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[2021.02]【島々百景 第57回】リスボン|ポルトガル

文と写真:宮沢和史

 旅についてのインタビューを受ける時、「海外で暮らすとしたらどこがいいですか?」と聞かれることがある。一応今までに旅をしてきた街を思い浮かべてはみるものの意外と思い浮かばない。頭の中で地球儀が一回転回ってやはり日本がいい、という結論になる。当たり前のことだけれど、それぞれいいところもあれば悪いところもある。理想的な国なんていうものは存在しないのだろう。我が国に対し言いたいことは日々増すばかりだが、他と比べて秀でている部分が多いのも確か。海外に出るとつくづくそう実感する。と同時に「日本ももっとこうすればいいのに」と思うことは多い。要するにないものねだりというわけか……。

 ただ、一生は無理かもしれないが、何年間か住んでみたい国はある。ヨーロッパの最西端、大西洋に面したイベリア半島の国、そうポルトガルである。その首都リスボンは長い間ずっと憧れの国だった。ファドにおけるファディスタの歌声とギターラの音色に誘われるようにポルトガルへ渡った話は以前この島々百景でした。牛追い祭りで有名なスペインのパンプローナで日本の文化を伝えるフェスティバルが2002年に開かれ、歌手として招待していただいたのだが、「同じイベリア半島にいるんだからポルトガルは目と鼻の先、こんな機会は滅多にない」と、パンプローナを出たあとに、もう一足伸ばしてリスボンへ向かったのが初めてポルトガルへの旅だった。

 とにかくファドが聴きたかった。1990年代からブラジル音楽にのめり込んでいった自分にとって、そのルーツのひとつ、水脈の太い流れのひとつであるポルトガルの音楽というものを肌感覚で実感してみたいとずっと思っていた。ユーラシア大陸西端の最果ての地と南米最大の大国との結びつきを極東の東京でCDを聴きながら夢想していても始まらない。生でファドを聴きたい…。その思いは募るばかりだった。ある時、たまたま観ていた故筑紫哲也さんの番組『NEWS23』で歌唱したデュルス・ポンテスの歌声に心を奪われた。自分にとって今までで一番生々しい “ファドの歌唱” だった。歌声に心を奪われたというか、発声の仕方、声量、表現力、表情、たたずまい、そのすべてに魅了された。「ファドは音楽の一ジャンルを指すのではない。その歌い手の生きる姿を語る音楽なのだ」とその時悟った。のちにファド(FADO)とは “宿命” という意味であると知ることになる。

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