【追悼】[2015.07]ぼくらの好きなガル・コスタ
◆ガルに曲を録音してもらえるって……
チアゴ•カメロ(兄であるマルセロ•カメロとともに「Espelho D’Água」を作曲)
「すごくラッキーなことです。マラカナン•スタジアムでクラシックゲームに出場して、ゴールを決めることができたような、すごく嬉しくて、光栄な気持ちです。人生において似たような出来事が重なって、それらを重用視することもなくなることがあります。僕の場合、性格的になにか圧倒されて心動かされることが少ないのですが、今回僕が心動かされたのは、ブラジル音楽の重要人物が僕の曲を録音したという事実よりも、僕が本当に彼女の大ファンだったからなんです。」
アルトゥール•ノゲイラ(作詞家アントニオ•シーセロとともに「Sem Medo Nem Esperança」を作曲)
「ガル・コスタは我が家で一番よく聴かれていた歌手です。父は、ガルに夢中で、幼少期から一緒にいろんな時代のガルのディスクを聴きました。自作曲がガルによって録音されるって、僕にとって夢の実現のひとつです。マルクス•プレトが「Sem Medo Nem Esperança」がアルバムの最初を飾る曲として選ばれたと電話をくれたとき、胃が凍って足ががくがくしたのを覚えています。ガル•コスタのアルバムのオープニング曲になるうえ、僕が尊敬する作曲家の方々が集まった前作のオープニング曲「Recanto Escuro」を思い出さずにはいられません。賞賛に値する数々の曲が集まったこのアルバムの最初を飾られるなんて大変に光栄なことです。」
ジョナス•サー(アルベルト•コンチネンチーノと「Casca」を作曲)
「なんといっても、夢がひとつ叶ったという気持ちです。それは、僕がいい仕事ができている、中身のあるアーティストになれているというしるしでもあると捉えています。もっと仕事して、もっと良いものをつくっていきたいと意欲を出させてくれた出来事でした。」
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◆ぼくらの好きなガル・コスタ
本誌のリクエストに応え、新作に関わったプロデューサー、コンポーザーのみなさんが、ガルのこれまでの作品の中から、一番好きなアルバムを選んでくれた。
選者:ジョナス•サー Jonas Sa(歌手/作曲家)
ガルの作品で好きなものが複数あるけれど、僕のキャリアに最も生産的影響を与えてくれた1枚だけ選ぶとしたら、彼女が「Sebastiana」「Baby」「Não Indentificado」「Lost In Paradise」などを歌っている、1969年の『GAL COSTA』ですね。衝撃を受けます。
選者:アルトゥール•ノゲイラ Arthur Nogueira(歌手/作曲家)
13歳のころ、僕が父のディスク棚をさわっていたときにこのディスクを見つけました。これを聴いて初めて、曲の力、芸術作品が人に与える影響を感じました。マカレーの「Mal Secreto」で、クリスタルのようなガルの歌、ワリーの詩、ラニーのギター、すべてが僕の人格形成において決定的な影響をもたらしました。このディスクが僕が音楽でどの道を辿ればいいかを示してくれました。
選者:モレーノ・ヴェローゾ Moreno Veloso(プロデューサー/作曲家/歌手)
70年代、ジルベルト・ジルと父(カエターノ)がロンドンからブラジルへ戻ってきたころに、ガルが『Cantar』をリリースしました。アルバムはほぼ父がプロデュースし、ジョアン•ドナートによって素晴らしく美しいアレンジが施され、さらにジルも参加しています。このLPは僕にとって本当に特別です。
選者:チアゴ・カメロ Thiago Camelo(作詞家/作曲家)
『GAL CANTA CAYMMI』は、聴いていてすごく心地のいい内容で、リリースされたこの時代の革命的な作品で、歴史的に重要な作品です。すでに録音された名高い作曲家•歌手の歌を再録しようなんていう人は当時いなくて、時代は未発表作品を出すのが当たり前でした。ガルは、その暗黙のルールのような壁を壊した最初の人だったかもしれない。カイミを歌っているんですよ。軽やかな内容で、ジョアン•ドナートのアレンジもすごくいい。彼女は独特な手法で、カイミの曲をすっきり歌い上げています。明るくて、当時にしてはちょっとアンチトロピカリスタでもあったかもしれないが、いま聴くのに、とてもいいディスクです。
選者:マルクス•プレト Marcus Preto(ジャーナリスト/プロデューサー)
去年監督した『Espelho d’Água』というショーで、『CARAS & BOCAS』のなかから半分以上の曲を使って非常によかったです。このアルバムが僕の一番のお気に入りではないけれど、でも確実にとても好きな作品のひとつです。自分の好きなものをちょっと忘れ去っていたのですが、こんなに美しいものがいっぱい詰まっていたんだと、思い出せてうれしかったです。
(月刊ラティーナ2015年7月号掲載)
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