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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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#花田勝暁

[2014.8]ジルから、師ジョアンへ〜 『ジルベルトス・サンバ』は、ブラジル音楽の歴史を要約する

文●花田勝暁 ── あなたの新しいアルバムを待っていた人々にメッセージをお願いします。 ジルベルト・ジル(以下GG) もう50年以上活動してきて、これが53枚目か54枚目のアルバムです。これだけの年月が経ち、長い年月を経た老齢の特徴である柔らかさと和らぎによって生じた穏やかさと、人間性の成熟が、作品に表れています。老いに対して挨拶(サウダソゥン)している一作であると言えるかな。大体そのような感じですね。 ◆  ジルベルト・ジルの最新作『ジルベルトス・サンバ』は、ジルが

[2008.9]《今年はジルに抱擁を!》ジルベルト・ジル再考 第7回 もうすぐ来日じゃないか、 ジルベルト・ジル!!!

文●花田勝暁  「ポエチコとポリチコ」。ポルトガル語で「詩人と政治家」という意味だけれど、ジルベルト・ジルから「ポリチコ(政治家)」という肩書きは7月30日をもって外れた。ルーラ大統領は、ジルの3度目の文化大臣辞任の申し入れを承認し、ジルはブラジル共和国の文化大臣の職を辞した。2003年のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァの大統領就任以来、政権に不可欠な大臣として2期にわたり5年と約8ヶ月要職に就いたことになる。サルヴァドールの市議

[2008.2]《今年はジルに抱擁を!》日本ブラジル交流年に、ジルベルト・ジルの来日決定

文●花田勝暁 「誰彼なく一緒にやろうと持ちかけ、説得してやるのが好きなんだ」というジルベルト・ジルは、まさに40年以上ブラジル音楽シーンをリードしてきた張本人だ。彼程どんなジャンルのミュージシャンと共演しても、しなやかに映るミュージシャンはいない。  2003年から現在(2008年)まで、労働党ルーラ大統領の下、文化大臣を務める。音楽家としての最新録音作は2004年の『エレトラクースチコ』で、シコ・ブアルキやカエターノ・ヴェローゾという盟

[2023.4]【ブックレビュー|ブラジル現代文学】『曲がった鋤』イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール 著/武田千香、江口佳子 訳

文●花田勝暁 『曲がった鋤』という、幾分、そっけないタイトルの小説は、新人作家イタマール・ヴィエイラ・ジュニオール(Itamar Vieira Junior)によって書かれ、2020年にブラジルの主要な文学賞であるジャブチ賞(長編小説部門)とオセアーノ賞をダブル受賞し、2021年には、ブラジルで最も読まれた(売れた)本だった。2022年のベストセラー本のランキングでも、ランキング圏外とはならず、22位にランクインしていた〔Globo.com〕。ブラジルでは、2019年8月に

[2022.9] チン・ベルナルデス (TIM BERNARDES) インタビュー ⎯⎯ チン・ベルナルデスのコントラスト(後) ⎯⎯

 チン・ベルナルデスのコントラスト (Os contrastes de Tim Bernardes)  サンパウロ出身のシンガーソングライターは、 2枚目のソロアルバム『Mil coisas invisíveis』で MPB新世代を代表するアーティストとしての 地位を確立した。 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 文:ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz|サンパウロ在住、ブラジル人音楽ジャーナリスト)  グループ「オ・テルノ(O Terno)」でデビューして以来、注目を集めてきた

[2022.9] ドリ・カイミ & モニカ・サウマーゾ インタビュー後編 「ブラジルへの愛の宣言」

  アルバム『Canto Sedutor』をリリースしたばかりの作曲家ドリ・カイミ(Dori Caymmi)と歌手のモニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)へのインタビューの後編です。アルバムのサウンドの構築やテコ・カルドーゾ(Teco Cardoso)のプロデュースについて、このアルバムでの挑戦についてを語ってくれました。 文:ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz) ▼ ── アルバム収録曲の編曲はどうでしたか? ドリ・カイミ まず私が全部編曲を書いて、

[2022.9] チン・ベルナルデス (TIM BERNARDES) インタビュー ⎯⎯ チン・ベルナルデスのコントラスト(前) ⎯⎯

 チン・ベルナルデスのコントラスト (Os contrastes de Tim Bernardes)  サンパウロ出身のシンガーソングライターは、 2枚目のソロアルバム『Mil coisas invisíveis』で MPB新世代を代表するアーティストとしての 地位を確立した。 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 文:ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz|サンパウロ在住、ブラジル人音楽ジャーナリスト)  グループ「オ・テルノ(O Terno)」でデビューして以来、注目を集めてきた

[2022.9] ドリ・カイミ & モニカ・サウマーゾ インタビュー前編 「ブラジルへの愛の宣言」

文:ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)  ドリ・カイミとモニカ・サウマーゾの作品に共通しているのは、鳥、川、海、奥地、星空…といったものに代表される「ブラジル」です。アルバム『Canto Sedutor』で2人を結びつけているのも、この伝統的なブラジル音楽という同じ橋です。アルバム『Canto Sedutor』は、Biscoito FinoからデジタルプラットフォームとCDでリリースされました。  異なる世代のMPBの2つの声を組み合わせるというアイデアは、女性歌手

新作 『Fazer e Cantar』をリリース ─ ヂアナ・オルタ・ポポフ(Diana HP) インタビュー ─ ミナス音楽を21世紀にアップデートする宝石のような才能

 正統ミナス音楽を21世紀にアップデートする宝石のような才能、ヂアナ・オルタ・ポポフ(今作から欧文表記は“Diana HP”に)が、2018年の『Amor de Verdade』以来となる3rdアルバム『Fazer e Cantar』を完成させた。弊社が国内盤でリリースした(2022年8月29日発売)。 インタビュー・文 花田勝暁  今作は、2013年以来、ヂアナが生活と活動の拠点としているフランスで全編が録音された初めてのアルバムだ。ベーシストで、ヂアナの公私共のパート

[2014.5] 新世代ミナス音楽 ⎯ 21世紀のクルビ・ダ・エスキーナ、その現代性と肥沃さを聴く|Nova Geração Mineira, Contemporaneidade e Erudição

[月刊ラティーナ2014年5月号掲載記事]  1960年代末のミルトン・ナシメントを中心とするクルビ・ダ・エスキーナ(Clube da Esquina)・ムーブメントがロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタなどミナス派の巨頭を輩出したように、2000年代初頭には自分たちのミナスの音楽シーンをスタートしようとする若い音楽家が集まり「ヘシクロ・ジェラル(Reciclo Geral)」という第一新世代が生まれた。このヘシクロ・ジェラルとはマケリー・カ(Makely Ka)、クリスト

[2022.3]早川 純 インタビュー|新作ソロバンドネオン・アルバム『Bandoneon errante / さすらいのバンドネオン』

インタビューと文:花田勝暁  気鋭のバンドネオン奏者、早川純が2018年のソロバンドネオン・アルバム『Caja Magica(カハ・マヒカ)』以来、4年ぶりとなる2ndソロバンドネオン・アルバム『Bandoneon errante / さすらいのバンドネオン』をリリースする。ライフワークとして毎年実施しているソロツアーを通してたどり着いたソロ・アルバム第二弾。  「前作以上にじっくりと時間を掛けてアルバムを制作した」と早川が言う本作は、ライブ感を重視した前作とは趣を変え、緻

[2022.2]いま最も輝ける存在、サンパウロの女性シンガー、ヴァネッサ・モレーノ(Vanessa Moreno)へのロング・インタビュー

音、沈黙、強烈な感情。世界を感じ、それと相互に作用する歌とインストゥルメンツ。ブラジル音楽の新しい可能性を探るダイビングへのご招待。サンパウロの女性シンガー、ヴァネッサ・モレーノ(Vanessa Moreno)へのロング・インタビュー インタビューと文●伊藤亮介(大洋レコード)  サンパウロの新潮流、ノーヴォス・コンポジトーレスから彗星のように出現したスター。ヴァネッサ・モレーノの歌とフィ・マロスティカのベースからなる異色のデュオ作『Vem Ver』で我々の度肝を抜いてか

[2022.2] 青木菜穂子 ⎯ ソロピアノ・アルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』

文●花田勝暁  「セレステ・セプテット(Celeste Septet)」「クアルテート・コンフェイト(Cuarteto Confeito)」「オルケスタ・アウロラ(Orquestra Aurora)」などで活躍するピアニストの青木菜穂子が、ピアノ独奏を中心とするソロアルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』を2月15日、リリースした。   収録曲は以下の通りで、タンゴの名作①③⑦⑩の他、青木のオリジナルの新曲②⑥⑨、ワルツの名作④、フォルクローレ・ピアニスト

[2022.1] 【シリーズ:ブラジル音楽の新しい才能⑦】 トゥイオ(Tuyo)

 ブラジルのポピュラー音楽の中で頭角を現し始めた新しい才能を紹介するシリーズ。レポートは、ブラジル人音楽ジャーナリストのヂエゴ・ムニス。今回は、クリチーバ出身で、今、全国区で注目される3人組のグループを紹介します。 文●ヂエゴ・ムニス(Diego Muniz)  ブラジル国内のシーンで、作家性の強いインディーズバンドの存在感が、ますます増しています。アナヴィトーリア(Anavitória)、オ・テルノ(O Terno)、バイアーナシステム(BaianaSystem)は、競