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Web版 2022年12月

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記事一覧

[2022.12]【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㊲】規制されたが、体制批判が理由ではなかった歌 — Partido alto

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  シコ・ブアルキは、軍政を批判する作品の数々を当局から規制されましたが、中には、政治批判を狙った曲であったにもかかわらず、異なる理由で禁止を言い渡されたこともあったようです。今回は、そのような例として、シコが1972年に出したPartido altoという曲をご紹介します。  60~70年代に急速に進んだ開発の中で、昔からのブラジルの風景が変わり果てていく様を描いた「Bye

[2022.12]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ㉙】 「南洋踊り」の伝播 ―ミクロネシアから小笠原へ―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  小笠原諸島には、「南洋踊り」という珍しい踊りが伝わっています。踊り手は、腰みの、首飾り、花や葉を添えたタコの葉細工の頭飾りを身につけ、男性は上半身裸。しかも、割れ目太鼓の伴奏に合わせた「レフト、ライト…」の掛け声に行進のような足踏み、外国語のような歌詞からなる歌をうたいながら踊ります。これが、「江戸の祭囃子」などと並んで、東京都指定無形民俗文化財だと聞いたら、ちょっと驚きますよね。 小笠原・父島 南洋踊り(Nanyo Dance

[2022.12]【境界線上の蟻(アリ)~Seeking The New Frontiers~3】 Wizkid (ナイジェリア)

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  2010年代の半ばあたりからワールドワイドに支持されるようになってきた〝アフロビーツ〟隆盛の立役者として、常に注目を集めてきたナイジェリアのウィズキッド。特に、彼が2014年に発表した2枚目のアルバム『Ayo』に収録された「Ojuelegba」は、秀逸なトラック・メイキングとメロウな歌声の絶妙さによって欧米圏のミュージシャンやプロデュ―サーからも称賛され、ヒップホップ~R&B以降の世代によるアフリカ発の音楽への関心を一気

[2022.12]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉙】 Roberta Sá 『Sambasá』

文:中原 仁  ホベルタ・サーが12月19日、42歳のバースデーを迎えたと知り、そうか彼女も40代か、、と思わず遠くを見つめてしまったが、デビュー・アルバム『Braseilo』を発表したのが2005年。時の経過は早い。  これまで、ほとんどのアルバムが「ブラジル・ディスク大賞」にランクインし、日本での人気も安定しているホベルタ・サー。前作『Giro』(2019年ブラジル・ディスク大賞一般7位、関係者5位)はジルベルト・ジルの作品集(ジルとホベルタの共作を含む)で、育った

[2022.12]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年12月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Solju · Uvjamuohta / Powder Snowレーベル:Bafe’s Factory [12] 19位 Lorraine Klaasen & Mongezi Ntaka · Uk

[2022.12]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉝】山頂のキリスト像を見上げて - Corcovado

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  リオで暮らしていると、様々な地点から、急斜面の頂上で両手を広げて街を見下ろすキリスト像の姿を目にすることができます。このコルコヴァードと呼ばれる山は、夜間ライトアップされる姿がまた幻想的。観光で頂上まで登れば、コパカバーナやイパネマといった美しい海岸のほか、ぐるりとグアナバラ湾全体を一望。マラカナン・スタジアムのある旧市街、南に伸びる高級住宅街など、360度の絶景を味わうこと

[2022.12] 【島々百景 第78回】 多良間島 沖縄県

文と写真:宮沢和史  宮古島諸島に属する多良間島だが、島からの距離を正確に測るとむしろ石垣島に近いという。要するに宮古島と石垣島のほぼ中間地点にポツンと浮かぶこの島に自分はずっと渡ってみたかった。いつかはご縁があるだろうとその機会をうかがっていたが、なかなかその時は訪れない。「そんなにかしこまらずに、宮古島に行ったついでに訪島すればいいものを…」という声が聞こえてきそうだが、この連載の中で紹介してきた80カ所近いシマはとは必然とまでは言わないが運命で結ばれた気が勝手にしてい

[2022.12]追悼 パブロ・ミラネス 〜世界に影響を与え、その死には世界中から悼む声が届いた...パブロ・ミラネスの偉大な足跡を辿る...

文●太田 亜紀 texto por Aki Ota   パブロ・ミラネスが逝ってしまった。数年前から血液腫瘍のため療養していたマドリードで去る2022年11月22日に病状が悪化し、79歳で亡くなったと公式ホームページで報じられた。キューバ、ラテンアメリカ、世界中のアーティスト、文化人、政治家らからSNSを通して、またはコンサートや公の場でその死を悼むメッセージが寄せられている。 ▼世界から寄せられた悲しみの言葉 ▼オマーラ・ポルトゥオンド  「なんていう大きな痛みでし

[2022.12] 【映画評】 『ケイコ 目を澄ませて』 ⎯⎯ 豊作だった今年の邦画の中でもトリを飾るに相応しい傑作の説得力 

『ケイコ 目を澄ませて』 豊作だった今年の邦画の中でも トリを飾るに相応しい傑作の説得力   文●圷滋夫(映画・音楽ライター)  本コラムで今年紹介した邦画は、3月に春の公開作5本を集めた中の1本『猫は逃げた』だけだったが、実は今年も多くの邦画の傑作が公開されている。例えば『春原さんのうた』『ちょっと思い出しただけ』『愛なのに』『恋は光』『PLAN 75』『ベイビー・ブローカー』(韓国映画ですが是枝裕和監督作品)『さかなのこ』『LOVE LIFE』『線は、僕を描く』『あ