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[2014.5] 新世代ミナス音楽 ⎯ 21世紀のクルビ・ダ・エスキーナ、その現代性と肥沃さを聴く|Nova Geração Mineira, Contemporaneidade e Erudição

[月刊ラティーナ2014年5月号掲載記事]

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 1960年代末のミルトン・ナシメントを中心とするクルビ・ダ・エスキーナ(Clube da Esquina)・ムーブメントがロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタなどミナス派の巨頭を輩出したように、2000年代初頭には自分たちのミナスの音楽シーンをスタートしようとする若い音楽家が集まり「ヘシクロ・ジェラル(Reciclo Geral)」という第一新世代が生まれた。このヘシクロ・ジェラルとはマケリー・カ(Makely Ka)、クリストフ・シルヴァ(Kristoff Silva)、パブロ・カストロ(Pabro Castro)、レオポルヂーナ(Leopoldina)、セルジオ・ペレレ(Sérgio Pererê)など現在、中心的に活躍する人々を指す。さらに、2000年代後半になるとミナスジェライス連邦大学の音楽部(UDMF)の出身者を中心とする新しい世代が生まれ、従来と異質な作品を生み出した。これを第二新世代と呼べば、アレシャンドリ・アンドレス(Alexandre Andrés)、アントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)、ハファエル・マルチニ(Rafael Martini)らがその中心人物である。そして、UDMF の講師でもある第一新世代のクリストフ・シルヴァはこれらの第二新世代と共に、最も高度なブラジル音楽を作りつつあるといえるのである。 (以上、文●濱瀬元彦)


クリストフ・シルヴァが語るミナス新世代の豊潤

文●花田勝暁 texto por KATSUAKI HANADA

©Bruna Carvalho and Thiago Costolli.

「作曲家で、歌手、ギタリストでアレンジャーのクリストフ・シルヴァは、それぞれの才能において特別な才能を持った音楽家で、そのそれぞれの才能の組み合わせの様相において唯一無二の存在である」

ジョゼ・ミゲル・ヴィズニキ(音楽家、作曲家、随筆家。サンパウロ大学文学部教授)

 1972年生まれ、ミナスジェライス州ベロオリゾンチを中心に音楽活動を続けるクリストフ・シルヴァ(Kristoff Silva)は、才能ある音楽家が多いミナスジェライスの新世代音楽家の中でも、最も多才な音楽家だ。ギタリスト、歌手、作曲家、音楽理論の教師、演劇やダンスのために作曲するなど多様な顔をもつ。
 最新作『デリーヴァ(Deriva)』は昨年(※2013年)発表されたアルバムだが、それまでにソロ・アルバムを1枚(『エン・ペ・ノ・ポルト(Em Pé  no Porto)』2007年)、2人の同世代のコンポーザーとの共同名義のアルバム(クリストフ、マケリー・カ&パブロ・カストロ『ア・オウトラ・シダーヂ(A Outra Cidade)』2003年)、それに『エン・ペ・ノ・ポルト』の発表後のライヴを収録したDVDを発表している。
『ア・オウトラ・シダーヂ』は、00年代初頭の当時のミナスでは「ヘシクロ・ジェラル」と呼ばれた、本特集では第一新世代と呼んでいる世代の才能が集結した記念碑的な作品だ。クリストフ・シルヴァ、マケリー・カ、パブロ・カストロらのオリジナル曲が、弦楽重奏含む生楽器とプログラミングが共存するアレンジで収録されている。情報量が多いアルバムで薄れてしまうが、ゲスト参加の女性歌手には同世代だけでなくパウラ・サントーロやチターニといった当時既に実力派として知られていた歌手も参加し、アルバムに華を添えている。「ヘシクロ・ジェラル」世代の他の主要なアーティストについては、ミナス新世代のディスクガイドでも取り上げているのでそちらも参照して欲しい。概ね、彼らは現在40歳前後のミナス出身の音楽家だ。
 ソロとしては1stアルバムとなる『エン・ペ・ノ・ポルト』は、少数精鋭のメンバーの〝バンド〟をベースに録音された。そのバンドのメンバーは、ピアノのハファエル・マルチニ、ドラムのアントニオ・ロウレイロ、ベースのペドロ・トリゴ・サンターナ(Pedro Trigo Santana)という、現在では第二新世代の中心として活躍する音楽家たち。彼らとの高度で〝家族のような〟息の合ったアンサンブルに、クリストフの暖かみのある歌声と曲が響いていく。プログラミングの要素は、3作中最も低い。本作のライヴを収録したDVDも発売されたが、現在のミナスの若い音楽家のレベルの高さを映像で示す貴重なものだ。
 一転して、6年後の昨年発表された2ndソロ『デリーヴァ』では『エン・ペ・ノ・ポルト』が持っていた暖かさを否定するような、プログラミング主体の音楽が迫ってくる。しかしながらアルバムは進むにつれて印象を変えてきて、最後に待つのは〝肯定の音楽〟である。本作は通して聴いてもらう必要があるとして、クリストフはアルバムの完成後に、完成記念ライヴではなく、作品を通して聴く場をベロオリゾンチ、サンパウロ、リオデジャネイロの三都市で設けた。本作を聴く機会があるなら、本作を聴くためだけの時間をぜひ一度それぞれで設けてほしい。アルバムのコンセプトの完成度、曲の美しさとその基礎にになっている博識、詩の描く世界、クリストフの歌、プログラミングの現代性、演奏技術の高さ、プログラミングと生演奏の融合……どこで切り取っても興味が尽きない傑作アルバムである。特に普段、同時代のエレクトニカ音楽を聴いている人に広く彼の音楽が届いたら…ビョークやレディオ・ヘッド、ジェイムス・ブレイク、グリズリー・ベア、ダーティー・プロジェクターズにYMOにコーネリアス…といったエレクトロニカと生楽器の融和した美しく挑戦的な音楽に引き付けられるなら、ポルトガル語の音楽という壁を越えて、クリストフの音楽に魅了される可能性も十分にあるだろう。
 クリストフ・シルヴァの詳しい情報は、インターネット上にもそれほど多くない。が、『デリーヴァ』が発表され、本特集を共同執筆していただいている濱瀬元彦氏との間や、当方の周りのブラジル音楽好きの間では何度もクリストフのことが話題になり、この作品を作った音楽家が一体どんな音楽家なのかずっと興味津々であった。本特集の機会あって、ベロオリゾンチに住む彼にメール・インタビューを行った。

──小さな頃の環境と、音楽家になったきっかけを教えていただけますか。

クリストフ・シルヴァ アメリカで生まれたけれど、1歳のときからミナスジェライス州のベロオリゾンチに住んでいる。自分のことを完全にブラジル人だと思っている。自分の周辺の人の生活に、ブラジル音楽があるのを感じながら育った。自分の周りでは、やっていたことの手を止めて、ミルトン・ナシメント、トニーニョ・オルタ、シコ・ブアルキ、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルといった音楽家のアルバムを聴くのが普通だった。
 家では、祖父がチャイコフスキーやラヴェルを聴くのが好きで、祖父のレコードは私の大好きな遊び道具になっていった。「くるみ割り人形」や「ボレロ」の振り付けを想像しながら、何度も夕刻を過ごしたものだった。ダンサーになりたいという夢をもっていた。それから……精神において踊るために音楽家になった。

──あなたの世代の音楽家が広く認知されるようになったプロジェクト「ヘシクロ・ジェラル」について教えてもらえますか?

クリストフ・シルヴァ 2002年のことで、16人の作曲家がプロジェクトのために半月ごとに〈ヘシクロ・ジェラル(Reciclo Geral)〉というバー(そこはリサイクルするために紙資源を収集する人たちをまとめるための組織が運営しているスペースだった)に集まり、専ら未発表曲を発表した。それぞれの作曲家は、歌のために歌手も招いた。イベントは1年間続き、参加したそれぞれのアーティストたちは、同世代のアーティストたちだと認識された。

──あなたがこれまでに発表した3枚のアルバム『ア・オウトラ・シダーヂ』『エン・ペ・ノ・ポルト』『デリヴァ』でのあなたの内的な変化について教えていただけますか?

クリストフ・シルヴァ 少しずつ少しずつ、より内面的な何かに近づいてきて、自分自身とより深いところで出会うようになってきたと感じている。自分は、自分が作るものはかなり厳密に扱うという性格だが、『ア・オウトラ・シダーヂ』は共同プロジェクトだったので、他の共演者と対話してやるという約束事のもと製作した。私は作曲をはじめたばかりで、収録されたのは私の作った最初のいくつかの曲だ。
 そのユニットは、突然終了した。私はあまり面識がなかった音楽家たちに声をかけて、『エン・ペ・ノ・ポルト』として結実する作品を作りはじめた。アントニオ・ロウレイロ、ハファエル・マルチニ、ペドロ・トリゴ・サンターナと、家族のようなグループを作った。彼らはとても献身的で、私とリハーサルを重ねた。このアルバムが備えているのは、全員が一体となった親密で平和な時間だ。当時の私の私生活も、そんな時期だった。
『エン・ペ・ノ・ポルト』で釣り合いのとれたものとして示したものが『デリーヴァ』では、中心から遠心分離機で分離したように、私の破片が全ての方向に散乱したようだ。
 バンドは散り散りになって、私の結婚生活が終わった。それから引き受けた二つの仕事が『デリーヴァ』にも関係している。ひとつは、サンパウロ州立交響楽団の基金のために歌と弦楽四重奏の曲を作曲するというもので、もうひとつは、芸術基金(Funarte)の依頼で歌と電子音だけを使った曲を作ることだった。そういう流れがあり、「バンド」のいない作品を作るという考えに辿りついた。でもそれは、音楽的なことだけでなく、友情の面でもとても大切な価値を捨てることかもしれなかった。それらの状況を整理し補完しながら、一貫した作品として完成させたのが、私の『デリーヴァ』という作品だ。

──アルバム『デリーヴァ』でプログラミングを担当し、あなたと共同プロデューサーをしているペドロ・ドゥランィスとはどこで知り合ったのですか?

クリストフ・シルヴァ
 さっき名前を挙げた3人のミュージシャンが私に紹介してくれた。『エン・ペ・ノ・ポルト』のライヴ時には、ペドロ・ドゥランィスは、私たちと一緒に演奏していた。『デリーヴァ』のプロジェクトがスタートしたとき、彼はバンドの他の人たちより重要な役割を担っていたわけではなかった。でも、プロセスが進むうちに、不可欠な役割を担うようになっていった。プログラミングにおいてだけではなく(彼は僕よりずっとプログミングを行った)、録音のプロセスについてきて、録音のテクニックにおいても力を発揮して、私が声やギターを録音するときに私に色々教えてくれた。

──『デリーヴァ』の製作がどのように進んだかについて教えてください。

クリストフ・シルヴァ 「パルセリア」と「ア・ヴォス・イ・オ・ヴェルソ」の2曲は先ほど言ったサンパウロ州立交響楽団の歌と弦楽四重奏のために作った曲で、「パラヴローリオ」と「アウトモチーヴォ」「ドゥランチス」「アーヴィダ」は、歌と電子音という依頼で作った曲だが、一連の流れができるように他の曲を作曲した。いつも作詞を元に曲を作り始めるので、ベルナルド・マラニャゥン、マケリー・カ、ルイス・タチらの共作者たちに声をかけて各曲のテーマを伝えた。手元に詩が届いてから作曲をはじめる。そこでやることは、私が用意していた音と、どう融合させるかをイメージすることだ。特に、私がすでに作っていたプログラミングと、アコースティックな楽器やバンドの音をどうアレンジしていくかを考えていく。

──例えば、アレシャンドリ・アンドレス、アントニオ・ロウレイロ、ハファエル・マルチニといったミナスのもっと若い世代に対してどんな印象を持っていますか。

クリストフ・シルヴァ 彼らは、現在のブラジル音楽に言及するなら、私が今一番好きなミュージシャンで、最も心を打たれる。なるべく色々聴こうと努めてはいるけれど、地理的に近いのと同様に、愛情的もあり、彼らの音楽が私の心の中に強く響く。その3人以外にも私が新世代のミナスの音楽家で好きな音楽家は沢山いる。沢山いて、1〜2人の名前を上げたりできないくらいだけれど……もし1人だけ名前上げるなら、私の世代の好きな音楽家で『ア・オウトラ・シダーヂ』を一緒に製作したパブロ・カストロの名前を上げたい。私にとって、優れた〝歌の〟作曲家だ。

──あなたはサンパウロの作曲家ジョゼ・ミゲル・ヴィズニキの楽譜集を書いていますが、どういうきっかけがあったのですか?

クリストフ・シルヴァ 出版社から楽譜集の出版でコンタクトがあったヴィズニキが、私を推薦してくれたんだ。彼は私のことを知っていて、彼の作品のファンであることも知っていた。出版社はリオデジャネイロに住む誰かを希望していたけれど、彼が私のことを推してくれた。ヴィズニキと一緒に仕事をして、私にとって素晴らしい数ヶ月だった。彼は第一線の知識人で、コード記号だけでは表せないピアノの記述法を発達させた作曲家だ。
 楽譜は必要なものだ。ヴィズニキだけじゃなく、他の3人のギタリストとともに、作曲家のエロマールの作品も楽譜にした。うわべだけの謙遜なしで言わせてもらえるなら、二つの楽譜集はブラジルの歌の作曲のレベルの高さを証明している出版物だ。

©Raman Lisboa
©Raman Lisboa


──あなたはルイス・タチやヴィズニキといったサンパウロの知識人の作曲家と近い関係にありますが、その関係はどのように生まれたんですか?

クリストフ・シルヴァ 私が彼らの作品が好きで、彼らのコンタクト先を探して自分の抱いている作品への愛情を伝えた。彼らは、私が彼らの作品にとても深く愛情を感じているとわかってくれた。私自身もアーティストとして、そういうことがどれだけ勇気づけてくれることかを理解している。それから、私たちは友達になった。ルイス・タチは、共作者で友人であるだけでなく、私の修士課程の指導教官だった。同じ都市に住んでいるわけではなく、離れてはいるが2人はいつも側にいる存在だ。

──ヴァングアルダ・パウリスタ(サンパウロ前衛派)のムーブメントからはじまったサンパウロの前衛的な音楽シーンについては、どう思っていますか?

クリストフ・シルヴァ ヴァングアルダ・パウリスタは、その中に様々なアーティストを含んでいる。私にとって最も刺激的なのは、グルーポ・フーモとイタマール・アスンサゥンだ。イタマールの影響は今も残っていて、私はキコ・ヂヌシが、そのいい例だと思っている。フーモの影響はもっと弱く、その影響下にある音楽家やグループを挙げるのは難しい。今日サンパウロで作られる面白いものはヴァングアルダによって始まった実験性の領域にある。おそらく、その実験性は、今日少し薄められ弱くなっている。

──ブラジルの音楽家と海外の音楽家、どんな音楽家にあなたは影響を受けていますか? また、ミナスの影響について話していただけますか?

クリストフ・シルヴァ ミナスの影響から話そう。ミナスジェライスで育つということは、音楽と関わることが深く刻まれることだ。タヴィーニョ・モウラ、ベト・ゲヂス・ロー・ボルジェス、ウアクチや、既に名前を上げたミルトンやトニーニョ・オルタといった音楽家が、ミナスの音楽を作ってきた。
 これらの音楽家の音楽が、他の音楽家や、ブラジルの他の地域の音楽、それに他の国の音楽のハーモニー、様式、アレンジに自然と大きな影響を与えてきた。そういったことを、私たちは、音楽の学校でではなく、耳で聞いて理解する。
 でも、私はジルベルト・ジルやカエターノ・ヴェローゾ、その後、ヴァングアルダ・パウリスタ、またギンガなどもよく聴いた。これら全てが私に影響を与えた。
 外国からの影響については、明確なものの他に、グリズリー・ベアとダーティー・プロジェクターズの影響を強調したい。彼らのことを知ってからひっきりなしに聴いているんだ。

©Bruna Carvalho and Thiago Costolli.

── 音楽に関係のないことで、好きなことはなんですか?

クリストフ・シルヴァ 娘を喜ばせることならなんでも。

── 今後の活動について教えてください。

クリストフ・シルヴァ 英語のアルバムを録音する。私の曲の英語バージョンやまだ発表していない曲を録音するつもりた。それから、サンパウロ州立交響楽団のために作った声と弦楽四重奏のための曲を録音する。
 おそらくこのフォーマットのためにもっと作曲してアルバム1枚録音する。誰か、このプロジェクトに興味がある日本の弦楽四重奏を知らないかい?

──日本についての印象はどんなものですか?

クリストフ・シルヴァ こうしたインタビューで日本の印象について問われた時に思い浮かぶ感情は、考えられうる限り、とても良いものだということだ。日本の文化にある物事に対する関心の度合いやそれらの素描から理解されるのは、偉大かつ唯一の存在としての人間が1000年もの間持ち合わせてきた感情に、継続と未来の創造という緊急課題への判断力とを融合させうる文化であることを示しているということだ。
 私は地球の反対側にいて、日本の問題はわからない。日本や日本人は、必ずしも天国や天使じゃないことはわかっている。でもこれ以上ない程いい印象を持っている。もしこのインタビューを読んで、すぐに日本に住むことやその文化の悪い部分を考える人は、お願いだ、こう思わせる魅力があるということを考えてみてほしい。

──日本のファンにメッセージをお願いします。

クリストフ・シルヴァ このように私や友人たちのやっていることに興味を持ってくれることに感謝したい。こちらでは、どんなに音楽がやり辛い状況になったとしても、私たちは作曲し、演奏し、あなた方の興味を尽きないような音楽を探し続けるだろうということに、確信を持ってもらっていい。



■ミナス新世代ディスクガイド

Kristoff Silva『Deriva』

Kristoff Silva
Deriva

(Independente s/n)2013年
 クリストフの2013年の最新作。現代のブラジル音楽の最高度の到達点を示した傑作。大半を占める生楽器演奏と声に対置されたペドロ・ドゥランイス(共同制作者として参加)のエレクトロニカは新たな音楽的美の提示に成功している。 (濱瀬)


Kristoff Silva『Em Pé No Porto』

Kristoff Silva
Em Pé No Porto

(Jardim Produções s/n)2007年
 クリストフのソロ第1作。第二新世代の演奏家、ハファエル・マルチニ、アントニオ・ロウレイロ等と詞のマケリー、ルイス・タチとのコラボレーションに加え、ジュサーラ・シルヴェイラ、ナー・オゼッチの参加も華やかな魅力を放つ傑作。 (濱瀬)


Kristoff Silva, Makely Ka & Pablo Castro『A Outra Cidade』

Kristoff Silva, Makely Ka & Pablo Castro
A Outra Cidade
(Independente SM001-1)2003年
 作品名義の3人だけでなくチターニ、マイザ・モウラ、セルジオ・ペレレ、パウラ・サントーロ、レオポルヂーナ、ジュリアナ・ペルヂガゥンなど第一新世代の音楽家が結集したヘシクロ・ジェラル宣言の意味を持つと考えられる重要作。 (濱瀬)


Uakti『Trilobyte』

Uakti
Trilobyte

(Sonhos & Sons UAK007)1996年
 70年代末から活躍する創作打楽器の著名なグループ。フェリピ・ジョゼー、アレシャンドリはメンバーの直接の弟子であったり第二新世代と関わりが深い。本作にはアレシャンドリと作風が共通する彼の父、アルトゥールの作曲作品が多く収録されている。 (濱瀬)


Alexandre Andrés『Olhe Bem as montanhas』

Alexandre Andrés
Olhe Bem as montanhas

(Independente s/n)2014年
 アレシャンドリの最新作。本作はアンドレ・メマーリなどサンパウロ勢の助けを借りずに全編をミナスのハファエル・マルチニ、ペドロ・サンターナ、アドリアーノ・ゴイアターで作っており、言わばひとり立ちした秀作と言えるだろう。 (濱瀬)


Alexandre Andrés『Macaxeira Fields』

Alexandre Andrés
Macaxeira Fields

(NRT NKCD-1008)2012年
 アレシャンドリのソロ第2作。ブラジル音楽の近年の最高の成果である。ミルトン・ナシメントのクルビ・ダ・エスキーナを彷彿とさせる沸き立つ創造性や溢れ出る楽曲の美に圧倒される大傑作。 (濱瀬)


Alexandre Andrés『Águaluz』

Alexandre Andrés
Águaluz

(Independente AGUALUZ02MN)2008年
 当時18歳の処女作である。彼はウアクチのアルトゥールを父とし、この父の制作、アレンジ、ウアクチ、クリストフ・シルヴァの参加という構図からミナス第二新世代の誕生を最も純粋かつ象徴的に告知する作品(傑作!)ということができる。 (濱瀬)


Diapasão『Ao Vivo』

Diapasão
Ao Vivo

(Independente s/n)2011年
 マルコ・アントニオ・ギマランイスと彼が創始したウアクチに多大な影響を受けたグループ。第二新世代の多くを輩出しているコンテスト〈BDMGインストゥルメンタル(2009年)〉で優勝し、メンバーのアレシャンドリは作曲と編曲で表彰された。 (濱瀬)


Antonio Loureiro『Só』

Antonio Loureiro

(NRT NKCD-1005)2012年
 ボランダというクオリティー・レーベルからリリースされた第2作。ジャズ的な自由発展空間が多くを占め、前作のような緻密な構成とは異なる方向に向かった。タチアナ・パーハの素晴らしい歌による「ルース・ダ・テーハ」は傑作である。 (濱瀬)


Antonio Loureiro『Antonio Loureiro』

Antonio Loureiro
Antonio Loureiro

(Independente s/n)2010年
 ソロ第1作。ウアクチ的アコースティック音響合成に加え、彼及びミナス第一新世代のセルジオ・ペレレ、クリストフ・シルヴァらによる素晴らしい歌により緻密に構成された見事な作品で第二新世代の隆盛を知らしめたまぎれもない傑作。 (濱瀬)


Grupo Ramo『Ramo』

Grupo Ramo
Ramo

(Jardim Produções s/n)2009年
 ダニエル・パントージャ(フルート)、フェリピ・ジョゼー(チェロ)、フレデリコ・エリオドロ(ベース)、アントニオ・ロウレイロ(ドラムス)というミナス第二新世代の作曲家が集まったグループの非常に優れた器楽作品。 (濱瀬)


Felipe José『Circular Música』

Felipe José
Circular Música

(Independente s/n)2013年
 ミナスジェライス連邦大学出身、ウアクチのマルコの薫陶を受け、チェロ奏者としてグルーポ・ハーモに参加するなど、第二新世代の様々な活動に参加する重要人物。ソロ第一作は現代的かつブラジルの情緒を深く湛えた非常に高度な器楽作品。 (濱瀬)


Rafael Martini『Motivo』

Rafael Martini
Motivo

(Núcleo Contemporâneo s/n)2012年
 クリストフ、アレシャンドリ、ロウレイロなどミナス新世代の中心人物の活動にことごとく参加し、演奏のみならず作曲、編曲、歌によって現在のブラジル音楽に非常に重要な役割を果たしている彼の素晴らしい世界を集めた第一作品集。 (濱瀬)


Quebrapedra『qUEbRApEdRA』

Quebrapedra
qUEbRApEdRA

(Independente s/n)2008年
レオノラ・ヴェルスマン(歌)、ハファエル・マルチニ(ピアノ、ギター、歌)を中心にした新世代ミナスの作品を演じるグループ。アントニオ・ロウレイロの1stソロの出る2年前に彼の名曲「ホーダ・ジガンチ」をすでに録音している。 (濱瀬)


Misturada Orquestra『Misturada Orquestra』

Misturada Orquestra
Misturada Orquestra

(Bangalô Produções MCD 0111)2011年
 マウロ・ホドリゲス教授のもとにハファエル・マルチニ、ハファエル・マセードなど第二新世代の作曲家、演奏家(大半はミナスジェライス連邦大学出身者)が結集したオーケストラ。先鋭的かつ芳醇な音楽が見事に実現されている。 (濱瀬)


Rafael Macedo『Quase Em Silêncio』

Rafael Macedo
Quase Em Silêncio

(Independente s/n)2009年
 ミナス第二新世代を代表する作曲家のひとり。鋭角的な作風だがギンガの音楽を思わせる薫り高さが伴っており、ピアニストながらギターの弾き語りは本当に素晴らしい。今後の仕事に非常に期待できる逸材である。 (濱瀬)


Makely Ka『Autófago』

Makely Ka
Autófago

(Independente s/n)2007年
 クリストフとパブロと共に、③に参加したヘシクロ・ジェラル世代の精神的中心人物。現在はミナスの文化関係の要職を歴任していることもあり、自身の音楽活動から距離を置いている彼の唯一のソロアルバムが本作。ミナス新世代を代表する詩人。 (花田)


Maisa Moura『Moira』

Maisa Moura
Moira

(Independente s/n)2007年
 本作の前年にマケリーとデュオ作を発表しているマイーザ。本作ではミナス新世代の他、ヴィズニキやルイス・タチらサンパウロの重要作家の作品も取り上げる。双方に共通する知的で芳醇な音楽性が、彼女の冷静で力強い歌声で強調される。 (花田)


Diana Horta Popoff『Algum Lugar』

Diana Horta Popoff
Algum Lugar

(Derila Música DL562)2012年
 ユリ・ポポフの娘で、トニーニョ・オルタの姪であるヂアナの音楽は、ミナス音楽特有の大きなスケール感とハーモニーを受け継きつつ、電子音楽ネイティヴの世代として軽やかに電子音も取り込み、正統ミナス音楽を21世紀にアップデートする。 (花田)


Irene Bertachini『Irene Preta, Irene Boa』

Irene Bertachini
Irene Preta, Irene Boa

(Independente s/n)2013年
 彼女と㉖のレオポルヂーナ、⑭のVoでソロ作の発表が待たれるレオノラを、今後も活躍が楽しみなミナス新世代の女性歌手3人衆だと思っている。作曲も行うイレーニの歌声は伸びやかでオーガニック、時にフォルクローレのような表情も。 (花田)


Pablo Castro『Anterior』

Pablo Castro
Anterior

(Independente s/n)2013年
 クリストフからも最も信頼される第一新世代の実力派シンガーソングライターである彼の1stソロは、③の発表から約10年後となった。その3者のソロの中では、最も③の雰囲気を湛えており、10年後の『A Outra Cidade』ということもできよう。 (花田)


Sérgio Pererê『Serafim』

Sérgio Pererê
Serafim

(Independente s/n)2013年
 第一新世代の黒人シンガーソングライター、本作で4作目を数える。声の力に魅力があり、彼の声の力は、声域は違うがミルトンの声の力を彷彿させるほど。ほぼ自作曲で占められるが曲のジャンルも多様。器用すぎて損をしている感じさえ。 (花田)


Titane『Ana』

Titane
Ana

(Independent ANACD08)2008年
 1960年ミナス生まれ。80年代後半から実力派歌手と認められていた彼女の08年作は、新世代への共感が全面的に感じられる作品。マケリーやクリストフの作品がハファエル・マルチニらの新世代のアレンジャーを音楽監督に迎え取り上げられる。 (花田)


Elisa Paraiso『Da Maior Importância』

Elisa Paraiso
Da Maior Importância

(Independente s/n)2008年
 08年に本作、09年にもう1作を録音し、子育てのためか積極的な音楽活動から遠ざかってしまった­­­彼女だが、その2作とも非常に質の高い音楽で固められている。汎MPB的な視点から選曲される本作だがクリストフの曲が4曲取り上げられている。 (花田)


Mestre Jonas『Sambêro』

Mestre Jonas
Sambêro

(Jardim Produções MB0022)2010年
 ソロ作としては本作のみを残し11年に35歳の若さで他界した。音楽家であり画家だった。彼は第一新世代だが、本作では第二新世代も巻き込んで多様で壮大な世界を繰り広げる。音楽監督は頭角を現し始めたハファエル・マルチニらが務めた。 (花田)


Leopoldina『Leopoldina』

Leopoldina
Leopoldina

(Seteoitavos CRI-14182)2010年
 2005年に同じく第一新世代のドゥドゥ・ニカーシオとアルバムを発表した女性歌手。同世代実力No.1の彼女が、今度は第二新世代の面々をバックに録音した1stソロの本作は、女性歌手の視点から同シーンの可能性を十二分に示す好作。 (花田)


Paula Santoro『Mar Do Meu Mundo』

Paula Santoro
Mar Do Meu Mundo

(Borandá BA0016)2012年
 「第一新世代」より一世代上ながら③にも参加したミナス・シーンの実力派女性歌手。3作目の本作では、クリストフとマケリーの曲や、アントニオ・ロウレイロの曲を取り上げるなどミナス新世代への共感は今も続く。女優としても広く知られる。 (花田)


Regina Spósito『Regina Spósito』

Regina Spósito
Regina Spósito

(Universo Produções s/n)2001年
 歌手で舞台女優のへジーナ。「第一新世代」の曲が取り上げられた極初期の作品として取り上げた。セルジオ・ペレレ、フラヴィオ・エンヒキ、マケリー・カらの曲が、素朴ながら深淵さも感じられる編曲で取り上げられる。音楽監督はフラヴィオ。 (花田)


Sergio Santos『Rimanceiro』

Sergio Santos
Rimanceiro

(Inpartmaint RCIP-0193)2013年
 56年生まれ、95年ソロデビューという遅咲きのセルジオ。その質の高さにより日本でも積極的に紹介されてきた。13年発表の本作では彼の声とギター、それにサポートギターという編成で、声とギターのみのブラジル音楽の1つの到達点を示した。 (花田)


Renato Motha & Patricia Lobato『Dois em Pessoa』

Renato Motha & Patricia Lobato
Dois em Pessoa 

(NRT DDCZ-1099/1100)2004年
 フェルナンド・ペソアの詩に2人が曲をつけた2枚組の大作。NRTからの国内盤化で同時代のミナスの音楽としてリアルタイムに紹介された。ディスク「Samba」は軽快なテンポで、「Canções」では空間を活かしたアレンジで聴かせる。 (花田)


Quarteto Cobra Coral『Cobra Coral』

Quarteto Cobra Coral
Cobra Coral

(NS ns019)2012年
 マリアナ・ヌネス、フラヴィオ・エンヒキ、ペドロ・モライス、カドゥ・ヴィアナというそれぞれ活躍してきた歌手/ソングライターたちが、一緒の活動による化学反応を求めて結成したコーラス・グループ。ミナスの名曲の再解釈も。 (花田)


Flávio Henrique por Marina Machado e Amaranto 『Aos Olhos De Guignard』

Flávio Henrique por Marina Machado e Amaranto 
Aos Olhos De Guignard

(VIA SONORA s/n)2000年
 女性歌手マリーナ・マシャードと3人組女性コーラスグループのアマラントが、第一新世代と深く関わることになる作曲家のフラヴィオ・エンヒキの曲を鉄壁のコーラスで歌い上げる。3者ともに現在まで素晴らしい活動を続けている。 (花田)

(月刊ラティーナ2014年5月)


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