[2025.1]Best Albums 2024②
2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第一弾です。
第二弾は来週公開予定です!
(カタカナ表記のものは国内盤として発売されています)
●長屋美保
とにかくライブが良かったのが、アイマラにルーツを持つ米国のエレクトロニックミュージックの新鋭①、メキシコ北部バハ・カリフォルニア出身でスペイン在住のアンビエントの巨匠②、そしてジョーイ・キニョーネスが率いる③。新世代チカーノソウルは雨後の筍のように登場しているけど、その中でもジョーイの声量や表現力は突出している。④〜⑦はメキシコの才能たちで、常に新しいことに意欲的に挑戦している。シンガー・ソングライターの⑦とチカーノのバンド⑧は、伝統音楽を取り入れながらオリジナリティあふれる世界を創っている。ちなみにSpotifyによれば、2024年に最も聴いたのは、イギリス出身のジャマイカ系アーティストの⑨。街中でよく流れていたのはコリードの進化系⑩。チャラいかもしれないが、メキシコの現在を象徴し、憎まれながらも愛されている音だとつくづく思う。
(順不同)
① Chuquimamani-Condori / DJ E
② Murcof / Twin Color, Vol.1
③ Thee Sinseers / Sinseerly Yours
④ Grito Exclamac!ón / Grito Exclamac!ón
⑤ RUIDO / Game Over
⑥ Childs / Xilds
⑦ El David Aguilar / Compita del destino
⑧ Los Yesterdays / Frozen in Time
⑨ Liam Bailey / Zero Grace
⑩ Peso Pluma / Éxodo
●成田佳洋
自国や海外ポップチャートのトップを窺う人気グループが、実験的なサウンド・楽曲で仕掛けてくるという奇跡的なバランス。2024年のK-POP、とりわけaespaのブリープテクノな新曲「Whiplash」はその象徴にして極北。8月のライブで披露されたウィンター、ジゼル、ニンニンのソロ未発表曲も秀逸で、2025年もaespaの年になることは間違いない。
人気と予算が潤沢なプロダクションほど実験的であり、中間層が空洞化し、その他が保守的であるという傾向は、マイクロレーベルを運営している身としては考えさせられることが多かった。一方、日本のインディペンデントな音楽家たちが、それぞれが生活する土地の風土が薫るような素敵な作品を届けてくれた一年でもあった。
個人的にはなりゆき上からレコードショップを開業し、近代の器楽曲のレコードを沢山売ったり、地元鎌倉でテリー・ライリーの公演を制作したりという一年だった。ほんとに人生何が起こるかわからない。
● Meadow & Gen Tanabe / Two Lands
● Fabiano Do Nascimento & 笹久保伸 / Harmônicos
● 阿部海太郎 & 武田カオリ / House (Theatre Musica)
● Shabaka / Perceive its Beauty, Acknowledge its Grace
● RM / Right Place, Wrong Person
● Le Sserafim / Easy
● Red Velvet / Cosmic
● aespa / Whiplash
● aespa / Armageddon
● aespa / aespa LIVE TOUR 2023 ' SYNK : HYPER LINE' in JAPAN
●二宮大輔
⑧はフリッパーズ・ギターの元ネタで知られる映画『黄金の7人』の監督マルコ・ヴィカリオの孫で、2024年に自身も『グローリア!』で長編映画の監督デビューを果たした才女マルゲリータ・ヴィカリオの4曲入りEP。これは、自身がホストを務めたポッドキャスト「Showtime」用に制作した楽曲を収録したもの。毎回異なるゲストとともに異なるテーマついてトークを繰り広げ、最後にヴィカリオがその回のテーマに沿った歌を披露した。つまり彼女は、映画監督、作曲、作詞、歌とダンス、そして俳優タレント業までこなすジャンル横断型アーティストなのだ。日本でも上映された『グローリア!』は決して評価が高かったわけではないが、その精力的な活動には、わくわくせずにいられない。
そしてフリッパーズ・ギターといえば、③はイタリアのフリッパーズ、④はイタリアのキリンジの新作だ。異論は認めます。
① Piotta / ‘Na notte infame
② ゾッキ / ゾッキ
③ Fitness Forever / Amore e Salute
④ Marco Castello / Pezzi Della Sera
⑤ Colapesce Dimartino / Lux Eterna Beach
⑥ 柴田聡子/ Your Favorite Things
⑦ Fulminacci / Infinito +1
⑧ Margherita Vicario / Showtime
⑨ トリプルファイヤー / EXTRA
⑩ Teseghella / Roccasecca
●吉本秀純
ブラジルものは本誌では割愛した。パキスタン出身の才媛による①は、ナイジェリアのTemsとともにシャーデーを想起させたのも印象深かった。ラウドさを増した②は、祖国ニジェールの政変を受けて歌詞の政治性を強めたのは必然的。文字通り〝アフロレイヴ〟な新境地に達した③も鮮烈だった。インド発の5人組による④は、コーナーショップやジョージ・ハリスンがお好きな方も是非。お囃子×アフロ・ファンクな⑤は、竹製楽器を多用したアジア性にも惹かれた。中国の鬼才による⑥は、チベット音楽に取り組んだ大胆さも含めて支持。インドネシアの⑦は、ヒップホップもオルタナ・ロックも統合してますます孤高の域に。アルゼンチンのナディスの中心人物による⑧は、南米音楽の粋が詰まった逸品。米国黒人音楽の先端を示し続ける詩人の⑨は、シリアスだが美しく、実は①とシンクロする部分も多い。⑩はコンセプト、選曲、絵本のようなパッケージ作りも素晴らしかった。
① アルージ・アフタブ / ナイト・レイン
② エムドゥ・モクター / フューネラル・フォー・ジャスティス
③ Rema / Heis
④ Peter Cat Recording Co. / Beta
⑤ アジャテ / ダラトニ
⑥ Howie Lee / At The Drolma Wesel-Ling Monastery
⑦ BAP. / M. Album Tiga
⑧ フアン・イグナシオ・スエイロ / オラクロ
⑨ Moor Mother / The Great Bailout
⑩ V.A. / Even The Forest Hums: Ukrainian Sonic Archives 1971-1996
(ラティーナ2025年1月)
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