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[2023.1]【連載アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉞】ミウーシャを本当に治してしまったという、まじない師への電話 - Dinheiro em penca
文と訳詞●中村安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
絶賛のまま2023年を迎えたこのジョビンとシコ・ブアルキの連載ですが、今年も続きます。今年の最初は、詩の大変に長い、一寸ユーモラスな作品をご紹介。リオでは長く愛されている名曲です。是非詩の意味を読みながらお聴きください。楽しみが何倍にもなりますよ。筆者の中村安志さんは、昨年末は本業での海外出張が続き、大変にお忙しい中書き続けてくれましたが、シコとジョビンの連載のサイクルを毎週から、しばらくは2週間に1回のペースにさせていただいております。でも、まだまだ、書くことは山ほどあるそうですので、是非今年も大いに期待してくださいね。
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ボサノヴァ以降のブラジルポップス界で活躍した作詞家に、カカーゾ(本名:アントニオ・カルロス・フェレイラ・ジ・ブリット)という人がいます。惜しいことに、43歳という若さで、心臓麻痺のため他界しましたが、個性的な歌をいくつも残しました。
長く愛されている作品といえば、例えば、名手エドゥ・ロボとの共作で、「俺はブラジルの男/背格好は平均程度/誰かに首ったけ・・・」と歌う、Lero lero(レロ、レロ)などがそうでしょう。リリースから20年以上経過した頃、私がリオで聞いたライブでも、聴衆の多くが、すぐさま一緒に歌い出していたのを思い出します。
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そんなカカーゾは、ジョビンとも面白い歌を1つ残しました。やや長い作品ですが、2人の貴重な共作である、Dinheiro em penca(お金の束)という歌を、今回ご紹介します。
この曲は、シコ・ブアルキの姉でもある名歌手ミウーシャとジョビンがコンビを組んだ、素敵なアルバムに収められています。ゆったりした調子でアルバムの最後を飾るこの歌は、米国で囚われの身となり金欠の主人公が、助けを求めてブラジルにかけた長距離電話でユーモラスな言葉を聞かせると同時に、途中で登場するまじない師の存在など、神秘的要素も含んでいます。
歌い出しは、ジョビンが強くこだわっていたと考えられる大自然との関わりが深く、マチータ・ペレイラという鳥の格好をした精霊が、マチーという略称で登場します。このマチーが愛を歌うというのに対し、歌の主人公は「お金欲しさ故に歌う」と続き、何やら荒々しい生活を送っていそうな主人公の性格を少しずつ暗示し始めます。
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