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[2022.12] 【島々百景 第78回】 多良間島 沖縄県
文と写真:宮沢和史
宮古島諸島に属する多良間島だが、島からの距離を正確に測るとむしろ石垣島に近いという。要するに宮古島と石垣島のほぼ中間地点にポツンと浮かぶこの島に自分はずっと渡ってみたかった。いつかはご縁があるだろうとその機会をうかがっていたが、なかなかその時は訪れない。「そんなにかしこまらずに、宮古島に行ったついでに訪島すればいいものを…」という声が聞こえてきそうだが、この連載の中で紹介してきた80カ所近いシマはとは必然とまでは言わないが運命で結ばれた気が勝手にしていて、ご縁があって結ばれた場所もあれば、こちらの興味の答合わせをするために積極的に赴いて行った場所たちなのである。そういった動機こそが自分の旅の仕方の根幹の部分だと言える。なんとなくフラッと行ってみた旅はなくもないが、それは数えられる程度。多良間島もなんとなく渡ってみたいな…くらいの気持ちだとしたら一生ご縁は生まれなかっただろう。2012年から個人的に始めた沖縄県内の民謡を録音収集しアーカイブ化するプロジェクト「唄方」で多良間島の民謡『多良間シュンカニ』と出会い、島への興味が何倍にも膨らみ、その日から自分の心は気がつくと多良間島の方を向いていた気がする。
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前泊道がまからよ 下り坂まから 小径からよ
主が船うしゃぎがよ すが下りよ
片手しや坊主小しゃうきよ 片手しや 瓶ぬ酒持てぃよ
主が船うしゃぎがよ すが下りよ
前泊の前の道の下り坂をおりて 船着き場への小道を行き
お役人様を迎えに行くよ
片手に幼子を抱いて もう片方の手にお酒の瓶を持ち
お役人様を見送りに行くのだよ
『多良間シュンカニ』多良間島民謡
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