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[2023.9] 「シコと再会しよう」 ─ 1997年以来、26年ぶり2度目の来日。シコ・セーザルの待望の再来日公演、迫る

文:編集部

 記憶も新しい。2023年4月から5月にサリフ・ケイタ、ルカス・サンタナを突如、招聘しワールドミュージック(グローバルミュージック)ファンをざわつかせ喜ばせた「KYOTOPHONIE ボーダレス・ミュージックフェスティバル」。
 同ミュージックフェスティバルが、この秋、今度は、ブラジルから2人の才能、シコ・セーザルとルエジ・ルナを招聘する。
 10月7日(土)・8日(日)の2日間開催される今秋の『KYOTOPHONIE』は、今度は、京都市内から、日本三景の一つである京都府北部、天橋立に舞台を移して開催される。

 今春から始まった『KYOTOPHONIE』は、2013年から毎年開催する『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』の姉妹フェスティバルとして立ち上げられたボーダレス・ミュージックフェスティバルで、今秋の『KYOTOPHONIE』には、ブラジル以外からも来日があり、世界7カ国13組のアーティストが出演予定だ。

 ラティーナでは、ブラジルから来日する2人について紹介したい。いずれも、ブラジル北東部(ノルデスチ)出身の素晴らしい才能である。近年、ブラジルの音楽家の招聘が続いている音楽フェス「frue」が、同時代の洋楽を楽んでいる耳で、同時代のブラジルの音楽家を招聘する視点(バラ・デゼージョ、チン・ベルナルヂス、エルメート・パスコアール、トン・ゼー、クアルタベー、ヤマンドゥ・コスタ etc.)なのに対して、『KYOTOPHONIE』は、これまで、ノルデスチ出身のアーティストで、よりワールドミュージック(グローバルミュージック)的な視点で招聘していると感じる。それぞれのフェスティバルとしての色の違いが出ていて興味深い。

 本稿では、シコ・セーザルを紹介する。1964年生まれで、現在59歳のシコ・セーザル。前回(1回目)の来日公演から26年ぶりの来日。最後に日本に来たのは33歳頃。遅咲きの才能だったので、デビューして3〜4年の頃だ。本稿は、当時から現在に至るまで濃い活動をし続ける音楽家を、久々に日本語で紹介する機会となるので、シコ・セーザルのバイオグラフィーを、彼のオフィシャルサイトの文章を参考に、順を追って紹介したい。(因みに、1回目の来日公演の制作は弊社だったが、残念ながら、当時のことを私は知らない…。執筆者さまたちのご厚意で、当時の掲載記事をe-magazineに再掲できました!!! ↓)


 シコ・セーザル(本名:Francisco César Gonçalves)は、1964年1月26日、ブラジル北東部のパライーバ州内陸部カトレー・ド・ホーシャ市で生まれた。16歳のとき、シコ・セーザルは、パライーバ州の州都ジョアン・ペソアに移り住み、パライーバ連邦大学に入学。大学でジャーナリズムを学びながら同時に、前衛的な詩を創作するグループ「Jaguaribe Carne」に参加した。

 その後、21歳のときに、サンパウロへ移り住み、そこで、ジャーナリストや校正者として働きながら、ギターの腕を磨き、作曲を重ね、自分を支持する聴衆を増やし始めた。彼は音楽家として、国際的に評価された。彼の多くの曲は言語的な魅力が高い詩である。

 1991年には、ツアーを行うためにドイツへ招かれた。音楽家としての成功に勇気づけられてジャーナリズムを辞め、音楽に専念することを決意した。シコ・セーザルは、「Cuscuz Clã(クスクス・クラン)」というバンドを結成し(後にこのバンド名が、シコ・セーザルの2枚目のアルバムのタイトルになる)、サンパウロのナイトクラブ「Blen Blen Club」で演奏するようになりました。

▶︎ 『Aos Vivos』
▶︎ 『Cuscuz Clã』
▶︎ 『Beleza Mano』
▶︎ 『Mama Mundi』

 1995年に、シコ・セーザルは最初のアルバム『Aos Vivos(※「ライヴで」の意)』をVelasレーベルからリリースしました。これはアコースティック・ライヴの模様を収録したアルバムで、ゲストにレニーニ(Lenine)と伝説となっていたギタリストのラニー・ゴルヂン(Lany Gordin)が参加しました。1996年には、マルコ・マゾーラ(Marco Mazzola)のプロデュースで2枚目のアルバム『Cuscuz Clã』(MZA/PolyGram)をリリースし、国内外でヒットしました。3枚目のアルバム『Beleza Mano』では、ザイールのLokua Kanza、コーラスの黒人ファミリーグループ「Alcântar」、ヒップホップの「Thaíde e DJ Hum」、パウロ・モウラ(Paulo Moura)らを迎え、黒人文化を掘り下げました。2000年に発表された『Mama Mundi』は、ブラジル内陸部や世界中のさまざまな地域で生まれた音や歌への敬意に満ちた作品で、歌うことを通じて解釈するシコ・セーザルの質の高さを示すアルバムをなりました。

▶︎ 『Respeitem Meus Cabelos, Brancos』

 2002年6月には5枚目のアルバム『Respeitem Meus Cabelos, Brancos』をリリース。このアルバムをシコ・セーザルは「ノマド作品」と定義している。イギリス人のウィル・モワット(Will Mowat)がプロデュースしたこのアルバムは、ロンドンでプリプロダクションが開始され、バンド「Smoke City」のメンバーであるニーナ・ミランダ(Nina Miranda)とクリス・フランク(Chris Franck)がゲスト参加しています。そこからシコ・セーザルとウィル・モワットはブラジルのヘシーフェで、ナナ・ヴァスコンセロス(Naná Vasconcelos)のパーカッションを録音。そして、カルリーニョス・ブラウン(Carlinhos Brown)のパーカッションはサルヴァドールで録音した。シコ・セーザルが大学時代を過ごしたパライーバ州の州都ジョアン・ペソアでは、メタルルジカ・フィリペイア(Metalúrgica Filipéia)とキンテート・ブラジル(Quinteto Brassil)の演奏を録音した。最後には、サンパウロに到着して、そこでアルバムを最後まで完成させた。

▶︎ 『De uns tempos pra cá』

 2005年には、6枚目のアルバム『De uns tempos pra cá』をBiscoito Finoからリリース。1980年代よりシコ・セーザルが作曲してきた楽曲12曲を、室内楽キンテートの「キンテート・ダ・パライーバ(Quinteto da Paraíba)」と、室内楽形式で録音した。1年後には、同アルバムをサンパウロの著名なステージ「Ibirapuera Auditorium」で演奏した様子が収録したDVD『Cantos e Encontros de uns tempos pra cá』もリリースした。

▶︎ 『Francisco Forró y Frevo』

 2008年、アルバム『Francisco Forró y Frevo』は、シコ・セーザルが、ブラジル北東部の2つの人気のお祭り(カーニヴァルとフェスタ・ジュニーナ)の魂に没頭し、これらの祭を活気づけているリズムの力強さ(フレーヴォ[frevo]とフォホー[forró])に焦点を当てた陽気で楽しいアルバムだ。また、これらのリズムが普遍的な "ビート"と自然に対話することにも焦点を当てている。例えば、ショッチ(xote)とレゲエが対話したり、フレーヴォとスカが対話したり… 。フレーヴォに関しては、ペルナンブーコのブラス・オーケストラの作法と1970年代のサルヴァドールのトリオ・エレトリコスのバイーア・ギターの組み合わせが斬新だ。サルヴァドールの70年代のカーニヴァルは、ドドー(Dodô)とオズマール(Osmar)がカーニヴァルを引っ張っていた。

▶︎ 『Aos Vivos Agora』

 2012年には、デビューアルバム『Aos Vivos』をセルフトリビュートしたような内容のDVD『Aos Vivos Agora(※「現在のライヴで」の意)』をリリース。『Aos Vivos』のCDは再発され、レコードもリリースされた。

▶︎ 『Estado de Poesia』

 2015年、シコ・セーザルは8年ぶりのスタジオアルバム『Estado de Poesia(※「詩の州」の意)』をリリース。『Estado de Poesia』(Natura Musical)は、ブラジルの豊かなリズムと世界中の普遍的(ユニバーサルな)なサウンドが融合したアルバムだ。同アルバムでは、サンバ、フォホー、フレーヴォ、トアーダ(toada)、レゲエが混ざり合い、シコ・セーザルの新たな作品に命を吹き込んでいる。

 2008年のアルバム『Francisco Forró y Frevo』から、2015年の『Estado de Poesia』は、約8年ぶりのスタジオ・アルバムの発表となったが、この空白の期間に、シコ・セーザルは、文化財団の理事や、州の文化長官の職に就いていた。
 2009年5月、当時の市長に要請されFUNJOPE(ジョアン・ペッソア文化財団)というパライーバ州都ジョアン・ペッソア市の直轄財団の常任理事に就任、さらにはその1年後、今度は州政府の委嘱を受け、パライーバ州の文化長官になる。貧しい財政の州政府で、それ以前に文化局はなく、立ち上げた文化局の初代文化長官だった。文化長官の5年の任務を終え、シコ・セーザルは「官から民へ」戻ったのだった。

▶︎ 『Estado de Poesia - Ao Vivo』

 2017年に DVD と CDでリリースされた『Estado de Poesia - Ao Vivo』(Deck)で、シコ・セーザルは、「第29回ブラジル音楽賞2018」の「Pop/Rock/Reggae/Hiphop/Funk」部門の最優秀アルバム賞を受賞した。

▶︎ 『O Amor É um Ato Revolucionário』

 そして、2019年のアルバム『O Amor É um Ato Revolucionário(※「愛は革命の行為である」の意)』では、近年の激動するブラジルの状況にあって、シコ・セーザルが政治的・社会的経験を踏まえ、彼の意見を表明するものとなった。収録された全13曲の歌詞とメロディーは、共作者もなく全てシコ・セーザルが手がけ、サンパウロとリオで録音された。

 同じ2019年、ペルナンブーコ州(パライーバと同じノルデスチ地方)出身のベテラン、ジェラルド・アゼヴェード(Geraldo Azevedo)と意気投合し、デュオでのツアー「Violivo」を計画したが、COVID-19のパンデミックのために延期され、2021年10月に再開した。パンデミック中に、ブラジルの大人気リアリティ番組「Big Brother Brasil」の出演者が、2008年のアルバム『Francisco, forró y frevo』に収録された「Deus Me Proteja」を歌ったことで、この曲だけでなく、シコ・セーザルの全ディスコグラフィーのリスナーが大幅に増加し、プラットフォームの1つであるSpotifyで173%伸び、YouTubeの登録者数が10万人を突破した。

▶︎ 『Vestido de amor』

 目下の最新スタジオアルバムは、2022年9月にリリースされた『Vestido de amor(※「愛のドレス」の意)』。パリで録音されたこのアルバムには、サリフ・ケイタ(Salif Keita)やセク・クヤーテ(Sekou Kouyaté)などのアフリカ出身の世界的ミュージシャンもゲスト参加し、アフリカからブラジル北東部に軽快な風が吹くような活気づいたアルバムになっている。プロデュースは、フランスとベルギーにルーツを持つジャン・ラムート(Jean Lamoot)で、ミキシングもジャン・ラムートが担当した。ラムートは、アフリカ、ブラジル、フランスのミュージシャンを指揮して、シコ・セーザルの楽曲に新鮮な息吹を吹き込んでいる。


▶︎ 『Violivo』

 今年8月には、上述のジェラルド・アゼヴェードとのデュオ・ツアー「Violivo」の音源がリリースされた。

▶︎ 26年ぶりのシコ・セーザルのパフォーマンスが見れるのは、10月7日のみ

 このように天性の歌声と音楽的な閃きで、ブラジル音楽の豊かさを、特に、ブラジル北東部の音楽の豊かさを、アフリカの音楽やレゲエ等とミックスすることで、輝かせてきた現代ブラジルが世界に誇る類まれなる才能、シコ・セーザル。ブラジルの中の「グローバルミュージック/ワールドミュージック」を体現する存在であり、「ボーダレス・ミュージックフェスティバル」をテーマにする「KYOTOPHONIE 」で来日は、まさに相応しいと言えよう。
 26年前、1997年の7月 ── デビュー間もないタイミングでの来日以来の来日公演となる今回のシコ・セーザルのパフォーマンスが見れるのは、10月7日のみ、会場は京都府、天橋立だ。

Peatix https://kyotophonie2023autumn.peatix.com
e+ https://eplus.jp/sf/detail/3936960001


▶︎人気曲10曲

 シコ・セーザルのバイオグラフィーを通じて、すでに膨大とも言える彼のディスコグラフィーを紹介してきたが、多すぎて何から聴いていいかわからない人もいるかもしれない。本稿の最後に、シコ・セーザルのブラジルでの人気曲10曲を紹介したい(調査方法は歌詞検索サイトの閲覧回数)。

①「A Primeira Vista」

②「Deus Me Proteja」

③「Mama África」

④「Estado de Poesia」

⑤「Paraíba Meu Amor」

⑥「Pensar Em Você」

⑦「Feriado」

⑧「Filme Triste」

⑨「O Amor É Um Ato Revolucionário」

⑩「Por Que Você Não Vem Morar Comigo?」






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