[2023.5]5年ぶりにアルバム『COVERS & INSTRUMENTALS』リリース! Saigenji インタビュー
文●東 千都(ラティーナ編集部)
Saigenjiのニューアルバム『COVERS & INSTRUMENTALS』が、6/7(水)に発売される。2018年リリースの前作『Compass』は年間ベストアルバムに選ばれるなど好評だったが、本作はそれ以来5年ぶりのリリースとなる。ライヴで大事に歌い続けてきたカバー曲と、コロナ禍の隔離生活で作曲したインスト曲、若い頃に作曲し未発表だったインスト曲など全18曲が収録されている。2012年リリースの『One Voice, One Guitar』に続く完全ソロ録音2作目である。
リリースにあたっての心境、本作品に込めた想いなどについて、インタビューした。(2023年5月12日 ラティーナにて)
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── 『Compass』以来5年ぶりのアルバムで、今回は完全ソロ録音ということですが、そうした理由はあるのですか?
Saigenji(以下S) まず前作『Compass』はバンド編成で制作したから今度は違う方向で作りたかった、ということがありますね。コロナ期にスタジオで未発表のインスト曲を全部で15曲くらい録音して、その中からサブスクで8曲くらい配信しました。この評判が結構良くて、せっかくだからアルバムとして出したいなと思っていたのですが、インスト曲だけだとアルバムとしてはちょっと弱いかなと思っていて……。それが昨年、普段ライヴでやってるカヴァー曲も一緒にパッケージしてしまおうというアイデアを思いついて、すべてソロで録音しました。完全ソロ録音は2012年リリースの『ONE VOICE, ONE GUITAR』以来で約10年ぶりの作品となります。ちょうどコロナ禍で隔離していて、みんな1人でやってた時期ということも反映してるかな。
前作までシンガーソングライター的なアプローチの作品をずっと作ってきてて、次のアルバムもそうしようと思ったんだけど、何か一つ挟みたいなと思って。自分的にも『Compass』を凌駕する作品は簡単には作れないなと思ったし。しかも前作と同じコンセプトでやってもしょうがないから、ちょっと違うものをやりたいなと思ったのが、このアルバムを制作する動機の一つですね。
── コロナ禍で、バンドで集まれる機会もなかったですからね。
S それはそうですね、たまにバンド編成のライヴもするけど、コロナ禍ではその機会もなかったしね。そもそも僕はバンドよりもソロの活動の方が圧倒的に多くて、なんとなく1人でずっとやってたからこのアルバム制作は時期的にもしっくり来ましたね。
── 前作『Compass』とではガラッと変わりましたね。そういう意味では違うものをやりたいというのを実現されているのがすごく感じられます。
S 2019年が終わった段階でコロナ禍になり、全世界的も影を落としたというか、みんなに影響を与えた出来事ですよね。自分も紆余曲折あった時期でもあったし、その気分を反映させるにあたって、もともとソロアーティストでもあったので、本当に自分だけでできることをやってみました。(隔離されていたこともあって)時期的にも合ってましたね。そして、コロナがあけてからの世界への意思表示としてのアルバムを制作する、みたいなところもありました。
── 本作は完全ソロ録音ですが、多重録音もありますよね?最後の曲「Back to homeland -epilogue-」では、ホーミーとの重ね方がすごかった。あのホーミーもサイゲンジさんですよね?
S そうそう、僕は実はホーミーできるんです(笑)。大学時代に音楽の授業を取ってたんですよ。大学の卒論もモンゴルとかトゥバ共和国のホーミー(喉歌)をテーマにしたんです。(音大でなく)普通の四大(早稲田大学)の卒論で、音楽について、しかもマニアックな民族音楽を卒論のテーマにしたっていう…(笑)。
そもそもホーミーがすごい好きで、トゥバの有名なバンド「フーンフールトゥ(Huun-Huur-Tu)」が来日した時も観に行ったり、スタッフとして手伝ったり……。自己流で練習したりもしてました。自分の楽曲にホーミーを取り入れてみたいなとずっと思っていて、この曲は大学を出たくらいの時に作ったんだ。
── 今回のアルバムでは、20歳過ぎに書いた曲が何曲か収録されています。(17,18曲目)
S そうそう。1曲目の「Open your ocean」が一番最近に作ったもので、最後のこのホーミーの曲「Back to homeland」が一番古いインストだね。今話してて思った。
「17. Milonga2021」については、サンポーニャやケーナを演奏する岡田(浩安)さんという方がいらっしゃるんですけど、その方のアルバムで取り上げていただいたことがありましたが、自分で録音するのは初めて。ケーナ奏者のJorge Cumboとかアルゼンチンのモダンなフォルクローレをやっている人の影響を結構受けてる曲ですね。かなりアルゼンチン的な感じかな。コード進行はピアソラだしね。
── でも、これを聴いてるとアルゼンチンだけじゃない感じがします。
S そうかもね。ベネズエラの要素だったり、ブラジルだと南部とか、ヴィオラ・カイピーラの内陸の感じとか、ジャズの要素は薄めで、土臭い感じね。
これを昔はケーナで岡田さんがメロディを吹いてくれたんです。
── ご自身によるセルフライナーノーツ(CDにも封入されています)がいいですね。それにも記載されていますが、「椰子の実」「Ponta de areia」「てぃんさぐの花」のこの三つの流れがとてもいいですね。このセットでアルバムに入れたかったのですか?
S 入れたかったですね。全部元々昔からライヴで歌ってたんですよ。どれもミナスっぽい感じがあると思うんだけど、「椰子の実」も「てぃんさぐの花」もメロディと歌詞にそういう側面があるんだよね。大西洋の海に面して作った「Ponta de areia」と、日本の沖縄や小笠原など太平洋のこれらの歌は、やっぱり海を通じて繋がっているというストーリーがあるなと思ってた。この3曲の流れをこのアルバムの中核、一番大事なところに、と思って入れました。
この後、後半はインストのオリジナル曲を中心に向かっていくという感じです。アルバム全体で一つのストーリーと考え、最初に「Open your ocean」から始まり最後は「Back to homeland」で終わる、と海から内陸に帰るということを表現しています。ホーミーはモンゴルの歌い方ですよね、自分はモンゴロイドであるということを最後の曲に込めています。
普段自分はアジア人だなと思うことがすごく多いので、南米の人と話すとあんまり共通点ないんですよね(笑)、会う人にもよるんだけど。あそこまで明るくはなれないし、あそこまでストレートにもなれない(笑)。そこまで本音だけでは生きていけないっていうか ……。
東南アジアの色んな国でよくライヴやるんだけど、向こうの人と馬が合うんだよね、やっぱり。適度に空気を読むっていうか、相手のことを考えるのが自分たちアジア人の特徴だなと思うんだけど、それをすごい感じる。
── そういえば、コロナになる前にミャンマーでライヴされていましたよね?
S そうです!すごい楽しかった!ミャンマーは不思議な国ですよね。色々東南アジアの国々に行っていますが、ピカイチで面白い国ですね。あ、このアルバムのジャケットもミャンマーの海岸、ガパリビーチの写真なんです!
── Saigenjiさんが撮られたのですか?
S そうです、僕が撮りました、たまたまね。印象が面白くて。色彩が(他のビーチとは)ちょっと違っていて。あの写真はアンダマン海で、海を挟んで隣はバングラデシュだし。
── この色彩や印象が面白いからアルバムジャケットにしようと思ったのですか?
S いや、最初はね、写真なしで文字だけにしようと思ったんですよ。でも、今ひとつしっくりこなくて、写真を使おうかということになりました。
作品って、最初から全部コンセプチュアルというよりは、後で出来上がったものを見て「あぁ、こういうコンセプトだったか」っていう感じで。僕の場合はいつもそうなんだけど。今回は、ジャケが出来て、そしてこういう選曲になって……ということで、やっぱり自分はアジア人だなということを言いたかったのかな、と思います。
ブラジル音楽とか南米の音楽が好きだけど、自分の解釈というのが決して向こうっぽくないとは思っていて、どこかでアジア的なんじゃないかなと思います。
── ずっとブラジル音楽やフォルクローレなどのジャンルをやってこられたと思いますが、その枠にとらわれずに、アジア人だということを実感したってことですか?
S もともと基本的にオリジナル曲を作ってやってきたから、その分音楽を知らないうちに書き換えてるんだよね。曲の構成とかも極めて日本的なことも実は多くて、そういう部分もひっくるめて自分の音楽はアジアの歌っていう捉え方なんだよね、おそらくね。自分ではそう思ってます。
── それを思いながらこのアルバムを聴くとまた違うかもしれませんね。
S そうだね。
ライヴやってて、南米の歌の中でこの歌は外国の人々にガッツリ刺さるっていう歌が一曲だけあって、それがシモン・ディアスの「Tonada de luna llena(満月のトナーダ)」(本作には収録されていません。3rdアルバム『Innocencia』に収録されています)という曲で、これをベネズエラ人の前で歌う機会がたまにあるんだけど。
── たまにあるんですか?
S そう、ベネズエラ人がたまにしか来ない!(笑)でね、これがすっごい刺さるみたいで。「カエターノが歌うよりもサイゲンジが歌う方が全然ベネズエラっぽい」って言うわけ。あ、そうなんだ、って思うけど、そういうのが僕にはわからない!なんで刺さってるのか?なんでカエターノがベネズエラっぽくないのかが、わからない。ベネズエラ音楽とかもすごく好きなんだけど。そういう部分は一つのキーワードかもしれないね。ペルーでもボリビアでもアルゼンチンでもなく、ましてやブラジルでもなく、ベネズエラなんだ、っていう(笑)。
そのベネズエラ人の感覚を掴んでる部分が自分にはあるのかもしれない。実は自分は本質的に、ボサノヴァの要素はほとんど持ってないと思う。もっとフォルクローレ的だと思うし、かといってボリビアじゃなく、ペルーのクリオージョとか、あるいはキューバのフィーリン、アルゼンチンだったら新しめのフォルクローレだったり、でもカルロス・アギーレほど洗練はされてないと思うけど……。自分にはそういう感じがあると思う。
── 今回のアルバム収録曲には、サブスク配信でシングルリリースされているものが何曲かあります。結構頻繁にリリースしてましたよね?
S そう、2021年5月から毎月リリースしようという作戦で12月まで毎月リリースしました。録ったのは2日くらいで、まとめて出さずに毎月一曲ずつリリースしたんです。ほら、コロナ期って暇だしさ!(笑)何か話題を繋げておくといいなって、僕が思ったというよりは、録音に誘ってくれた(奥原)貢(Gira Mundo)が提案してくれてね。これやっといて、ほんとよかった!
その頃、インスト曲を書くっていうブームが自分にも来ていて、と同時にクラシックを聴くブームも来ていて……。今までクラシックには全く興味なかったんだけど、その頃ずっと聴いていました。それが作曲に反映されたのが4曲目の「Choro para Villa-Lobos」って曲です。
でも、このインスト曲を作るブームが終わったあとは、全くインスト曲作ってないからね(笑)。作れる時に作っておかないと!
── そういう意味ではコロナ禍でライヴができなかった時期にじっくり作業できたのはよかったですよね。
S それもあるし、その頃はかなり内向的になっていましたね。たまたまね。かなり内向きな創作をしていました。今思えばそれがよかったですね。そしてこういう形でアウトプットできてよかった!
── プライベートでも大きな変化(お子さん誕生)がありましたよね。それも影響していますでしょうか?
S ありますね。スタンダード曲を入れたくなったのは、子供が産まれた影響が一番大きいと思います。歌詞がどうこうというよりも、全ての世代がわかるものを歌いたくなったんですよね。「椰子の実」とか「てぃんさぐの花」とかね。そういうものをやりたくなったのはありますね。
シンガーソングライターというのはものすごくパーソナルな作業だと思うんです。自分は歌を歌ったり曲を書いたりというオーソドックスなシンガーソングライターというよりは、もうちょっと音楽人寄りだと思っていて、雰囲気とかもひっくるめた音楽全体が好きだから、一般的なシンガーソングライターとはだいぶタイプが違うと思うんだけど、音楽的に本当にコアなパーソナルな部分は今まであんまり出してこなかった。それを今回このアルバムでまとめて出したところはあるかな。側から見てどう思うかはわからないけど。
それこそホーミーの曲もファーストアルバム出す時にはもうできていて収録しようかと思ったんだけど、あまりにもディープすぎるなと思ってその頃収録しなかったんですよね。その時代は、売れたいしモテたいわけ(笑)。今だってそれは無いとは言わないけど、モテるとかは今はどうでもよくなってきて、自分にとって必要なエッセンスみたいなものをアウトプットしたいというのがあるから。それが20年かかってできるようになりました。このタイミングで本当によかったなと思いますね。最初からこれ(ホーミー)やってたら、どうなってたんだろう?(笑)
── ブラジル寄りじゃなくてモンゴル寄りですよね?(笑)
S あー、ホーミーやる人ね、って思われてるんだろうな(笑)
── ブラジル寄りだと思っていたから、ホーミーできるんだ!と驚きました。
S そうでしょ?(笑)元々こういう人なんです。ユーラシア的なものが好きで、普段聴いてるものって、最近あんまり聴いてないけど中東の音楽とかね。北アフリカの音楽とかも好きだし、モロッコとかマリとか……。あの辺のイスラム教がらみの音楽もいいもの多いしね。グナワ音楽だったり、アルジェリア、エジプト、イエメンとか、めちゃくちゃ格好いいよね。ああいうのばっかり聴いてたりするしね。でもそれってさ、日本のポップスとしては全く需要が無いんだよ。それを聴いてどうするんだよ!っていう(笑)。
でも、ここまでCDが売れなくなってるから、いくら好きなことやってもいいなって今は思ってる。中途半端にCDが売れてると、売れるためにこの曲はハジいとくかってなるから(笑)。
逆に今はチャンスだよ!やりたいことを全部パッケージできる時代だし、やりようによってはそれでバイラルヒットになる可能性もあるから。
── サブスクでどこの誰に引っかかるかわからないですもんね。
S そう!これウケるんだ?って感じだよね。ツボが全くわからないから(笑)。絶対にやったもん勝ちだよ!
── 実際、Spotifyで既に40万回以上再生されていますが、反響の大きさについてどう感じていますか?(「13. Early summer」が、425,510回再生 5/17時点)
S すごい意外だし、でもあんまり意外でもない気もするし。自分はアジア人的はあるけれど、外国人的でもあるような気がするのね。他の日本人から比べたら日本人の要素が薄めかなと思う。汎地球的なところで考えると、「Early Summer」や「Ajisai」が割といろんな層に届くというのが、普段自分が音楽や世界に感じていることとなんとなく合っていたのかなという気がします。この感じはやっぱりみんな好きなのね、という感じでね。
── インストということもありますよね?
S それはあるね。言葉に限定されないから、それは結構大きいですね。(反響が大きいのは)意外でもあるけど、そんなに意外でもないのかな。でも嬉しいけどね!
── ギターでのインスト曲だけど、ギターで歌っている感じがしますよね。
ある意味共通言語だから世界中から聴かれるのかなという気がします。
S そうですね。インストに関して自分がテーマにしているのは「口ずさめること」で、歌っぽい曲を作って歌うようにギターを弾くことが自分の特徴かなと思います。
── アルバムには18曲も収録されていて、かなりお得ですね。
S ほんとはもっとあるんだよ!(笑)これでも絞ってる。曲を厳選して収録してます。CDは80分だからそこに収まるかなと心配してましたが、なんとか収まりました!
── SNSで海外からもメッセージが来ると見かけましたが、それについてどう思われます?今までの反響とは違いますよね。
S そうなんですよね。カナダのインターネットFMの方から何度も連絡来たりとか。それがね、南米よりもそれ以外の国から来るのね。南米からはあまり来ない(笑)。それが謎であって、面白いところですね。Djavanの「Samurai」やってるのに、ブラジル人には全然引っかからないみたい(笑)。
── そして、BLUE NOTE PLACEでレコ発ライヴが予定されていますが、レコ発ということであればやはりソロで?
S BLUE NOTE PLACEはソロでやりますね。基本的にあんまり活動を限定したくないので、並行してバンドでのライヴもやってるし。やりたい人とナチュラルにスケジュール組んでいって、自然な流れの中にある感じでやっていきたいなと思ってて。このアルバムが出たからといって、アルバム収録曲だけやる感じでもないし。その時に一番歌いたいもの、弾きたいものを歌うっていう感じです。
── ライヴでの演奏曲はいつもその場で決めるんですか?
S そうですね。最初にどうしても演奏曲順を決めなきゃならない時は決めます(笑)基本的にはあらかじめ決めないですね。今度やるBLUE NOTE PLACEみたいなところでもそんな感じですね。
── 海外のミュージシャンもそんな方いますよね。
S そうね、ジョアン・ジルベルトもそうだったよね。ジョアンも自分と一緒だと思って、ホッとしました(笑)。
── そういう意味では、ソロの人はその時の気持ちでいけるというのがありますよね。
S そうね。ちょっとウケてないなと思ったら、端折ったりできるから(笑)。色々できるからね。時間芸術だから、フレキシブルで面白いですよね。
── 最近、若いミュージシャンたちと共演していますが、彼らから受ける刺激も大いにありますよね? Saigenjiさんはだんだんベテランの域に来ていますが、若い人たちと共演することについてどう思われていますか?
S あんまり年功序列を重んじる感じは自分の中にはないですね。ミュージシャンとしては珍しいタイプだと思うんだけど。本当にいいミュージシャンだと思えばそれでいいので、そこに年齢とか経験とかは関係ないと思ってる。すごいものはすごいな、と。今度一緒にライヴする予定のKanくんとか、壺阪(健登)くんとか、彼らは圧倒的にいいもの持ってると思う。
自分にとって一番大事なのは「鮮度」なので、それを体現してくれる仲間として一緒にやっていたいと思う。そこで突き詰めていくというよりは、「おぉ、すげぇ!」って思うものをずっとやっていたいなと思う。やってて楽しいしね。それが一番のエンターテイメントだと思う。
── 20年以上やられているので、もう本当にベテランですね。
S そうね、ほんとにね。で、20年間メンタルが変わらないままずっと来ちゃったからね。ずっと後輩気質だよね(笑)Kanくんとかも同じ目線でツッコミ入れてくるからね。楽しいですよ。
僕の場合は、バンドでやる時は、できるだけメンバーにキラキラしてほしいと思ってるんです。なぜかというと自分はソロでもやってるから、そういうことはソロで表現すればよいと思っているから。みんなで楽しくやるのが一番ですよ。
── 最後に、新しいアルバムをみなさんにどう聴いてほしいですか?
S サブスクで聴くのもありなんだけど、CDの方が圧倒的に音がいいです。音の厚みが全然違います!是非CDで聴いてほしいですね!
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Saigenjiの音楽は、今までブラジルやフォルクローレなどどちらかと言えば南米寄りの音楽だと認識していたが、インタビューで話を伺うとそうでもないことがわかった。ジャンルに捉われない音楽、それがSaigenjiの世界なのだ。1stアルバムリリースから20年経過し、キャリアを重ね円熟した彼の姿がこのソロ作品に反映されている。また、コロナ禍でじっくりインプットした結果も十二分に表現されている。南米だけでなくアジア的な世界観も感じられ、今までのアルバムとは全く違った印象を受ける作品だ。
本人もぜひCDで聴いてほしいと言っていたが、実際CDで聴くと音の厚み、豊かさがサブスクの音質と圧倒的に違っていた。これはCDで聴いた方が絶対に良い!
(ラティーナ2023年5月)
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