[2025.1]『唄方プロジェクト』 ジャマイカへ行く♪(後編)
文●宮沢和史
今回のジャマイカとの交流事業には、『唄方プロジェクト』から舞台演出家であり、歌や楽器を操る詩人でもあり、今回の旅の団長を務める平田大一氏、3人組の女性民謡グループのゆいゆいシスターズ、そして、宮沢の五人が参加した。予算の都合もあり、コーディネーターというかマネージャーを同行させることができず、演者のみでの渡航となった。宮沢は何度も何度も南米を行き来しているので空路による長旅には慣れているつもりだが、そもそも日本からジャマイカへの航路は選択肢が多くない。さらに、今回は “沖縄発・沖縄戻り” という形で成立したプロジェクトだったので選択肢はさらに絞られ、予算を抑えようとすればもっと航路は絞られていく。往路はカナダのトロントでトランジットのために14時間待ちという初めての洗礼を受けた。ところが、トロントの沖縄県人会の皆さんが現地のラーメン店で手厚いおもてなしをして下さり、14時間はあっという間に過ぎていった。振り返ってみると、南北アメリカ大陸を始め、各地で沖縄県人会の皆さんにいろいろな形でお世話になってきた。文化事業などで訪問する沖縄県民、日本国民にとってこれほど心強いことはない。トロントでのおもてなしと、暖かいラーメンの味が心と身体に染みれば染みるほど、沖縄県人会が存在しないジャマイカの旅がどのように展開していくか、いくばくかの不安がよぎらなくもない……。まあ、今夜はトロントの県人会の皆さんと歌って踊って楽しい時間を過ごそうと、頭を切り替えた。
30年余りのブランクがまるでなかったかのようにキングストンはあの時のままだった。少なくとも目に映るもののほとんどがあの時の景色だった。ただ、現地で受け入れ態勢を取ってくださったJICAの河崎氏によれば決して治安が良いとは言い難かった30年前よりも状況は悪化しているという。女性三人を有する我がチームは思っている以上に注意が必要なようだ。
4泊8日の今回のジャマイカ訪問での我々のミッションは3回のステージ。まずはエドナ・マンレー芸術音楽大学 音楽学部でのワークショップ。翌日は同じくエドナ・マンレー芸術音楽大学でのコンサート。最終日は在ジャマイカ日本大使館内においてジャマイカの要人、および他国の大使らを招待して行う日本大使館主催のレセプションコンサートの3ステージ。
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