マガジンのカバー画像

世界の音楽情報誌「ラティーナ」

「みんな違って、みんないい!」広い世界の多様な音楽を紹介してきた世界の音楽情報誌「ラティーナ」がweb版に生まれ変わります。 あなたの生活を世界中の多様な音楽で彩るために、これか…
このマガジンを購読すると、世界の音楽情報誌「ラティーナ」が新たに発信する特集記事や連載記事に全てア…
¥900 / 月
運営しているクリエイター

#中原仁

[2025.1]J-WAVE NX NIPPON EXPRESS SAÚDE! SAUDADE.. CARNAVAL 2025 〜今年も2月に開催!真冬の東京に出現する祝祭空間!

J-WAVE開局以来の最長寿番組、放送36周年を迎えた<NX NIPPON EXPRESS SAÚDE! SAUDADE..(サウージ!サウダージ)>(日曜17:00〜17:54放送)がプロデュースする、毎年恒例のブラジル・カーニヴァル・イヴェントが今年も2月に開催されます!なんと第27回!(すごい!) 今年のテーマは "RIO - BAHIA -TOKYO 歌とリズムの祝祭"。 カーニヴァルの都、リオデジャネイロとバイーア、そして東京を、サンバなどの多彩な音楽が結びます

[2025.1]ブラジル北東部マセイオ出身の新世代アーティスト〜ブルーノ・ベルリ 来日インタビュー

文:中原 仁  2022年、UKのFar Outからリリースされたワールド・デビュー・アルバム『No Reino dos Afetos』が日本でも話題となり、同年の「ブラジル・ディスク大賞」で関係者投票の3位にランクインした、北東部アラゴアス州マセイオ出身のシンガー・ソングライター、ブルーノ・ベルリ。現在はサンパウロに住んでいる。  2024年4月に『No Reino dos Afetos 2』をリリース。11月に共同プロデューサー/トラック・メイカーのバタータ・ボーイと

[2025.1]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 53】 Erasmo Carlos 『Erasmo Esteves』

文:中原 仁  「2024年ブラジル・ディスク大賞」関係者投票部門の7位が、故エラズモ・カルロス(1941~2022/11/22)の『エラズモ・エステーヴェス』。2024年のラテン・グラミーで「ポルトガル語によるロックもしくはオルタナティヴ・音楽部門」のベスト・アルバムに選出された。   エラズモは存命中、ニューアルバムの録音に向けて新曲を作り、共作も行なっていたが、志半ばで天国に旅立ってしまった。その後、制作途中のデモ音源などを息子のレオ・エステーヴェスが収集。未完成だ

[2025.1]2024年ブラジルディスク大賞 関係者投票③

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●中原 仁9月号の連載で激賞した1位のリニケルは、10年に1枚レベルの傑作! 2023年12月号の連載で激賞した2位のアギダヴィ・ド・ジェージは、バイーア打楽器音楽隊の新機軸!このほか10位のグルーポ・オファーなど、アフロ・バイーアの傑作が多かったことが2024年の最大の特徴。5位は4月号、6位は10月号、8位は6月号の連載で紹介してます。故エラズモ・カルロスの「Erasmo

[2024.12]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 53】 5 a Seco 『Sentido』

文:中原 仁  2000年代後半から2010年代に頭角を表した、ノヴォス・コンポジトーレス(新しいコンポーザーたち)と総称されるサンパウロの新世代。そのキーパーソン、ダニ・グルジェルとハイスクールの同級生だったト・ブランヂリオーニ、ヴィニシウス・カルデローニのほか、ペドロ・アルテーリオ、ペドロ・ヴィアーフォラ、ダニ・ブラッキ。この5人のシンガー・ソングライターが2009年に結成したバンド、シンコ・ア・セコ。当時は全員、20代前半だった。  当初は、ライヴのために期間限定で

[2024.11]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 52】 Marcelo D2 & SambaDrive 『Direct-to-Disc』

文:中原 仁  リオのヒップホップ・ユニット、プラネット・ヘンプのリーダー、マルセロ・D2(デードイス)はファースト・ソロ・アルバム『Eu Tiro É Onda』(1998年)以降、ヒップホップとサンバの融合の第一人者として新たな地平を切り開いてきた。  2017年、ピアノ・トリオと共演した6曲のスタジオライヴ・セッション『Marcelo D2 & Samba Drive - Living Room Live Vol.1』をYouTubeで公開。DJなし、生バンドに乗っ

[1998.11]ゲットーの声をラップする90年代のクールなカリスマ 〜マルセロD2インタビュー〜

文:中原 仁 マルセロD2が語るプラネット・ヘンプ、ナサゥン・ズンビ、そして初のソロ・アルバム  リオのストリート世代を代表するグループのひとつが、その名も「マリファナ惑星」と名乗るプラネット・ヘンプ。ハードコアなロックやファンク、ヒップホップを土台にサンバのエッセンスも織りまぜつつ、ドラッグ、貧困、犯罪、政治の不正といったブラジル社会の暗部を鋭くえぐり出してラップする。リーダーにしてラッパーで歌詞も書くマルセロ・D2(デードイス)は、ゲットーの若者から始まって裕福な階層

[2024.10]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 51】 Zé Manoel 『CORAL』

文:中原 仁  1980年、北東部ペルナンブーコ州生まれ、現在はサンパウロが拠点のシンガー・ソングライター/ピアニスト、ゼ・マノエウ。生地のペトロリーナは州都のレシーフェから約700キロ内陸の都市でサンフランシスコ川に面し、対岸はジョアン・ジルベルトの故郷でもあるバイーア州ジュアゼイロだ。  ゼ・マノエウのリーダー作はこれまでに3タイトル、日本盤CDがリリースされてきた。2024年9月リリースの『CORAL』は『Do Meu Coração Nu(裸の心から)』以来、4年

[2008.7]《今年はジルに抱擁を!》ジルベルト・ジル再考 第5回 ジルの体内を流れるバイーア/ブラック・ミュージックの濃厚な血流

文●中原 仁  シリーズ「ジルベルト・ジル再考」、第5回は「バイーア」そして「ブラック・ミュージック」をキーワードに、ジルの壮大な音楽世界に迫っていくことにしよう。  言うまでもなく、ジルベルト・ジルはアフリカ系ブラジル人で、アフロ・ブラジル文化の都・バイーア州サルヴァドールの出身だ。バイーアに根ざしたアフリカ性は、ジルが先天的に備えているアイデンティティである。  しかしながら、初期のジルの音楽において、アフロ・バイーア成分はさほど顕著ではない。67年のポピュラー・ソング

[2024.9]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊿】 Liniker 『Caju』

文:中原 仁  現代ブラジルのLGBTQ+アーティスト・パワーを代表する存在の、リニケル。2021年に発表した初ソロ名義のサード・アルバム『Indigo Borboleta Anil』が大ヒットし、2022年発表のラテン・グラミーで「ベストMPBアルバム」を受賞した。  日本でも「2021年ブラジル・ディスク大賞」音楽関係者投票部門で、マリーザ・モンチの『Portas』(一般投票1位)、カエターノ・ヴェローゾの『Meu Coco』(一般投票2位)といった強豪を抑えて第1位に

[2024.8]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊾】 Alaíde Costa 『E o Tempo Agora Quer Voar』

文:中原 仁  2024年の12月で89歳を迎える歌手、アライーヂ・コスタ。50年からプロ活動し、最初はボレロを中心に歌っていたが、50年代末、ジョアン・ジルベルトの手引きでボサノヴァ人たちを紹介されてボサノヴァ歌手となった。音楽仲間からリスペクトされる存在だったが、黒人であるため名声に見合った仕事を思うように得ることができずにいた。  その後、音楽の幅を広げ1972年、ミルトン・ナシメントの『Clube da Esquina』に参加して歌った「Me Deixa em P

[2024.7]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊽】 Badi Assad, Orquestra Mundana Refugi 『Olho de Peixe』

文:中原 仁  アサド兄弟(セルジオ&オダイル・アサド)の妹であるギタリスト/ヴォイス・パフォーマー、バヂ・アサド(ネイティヴにはアサーヂと発音)がオルケストラ・ムンダナ・ヘフージと共演し、レニーニ&スザーノの1993年の超名盤『Olho de Peixe(魚眼)』をカヴァー、いや、リクリエイトした意欲作『オーリョ・ヂ・ペイシ』を5月末にデジタル・リリースした。  バヂは2019年に来日公演を行なった際、J-WAVE「サウージ!サウダージ」に出演してスタジオライヴで弾き語

[2024.6]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊼】 Moreno Veloso 『Mundo Paralelo』

文:中原 仁  2011年の来日時、東京で嶺川貴子、高野寛と録音した曲を含むリーダー・アルバム『Coisa Boa』(2014年発売)から10年。モレーノ・ヴェローゾが新作を発売した……、と書いたが、実はこの間、もう1枚のアルバムがある。パンデミック期間の2020年、ギターの弾き語りで録音し、USAのアート・ギャラリーのレーベルからCDでリリースされた『Every Single Night』(サブスクでは聴けない)。新作『Mundo Paralelo』は、多彩な共演者と作っ

[2024.5]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊻】 Bernardo Zen 『Tudo é sinal』

文:中原 仁  このファースト・アルバム『Tudo É Sinal(トゥード・エ・シナル)』がサブスクで配信開始された2024年3月14日、18歳のバースデーを迎えたサンパウロのシンガー・ソングライター&ギタリスト、ベルナルド・ゼン。学校の友人たちと組んだバンド、ウマ・リラとの共演で、ベルナルドが全9曲を作詞作曲。収録時間20分のショート・サイズながら、白昼夢のようにさまざまな映像(半ば幻影?)が浮かんできて、次はどこに連れていかれるんだ? と言いたくなるようなトリップ感が