[2021.11]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年11月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】
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[2021.11]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2021年11月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

 e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。

※レーベル名の後の()は、先月の順位です。
「Transglobal World Music Chart」は、世界各地のワールドミュージック専門家の投票で決まっているワールドミュージックのチャートです。主な拠点がヨーロッパなので、ヨーロッパに入り込んだワールドミュージックが上位にランクインする傾向があります。


20位 Dafné Kritharas · Varka

レーベル:Lior Éditions (-)

 1992年パリ生まれ、パリで活動する歌手、ダフネ・クリタラスのセカンド・アルバム。ギリシャ人の父とフランス人の母の間に生まれ、ギリシャの音楽を聴いて育った。親しんだギリシャのレパートリーだけでなく、セファルディック、トルコなど、東洋と西洋の世界が交差するところからインスピレーションを受け活動している。
 バルカン半島、ギリシャ、トルコなど南東部を旅して、様々な言語の歌を吸収し、道中で出会った多くのミュージシャンたちと交流し、学んでいく…といった音楽のロードトリップの糸口となっている。美しい声で、ギリシャ語、ユダヤ・スペイン語、フランス語、セルビア・クロアチア語、スペイン語、トルコ語の歌を難なく歌い上げている。ジャズ、ロック、エレクトロ・トラッドフュージョンなど、口承で歌を伝えるスタイルの信奉者。2018年6月には、ギリシャとセファルディックの歌で構成されたファースト・アルバムをリリースし、好評を得た。今年、名誉あるディアスポラ音楽賞を受賞した、実力派歌手である。
 彼女は主にピアニスト/作曲家の Camille El Bacha、ギタリスト/ソングライターの Paul Barreyre と活動しており、本作も彼らが参加、またズルナ、サズ、パーカッション、コーラスに、さまざまなバックグラウンドを持つミュージシャンをゲストとして迎えている。愛や亡命をテーマにした親しみやすいバラードから、陽気にスイングするようなダンスミュージックまで、多文化との融合が感じられる。心を揺さぶる彼女の美しい声が心に沁みる作品。

19位 V.A. · Magija djin Muzika Vlahilor / Vlaška Muzička Magija / The Magic of Vlach Music: Gergina 2009-2018

レーベル:Gergina (-)

 セルビアの音楽文化協会「Gergina」が、セルビアの少数民族であるヴラフ人の無形文化遺産を保護活動で実施している Gerginaフェスティバルでの音楽を集めたコンピレーションアルバム。セルビア東部を中心に各地から、また近隣国からヴラフ人が集まり、2009年から2018年の期間に行ったフェスティバルで、51人のアーティストやグループの、演奏や歌を集めたもの。
 音源は見つからなかったのだが、動画でフェスティバルの模様が確認できる。経験豊富なパフォーマー達により、民族衣装を着たコーラス隊や、口琴、ドゥドゥク、バグパイプなどの伝統的な楽器、現代的な楽器などの演奏が紹介されている。
 言ってしまえば、各村から集まった音楽大会での音源を集めたアルバムとなるのだが、それがこのチャートに入るとは驚きだ。注目度がすごい。世界でも貴重な音源なのだろう。このフェスティバルで、ヴラフ音楽の継承者が育っていることも事実。少数民族の文化を後世に伝えている素晴らしい活動である。

18位 Maher Cissoko · Cissoko Heritage

レーベル:Ajabu! (17)

 セネガル人コラ奏者のマヘル・シソコの最新作。スウェーデンの女性アーティストSousouとのデュオ Sousou & Maher Cissoko でも世界的にも活躍しているが、ソロ作品としては二作目となる。
 セネガルで700年以上にわたり受け継がれてきた偉大なグリオの一族に生まれた彼だが、そのグリオの伝統をアレンジし、独自の爆発的でダンサブルな演奏スタイルを開発してきた。コラを演奏するだけでなく、彼はパーカッショニストでもあり、彼のリズミカルな演奏方法からもそれが伺える。様々なバンドで演奏しており、レゲエ、ラテン、ファンク、ジャズなど他のジャンルのスタイルやテクニックにも影響を受けている。
 本作のほとんどは彼自身により制作、プロデュース、録音を行ったが、一部はマリの音楽家/プロデューサーで世界的に活躍しているアハメド・フォファナともコラボレーションしている。
 前作はコラの魅力を全面的に表現したアコースティックなアルバムだったが、本作はグリオの伝統をアフロビートやアフロポップ、レゲエなどと組み合わせ、エレクトロニクスやビートと見事に融合しつつ、コラの音色も充分に活きている。その融合っぷりが実に見事で、彼独自の新しい音楽を創り出した。コラの可能性が大きく広がったとも言える作品だろう。これからの活躍が期待されるアーティストである。

17位 Tamala · Lumba

レーベル:Muziekpublique (-)

 ベルギーを拠点に活動しているトリオ、Tamalaのセカンド・アルバム。セネガル出身のヴォーカリスト、モラ・シラとコラ奏者バオ・シソコ、ベルギー出身のヴァイオリニスト、ウォウテル・ヴァンデナベーレがメンバー。2018年に発売されたファーストアルバムは、ワールド・ミュージックの近未来を感じさせてくれる作品として好評を博した。
 偽善が支配する不公平な世界において、アルバムタイトルの「Lumba」は変化を表し、「開かれた心で世界を見て、誰もが自分のやり方で存在する権利を持つ世界にしたい」という願いがアルバムに込められている。
 このアルバムでは主に、メンバー二人の故郷であるセネガルの言語(ウォロフ語とスス語)で歌われている。ヴォーカルの伸びやかで力強い声、そこにコラとヴァイオリンが組み合わさり、絶妙なバランスとなっている。他にもカリンバやハーモニカのゲストを迎えている。1曲ゲストにエストニアのミュージシャン、マリ・カルクンがヴォーカルとエストニアの伝統楽器であるカネレで参加している。エストニアの伝統的な歌をベースに作られ、穏やかで美しい曲調はアルバム全体の雰囲気と見事に融合している。
 多様性豊かなメンバーによるこのアルバムは、それぞれが異なる寛大な視点で相互作用することで、音楽は地理的な文化的定義を超え、美しく新しいものを生み出している。

※ゲスト参加しているマリ・カルクンについては、以下↓をご覧ください!

16位 Monoswezi · Shanu

レーベル:Riverboat / World Music Network (-)

 ジンバブエの伝統楽器ンビラ奏者としてソロでも活躍している女性音楽家ホープ・マシケを擁する音楽集団モノスウェージの最新作。モノスウェージ(Monoswezi)は、メンバーの出身国の頭文字、モザンビーク(Mo)、ノルウェー(No)、スウェーデン(Swe)、ジンバブウェ(Zi)から取りグループ名としており、メンバーは、ノルウェー、スウェーデン、ジンバブエ在住で、まさに多国籍バンド。アルバム名『Shanu』は、ホープ・マシケの故郷であるジンバブエのショナ語で「5」を意味しており、バンドの頭数を表しているだけでなく、本作が彼らの5枚目のアルバムであることを反映している。
 メンバーの出身地であるジンバブエとモザンビークのアフリカ音楽の伝統と、北欧ジャズやミニマル・ミュージックを融合させたこれまでのサウンドに、本作ではよりエレクトロニックなアプローチで探求している。これまでハルモニウムを使用していたが、60〜70年代のバンドが好んで使っていたメロトロンを使い、より新境地を目指した作品となっている。
 ホープ・マシケが書く歌詞には様々な社会的なテーマが織り込まれている。今回の作品でも、女性の不平等という継続的な問題や、貪欲で利己的なリーダーを皮肉り虐げられている人々を励ましたり…、アフリカ出身の女性からの目線で、我々に問題を投げかけている。そして彼女のンビラも変わらず大きな存在感を示している。
 R&Bやソウルの要素も感じられ、多国籍バンドである彼らにしか表現できないオリジナリティ溢れる作品となっている。今年注目のアルバムの一枚となるに違いない。

↓国内盤あり〼。

15位 Khöömei Beat · Changys Baglaash

レーベル:ARC Music (-)

 南はモンゴル、東はブリヤート共和国に接し、中央アジアに位置するトゥヴァ共和国(ロシア連邦共和国に属している)の男女5人組ロックバンド、ホーメイ・ビート。本作品がセカンド・アルバムとなる。
 2017年に結成され、伝統的な楽器や現代的な楽器の演奏技術、トゥヴァ独特の喉歌の習得など、それぞれの分野では一流のトゥヴァの音楽家たちで構成されている。2017年にファースト・アルバムを発表、中央アジアのホーメイ国際フェスティバルにも出演し「現代的な解釈でのホーメイ」というノミネーションで受賞もしている。その後は、各国のフェスにも出演、今日ではロシアだけでなくその周辺国でも知られた存在となっている。
 本作のタイトルは「The Hitching Post(馬などの動物をつないでおく支柱)」を意味する。その支柱はトゥヴァや他の遊牧民すべてにとって中心的な場所であり、他の場所に移すべきではなく、常に揺るぎないものとされている。自分たちの音楽についても、トゥヴァの伝統を守り常に揺るぎないものとしていくことをこのアルバムで表現している。
 トゥヴァ共和国の民族音楽をベースにした現代的な音楽を、伝統的な民族楽器と現代的な楽器で演奏、そこに彼らの特徴的なヴォーカルが重なり、まさに芸術作品と言える音楽となっている。
 MVでは、大地を切り裂くようなドラムで始まり、彼らが育ったトゥヴァの大自然の中、疾走感溢れる映像が、彼らのパワフルな音楽、自然を表現するホーメイと見事に融合している。アルバムジャケットにも表現され、MVの最後に現れる支柱が、まさに揺るぎないものとして登場するのがとても印象的。自然のエネルギーを感じる作品だ。

14位 Shanren · Shan Dao

レーベル:Pollux (-)

 1999年に結成された中国・雲南省出身の5人組バンド、山人(Shanren)の3枚目のアルバム。現在のメンバーは、中国の少数民族であるイ族、ブイ族、多数派民族である漢民族、そしてイギリス出身と、様々な民族的背景を持っている。以前は北京で活動していたが、2017年に雲南省昆明に戻り活動している。本作は8年ぶりとなるリリース作品で、自分たちのルーツとなる「山(Shan)」と、自分たちがこれまで旅してきた道を意味して「道(Dao)」を合わせ「山道(Shan Dao)」というタイトルにした。
 少数民族の民族楽器を使用し、各民族の民謡やオリジナル曲を演奏し活動している。最初は、西洋の楽器やロックなどの音楽スタイルで活動しようとしてしていたが、それでは突破口を開くことができないと感じていた。同時に、中国の楽器や民族楽器に無限の新しい可能性があることを発見し、現在のスタイルになったという。中国国内だけでなく、イギリス、カナダ、インドネシア、スペイン、アメリカなどの海外公演も行っている。
 本作は、民族楽器だけではなく、エレクトロニクスな音や現代の楽器との融合も行い、ラップを使ったりレゲエ的なアレンジにするなど、現代的な要素も盛り込まれている。
 彼らの最終的な目標は、人々を幸せにする音楽を作ることだそう。少数民族を大事にし、文化的にも人間的にも豊かな作品であることが伝わってくる。みんなが幸せになる作品といえよう。

13位 Baba Sissoko with Jean-Philippe Rykiel, Madou Sidiki Diabate, Lansiné Kouyaté · Griot Jazz

レーベル:Caligola (-)

  マリ出身のパーカッショニスト、ババ・シソコの最新作。今回は、フランス人で盲目の鍵盤奏者ジャン=フィリップ・リキエル、西アフリカの木琴として知られるバラフォンのベテラン演奏家ランシネ・クヤテ、マリのコラ奏者マドゥ・シジキ・ジャバテとの共演作。ジャン=フィリップ以外の3人は、西アフリカのグリオの名家出身。
 グリオ(Griot)とは、西アフリカの代々受け継がれている伝統伝達者のこと。本作で使われているンゴニやバラフォン、コラなどの楽器はグリオで使われている楽器。
 このアルバムは、ババ・シソコ、ランシネ・クヤテ、マドゥ・シジキ・ジャバテの3人が、コロナ禍でフランスで行われた音楽と演劇のショーのプロジェクトに参加したことがきっかけとなっている。プロジェクト参加者と共同生活し、休憩時間に3人でマリの音楽を演奏していたところ、この記録を残しておきたいと思うようになった。そこで、多くのアフリカ人アーティスト達の誕生に貢献しているジャン=フィリップのスタジオを借りることになり、ジャン=フィリップも一緒に演奏することになった。そしてほとんど即興的な演奏により3時間で録音したそうだ。このアルバムには、コロナ禍の困難においても、自分たちの音楽を聴いて、心や恐怖を和らげ、希望を与えられればいいという彼らのメッセージが込められている。
 グリオの楽器たちとジャン=フィリップのピアノ(時にはシンセサイザー)、ババ・シソコのヴォーカルがうまく融合し、まさにグリオ・ジャズとなっている。美しく、強さを感じられる作品。

12位 Rachel Magoola · Resilience: Songs of Uganda

レーベル:ARC Music (8)

 ウガンダでは著名なシンガーソングライターであるレイチェル・マグーラの最新作。ソロ作品としては7作目となる。
 彼女はウガンダで伝説的なバンド「Afrigo Band」のメンバーで活動しソロとしても活動。音楽活動だけではなく慈善活動も行い、ウガンダの文化の中で長きに渡り人道的な活動をしてきた。その結果として、今年のウガンダ総選挙で国会議員に選出された。政治に携わりながらもこのアルバムをリリースするとはすごいエネルギー!いや政治に携わったからこそ、このコロナ禍において、音楽を通して伝えたいメッセージがあったのかもしれない。
 アルバムは、ウガンダの文化と歴史にインスパイアされた楽曲で構成されており、レイチェルのオリジナル曲やコラボレーション曲に、ウガンダの伝統的な歌の解釈を織り交ぜている。ウガンダの伝統楽器の音も入り、全体的にハイテンポで陽気なサウンドで、思わず踊りだしたくなるような曲ばかり。この陽気な曲調と生き生きしたヴォーカルの裏には、平等、エンパワーメント、若者の教育に対する彼女の情熱が表現されている。ウガンダの人々に対し、彼らの強さと、彼らや祖国が直面するあらゆる苦難にもかかわらず、誇りを持ち続けて行こうと伝えている。タイトルを直訳すると「回復力:ウガンダの歌」まさにパンデミックの危機を歌を通して乗り越えようという彼女の強いメッセージが窺える。エネルギーを感じる素晴らしい作品。

11. Ogún Afrobeat · Unite

レーベル:Ogún Afrobeat (-)

 ナイジェリア出身のドラマー/ヴィーカリストの Akindimeji Onasanya が率いる多国籍大所帯バンド、オグン・アフロビートの最新作。スペインを拠点に活動し、アフロビートだけでなく、ジャズやアフリカの民族音楽グナワ音楽、アラブやエチオピアの音楽と融合、英語、スペイン語、ヨルバ語で歌い、彼ら独自の音楽を展開している。
 本作では、フェラ・クティのバンドにも在籍していたナイジェリアの Dele Sosimi や、キューバの歌手 Alejandro Gutiérrez、スペインの木管楽器の巨匠 Javier Paxariño、イランのマルチ楽器奏者 KavehSarvarian らもゲストで参加、彼らの音楽にさらに彩りを与えている。
 アフロビートとナイジェリア音楽のルーツがベースにありつつ、ファンクやジャズ、中東など様々な文化と融合し非常にカラフル、まさにワールドミュージックと言える。ホーン隊が音にパワフルさを加え、とてもカッコイイ作品となっている。

10位 V.A. · Changüí: The Sound of Guantánamo

レーベル:Petaluma (6)

 イタリア出身でニューヨーク在住の音楽ジャーナリスト Gianluca Tramontanaが、キューバの最東端グアンタナモ州で録音した伝統音楽チャングイ(Changüí)が、51曲収録されているアルバム。チャングイはグアンタナモ地方で150年以上の歴史を持つ伝統音楽で、サトウキビの精製所や、奴隷が住む農村で生まれ、ソンの前身とも言える音楽。グアンタナモ州のバラコアの町からグアンタナモ市、そして山村まで行き、現地の(プロとは言えない無名の)ミュージシャンたちの自宅や裏庭、ポーチなどでフィールド録音を行った非常に貴重な音源である。
 独特のリズムパターンがあったり、クラーベを使っている曲があまりないことなど、キューバのような大きくない島であるにも関わらず、地域差があることがよくわかる。小さなコミュニティで日常的に音楽と関わっている姿が想像できる素晴らしいアルバム。

9位 Ballaké Sissoko · A Touma

レーベル:Nø Førmat! (10)

 マリの作曲家/コラ奏者であり名手である、バラケ・シソコの最新アルバム。
 前作『Djourou』のプロモーションの合間を縫って、ベルギーの教会で1日かけて録音した8曲が収録されている。アルバムのオープニングを飾る曲は、世界中の優れたアーティストをベルリンから世界に発信する音楽プラットホーム「COLORS」のショーで演奏された。彼がその場で演奏を行うことで、マリの伝統と文化遺産を継承し、マンデの古典的なレパートリーを再構築できることを新しい世代に伝えたかった、と彼は語っている。
 前作はゲストを迎えた豪華な作品だったが、本作は彼のコラのソロのみで、とてもシンプルな作品となっている。だからこそ、彼の長いキャリアの中で、コラと対話してきた熟練した成果がこのアルバムに収められていると言えよう。アルバムタイトルの『A Touma』は「この瞬間」という意味。精力的に演奏活動を行なっているが、このアルバムを出すのは今だったのだろう。シンプルで心地良い音色を堪能できるアルバム。

8位 Canzoniere Grecanico Salentino (CGS) · Meridiana

レーベル:Ponderosa Music (4)

 Canzoniere Grecanico Salentino(CGS)は、1975年にイタリアの作家リナ・ドゥランテによって結成された、イタリア南東部サレント地方の伝統音楽アンサンブルグループ。その最新作となる。6月に1位でチャートインして以来、半年も上位をキープしている。入れ替わりが激しいこのチャートで上位をキープし続けているのは、すごいこと!
 7人編成によるこのグループは、南イタリアの伝統的な音楽と踊りを現代風にアレンジしてパフォーマンスを行う。これまでに18枚のアルバムを発表し、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中東などで多くの公演い、高く評価されてきた。2007年には、バンドリーダーだったダニエレ・デュランテから息子のマウロ・デュランテに引き継がれた。
 アルバムタイトル「Meridiana」は「日時計」という意味。アルバムのデザインも日時計を表現、日時計の時間が12であるように曲数も12曲ということで表現している。今回のアルバムでは、サレント地方の伝統的な曲と、ピッツィカ(イタリア・サレント地方に伝わる伝統的な踊りで男性と女性によるペアの踊り)を使った現代的なオーケストレーション作品を収録している。過去と現在が重なり合い、時間が拡大したり縮小したりしながら、12曲が流れていくイメージのアルバムだ。
 アルバムのホームページを見ると、このアルバム自体が、時間をテーマにした幅広いプロジェクトとなっている。科学と文化の世界の著名人から提供されたビデオ、画像、テキスト、寄稿文が集まり、マルチメディアと学際的なオリジナルのモザイクを構成している。稀に見る困難な年だからこそ生まれたプロジェクトではないだろうか。全体を通して聴いてみると、物語の全体が見えてくるかのようだ。必聴です。

7位 Justin Adams & Mauro Durante · Still Moving

レーベル:Ponderosa Music (-)

 イギリスのギタリスト/作曲家のジャスティン・アダムズと、本記事8位にもランクインしている CanzionIere Grecanico Salentino(GCS)のバイオリニスト/歌手/パーカッショニストであるマウロ・デュランテとのデュオ作。
 ジャスティン・アダムズは、砂漠のブルースで知られる Tinariwen のアルバムをプロデュースし、ブルースのギタリストとしても活動。2019年のWOMADで二人が共演し、友情が深まった。アダムズの砂漠のブルースと、デュランテの故郷である南イタリア・プーリアの伝統音楽タランタに共通点があることを見出し、このアルバムを制作するきっかけとなった。
 デュランテはフレームドラムとヴァイオリン、アダムズはブルースギターで、パンデミック中に重ね録りなしで制作。インスト曲もあるが、英語、イタリア語で、それぞれが歌っている曲もある。デュランテが伸びやかで美しい歌声を聞かせる一方、アダムズは乾いた渋い声で聞かせる対比が面白い。
 砂漠のブルースとイタリアの伝統音楽、共通点があるのかは謎だったが、アルバムを通して聴いてみると、彼らのルーツがうまく合わさり新しいものが生み出されているといえよう。大変聞き応えのあるアルバム。

6位 Shujaat Husain Khan, Katayoun Goudarzi, Shaho Andalibi & Shariq Mustafa · This Pale

レーベル:Lycopod (3)

 インドの古典的伝説である作曲家・シタール奏者シュジャート・フサイン・カーンと、イラン系アメリカ人のシンガー、カタユン・グーダルジ、イランのネイ奏者シャホ・アンダリビ、インドのタブラ奏者シャリク・ムスタファの4人によるコラボ作品。
 シュジャートとカタユンは、2008年頃より何度かコラボレーションしこれまでに6枚の作品をリリースしているので、相性はピッタリ。シュジャートのシタールの演奏スタイルは人間の声を模倣したもので「gayaki ang」と呼ばれている。そのシタールの音色と、ペルシャの詩に深く影響されたというカタユンの素晴らしい声が美しく融合されている。また、ネイの音色も低音で囁いているかのように聞こえ、そこにタブラのビートが重なり、素晴らしい音のコラボレーションとなっている。
 この作品では、13世紀のペルシャ語文学史上最大の神秘主義詩人であったルーミーの詩、特に愛についての詩に、今回新たな命を吹き込み、古い物語を多文化で新鮮に表現している。インドとペルシャの文化の融合が素晴らしく、とても美しい作品。

5位 Petrona Martínez · Ancestras

レーベル:Chaco World Music (9)

 コロンビアのブジェレンゲの女王、ペトローナ・マルティネスの最新作。健康上の理由からステージから離れていたが、今年夏にNYで開催されたアフロラティーノ・フェスティバルにリモートで参加、見事に復活を果たした。
 本作は、彼女の先祖の “抵抗” を表現した作品となっており、ブジェレンゲだけでなく、チャルパ、ファンダンゴ、ソン・パレンケといった彼女のキャリアを特徴づけるリズムに、ゲストの女性アーティストたちの声やリズムと融合している。ベナン出身のアンジェリーク・キジョー、コロンビアの歌姫ニディア・ゴンゴラ、キューバのアイメー・ヌビオラ、マリアッチバンドのフロール・デ・トロアチェ、ブラジルのシェニア・フランサなどの豪華なメンバー。アフロビート、ジャズ、マリアッチ、ルンバ、キューバのティンバなどのリズムと見事に融合した作品となっている。
 アルバムでは、彼女のキャリアの中で初めて作曲した曲の思い出についての証言で始まり、コロンビア・カリブのアフロ・コミュニティのシンボルであるブジェレンゲの未来についての考察の証言で締めくくられている。コミュニティの中で代々口承で受け継がれた伝統が忘れ去られてしまうことへの抵抗を示した作品となっており、大変貴重な作品。

4位 Fanfare Ciocărlia · It Wasn’t Hard to Love You

レーベル:Asphalt Tango (2)

 1997年、ルーマニア北西部の村で12人のミュージシャンにより結成されたジプシー・ブラス・バンド、ファンファーレ・チォカリーアの最新作。現在のジプシー音楽を代表し、世界で絶大な人気があるバンドだ。パンデミックの影響でライヴ収入が無くなり、計画していた25周年記念アルバムを制作できなくなり、昨年クラウド・ファンディングで世界中から資金を募っていたが、そのアルバムがとうとう完成!世界中のファンが待ち望んでいた作品だ。日本にも、2000年に初来日し、以降6回来日、2014年には「Fuji Rock」にも出演した。
 バルカン半島の金管楽器にジャズやポップス、ロックの要素を加え、世界最速と言われる猛烈なテンポで正確に演奏するファンファーレ・チョーカリーアは比類なき才能を表し、世界各地でカルト的な人気を得てきた。今回の最新作も、これまで以上にエネルギッシュでパワー全開、活気溢れた作品となっている。
 数年後には引退する予定とのことだが、最後に是非日本ツアーを行なって欲しい。生音を体験してみたいものだ。

3位 Omar Sosa & Seckou Keita · Suba

レーベル:Bendigedig (5)

 キューバ出身のピアニストオマール・ソーサと、セネガルのコラ奏者、セク・ケイタの最新作。2017年にリリースされた前作『Transparent Water』は世界で高い評価を得たが、これが彼らのセカンドアルバムとなる。
 パンデミック期間中に録音され、オマールと’90年代から行動を共にするベネズエラ出身のパーカッショニスト、グスターボ・オバージェスも参加している。
 「このアルバムのコンセプトは、平和、希望、団結です。私たちが生きているこの瞬間、すべてが少しずつ崩壊していく中で、私たちが最後に自分の中に持っているものは、自分の内なる声、自分の精神や光、そして祖先との神聖なつながりです。私たちは、音楽を通して希望を与え、一緒にいられることを伝えようとしています。」とオマールは語っている。パンデミック後の世界において、思いやりと真の変化の新たな夜明けへの希望の讃歌であり、平和と団結を求める人類の永遠の祈りを直感的に繰り返した作品となっている。
 アルバムタイトルの「SUBA」とは、セク・ケイタの母国語であるマンディンカ語で「日の出」を意味する。困難に直面していても新しい一日が始まる日の出を見て、正常な状態にリセットしようという意味がこめられている。コロナ禍で落ち込んでいる世の中で、希望が持てるアルバムである。

↓国内盤あり〼。(ハードカバー書籍風豪華44Pフルカラーブックレット付・ライナー日本語訳封入)

2位 Monsieur Doumani · Pissourin

レーベル:Glitterbeat (1)

 東地中海に浮かぶ小さな島国キプロス共和国の人気トリオ、ムシュー・ドゥマニの4枚目となる最新作。
 2011年に活動を開始して以来、彼らはキプロスの伝統音楽や民謡を現代的にアレンジし蘇らせるサウンドを追求してきた。世界中のフェスティバルなどに出演し、多くの聴衆から高い評価を得て世界中で紹介されてきた。2018年にリリースされた前作となる3rdアルバム『Angathin』では、Transglobal World Music Chartの「2018年のベスト・アルバム」として表彰された。
 満を辞してのこの最新作はドイツのレーベル「Glitterbeat Records」と契約し、彼らのサウンドとスタイルの面で新たな時代の幕開けとなった。前作リリース後、創立メンバーであったアンジェロス・イオナスが脱退し、サポートで参加していたアンディス・スコルディスが正式メンバーとなった。
 タイトルの「Pissourin」はキプロスの方言で真っ暗闇のことを意味する。本作では、夜闇の中にうごめく生物たちをモチーフとしたダークで幻想的な歌詞、彼らのトレードマークである地中海的なサウンドを、シュールでサイケデリック、アヴァンフォークの方向へと押し進めている。弦楽器、重層的な歌声、トロンボーンによるローエンドが織りなすダンサブルな感じで、全く新しいサウンドを展開している。

↓国内盤あり〼。

1位 Susana Baca · Palabras Urgentes

レーベル:Real World (-)

 ラテン・グラミー賞の受賞歴もあるアフロ・ペルーの大物歌手、スサーナ・バカの最新作がいきなり1位にランクイン! 今年で77歳、音楽キャリア50年目の大ベテラン歌手。本作は、プロデューサー/アレンジャーに、スナーキー・パピーのマイケル・リーグを迎え、ペルーの首都から150キロ離れた小さな町カニエテで録音された。
 ペルーの文化大臣も務めたことのあるスサーナは、ここ最近のペルーの政治情勢に憂いていたのだろう、このアルバムを抗議の形として録音したという。かつて、より良い世界のために闘った人々の遺産と伝統を、このアルバムに込めたそうだ。アヤクーチョの伝統曲「Negra del Alma」や、ムシカ・クリオーヤで Manuel Acosta Ojeda作の「Cariño」、ペドロ・ラウレンスのミロンガ曲「Milonga de mias amores」など、また自身の旧作にも収録されている「Color de Rosa」、「Vestida de Vida」を再録。自身の最も深いルーツの音楽を、現代的なアレンジに仕上げ、希望と抗議のメッセージを込めている。そして聴く人に、人生への愛と、誠実に生きることを感じてもらいたいと言っている。
 彼女の誠実な人生が込められているアルバムで、未だパワフルで成熟したヴォーカルにうっとりする一方、名曲たちの普遍性に圧倒される。いきなり1位になるのも納得の一枚。

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(ラティーナ2021年11月)

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