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[2022.5]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年5月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】
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[2022.5]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年5月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

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e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。

※レーベル名の後の [ ]は、先月の順位です。
「Transglobal World Music Chart」は、世界各地のワールドミュージック専門家の投票で決まっているワールドミュージックのチャートです。主な拠点がヨーロッパなので、ヨーロッパに入り込んだワールドミュージックが上位にランクインする傾向があります。

20位 Oumou Sangaré · Timbuktu

レーベル:World Circuit / BMG [-]

 マリ・バマコ出身のベテラン女性歌手ウム・サンガレの最新作。5年ぶりの作品で、本作が9作目となる。現在のマリ、コートジボワール、ギニアの3カ国の国境が交わる地点を囲み、ワスル川流域にある文化圏および歴史的地域でもあるワスル地方の伝統音楽、ワスル音楽を代表するアーティストでもある。
 1989年に1stアルバムをリリースして以来精力的に活動しており、これまでリリースされたアルバムがグラミー賞のベスト・ワールド・ミュージック・アルバムにノミネートされるなど、大きな評価を得ている。また、アリシア・キーズとテレビ番組でデュエットしたり、同じマリ出身のアーティストAya Nakamura が彼女に捧げる歌「Oumou Sangaré」をリリースしたり、2019年にはビヨンセが映画『ライオンキング:ギフト』のサウンドトラック「Mood 4 Eva」で、彼女の代表作の一つ「Diaraby Néné」をサンプリングするなど、多くのアーティストから慕われている偉大な存在。
 本作はパンデミック中に渡米したところロックダウンとなってしまい、滞在が延長され、その中で生まれた楽曲がほとんどを占めている。同郷の旧知の友人であるカマレ・ンゴニ奏者のママドゥ・シディベとともに楽曲制作を行った。彼女の30年にわたるキャリアの中で一番、音楽、歌詞に向き合った時間だったと言う。
 タイトルの『Timbuktu』は、マリ中部にある砂漠の民トゥアレグ族の都市のこと。崩壊の危機にあるマリの現在の政治状況を憂慮し、かつて栄えたこの都市がマリの象徴である歴史に希望を見出すべく名付けられたそうだ。また、アフリカの悪しき習慣、強制結婚や一夫多妻制などで制限されている女性達の状況も表現している。強く訴えているかのような低くパンチのある声、そして時には女性達に寄り添うような優しさ溢れる声がとても印象的。ワスル音楽の伝統的なリズムと現代的なアレンジがうまく噛み合い、サウンドが心地良い。
 彼女は実業家でもありマリで事業を興し、そこで雇用を生み、また彼女自身の財団を作り生活に困難な女性や子供達を支援するなど、音楽活動だけに留まらず、社会活動にも大きく貢献している。マリはもとよりフランスからも勲章が授与され、ユネスコ賞も受賞、2003年に彼女は国際連合食糧農業機関 (FAO) の親善大使も任命されている。
 彼女の活動、社会的貢献を考えると、本作はヒューマニズムの信念に基づく芸術活動の集大成とも言える説得力のあるアルバムだと言えよう。

19位 The Good Ones · Rwanda… You See Ghosts, I See Sky

レーベル:Six Degrees [-]

 ルワンダの3人組ユニット The Good Ones の4作目となるアルバム。過去3作と同様、グラミー賞受賞経験もある音楽プロデューサーで作家のイアン・ブレナン(Tinariwenの『Tassili』などをプロデュース)が本作もプロデュースを行なった。イアンとその妻でイタリア系ルワンダ人写真家・映像作家のマリレーナ・ウムホーザ・デリが、メンバーの農場で彼らの演奏を録音した。
 ルワンダは元々フツ族、ツチ族、トゥワ族の3つの部族で構成されていたが、ベルギー人入植者によってツチ族とトゥワ族を優遇するまで、何世紀も平和に共存していた。しかし部族を対立させ、そこで発生した部族間における憎悪を煽った結果、1959年と1973年、そして1994年のルワンダ大虐殺に繋がったとされている。メンバーは全員、大虐殺の生存者で、それぞれ三つの部族をルーツに持っている。本作は、ルワンダの大量虐殺の犠牲者を追悼する日(4月7日)に合わせてリリースされた。
 一曲目は「The Darkness Has Passed (Genocide 1959-1994)」というタイトルで、まさにルワンダに起こった35年に及ぶ悲劇を歌ったもの。ギターソロとパーカッションというシンプルな演奏、そして多くの人の悲しみを代弁するかのような歌声が胸に沁みる。しかし、アルバム全体は悲しみばかりでなく、ルワンダの自然や彼らの日常を歌う素朴な歌も収録されている。鳥の囀りなど自然の音が入っているのも農場でのライヴ録音ならではで、彼らの生活が垣間見える。
 1曲だけプロデューサーのイアンと親交があるアメリカのジャズミュージシャン、ダニエル・カーターがゲスト共演している。メンバーに寄り添うようなダニエルのサックスが、彼らの素朴さをさらに引き立たせている。
 アルバムタイトルは「ルワンダ…あなたは幽霊を見て、私は空を見る」。
演奏や歌がとてもシンプルであるが故に、彼らの強さや人間性を感じられる作品だ。

18位 Dobranotch · Zay Freyleikh!

レーベル:CPL-Music [14]

 ロシア、サンクトペテルブルグ出身の男性7人組クレズマー&バルカンバンド Dobranotch の最新作。3月に初ランクインし、3ヶ月連続でランクイン。
 1998年にフランスで結成、フランスの都市ナントの路上で演奏活動を始め、20年以上にわたりユダヤ、ジプシー、バルカンの伝統音楽を演奏してきた。世界20カ国以上でツアーを行い、各国の音楽フェスにも多く出演し、ルーツミュージックの無限のエネルギーを世界中に届けている。
 このアルバムは、イディッシュ語でラビの言葉から始まり、ユダヤ人社会の中で100年以上前から伝えられている伝統的な曲、トルコの民謡をセファルディ風にアレンジした曲などが収録されており、彼ら独自のクレズマーを展開している。タイトルの「Freylekh」とは、東欧のユダヤ教の踊りを意味しており、まさにタイトル通り踊りたくなるようなアルバム。

17位 Şatellites‎ ・ Şatellites

‎レーベル:Batov [-]

 イスラエル・テルアビブで結成された若手6人組バンド「Şatellites」、セルフタイトルである本作がデビューアルバムとなる。
 トルコの伝統楽器であるサズが使われ、音階も中東音楽なのだが、シンセサイザーやパーカッション、ドラムが入り、グルーヴはファンク、ディスコ、サイケデリックといった感じで、異なる要素が見事に融合した新しい音楽となっている。これは良い!
 昔から聞かれているトルコの伝統的な楽曲、トルコのバンド Baba Zulaなどのカバー曲、そして彼らのオリジナル曲が収録されている。インスト曲あり、女性ヴォーカルも入った曲もあり、バラエティに富んだエキサイティング(!)な内容となっている。
 トルコ音楽の豊かさが現代的に表現され、まさに新しい「アナトリアン・ロック」と言えるアルバム。今後の活躍もかなり期待できるグループだ。

16位 Mircan Kaya · Minor

レーベル:UCM Productions [-]

 トルコのミュージシャン、ミルカン・カヤの最新作。トルコの黒海地方の山村で少数民族であるラズ/ミングレリアンとグルジア人のルーツを持って生まれ、トルコの多文化環境の中で育った。音楽家である一方で、彼女は土木・地震工学のエンジニアでもあり、国際的なエンジニアリング・プロジェクトのディレクションやコーディネートを務めたりと、とても多才である。2005年に1stアルバムをリリースして以来、精力的に活動している。本作は2012年にリリースされたが、一部修正され今回再リリースされたもの。
 タイトル『Minor』はまさに少数民族のことを表現している。彼女のルーツであるラズ/ミングレリアン、グルジアをはじめ、ボスニア、クルド、イディッシュ語などトルコの少数民族の民謡と、彼女のオリジナル曲が収録されている。異なる民族のミュージシャンたちが、伝統的な民族楽器と現代的な楽器を演奏、そして彼女の叙情的なヴォーカルが美しく組み合わされている。トルコの文化や民族の多様性、その豊かさが見事に表現されている。

15位 Stelios Petrakis Quartet · Spondi

レーベル:Artway Technotropon / Molpe Music [12]

 ギリシャ・クレタ島出身の擦弦楽器リラの名手、ステリオス・ペトラキスが率いる4人組ユニットによる最新作。
 スペイン・バレンシア地方のマルチ撥弦楽器奏者エフレン・ロペスとイラン出身のパーカッショニスト、ビジャン・シェミラニと共演した2017年の前作『Taos』は世界各国で好評を博し、多くの賞を受賞した。7年ほど前からこのユニットでも活動しており、本作は2作目のアルバムとなる。メンバーは、リュートのディミトリス・シデリス、マンドリンのミハリス・コンタキサキス、そしてダンス担当のニコス・レベシス。ダンスのステップの音も彼らの音として含まれるそうだ。この4人組で、クレタ島の音楽とダンスを世界各地のフェスティバルで披露してきた。
 本作は彼らのオリジナル作品や、クレタ島の伝統的な楽曲などが収録されている。ステリオスと共演したエフレン・ロペスとビジャン・シェミラニもゲストで参加。他にもクレタ島のバグパイプであるアスコマンドウラや、ヴォーカルもゲストで参加している。3人だけの弦楽器の音色も美しいが、ステップ音、打楽器、バグパイプの音色や歌声も加わるとさらに美しく、壮大さが増す。
 タイトルはギリシャ語で「献酒」という意味。ステリオスが今まで関わってきた人たちに敬意を表してこのアルバムを捧げる、ということで付けられたそう。地中海やその周辺の美しい島々を思い起こさせる。

14位 Mamak Khadem · Remembrance

レーベル:Six Degrees [7]

 イラン人女性歌手ママク・カデムの最新作。テヘランで生まれ、幼少期にはイラン国立ラジオ・テレビの児童合唱団で歌っていたが、イラン革命が起こる前の1977年に10代でアメリカに移住した。修士号を取得し教職に就く傍らで本格的に音楽の道を歩み始め、イラン系フュージョンバンド「AXIOM OF CHOICE」を結成、バンド名義では3枚のアルバムを発表している。2007年にソロ作品としてファーストアルバムを発表、本作が4枚目のアルバムとなる。ロサンゼルス・タイムズ紙で「世界で最も恍惚を感じさせてくれる驚異的な音楽の一つ」と評され、古代の詩とペルシャの巨匠の音楽にルーツを持ち、大胆で革命的な新しいサウンドで観客を魅了している。
 本作は、コロナで亡くなった最愛の父に捧げたアルバム。父への深い愛情、別れ、喪失感を表現しており、彼女の気品が感じられる美しい作品となっている。シングルカットされた曲「Across the Oceans」も収録されており、コールドプレイのクリス・マーティンがピアノとヴォーカルでゲスト参加。また、ペルシャの詩人ルーミーの詩の朗読でルーミー研究家であるコールマン・バークスもゲスト参加している。ママクが難民キャンプで子供達と過ごすことで生まれた曲で、子供達が音楽を通じて強さと希望を見出せるようにと作られた。遠隔で録音された子供達の合唱も参加している。
 MV(上記動画)も本当に美しく、貧しい境遇で生まれた子供達が純粋な意志で乗り越え、そして彼らが救おうとしているクジラは、地球温暖化、環境破壊、水問題などの現状を象徴している。楽曲、歌声、MVを含め全てが美しい。

13位 Somi · Zenzile: The Reimagination of Miriam Makeba

レーベル:Salon Africana [-]

 ルワンダとウガンダから移住してきた両親のもとアメリカ・イリノイ州で生まれたボーカリスト / 作曲家 / 作家のソーミの最新作。前作の『Holy Room - Live at Alte Oper with Frankfurt Radio Big Band』でアフリカ系女性としては初めてグラミー賞ベスト・ジャズ・ボーカル・アルバムにノミネートされた実力派歌手。本作は、”ママ・アフリカ”ことミリアム・マケバの生誕90年を記念して、マケバの音楽的貢献と社会的正義のメッセージを称えるためにリリースしたトリビュート作品である。
 ミリアム・マケバは、2008年に亡くなった南アフリカ共和国のシンガーソングライター。1950年代に南アフリカだけでなく全米やヨーロッパでも人気があった歌姫で、世界的に認められた最初のアフリカ人ミュージシャンの一人。母国のアパルトヘイト制度を反対していたため国外追放されてしまい、母国に帰れずアメリカやギニア、ベルギーなどに移住し音楽活動をしていた。帰国できなかったため、母親の葬儀にも参列できなかったという。アパルトヘイト撤廃後は、国連食糧農業機関の親善大使を務めるなどアフリカのために貢献し、2005年に引退を発表した。
 本作は、マケバの功績を讃え、彼女の生涯をもとにつくられたミュージカル劇「Dreaming Zenzile」がベースになっている。この主演と音楽を務めたのがソーミで、10年近い準備期間を費やし今年初めに初公演が行われた。
 マケバの楽曲には、南アフリカのコサ族の言語の発音であるクリック子音(舌を口の中で鳴らしカスタネットのような音がする)が用いられる。本作にも、それが織り込まれておりソーミがマケバをリスペクトしていることが伺える。マケバの代表曲がソーミの解釈により洗練されたアレンジとなり、しなやかなヴォーカルが非常に心地良い。
 またゲスト陣も豪華!南アフリカからは、グラミー賞を受賞した男性ボーカルグループ Ladysmith Black Mambazo、シンガーソングライターのMsaki、ボーカリストで活動家の Thandiswa Mazwai、ジャズピアニストで作曲家のNduduzo Makhathiniが参加。アメリカのジャズシンガー Gregory Porter、フェラ・クティの息子のセウン・クティや、アンジェリーク・キジョーも参加している。

12位 Divanhana · Zavrzlama

レーベル:CPL-Music [9]

 ボスニアの5人組バンド、Divanhana の6枚目のアルバム。スタジオ録音としては4枚目。前作は2018年にリリースしたので。4年ぶりのリリース。
ボスニアの伝統的な民族音楽であるセヴダ(セヴダリンカともいう)を、ジャズ、ポップスなど現代的なアレンジで演奏している。2009年に結成、2011年にファーストアルバムをリリースしている。それ以来、各国の音楽フェスに出演、ヨーロッパ各地でのコンサートツアーも成功させている。
 本作はパンデミック直前の2020年2月に録音されたもの。ボスニアで歌い継がれてきた伝統的な歌や、彼らのオリジナル作品が収録されている。そしてパンデミック中にスロベニアやスイス、アルゼンチンなど他国のミュージシャン達ともやり取りし、このアルバムに反映させている。
 ボスニアは地理的な影響もあり、様々な宗教、文化、伝統が歴史的に複雑に絡み合ってきた地。そのせいかゼヴダのメロディーは短調であり、とても感情的である。でも彼らの音楽はそれだけではない。現代的な要素や、世界の他の地域の音楽要素も取り込んでおり、彼ら独自のセヴダを創り上げている。

11位 Le Vent du Nord · 20 Printemps

レーベル:La Compagnie du Nord [17]

 カナダのフランス語圏であるケベック州出身の男性五人組バンド、ル・ヴァン・デュ・ノールが、結成20周年を記念して作ったアルバム。これが11枚目のアルバムで、これまでの作品は、数々の賞やノミネートを獲得しており、世界各地のフェスにも出演しているベテランバンド。
 彼らは、アイルランドとブルターニュのケルト音楽の影響を強く受けているケベックの民族音楽を探求、収集している。これらの伝統的な曲とオリジナル曲をミックスした楽曲を、ハーディガーディ(民族楽器で弦楽器の一種)やブズーキ、フィドル、ギターなどの弦楽器、ボタンアコーディオン、ピアノなどを使い演奏している。
 この記念となるアルバムでは、インストゥメンタルの曲もあり、ヴォーカル入りの曲もあり、そして五人だけのアカペラで見事なハーモニーも披露しており、彼らの豊かで高い音楽性を表現している。男声ハーモニーの成せる技だからか、力強さも感じられる。何より、全員がヴォーカルできるというのが素晴らしく、五人の声がなんともたまらない。

10位 Yungchen Lhamo · Awakening

レーベル:Tibet Arts Management / Six Degrees [8]

 チベットのラサで生まれ育ったシンガーソングライター、ユンチェン・ラモの最新作。これが6枚目のアルバムとなる。彼女の名前は「メロディーの女神」という意味を持つ。音楽の夢を追いかけるため、ヒマラヤ山脈を越えインドへ、その後オーストラリアに移住した。そこで瞑想の祈りを歌い始めたことがきっかけで音楽への道へと進み始め、ファーストアルバムはオーストラリアでベストワールドミュージックアルバム賞を受賞している。現在はニューヨーク在住で、カーネギーホールをはじめとした世界各地の有名ホールで公演を行ったり、多くのミュージシャン達とも共演、映画のサントラにも携わっている。
 2019年6月にマドリードで公演したことがきっかけで、本作のプロデューサーとなるフリオ・ガルシアとカルメン・ロスと出会い、今回のアルバムを制作することになった。本作はスペインで録音され、フラメンコの伝説的女性歌手であるカルメン・リナーレスも特別ゲストとして参加している。最初はお経を唱えるように始まり、徐々にフラメンコと融合し、最後はお経のように終わる。フラメンコとお経がこんなにもマッチングするとは驚きだ。
 彼女の美しく強い声が、波動のエネルギーとなって心に響く。低音も高音も素晴らしく、精神的にも内側から解放されるような、とてもスピリチュアルな作品だ。

9位 Gonora Sounds · Hard Times Never Kill

レーベル:The Vital Record / Dust-to-Digital [11]

 盲目のギターの名手であり、シンガーソングライターでもあるダニエル・ゴノラが率いるジンバブエのバンド Gonora Sounds のファーストアルバム。2004年から路上で演奏活動を行なっていたが、2016年、路上で息子(ドラム担当)と演奏する動画が1000万回以上のビュー数を得て爆発的な人気となった。その後、この親子デュオはドキュメント映画に出演したり、世界の様々なアーティストとコラボしたりと大活躍。ついにアルバムを制作することになり、ジンバブエの音楽界の大御所とアメリカのプロデューサーによるプロデュースでリリースされた。
 親子二人で活動していたが、近年ギター、ベース、コーラスのメンバーも加わり音に厚みが増した。彼らはジンバブエの音楽であるスングラ(Sungura)を演奏する。スングラはジンバブエ独特の音楽で、アフロキューバ、コンゴ、ケニア、南アメリカなどのルーツを持ち、それらが融合しているのだが、海外で聞かれるのは今は非常に稀なことなのだそう。 
 ダニエルが弾くエレキギターと情熱的なヴォーカル、それを支えるメンバーのコーラスが、軽やかで陽気な雰囲気を感じる。アルバムの最後は「アーメン」で締めくくられており、彼らの人柄が伝わってくるようだ。
 上記動画では、ギターにマイクをくくりつけて歌うダニエルの姿がとても印象的。ハンデを持って路上で演奏してきたからこそのアイデアだろうが、なんと理にかなったことかと驚いた!

8位 Park Jiha · The Gleam

レーベル:Tak:til / Glitterbeat [6]

 韓国で高い評価を得ている作曲家、マルチアーティストのパク・ジハの3枚目のアルバムとなる最新作。アルバムタイトルは「煌めき」を意味し、音楽と光の交わりをテーマにした作品となっている。韓国ウォンジュ市にある安藤忠雄が設計した美術館「ミュージアムSAN」にあるスペース「瞑想館」での特別公演のために作られた曲も収録されている。この公演はコロナの影響で日程がかなり延期になってしまったそうで、その期間アルバムを制作するのにじっくりと集中できたとのこと。
 前作同様本作でも彼女がすべての楽器を演奏している。アルバムジャケットの写真は、センファン(Saenghwang)という日本の笙に似た韓国の伝統楽器。他にも、オーボエのような木管楽器ピリ(Piri)、打弦楽器のヤングム(Yanggeum)や、グロッケンシュピールを彼女一人で演奏している。それぞれの音を録音し重ねているのだろうが、その重なり具合や音の質感、無音になるまでの間隔や呼吸感が絶妙で、光を音として見事に表現している。
 上記動画一つ目はサイレントモノクロ映画「Sunrise」のサウンドトラックとして制作された曲、二つ目は「瞑想館」での公演の様子。素晴らしいアルバムなので、これらの動画も堪能していただきたい。

↓国内盤あり〼。

7位 Vigüela · A la Manera Artesana

レーベル:ARC Music [3]

 小説『ドン・キホーテ』の舞台で知られるスペイン中南部のカスティーリャ・ラ・マンチャ出身の5人組ユニット、ヴィグエラ(Viguela)の最新作。
本作が9枚目のアルバムとなる。2月に6位で初ランクイン、3月に1位に、そして今月も上位をキープしている。
 1980年代半ば頃から活動しているベテラングループ。2016年頃から海外に向けて進出し、ヨーロッパ各地のフェスティバルなどで演奏、ワークショップも行なっている。スペインが国の事業として海外に文化を紹介する活動の企画にもピックアップされ、フラメンコ以外のスペイン伝統音楽を国際的なプロのステージで披露した最初のグループでもある。
 アルバムタイトルは「職人道」という意味。本作では「職人的な創造性」ということに焦点を当て、スペインの舞踏音楽であるファンダンゴ、ロンディーニャ、セギディージャ、ホタ、そしてアカペラで歌うトナダ、活気のあるソンなど、様々な地域の伝統的なスペイン音楽をこのアルバムで紹介している。
 スペインの地方で古くから根付いている曲を今もなお守り続け、それを世界に向けて発信しようとしている活動はとても素晴らしい。スペイン音楽の力強さとともに、彼らの「職人」としての意気込みが感じられる。

6位 El Khat · Albat Alawi Op. 99

レーベル:Glitterbeat [10]

 イエメン人のルーツを持つエル・ワハブ (Eyal el Wahab)がリーダーで、イスラエルのテルアビブを拠点とするバンドエル・カート(EL Khat)のセカンドアルバム。エル・ワハブがアルバムのほとんどの曲を作りアレンジしている。
 テルアビブで育ったエル・ワハブは独学で音楽を学び、エルサレムの管弦楽団にチェリストとして入団した。独学だったので楽譜は読めず、演奏曲を耳で覚えながら活動していたが、1960年代のイエメンの伝統音楽「Qat, Coffee & Qambus: Raw 45s from Yemen」を聞いた時に進む道を変えた。彼の持つルーツがそう変えさせたのか、楽団を辞め、楽器を作り始め、そしてこのバンドを結成した。
 使われている楽器は、捨てられていたガラクタ(金属やプラスチック、木など)で自作したもの。ゴミさえも楽器にすることができる家族の故郷を思い起こしながら、人が必要としないものを使うというコンセプトを持ち活動している。楽曲はシンプルなのだが、レトロフューチャー的なサウンド。中東のサイケデリック音楽と言われており、魅力的なグルーヴがあり中毒性を持つ音楽だ。そして自作の楽器を使いこなしているメンバーの表現力も素晴らしい。これからのアラブ音楽を牽引していくだろう新世代のアルバムだ。

↓国内盤あり〼。

5位 De Kaboul à Bamako · Sowal Diabi

レーベル:Accords Croisés [4]

 多国籍なメンバーたちによるプロジェクト「ソワル・ジャビ」のアルバム。タイトルは『カブールからバマコへ』という架空の道からインスピレーションを得て、南アジア〜アラブ、西アフリカ圏の亡命を経験した歌手やミュージシャンたちが集まった。参加しているのは、マリの歌手ママニ・ケイタ、イランの歌手兼バイオリニストのアイダ・ノスラット、イランのタール奏者ソゴル・ミルザエイ、クルド出身のトルコ人歌手ルシャン・フィリズテック、アフガニスタン出身のタブラ奏者/歌手シアー・ハシミ、そして、パリ出身の大人気エスノ・ジャズ・ファンク・バンド、アラ・キロのメンバー6人。2019年にベルギーで、難民問題を題材にした舞台「De Kaboul à Bamako」のために作られたプロジェクト。「ソワル」とはペルシャ語で「質問」、「ジャビ」はバンバラ語で「答え」を意味し、難民問題に対する問いと答えを投げかけている。
 ヨーロッパやアフリカなど様々な地域から集まった異文化のミュージシャンたちが、国境を越え作った音楽で、時にはマリを、時にはバルカンや中東が感じられ楽曲がとても豊か。ママニ・ケイタとアイダ・ノスラットの歌声がとてもパワフル!様々な文化の出会いが演出されておりとても素晴らしい作品だ。

↓国内盤あり〼。

4位 África Negra · Antologia Vol. 1

レーベル:Les Disques Bongo Joe [-]

 赤道付近に位置するアフリカの島国サントメ・プリンシペのグループ、África Negra のアンソロジー作品。本作は彼らの代表曲12曲をセレクトしリマスタリングしたもの。
 África Negra は1970年代初頭に結成され、サントメ・プリンシペでよく知られたグループである。最初の録音は1981年に行われ、アンゴラやカーボベルデ、ポルトガルなどを回るツアーを成功させた。
 サントメ・プリンシペは、かつてポルトガル領であり、サトウキビやコーヒー、カカオの栽培が盛んで、奴隷貿易の中継地点でもあったため、ポルトガル、アンゴラやカーボ・ヴェルデなどから多くの人が流入した。そのような背景から、アンゴラのセンバやカーボ・ヴェルデのコラデイラ、さらにはブラジル音楽やカリブのメレンゲ、コンゴ共和国のリンガラ音楽など、多くの音楽文化が取り入れられ、サントメ・プリンシペ独自のPuxa(プシャ)と呼ばれる音楽が成立した。África Negra は、そこにアフリカ音楽特有のエレキギターによるフレーズを入れ、キャッチーなメロディーと陽気なリズムが組み合わさる魅力的な音楽を展開していた。
 本作は選び抜かれた楽曲が集められているだけに彼らのグルーヴ感やエネルギーがとても感じられる作品。この続編として、ツアーマネージャ―が残していたというスタジオテープからデジタル化された未発表音源もリリースされるという。それも非常に楽しみである!

3位 Rokia Koné & Jacknife Lee · Bamanan

レーベル:Real World [2]

 西アフリカのマリ出身の歌手、ロキア・コネの、これが世界デビューとなる1stアルバム。幼い頃から音楽に囲まれて育ち、現在はアンジェリーク・キジョーが率いるグループ「Les Amazones d'Afrique」のメンバーでもあり、「バマコの薔薇」とも呼ばれている実力派歌手。本作は、アイルランド出身カリフォルニア在住のプロデューサー、ジャックナイフ・リーとタッグを組んだ作品である。ジャックナイフ・リーは、U2、R.E.M、The Killersなどの大物プロデューサーであり、コロナ禍だからこそ実現できたチームである。
 このアルバムは、マリのバンバラ族へのオマージュであり、彼らの伝統的な言語、文化、習慣に対してリスペクトを込めて作られた。伝統にリスペクトしながらも、アフリカに未だ残る女性を軽視する制度や習慣にも批判している。
 アルバムは、マリの伝統的なグリオを想像するメッセージ性の深い曲からスタートし、マリのグルーヴ感が随所に感じられる。アメリカ在住ロックのプロデューサーを迎えているが、彼女の声がとても魅力的で、とてもダイナミックであるからそう感じるのだろう。上記動画の「N'yanyan」は、エレクトリック・ピアノだけの伴奏で、スローテンポの美しい曲。この曲が収録されたのは、マリでクーデターが発生し、停電と夜間外出禁止令が発令される直前で、ワンテイクで録ったというから驚いた。深みがあり美しい歌声が一回で録れるとは…!
 この曲は全世界の人にもメッセージが込められている。「今の(コロナで)困難な状況はいつか終わる。この困難は一瞬のことであり、すべてのことは過ぎ去る」と。

2位 Bonga · Kintal da Banda

レーベル:Lusafrica [1]

 アンゴラ出身のミュージシャン、ボンガの5年ぶりとなる最新作。1942年生まれ今年で80歳!キャリア50年で、アンゴラのレジェンドとも言えるシンガーである。先月いきなり1位にランクインし、今月は2位に。
 アンゴラで育った彼が、家族や友人から受けた教育や人生経験を称えて作られたアルバムで、タイトル『Kintal da Banda』とは彼が育った家の中庭を意味する。28年間彼と共に活動してきた音楽監督であり、優れたギタリストでもある Betinho Feijó がプロデュースしている。
 1960年代にオランダに亡命し現在はパリ在住だが、アンゴラ音楽に与えた影響は大きく、アンゴラの伝統音楽センバ(Semba)を世界中のステージで披露している。
 1999年にマリーザ・モンチ、カルリーニョス・ブラウンともコラボしたが、本作でもフランス系アルジェリア人女性アーティストのカメリア・ジョルダナ(Camélia Jordana)と共演している。これが哀愁漂うメロディで二人の情熱的な声がマッチしていてとても良い。この曲では、アンゴラの伝統や習慣を呼び起こすメッセージが込められている。アルバム全体にも同様にアンゴラへのルーツ回帰を提唱している。Betinho のギターの音色とボンガのハスキーでパワフルな歌声が非常に心地良く、魅惑的なアルバムだ。

1位 Marjan Vahdat · Our Garden Is Alone

レーベル:Kirkelig Kulturverksted [5]

 テヘラン生まれのイラン人歌手、Marjan Vahdatの最新作。先月5位で初登場し、今月は1位に!
 彼女は、1995年から活動しているベテラン歌手。生まれ故郷のイランの音楽と詩に関する知識を世に広めるため、世界各地でコンサートやフェスティバルに出演し活動している。本作は彼女のソロ作としては3枚目で、ノルウェーのレーベルからリリースされた。プロデューサー、アレンジャーに、ノルウェーのジャズミュージシャン、Bugge Wesseltoft を迎え制作された。
 イラン各地の伝統音楽と詩からインスピレーションを受け、彼女自身が歌詞と曲のほとんどを作っている。また、同じミュージシャンとして活動している姉の Mahsa Vahdat もいくつか楽曲提供を行なっている。イランの伝統音楽をベースに、現代的な表現を加えた彼女独自のスタイルが確立されている。
 他のミュージシャン達と同様このアルバムもコロナが制作に影響を与えたようで、録音はアメリカ、イラン、ノルウェーで行われた。まず彼女のヴォーカルを録り、それをもとにミュージシャンが1人ずつアレンジを加えていく。それをノルウェーにいるプロデューサーがこれらを見事にまとめ上げた。オーセンティックで調和のとれたサウンドスケープとなっている。
 故郷を想い歌っているように聞こえるが、それだけではなく世界への普遍的なメッセージとして受け取ることができる。歌の深みが心に沁みる美しいアルバムである。

(ラティーナ2022年5月)

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