[2024.6] 【映画評】アウシュビッツが照射する現代の非情 『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』
アウシュビッツが照射する現代の非情
『関心領域』そして『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』と
『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』
文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)
現在公開中の『関心領域』は、昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリ、今年のアカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞している。そしてアウシュビッツを描いた作品として、これまでにない画期的な表現によって映画史にその名を残す傑作になったと言えるだろう。
カメラは強制収容所内で行われていた行為を一切映すことなく、壁を隔てた隣の豪奢な屋敷で暮らす収容所所長一家の日常を淡々と、そして延々と描き出す。しかし壁の向こうには時折不穏な音や煙突の煙が微かに見聞き出来て、その底知れぬ不気味さが恐れとなって広がってゆく。やがて屋敷内でも人間が本質的に持っている様々な悪が少しずつ炙り出される。
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