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[2020.10]【「ラ米乱反射」電子版 第3回】ボリビアで先住民中心政権が復活 チリでは民主憲法制定が決まる

文●伊高浩昭(ジャーナリスト)

 2020年10月、同年のラ米で最も重要な2つの政治的出来事が成就した。ボリビア大統領選挙と、来年21年の新憲法制定を決めたチリ国民投票である。

▼ボリビア大統領選挙

 ボリビア大統領選挙は10月18日実施され、出馬した5人のうち最有力候補ルイス・アルセ元経済相(57)が得票率55・1%(338万票)で圧勝した。アルセは11月8日就任するが、それにより19年11月のクーデターでエボ・モラレス大統領(61)が追放されてから途絶えていた先住民主体の革新政党MAS(社会主義運動)の政権が1年ぶりに復活する。

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11月8日就任するルイス・アルセ新大統領

 アルセは、昨年のクーデターで崩壊したモラレス政権の経済相だった。連続13年続いたモラレス政権期に達成された高度成長を伴う民族主義経済建設の立役者であり、その手腕が支持を集めた。副大統領には、モラレスの腹心で、ラ米外交と第3世界外交に貢献したダビー・チョケウアンカ元外相(59)が選ばれた。同時に実施された国会議員選挙でもMASは上下両院で勝利、過半数を握った。

 モラレスMAS政権は、ボリビア東部サンタクルース州の農牧業界極右ルイス・カマチョ(41)の2019年10月の武力蜂起が発展した11月の軍・警察によるクーデターで打倒された。10月の大統領選挙で4選を目指したモラレスは当選したが、カマチョら先住民族支配を憎悪する極右は「選挙に不正があった」と虚偽情報を喧伝し武装決起、国中が大混乱に陥った。リチウムをはじめボリビアの豊かな地下資源を狙うトランプ米政権と米資本は政変を後押しし、武装決起はクーデターに繋がった。

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