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[2022.12]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉝】山頂のキリスト像を見上げて - Corcovado

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura

中村安志氏の大好評連載「アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い」と「シコ・ブアルキの作品との出会い」は、基本的に交互に掲載しています。今回は、言わずもがなのボサノヴァの代表的名曲「Corcovado」です。

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編集部

 リオで暮らしていると、様々な地点から、急斜面の頂上で両手を広げて街を見下ろすキリスト像の姿を目にすることができます。このコルコヴァードと呼ばれる山は、夜間ライトアップされる姿がまた幻想的。観光で頂上まで登れば、コパカバーナやイパネマといった美しい海岸のほか、ぐるりとグアナバラ湾全体を一望。マラカナン・スタジアムのある旧市街、南に伸びる高級住宅街など、360度の絶景を味わうことができます。

 ボサノヴァの成功に啓発され音楽が大いに盛り上がっていたリオで、この素敵な街のシンボルを誰も歌にせずにいるはずがありません。有名な作品「コルコヴァード」は、1960年に名手ジョビンの手で作られました。

Corcovado

 この制作時期に重なる1953年~62年の間にジョビンが住んでいた、リオ南部イパネマ地区のナシメント・イ・シルヴァ通り107番地の有名なアパートの部屋からも、このコルコヴァードはキリスト像の右手の方角からよく見えていたようで、名曲の成立には、このことも大いに関係していると伝えられます。

 また、この曲ができあがってから結構な間、ジョビンが郊外(ポッソ・フンド)の別荘に離れて過ごした後、リオの自宅に戻ってくると、近所に高い建築物が建ち始め、コルコヴァードの絶景が見えなくなっていったという悲しい話が伝えられています。この連載の7回目の記事で、ヴィニシウスたちからジョビンに贈られた讃歌「Carta ao Tom(ジョビンへの手紙)」に対する返歌としてジョビンが作ったユーモラスな替え歌の中で、彼は「僕の窓はもはや四角い枠に過ぎない/そこからは(建設会社の)セルジオ・ドラードが見える/キリスト像が見えていたあの方角に」と皮肉っていますが、上述の話を聞くに、まさに実話だったのであろうと思えてきます。

 ジョビンの多くの作品の例にもれず、この歌の歌詞にも一部紆余曲折があった模様です。特に、名手ジョアン・ジルベルトは、タバコが嫌いで、この歌の当初の歌詞の冒頭、Um cigarro, um violao(1本のタバコ、1本のギター)だったバージョンをUm cantinho, um violao(1曲の歌、1本のギター)に修正することを提案。ジョビンは喫煙家であったものの、その温厚な人格から、ジョアンの意見を受け入れたと伝えられています。

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