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[2015.4]ホドリゴ・マラニャォンにおけるブラジル的混血 ⎯ A MISTURA BRASILEIRA DE RODRIGO MARANHÃO ⎯

[月刊ラティーナ2015年4月掲載記事]

文●ヂエゴ・ムニス texto por DIEGO MUNIZ

©Marcos Hermes

 ホドリゴ・マラニャォン。今のブラジル若手アーティストのなかで最良の表現者のひとりと見なされていると言っても過言ではないだろう。作曲者、歌手、奏者、編者そしてプロデューサーであるカリオカは、ブラジルの音楽的多様性に賭けた音作りをする。
 2014に発表された最新作である『Itinerário(「道程」の意)』は、バイアォン、サンバ・ヂ・ホーダ、マシーシ、サンバなどの要素の融合をねらったつくりになっている。毎年カーニヴァルを盛り上げる、楽器隊に合わせ大勢が歌い街を練り歩くフォリアォンを率いるバンガラフメンガでのもうひとつの仕事に対した作品となっている。バンガラフメンガでのホドリゴは100人を超える大勢の音楽家に囲まれ、ダンスブルな音楽を演奏するが、彼はソロになるとより親密で繊細になる。マルセロ・カルヂ(アコーディオンとピアノ)、ナンド・ドゥアルチ(7弦ギター)、プレチニョ・ダ・セヒーニャ(パーカッション)などのミュージシャンの協力のもと、ホドリゴは新しきMPBで、最も洗練されたアルバムをリリースした。
 マリア・ヒタ、ホベルタ・サー、ゼリア・ドゥンカン、フェルナンダ・アブレウなどによって曲が録音されると、ブラジル国内での知名度は一気にあがり、2006年にはマリア・ヒタが「Caminho das Águas」でラテン・グラミーを獲得した。
 今回、新作や、自らの作曲スタイル、バンガラフメンガの仕事などについてホドリゴが本誌の独占インタビューに応じてくれた。

──今作『Itinerário』は、3作目のソロアルバムですね。新作を発表されるとき、だいたい前作から3〜4年の間隔が空いていますが、それは制作過程の一部でもあるのですか?
ホドリゴ・マラニャォン 期間が空いてしまうのは、自分がバンガラフメンガなどの別のプロジェクトと並行して仕事をしているためです。カーニヴァルのブロッコは、音楽で気持ちよく生活するために欠かせない重要な要素です。どこかのレコード会社がレコードを作るのを待たずに済むために、さまざまな分野で仕事をすることを覚えました。ブロッコを結成して、街のカーニヴァルにくり出すのは、ミュージシャンとして僕が生きていくためにとった策です。

──作曲した以外に、すべてのトラックでギター演奏もされていますね。それはどんなプロセスだったのですか?
ホドリゴ・マラニャォン 僕と仕事をしたミュージシャンたちはとても自由度が高かったと思います。編曲やテーマなどについて基本となるアイディアはありましたが、スタジオに入る前に、我が家でリハーサルをたくさんしました。昔のスタイルで、ミュージシャン同士会ってあれこれ話し合って、リハーサルを重ねて、それからスタジオに入りたかったのです。学生時代、音楽を追求する大勢の人に出会ったときのことを思い出しました。「música na câmara (会議室での音楽)」というそんな授業が学生のときにあったのですが、それと同じことがしたかったのです。ミュージシャンが集まって、楽譜と鉛筆と消しゴムをもって、とにかく弾いて弾いて、音楽を追求する作業を通して作品づくりをしたかった。

──その録音方法でなにか新たな発見はありましたか?
ホドリゴ・マラニャォン 完成品はよりまとまりがでたと思います。実際4人のプロデューサーがいて、一人一人のミュージシャンが本当に大きな貢献したと感じます。ショーロの作曲スタイルに近い、一人のミュージシャンが投げかけたことに対して、もう一人が答えるような、関わった人たちのやりとり感がでたものになりました。

──録音は5日間という短期間で行ったんですね。それは、リハーサルを重ねたことによるものですか、それともこれまでの自身の経験に基づくものですか?
ホドリゴ・マラニャォン 経験によるとも言えますが、プレ制作でリハーサルを重ねたことがやはり大きく関わっていると思います。実は、良いスタジオで録音のできるのが、その期間しかなかっただけなんですけどね(笑)。でも事前のリハーサルは、スタジオに入ってからあれこれ悩まないために行ったとも言えます。スタジオに入ってから作ったものはほとんどなくて、創作自体はその前のリハーサル時にほとんどできました。

《曲作りについて》

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