[2021.11] ルベン・ラダ、来日直前インタビュー
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[2021.11] ルベン・ラダ、来日直前インタビュー

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文●西村秀人

 間も無く、来日ツアーがスタートするウルグアイの至宝、ルベン・ラダ。日本に発つ前に、スペイン・ツアーを行なうルベン・ラダに、スペイン出発直前にオンライン・インタビューを行った。インタビュアーは、西村秀人氏。西村氏は、23年前にも、ウルグアイで、日本人による最初のルベン・ラダへのインタビューを行っている。

ルベン・ラダ 来日ツアースケジュール
 2021年11月25日(木)15:00開演 カルッツかわさきホール
 2021年11月26日(金)15:00開演 鎌倉芸術館
 2021年11月27日(土)15:00開演 相模女子大学グリーンホール
 2021年11月29日(土)18:30開演 松山市民会館大ホール
 2021年11月30日(月)18:30開演 岡山シンフォニーホール
 2021年12月01日(土)18:30開演 広島文化学園HBGホール
 2021年12月02日(土)18:30開演 宇部市渡辺翁記念会館
 2021年12月03日(土)18:30開演 下関市民会館
 2021年12月05日(日)14:00開演 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
 2021年12月06日(月)18:30開演 中野サンプラザホール
 2021年12月07日(火)18:30開演 中野サンプラザホール
 2021年12月09日(木)14:00開演 久喜総合文化会館
 2021年12月11日(土)14:00開演 川口リリア・メインホール
 2021年12月13日(月)14:00開演 サンシティ越谷市民ホール
 2021年12月15日(水)18:30開演 島根県民会館

 (※ZOOMにより10月25日に実施)


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── 今から23年前にインタビューしたんですが、これ覚えてますか?(ラティーナ1998年10月号を見せながら)

ルベン・ラダ もちろん。その頃私はブエノスアイレスにいたのかな? ウルグアイだったかな?

── モンテビデオの事務所でインタビューしましたよ。

ルベン・ラダ 今はもうオフィスはないんだ。家族で仕事しているから、家で十分なんだ。妻、息子、娘、みんなでやっているよ。もう78歳になったから、事務所から「あれやってくれ」「これやってくれ」と言われるのはしんどくてね。

── いつスペインに出発ですか?

ルベン・ラダ (10月)29日だね。ついたら記者会見をやって、3日からコンサートのスタートだ。マドリードで2公演、そのあとバレンシア、バルセローナ、マラガにツアーする。スペインから日本へ向かうよ。

── スペインでのツアーは初めてですか?

ルベン・ラダ そうだね。スペイン自体には10数年前に行ったことがあるけど、そんなにあちこち行ったわけでもないなあ……ショウをやるのは初めてだよ。

── スペインでのショウの内容は?

ルベン・ラダ よりウルグアイ寄りになる思う。まずトーテム時代の1970年に作った「ビアフラ」だな。ビアフラ(ナイジェリア内戦)の危機的状況を危惧して作った歌だ。「デドス」もやるよ。その辺の時代の曲をたくさん歌う。コンサートの最後の方では「チャチャ・ムチャーチャ」「ガルデルのためのカンドンベ」なんかもやるよ、ウルグアイ人はみんな踊るんだよってことを知らせたいし。スペインではウルグアイ人が好むものをそのままやればいいとわかっているから楽だね。ウルグアイ人は昔のものを懐かしんでよく聞くんだ。8月24日に「オールディーズ」を聞く日があるけど、大勢集まって豪華なもんだよ。昔の音楽でもよく踊るしね。

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スペイン、バルセロナ公演(2021年11月9日)

── スペインに移住して暮らしているウルグアイ人もたくさんいますよね。

ルベン・ラダ たくさんいるよ、特に不動産を所有していい暮らしをしている人なんかも多いんだよね。

── 日本公演ではまた違う部分も出てくるんですね?

ルベン・ラダ 日本ではタンゴも何曲か歌うし、私が母に捧げて作ったブラジル曲集からも歌うよ。スタンダードの「わが心のジョージア」とか、もちろんカンドンベもね。バラエティにと富んだショウになる。そして今回は嬉しいことに娘の歌手フリエタが一緒だ。彼女には30分ほど主役になってもらうよ。

── 日本にはフリエタのステージも見たいと思っている人はいっぱいいると思いますよ。

ルベン・ラダ 今のフリエタは私より素晴らしいよ! 幸運にして母親似だしね(笑)。いや、でも本当にいい歌い手だし、作曲も作詞も出来るし、コマーシャルな部分に興味もない。もちろんそういう部分もいずれ必要にはなってくると思うけどね。世の中にいるのは音楽が特別好きな人ばかりじゃなくて、もっと覚えやすいメロディーを好む人もたくさんいるからね。そういう点で私のショウはすごくバラエティがあって、わかりやすいものも音楽的に高度なものも両方含まれている。社会的メッセージのある真剣な歌も歌うし、楽しくて一緒に歌いたくなるようなものもある。一つ気になるのは、私が日本を知らないことだ。韓国には行ったことがある。その時はみんな踊り出していたし、盛り上がっていた。でも今回はCOVID19のことがあるから、みんなマスクしてくるんだよね?

── そうですね、まだそういう状況ですね。

ルベン・ラダ だとするとみんな一緒には歌えないね。私がステージから皆さんを見て、踊ることも歌うことも出来なかったらどうやって楽しんでいるかを判断したらいいんだろう? 最後に拍手してそれだけかな……

── でもCOVID19のせいで2年間近く日本人はライヴを楽しんだりすることも自由にできなかったわけだし、すごく喜んでくれると思いますよ。

ルベン・ラダ もちろん自信はあるよ。最高のバンドで行くわけだし、息子がギタリストで一緒だけど、彼は本当にギターがうまいし、歌も歌える。しかも今回はカンドンベのタンボールを3人連れていく。ロボ・ヌニェスは本物の名手だ。そうそう、日本にも太鼓があって、日本人は太鼓が好きなんだろ?

── ロボ・ヌニェスさんとは2011年に彼の家でインタビューして、記事にしましたよ。

ルベン・ラダ それは素晴らしい。ところで、今私は78歳になって何をすべきかを考えた。それはカンドンベも、レゲエやボサノヴァのように国際的になるべきだ、ということだ。ご存じのようにウルグアイは小さい国で、アルゼンチンとブラジルという大国に囲まれている。もっと知ってもらうよう努力しなくてはならない。そこで今新しいアルバムを録音中なのだが、そこでホセ・ルイス・ペラレスの曲を取りあげてるんだよ。♪♪♪♪♪♪(と歌いだす)。パブロ・ミラネスの曲も、マンサネーロも、フィト・パエスもやっている。みんなよく知られたアーティストだ。まあ別にスティービー・ワンダーでもジャミロクワイでもいいんだけど、とにかくこういう人たちの有名曲に、ウルグアイのリズム、つまりカンドンベを組みあわせて知ってもらうのがいいと思うんだ。どこだってカンドンベは受けるはずさ。昔スウェーデンに行った時に、通りを行くタンボール隊を見たんだ、みんな金髪の現地の人さ。カンドンベを歌って踊ってたんだよ。チリでも見たね。ウルグアイでもタンボールへの関心は高くて、今モンテビデオのどこの地区でも毎週日曜日にタンボール隊の行進があるよ。日本でもロボの作った太鼓でカンドンベを演奏し踊る人たちが毎日曜日見られるようになると嬉しいけどなあ。

 タンボール(太鼓)は人類史上最初に登場した楽器なんだ。象の足の皮で出来たタンタンをボンボン叩いていて、それがブラックミュージックのスタートだ。我々はカンドンベ、チャチャチャ、サンバ、メレンゲ、そういったリズムを、いわば盗んで曲を作っている。でもリズムだけでも相当面白いものだから、スティービー・ワンダーの曲だって、カンドンベのリズムにのせることが出来る。

── いろいろな名曲をカンドンベのリズムにアレンジするアイデアは面白いですね。ウルグアイは今までもすごくたくさんの音楽を吸収してきたうえで、自分たちの音楽を生み出していて、それは国の小さな規模も関係あるわけだけど、ウルグアイの独自性につながっていますよね。

ルベン・ラダ 素晴らしい音楽家たちもたくさんいるしね。ウーゴ・ファットルーソ、ハイメ・ロス、イバルブル兄弟、グスタボ・モンテムーロ、フェルナンド・カブレラ、アルフレド・シタローサもね。タンゴの最重要曲「ラ・クンパルシータ」だってウルグアイの曲だ。タンゴだってもともとアフリカ系の語彙だし、売春宿などで演奏していた場末の黒人たちの音楽だったものが、白人たちに演奏されるようになって世界的に有名になったんだ。ロックだって同じ。黒人のブルースだったものがイギリス人に取りあげられ、世界的になった。イギリス人のやったことは素晴らしいけど、私にとってイギリスでロックなのはローリングストーンズだけだね。他はポップだよ。

── ウーゴなど日本に行った友人たちから日本のことは聞いてますか?

ルベン・ラダ ウーゴは日本にほれ込んでいるよね。COVID19のせいで今年は日本に行けないと言ってすごく悲しんでいたよ。みんな「あなたは日本に行ったのですか?」って訊かれると、誇らしげに「行ったよ」って答えてる。日本に行ってそのまま日本で暮らしているタンゴ・ダンサーの知り合いもいる。日本は素晴らしい国だと思うし、文化は非常に異なっているけど、とても美しいと思っている。

── 制限はあると思いますが、ぜひ日本滞在を楽しんでもらえればと思います。

ルベン・ラダ 3日間は、それぞれのミュージシャンは一人づつで外出せずに過ごさなくてはならないんだ。その後3日間リハーサルしてツアーが始まる。でも到着して14日間までは自由に外には出られないんだ。とてもしんどいツアーだけどしょうがないね。本当だったら到着してすぐに日本を知りたいし、楽器屋さんものぞいてみたいよね。しょうがない。それでも私はカンドンベをみんなにデモンストレーションしたいんだ。

── 14日過ぎれば会ったり、観光したりも出来ますね。

ルベン・ラダ 食べ物も興味あるね。私は料理が得意なんだ。ラダのチミチューリ(バーベキューの肉などかける一種のハーブオイル)はみんなに喜ばれているよ。「チミラダ」って呼ばれているんだ。スパゲッティに使うペースト「ペストラダ」もあるしね。音楽に次に好きなのは料理だね。

── いま日本にウルグアイ産牛肉が輸入されているの知ってますか?

ルベン・ラダ 本当?そうなの?

── とてもおいしいですよ。

ルベン・ラダ そうだろうね。輸出用のお肉は特にいい肉だしね。日本では牛肉は高いんだろう?

── そうですね。でもそもそも一人150gぐらいしか食べないし。

ルベン・ラダ ウルグアイでは一人600~700gぐらいは食べるからねえ。

── しかも炭火で焼くからさらにおいしい。

ルベン・ラダ ウルグアイでは薪で焼くことも多いね。今ウルグアイは松を植えるのが流行ってるよ。苗木を買って植えて、7年ぐらいで大きくなる。そうしたらデンマークやノルウェーやスウェーデンなど薪をたくさん使う国に輸出されているんだ。床暖房に使われてるんだよ。あと、大豆もよく栽培してるね。でも一度植えると次に土地が使えるようになるまで5年待たないといけないから、農業をやっている人たちは不満が多いみたい。でもいろんな問題や不満を解決する一番の方法は良い音楽だと思うな。

── 今のところ最新アルバムは『アス・ノイチス・ド・ヒオ~アエロリネアス・カンドンベ』ですか?

ルベン・ラダ そうだね。私の母に捧げて作ったんだ。あとCOVID19の間に『ネグロ・ロック』というアルバムも作った。あとソリス劇場のステージ・ライヴから『パルテ・デ・ラ・イストリア』を作った。そのアルバムではウルグアイ音楽史上に残る優れたグループ、トーテムとエル・キントとオパのレパートリーを取りあげている。このアルバムのコンサートはとてもよかったね。いわばこの3枚が私の今の3本柱であり、日本公演の3つの軸でもあるね。


── 子供たちのための音楽のプロジェクトはまだ続いてますか?

ルベン・ラダ 「ラダ・パラ・ニーニョス」かい? しばらくやってないけど続いているよ。私は歳だから、子供たちのパワーにはそろそろ勝てないかもな。ところで、このCOVID19以前のコンサートでは、日本人は歌ったり踊ったりしてたのかい?

── ブラジル音楽とかサルサのコンサートではみんな踊りますね。歌う方は言葉がわかる人が多くないとね……。

ルベン・ラダ でも「ラララ……」は出来るだろ? これは全世界どこでも通じるからね。先週の木曜日にやったコンサートで「テラピア・デ・ムルガ」っていう曲をやったんだけど、「ラララ」で観客は4分間も歌っていたよ。すごく感動的だったよ。

── でも日本人は静かにしていても、すごくしっかり音楽を聞いていますよ。

ルベン・ラダ 知り合いのアメリカ人のミュージシャンが言ってたよ。中南米の観客みたいに曲中でリアクションしなくても、日本人は曲が終わったらすごい拍手をくれて、立ち上がってくれるよ、って。今回プロジェクターに歌詞の意味が出るのも重要だね。何を歌っているのかを知ってもらったら、すごく意義深い。

── ところで23年前のインタビューの最後に「これまで長く活動してきてやっと多国籍企業系の会社でアルバムが制作できる!」って嬉しそうに言っていましたが、覚えていますか?

ルベン・ラダ 多国籍企業なら、世界中にアルバムを発売してもらえるってあの時は思ったんだ。私の場合、ユニバーサルに「チャチャ・ムチャーチャ」を録音した。すごく覚えやすいメロディだったけど、結局ウルグアイ、アルゼンチンの外に出ることはなかった。ウルグアイでたくさん売ろうとしても限界がある。ウルグアイでは2000枚売れたらゴールドディスクだからね。だから今は自分で制作して、レコ―ド会社に3年間ライセンスを与えて、その期間が過ぎれば自分に権利が戻る、という形をとっている。録音を仕切ってくれているのはグスタボ・モンテムーロだ。彼は今回すごく日本に行きたかったけど、彼はハイメ・ロス専属のミュージシャンでもあるので、行けないんだ。その上ハイメ・ロスはCOVID19の期間に5回も公演を延期したので、泣いてるよ。
 あ、そうそう、新幹線にも乗りたいな。ロス・シェイカーズの旅でそうしてたんだけど、当時はロサリオやコルドバまで、車両1台丸ごと出演者と機材でいっぱいにして列車で旅してたよね。ポップだってタンゴだってみんなそうしていた。一緒にのった人達といろいろ話をしてね。楽しかったよ。だから基本的に列車が大好きなんだ。でもその後はマイクロバス移動とかになっちゃったから、狭いし、つまらなくなったね。

── 何か日本のみなさんにメッセージはありますか?

ルベン・ラダ 私にとって日本に行くことは月に行くのと同じようなものです。日本映画とか、日本の文化とかを通じて、日本に対してはすごくリスペクトの気持ちを持っています。日本の伝統的なものを出来るだけ知ってみたいと思う。私の音楽を楽しんでもらいたいし、大きな拍手をもらえたら嬉しいです。

── ご家族も一緒ですしね。

ルベン・ラダ そうだね、フリエタとマティアスは一緒だけど、もう一人の娘ルシーラは仕事があっていけないんだ。妻のパトリシアはスペイン公演後、ポルトガルの友人のところへ行くんで日本には来ない。でもフリエタとマティアスがいるんだよ。ロボ・ヌニェスなんて家族みたいなもんだしね。ロボは私に知る限り世界一面白い人間だ。エディ・マーフィみたいなやつだよ。四六時中ジョークを言ってて、しかもすごいもの知りでね。偉大なカンドンベの闘士でもある。

── 私たちは20年以上待ってましたからね!

ルベン・ラダ 本当に日本に行けて嬉しいよ!

(ラティーナ2021年11月)


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