニュースが飛び込んできました。軍政や大規模開発などを通じ、厳しいことの多かった60年代以降のブラジルにおいて、弱い立場にあった女性の身になって歌う歌を長年送り出しヒットさせてきたシコ・ブアルキが、その部類の名作とされるはずの曲の1つについて、フェミニスト運動家たちの批判も踏まえ、「この歌は、自分のレパートリー(作品目録)から除外し、今後は歌い

[2022.3]早川 純 インタビュー|新作ソロバンドネオン・アルバム『Bandoneon errante / さすらいのバンドネオン』

インタビューと文:花田勝暁  気鋭のバンドネオン奏者、早川純が2018年のソロバンドネオン・アルバム『Caja Magica(カハ・マヒカ)』以来、4年ぶりとなる2ndソロバンドネオン・アルバム『Bandoneon errante / さすらいのバンドネオン』をリリースする。ライフワークとして毎年実施しているソロツアーを通してたどり着いたソロ・アルバム第二弾。  「前作以上にじっくりと時間を掛けてアルバムを制作した」と早川が言う本作は、ライブ感を重視した前作とは趣を変え、緻

[2022.3] 【島々百景 第69回】 瀬底島(沖縄県)

文と写真●宮沢和史  ロシアとウクライナとの戦争と言っているが、これは戦争ではなく侵略だ。名前を口に出すのもいやだが、ロシアのリーダーは自国をピアーズ・ブロスナンの頃のロシアに、いや、ロジャー・ムーアやショーン・コネリーの時代へとたった数日で逆行させてしまった。巨大な商業的システムの上で流通する音楽以外にも世界には豊かで素晴らしい音楽がたくさん存在するということを知っているラティーナの読者のみなさんにとって、そして、ラティーナに関わってきた関係者一同にとって、この不条理な侵

[2022.3]~滞空時間4thアルバム『Majo』によせて【前編】~インドネシア修行から辿る川村亘平斎の世界

インタビューと文:岡部徳枝 写真:小暮哲也、川村亘平斎、岡部徳枝  影絵師、音楽家の川村亘平斎がリーダーを務めるユニット、滞空時間。「架空の島の民謡」をコンセプトに、ガムランやスティールパンなどの音色を織り交ぜながら、あべこべの即興言葉で歌ったり、くすっと笑えるサルやカエルのキャラクターで影絵を演じたり。ファンタジーの物語から飛び出してきたような摩訶不思議感がありながら、どこかで現実の世界とコミットする軸を失わない、その現実と非現実の「間」を漂うパフォーマンスは、川村亘平斎

[2022.3]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年3月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

 e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Dobranotch · Zay Freylekh!レーベル:CPL-Music [-] 19位 Justin Adams & Mauro Durante · Still Movingレーベル:

[2022.3] 【インタビュー】 新しい日常生活を “味わう” なかで生まれた、コーコーヤ9年ぶりの新作 『TASTE』

 コーコーヤ(ko-ko-ya)が日本を代表するインストユニットであることは、もはや異論はないだろう。2008年に1stアルバム『antique』をリリースして以来、彼らの音楽はさまざまなテレビ番組のBGMとして頻繁に使われたり、街中のお店の空間などをお洒落に彩ってきた。  そんな彼らは2013年の3rdアルバム『travelogue』リリース後、しばらくの間メンバーそれぞれのソロ活動などに打ち込んできたが、コロナ禍のなかで再び互いの曲を持ち寄り集い、2022年3月に実に9年

[2022.2] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑱】おそらく初作と言われる初期の作品 - 《Imagina》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ジョビン・ファンの間でよく知られる後年のアルバムで、彼の還暦を記念し、未発表の録音などを盛り込んだ『Tom inédito(未出のトン)』という2枚組アルバム(1987年)。これに収められている1曲ですが、曲の制作はかなり初期、おそらくこれが最初の作品ではないかとも目されている作品があります。「Imagina(想像してごらん)」という歌です。  作曲された当初は、「感傷的ワ

[2022.3]【中原仁の「勝手にライナーノーツ⑳」】 Bala Desejo 『 SIM SIM SIM』

 20代の若者たちが、トロピカリアと70年代MPBのDNAを2020年代にアップデート! そうぶちあげよう。気合を入れて書いたので長編になります。  ハイスクール時代からの友人である、現在25歳前後の男女4人が結成したバンド、バラ・デゼージョ(Bala Desejo)。リオのインディー・ポップ第3世代のオールスター・グループが、ファースト・アルバム『SIM SIM SIM』の<Lado A>(A面)を2022年1月に、<Lado B>(B面)を2月にリリースした。  バラ

[2022.3] 【ロング・インタビュー】 ピアノトリオによるコンテンポラリー・ジャズの傑作『Jogo』を発表したフアン・フェルミン・フェラリスに訊く

インタビュー・文●宮本剛志  Text by Takeshi MIYAMOTO  カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)やアカ・セカ・トリオ(Aca Seca Trío)以降、アルゼンチンのフォルクローレでは最良のグループの1つが、フアン・フェルミン・フェラリス(Juan Fermín Ferraris)がヴォーカル、ピアノとして率いるクリバス(Cribas)だ。クリバスは2014年にデビュー作を発表して以降、コンスタントにリリースを続け着実にファンを増やし、2

[2022.3] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑳】多様性溢れる国でのアイデンティティと、マエストロ・ジョビンへの敬意 - 《Para todos》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  日本の面積の22倍半という、広大な国土を擁するブラジル。カリブ海側、赤道をまたぐアマゾンの熱帯から、冬に雪も舞う南部まで、地域ごとの自然、文化、社会などが非常に多様であることは、大きな特徴です。  シコ・ブアルキは、リオデジャネイロという街で暮らしながら、この旧都市に各地から渡ってきた人々と共生する中で、歌を創作しています。実家のお手伝いさんはリオグランデドノルテという北部