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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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[2025.1]【映画評】『アンデッド/愛しき者の不在』〜メランコリックな北欧ホラーに潜む人間存在の深遠なドラマ

『アンデッド/愛しき者の不在』 メランコリックな北欧ホラーに潜む 人間存在の深遠なドラマ 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  家を出て歩きだした初老の男を、カメラは異様に高い位置から捉える。しかしすぐに男から離れてその先に広がるオスロの街全体を、まるで(ビルの上に立ったブルーノ・ガンツのような)神の視線でゆっくりと舐めてゆく。そこに木々のざわめきや鳥の鳴き声が重なり、やがて別の建物に入ってゆく男を、印象的な構図の中で再び見つめる。何気ない曇天の情景からどことなく不穏な雰

[2025.1]Best Albums 2024 ④

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第二弾です。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●清川宏樹 もちろん音楽に技術や質が大切なのは言うまでもない。だが結局の所、リスナーは文脈や物語性を排して音楽を聴くことはできないし、聴覚を通して表現者の人生観や独自性に触れることを望み、それを喜びとする。いかなる情報・記録へのアクセスも容易になった今、技術の保存だけではもはや音楽は残らない。音楽に新たな価値を与え、その枠組みを押し広げる人こそが、これからの

[2025.1]Best Albums 2024 ③

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第二弾です。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●宇戸裕紀ここ数年間寝ても覚めてもずっと聴いているのがアルゼンチン、コルドバ出身のZoe Gotusso①。ポップながらどこか影も感じさせるゾワゾワがたまらない。ラ・プラタのピアニスト Franco Dionigi が年の初めにボソッと送ってくれたアルバム②はメロディが慎ましく、彼らしいアルバムだった。④は米国にいてもウルグアイらしさ満開。アルゼンチンの国宝

[2025.1]Best Albums 2024②

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第一弾です。 第二弾は来週公開予定です! (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●長屋美保とにかくライブが良かったのが、アイマラにルーツを持つ米国のエレクトロニックミュージックの新鋭①、メキシコ北部バハ・カリフォルニア出身でスペイン在住のアンビエントの巨匠②、そしてジョーイ・キニョーネスが率いる③。新世代チカーノソウルは雨後の筍のように登場しているけど、その中でもジョーイの声量や表現力は突出している。④〜⑦は

[2025.1]Best Albums 2024 ①

2024年のベストアルバムを選んでいただきました!第一弾です。 第二弾は来週公開予定です! (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●おおしまゆたか 何と言ってもすずめのティアーズと長野友美に仰天。津山篤もこういう人だったのね。紅龍に涙し、《七つの月》に集うたうたい手たちに興奮した。Frankie Archer にも仰天。イングランドの歌謡伝統はついにこんな人を生みだした。Sue Rynhart がアイルランドからジャズ歌謡を定義しなおせば、Cathy Jor

[2025.1]ブラジル北東部マセイオ出身の新世代アーティスト〜ブルーノ・ベルリ 来日インタビュー

文:中原 仁  2022年、UKのFar Outからリリースされたワールド・デビュー・アルバム『No Reino dos Afetos』が日本でも話題となり、同年の「ブラジル・ディスク大賞」で関係者投票の3位にランクインした、北東部アラゴアス州マセイオ出身のシンガー・ソングライター、ブルーノ・ベルリ。現在はサンパウロに住んでいる。  2024年4月に『No Reino dos Afetos 2』をリリース。11月に共同プロデューサー/トラック・メイカーのバタータ・ボーイと

[2025.1]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 53】 Erasmo Carlos 『Erasmo Esteves』

文:中原 仁  「2024年ブラジル・ディスク大賞」関係者投票部門の7位が、故エラズモ・カルロス(1941~2022/11/22)の『エラズモ・エステーヴェス』。2024年のラテン・グラミーで「ポルトガル語によるロックもしくはオルタナティヴ・音楽部門」のベスト・アルバムに選出された。   エラズモは存命中、ニューアルバムの録音に向けて新曲を作り、共作も行なっていたが、志半ばで天国に旅立ってしまった。その後、制作途中のデモ音源などを息子のレオ・エステーヴェスが収集。未完成だ

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票④

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●MAKOミルトン・ナシメントと実力派ジャズ・ベーシスト&シンガーのエスペランサが、世界へブラジル音楽界の伝説を織り込んだ1. 。現代の粋なサンバ・カリオカで堂々と心を惹きつける、魅力あるペドロ・ミランダのアルバム2. 。ブラジルのシニアアイドル、シコ・ブアルキのとエドゥ・ロボに感謝の気持ちを込め乾杯! 3. 4. 。ダニ&デボラの親子が、ブラジル最高の19人編成のビッグバン

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票②

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●島田愛加R&Bにブラジル色が濃くなったリニケル①は国内でも最高評価!他にもジョタペ⑨やエラズモ追悼③の参加アーティストなど新世代の人気が安定してきた印象です。リスト外選出のブラズー⑤は室内楽+エレキギター編成でインスト好きは必聴。20年活動しているバイーアの打楽器集団の初録音②やグラミー受賞の⑦を発表したホシナンチレーベルには来年も注目です!アニッタ⑧は歌詞はさておき初期フ

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票③

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●中原 仁9月号の連載で激賞した1位のリニケルは、10年に1枚レベルの傑作! 2023年12月号の連載で激賞した2位のアギダヴィ・ド・ジェージは、バイーア打楽器音楽隊の新機軸!このほか10位のグルーポ・オファーなど、アフロ・バイーアの傑作が多かったことが2024年の最大の特徴。5位は4月号、6位は10月号、8位は6月号の連載で紹介してます。故エラズモ・カルロスの「Erasmo

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票①

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●麻生雅人オス・ガロチンは10年の1度の逸材。個人的には2位以下との点数差はかなり大きい。アギネス・ヌニスは2作目で、より表現の幅を広げてきた。ソウル界のキーパーソンの一人シウヴェラ、ディーヴァのジャマー、ソングライターのアンドレ・モッタによるトリオ・ユニットのヴェルチシ、ミナス出身のアウグスタ・ヴァルーナ、スタジオ録音アルバムはまだ未発表のドウギ・オー、フォーキーなイヴァン

[2025.1] 決定! ブラジルディスク大賞2024

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、29回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2024ブラジル・ディスク大賞」。総数2,962通の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。 関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。 2024年は、ミルトン・ナシメントとエスペランサのコラボレーション・アルバム『ミルトン+エスペラサ

[2024.12]【境界線上の蟻(アリ)~Ants On The Border Line〜25】ポーランドの鬼才が南インド勢と繰り広げる〝電脳シャクティ3.0〟〜サーガラ 『3』

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto 中央ヨーロッパ諸国の中でもとりわけ層の厚いジャズ・シーンを形成するポーランドは、ポスト・ロック、ヒップホップ、テクノ、アンビエント、ワールド・ミュージックなどの他ジャンルの要素に対して開かれた感覚を持つ音楽家が多いのも特徴的だが、1983年生まれのアルト・クラリネット奏者のヴァツワフ・ジンペル(Waclaw Zimpel)もその1人と言えるだろう。かつてギタリストの内橋和久がポーランドから気鋭のプレイヤーたちを日本へ招聘し

[2024.12]『唄方プロジェクト』 ジャマイカへ行く♪(前編)

文●宮沢和史  日本のフォークソング、和製ロック、流行歌、演歌、ムード歌謡。自分の音楽性の基盤にあるのはそれらの音楽であることは間違いないと断言できる。物心ついた時から、いやそれ以前から耳に入ってくる音楽の量は圧倒的に日本産だったわけだし、自分が生まれ育つ環境において無意識に共感できたり、逆に未知なる異郷に思いを馳せたりと、日本製音楽はまさに自分の血肉が形成される過程においての滋養に他ならなかった。ただ同時に言えるのはそういった音楽を創造してきた作曲家、作詞家、編曲者、演奏