見出し画像

[2025.1] 決定! ブラジルディスク大賞2024

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、29回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2024ブラジル・ディスク大賞」。総数2,962通の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。

関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。

2024年は、ミルトン・ナシメントとエスペランサのコラボレーション・アルバム『ミルトン+エスペラサ』が一般投票の、リニケルのセカンド・ソロ・アルバム『カジュー』が関係者投票の1位。一般投票の上位は、ややコンサバなランキングとも見えるが、例年に比べて作品ごとの得票差が少なく、新世代の音楽家の台頭も続いている。2024年に来日した音楽家の作品も数多くランクインした。関係者投票では2010年代に比べ、アフロ・ブラジル音楽への支持が高くなった。
 
関係者投票には今年から、各タイトルへの投票者名と得点を併記した。ブラジル音楽に対する多様な価値観を読み解く参考にしていただきたい。


【一般投票結果】

<1位>
ミルトン・ナシメント、エスペランサ 『ミルトン+エスペランサ』
Milton Nascimento, Esperanza Spalding / Milton + Esperanza(163票)

ステージから引退した大御所ミルトン・ナシメント(82歳)。21世紀のUSAジャズの新世代で、デビュー当時からミルトンを敬愛し共演もしてきたシンガー・ソングライター/ベース奏者、エスペランサ・スポルディング(40歳)。エスペランサの企画・プロデュースにより実現した完全コラボレーション作品。ミルトンの60〜70年代の作品の再録音が中心で、録音中の会話もコラージュしドキュメンタリー色がある。地球と人類へのメッセージもこめている。第67回グラミー賞(現地時間2025年2月2日発表)「Best Jazz Vocal Album」にノミネート。(関係者投票5位)

【投票コメント】
「エスペランサの、ミルトンへの崇拝の想いと深い愛情から生まれた、宝石のように美しく輝くコラボレーションです」(男性)
 
「ブラジル音楽の大御所と、ジャズの精鋭プレイヤーとのコラボは、完璧で斬新な音楽を作りました」(女性)

<2位>
リー・リトナー&デイヴ・グルーシン 『ブラジル』
Lee Ritenour & Dave Grusin / Brasil(155票)

USAジャズ・フュージョンの大御所、ギタリストのリー・リトナー(73歳)と、ピアニストのデイヴ・グルーシン(91歳)がブラジル音楽をテーマに、ブラジルの音楽家と共演した、サンパウロ録音。『ハーレクイン』以来、約30年ぶりの共演となるイヴァン・リンスのほか、セルソ・フォンセカ、シコ・ピニェイロ、タチアナ・パーハ、エドゥ・ヒベイロ、マルセロ・コスタらが参加。11月に来日公演も行なった。

【投票コメント】 
「二人の大御所による、ブラジル愛がたくさん詰まった、素敵なアルバムだと思います」(女性)
 
「来日コンサートに行ってきました。リー・リトナー、デイヴ・グルーシン、イヴァン・リンスのオシャレなサウンドを再び体験できて、幸せでいっぱいでした。いつまでもお元気で、と感謝の拍手。ムイト・オブリガーダ!」(女性)

<3位>アマーロ・フレイタス 『イーエーイーエー』
Amaro Freitas / Y'Y(147票)

ジャズ・シーンでも注目を集めている北東部出身のピアニスト/作曲家、アマーロ・フレイタスが、アマゾンに滞在した体験をもとに作ったアルバム。2024年に2回、来日してピアノ・ソロ、トリオ、「FESTIVAL de FRUE 2024」での中村佳穂との初共演、DJからダンサーまで参加したセッションなど、多彩なパフォーマンスで圧巻の才能を発揮した。

【投票コメント】 
「一人の天才のブレイクスルー作品。“すごい” から “すさまじい” に開花した才能」(男性)

「ジャズとも、ブラジル音楽とも、なんと形容していいのか分からない音楽。自由奔放に自分の音楽をやっているようにも感じ、それが楽しく映る」(男性)

<4位>ドラ・モレレンバウム 『ピーキ』
Dora Morelenbaum / Pique(142票)

ジャキス&パウラ・モレレンバウムの娘ドラ(2025年で29歳)のファースト・フル・アルバムが、8位のライヴ盤に続き2作目のランクイン。親友アナ・フランゴ・エレトリコとの共同プロデュースにより、ポップ度がアップした。8月末から9月にかけてプライヴェートで来日。(関係者投票2位)

【投票コメント】
「期待を一回りも二回りも上回る完成度!アンセム感が満載の曲<Talvez>の唐突な終わり方から、1曲目をアナ・フランゴ・エレトリコよろしくダンサブルにアレンジした<Nem te procurar>に繋がる終わり方が、とってもサウダージ」(男性)

<5位>マルコス・ヴァーリ 『トゥーネル・アクースチコ』
Marcos Valle / Túnel Acústico(131票)

「2019年ブラジル・ディスク大賞」1位の『Sempre』などに続き、81歳のマルコス・ヴァーリがボサノヴァを封印して臨んだ新作。故リオン・ウェアとのヴァーチャル共演、USAのロックバンド、シカゴに提供した曲のセルフ・カヴァーなど、70年代末のUSA滞在期ともコネクト。

【投票コメント】
「マルコスが生きている限り、ディスコ・ブギーというジャンルで彼を超えることなど不可能なのではないか。そう感じてしまうほど素晴らしい!何歳になってもクリエイティヴで、自信をアップデートする姿勢に脱帽です」(男性)

<6位>ブルーノ・ベルリ 『ノ・ヘイノ・ドス・アフェットス2』
Bruno Berle / No Reino dos Afetos 2(126票)

北東部出身、サンパウロ在住のシンガー・ソングライター、ブルーノ・ベルリ(31歳)が、トラックメイカーのバタータ・ボーイ(20代)と共同プロデュースした、近未来ローファイ・ポップ。11月に来日してバタータ・ボーイと共に「FESTIVAL de FRUE 2024」に出演。東京でもワンマン・ライヴを行なった。(関係者投票6位)

【投票コメント】
「<サウージ!サウダージ>でブルーノ・ベルリの<Dizer adeus>を知り、i-padに入れてゴールデンウィークに東北に旅行に行きました。山形側から蔵王に行ったのですが、そこから見た飯豊山地の神々しい雪山と、この曲がピッタリして、鳥肌がたった2024年でした」(男性)

<7位>マリーザ・モンチ 『ポルタス(アオ・ヴィーヴォ)』
Marisa Monte / Portas (Ao Vivo)(120票)

「ブラジル・ディスク大賞」1位の最多回数を誇る女王マリーザ・モンチの、「2021年ブラジル・ディスク大賞」1位「Portas」のコンサートツアーのライヴ・アルバム(デジタル・リリースのみ)。5月に通算4回目の来日公演を行なった。

【投票コメント】 
「至近距離で聴けて歌声に抱きしめられた、ブルーノート東京。ブラジル人のお客さんもたくさんいて大合唱で盛り上がった、恵比寿ガーデンホール。マリーザ・モンチはステージの女神だと感じたことを思い出しながら、このライヴアルバムを聞いています」(女性)

<8位>ゼー・イバーハ、ドラ・モレレンバウム、ジュリア・メストリ 『ライヴ・アット・グラスハウス』
Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre / Live at Glasshaus(94票)

バーラ・デゼージョのメンバーの中の3人、ゼー・イバーハ、ドラ・モレレンバウム、ジュリア・メストリが2022年、ニューヨークで行なったアコースティック・ライヴ。「2022年ブラジル・ディスク大賞」1位のアルバム『SIM SIM SIM』収録曲のほか、ゼーとドラのソロもある。この3人は2023年にバーラ・デゼージョとして初来日し、ゼーは2024年4月にソロで再来日、全国ツアーを行なった。

【投票コメント】
「4月に聴いたゼー・イバーハのライヴもとても良かったですが、『Live at Glasshaus』ではバーラ・デゼージョならではの素晴らしいバンド・アンサンブル、曲の良さと、クォリティの高い演奏が楽しめました。ゼーさんや、ドラ・モレレンバウムさん、ジュリア・メストリさんは今後、ブラジルで、カエターノやマリーザ・モンチのような、ビッグ・アーティストになっていくのだろうと感じました」(男性)

<9位>リニケル 『カジュー』
Liniker / Caju(78票)

LGBTQ+のシンガー・ソングライターきっての実力派、人気も抜群のリニケル、ソロ2作目。ネオ・ソウル調の前作に比べ、サンバ・ソウル、アフロ・バイーア、パゴーヂなど、グッと幅を広げた。関係者部門では前作(2021年)に続いて2作連続で1位。ブラジルでは「Prêmio Multishow」で年間ベスト・アルバム、MPB部門、年間ベスト・アーティストなど4冠に輝いた。(関係者投票1位)

【投票コメント】
「過去。現在。未来。時代を超えたスケールの大きさと、ブラジル・ポップスの多様性を感じることができました」(男性)

<10位>アニッタ 『ファンキ・ジェネレーション』
Anitta / Funk Generation(71票)

ファンキ・カリオカのクイーンを越えてワールドワイドなコラボと活躍を続けるアニッタが、ほとんどの曲を英語やスペイン語で歌ったインターナショナル・アルバム。サブスクの再生回数1億回を越えた曲も。2024年12月、ポルトガル語で歌った最新作『Ensaios da Anitta』をリリースした。

【投票コメント】
「今年、入院してしまった時によく聞いていた、思い出深い1枚。体調を回復した今も愛聴盤です」(男性)

【関係者投票】

《1位》リニケル 『カジュー』
Liniker / Caju(63票)
(一般投票9位)

《2位》ドラ・モレレンバウム 『ピーキ』
Dora Morelenbaum / Pique(61票)
(一般投票4位)


《3位》ジョタ・ペー『シ・オ・メウ・ペイト・フォッシ・オ・ムンド』
Jota pê / Se o Meu Peito Fosse o Mundo(51票)

サンパウロ州出身、2025年で31歳。アフロ・ブラジル・オリエンテッドなMPBを展開するシンガー・ソングライターのセカンド・アルバム。2位のドラ・モレレンバウムと共に、関係者投票で最多となる10人が投票した。

《4位》ゼ・マノエウ 『コラル』
Ze Manoel / Coral(44票)

ペルナンブーコ州出身のシンガー・ソングライター/ピアニスト。オリジナル曲から、ルエジ・ルナとデュエットするタンザニアの名曲のポルトガル語ヴァージョンまで。

《5位》ミルトン・ナシメント、エスペランサ 『ミルトン+エスペランサ』
Milton Nascimento, Esperanza Spalding / Milton + Esperanza (41票)
(一般投票1位)

《6位》ブルーノ・ベルリ 『ノ・ヘイノ・ドス・アフェトス2』
Bruno Berle / No Reino dos Afetos 2(40票)
(一般投票6位)

《7位》エラズモ・カルロス 『エラズモ・エステーヴェス』
Erasmo Carlos / Erasmo Esteves(31票)

故エラズモ・カルロス(2022年11月22日没)が、新作のために作詞作曲していた未発表の新曲集。制作途中だった曲はエミシーダ、チン・ベルナルデスらが補作し完成させ、彼らのほかフーベル、ジョタ・ペー、フッソ・パサプッソ、シェニア・フランサらが新曲を歌った、世代を超えたコラボ・アルバム。デモ録音中のエラズモの歌も聞ける。

《8位》タッシア・ヘイス 『トッポ・ダ・ミーニャ・カベッサ』
Tassia Reis / Topo da Minha Cabeça(30票)

サンパウロ州出身、ネオ・ソウル、ヒップホップ、サンバなどをミックスした、現代のアフロ・ブラジル・ポップを体現する歌手。本作ではクリオーロとも共演。

《9位》オス・ガロチン 『オス・ガロチン・ヂ・サン・ゴンサーロ』
Os Garotin / Os Garotin de São Gonçalo(27票)

リオ市の対岸、ニテロイ市に隣接したサン・ゴンサーロ出身、ネオ・ソウル3人組のデビュー・アルバム。

《10位》シチオ・ホーザ(ジェニフェル・ソウザ、ベルナルド・バウエル) 『シチオ・ホーザ』
Sítio Rosa(Jennifer Souza · Bernardo Bauer)/ Sítio Rosa(24票)

ミナスのシンガー・ソングライター、ジェニフェル・ソウザがベルナルド・バウエルらの友人たちと作った、アットホームでインティメートな感覚のアルバム。


(ラティーナ2025年1月)

ここから先は

0字

このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てアクセスできます。「ラティーナ」の過去のアーカイブにもアクセス可能です。現在、2017年から2020年までの3.5年分のアーカイブのアップが完了しています。

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活…