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Web版 2022年4月

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#ワールドミュージック

[2022.5]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉔】女性を力強く代弁した歌 — 《Sob medida》

文と訳詞●中村 安志 texto & tradução por Yasushi Nakamura  70年代、各国社会において女性が不利な立場に置かれることが多かった中、ブラジルでは男性のシコが女性に成り代わり、一人称で歌う形式の歌をいくつも創作してきたこと。この連載の初期において、そうした例をいくつかご紹介しました。  今回は、女性が遠慮がちに語るかもしれないと想定される場面で、自身の存在や気持ちを、男勝りな勢いで主張してみせた歌、「Sob medida」をお送りしま

[2022.4] 【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉑】 20年以上世に出ずにいた、かわいいラブソング - 《Ai quem me dera》

文と歌詞対訳●中村安志 texto e taraduão / Yasushi Nakamura  ジョビンに関するこの連載第4回目にご紹介した「数学の授業(Aula de matemática)」というユーモラスな曲は、マリーノ・ピントという、 1927年生まれのシンガーソングライターとの共作でした(1958年)。  このマリーノとジョビンの共作は、少なくとも計5曲確認されており、この「Aula de matemática」のほかに、「Sucedeu assim(こうなっ

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで⑦】 La Selva ⎯⎯ ウーゴの宇宙船に乗って ⎯⎯

▼ La Selva(2021) ウーゴの宇宙船に乗って 文●松田美緒  2020年8月、パンデミックの最中に映像チームと始めた配信 “Through The Window” の3回目に、また世界とつながりたいという思いから、ウーゴ・ファトルーソに久しぶりにメールを書いて、新しい曲を歌わせてくれないかと聞いてみた。すると、すぐに嬉しい返事が来て、わざわざこのために曲を書き下ろしてくれた。“El viaje de la libelula”「トンボの旅路」という歌で、向こう

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで⑥】 クレオール・ニッポン ⎯⎯ 歌の記憶を旅する ⎯⎯

▼ クレオール・ニッポン(2014) 歌の記憶を旅する 文●松田美緒  南米を奔走してアルバムを作っても、日本ではレコ発として再現のしようがなく、カーボヴェルデをウルグアイでやってクレオール人に見せてすごいねと言ってもらって喜んでるだけで、震災後の大変な時に自己満足で終わってちゃいけないと思い始めた。南米で日本の歌をその時だけとってつけたように歌うのも違うし、これぞ私の日本の故郷の歌です、と胸を張って言えるような歌がないだろうか。そんな2011年末、25年ぶりに訪れた秋田

[2022.4] 【島々百景 第70回】 名護(沖縄県)

文と写真●宮沢和史  日本全国の民謡と呼ばれる歌の総数が何曲なのかは知らないが、そのうちのおよそ半数が沖縄民謡であるというから驚きだ。沖縄民謡と一口で言っても、それぞれの島にはそれぞれの歌があるわけだし、神との交信のための神歌や五穀豊穣を祈願する時や、収穫時に神からの豊かなる恵みに感謝する芸能であるウスデークといった祭事に歌われる歌、舞踊曲や芝居曲、わらべ歌、そういった“民衆の歌”を含めるととても半数ではきかないだろう。  国内で今も民謡が盛んな地域は少なくない。しかし、新

[2022.4]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年4月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

 e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 David Krakauer · Mazel Tov Coctail Partyレーベル:Label Bleu / Table Pounding [16] 19位 Oki · Tonkori i

[2022.4] 【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い㉓】ならず者たちと、失われた彼らの美学に光を当てた歌 - 《Homenagem ao malandro》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  ブラジルの日常において、特に親しい者どうしの会話では、マランドロ(malandro)という存在がよく口にされます。気軽な例でいえば、仲間の誰かが次々と女性に迫りよくモテるプレーボーイであるのを指し、「あいつはマランドロ(=ワル)だ」と称したりしますし、普通には解決しにくい問題を巧みに(時にずるい方法で)切り抜ける人間を指し、「抜け目ない奴だな」といった意味で、マランドロと呼ん

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで⑤】 Compás del Sur ⎯⎯ 羅針盤はくるくる回る ⎯⎯

▼ Compás del Sur (2011) 羅針盤はくるくる回る 文●松田美緒 『クレオールの花』をリリースした後、いろいろな旅が待っていた。まず、新年早々の2週間のベネズエラツアーで8つの州をコンサートとパランダ(セッション)しながら駆け回り、各地のトゥンバオ(スウィング)を浴びに浴びた。そして国際交流基金から南米ツアーのお話をいただいて、8月にウーゴとヤヒロさんと各地の音楽家をゲストに迎えながら、アルゼンチン、ウルグアイ、チリを公演した。いろいろな歌を歌いながら

[2022.4]【中原仁の「勝手にライナーノーツ㉑」】 Gilsons『Pra Gente Acordar』

文:中原 仁  2022年6月26日、80歳を迎えるジルベルト・ジル(以降、翁ジルと表記)には、8人の子供がいる。音楽家として活躍している子供が、プレタ・ジル(1974年生まれ、2人目の妻サンドラとの娘)とベン・ジル(1985年生まれ、現在の妻フローラとの息子)。さらに、子供1人と孫2人がジルソンズと名乗るバンドを結成、デビューした。  2022年2月、ファースト・アルバム『Pra Gente Acordar』をデジタル・リリースしたジルソンズ。メンバーを年齢順に紹介しよ

[2022.4]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑳】妖女の魅力を引き立てる主題歌 - 《Tema de amor de Gabriela》

文と訳詞●中村 安志 Texto e Tradução por Yasushi Nakamura  ボサノヴァで世界に名が広まったジョビンも、実は、別なスタイルの音楽をたくさん生み出していることについて、最近の記事で何度かご紹介してきました。  例えば、時にジョビンは、ブラジルの地元色たっぷりのTVドラマや映画のための素敵な音楽を残しています。今回は、ブルーノ・バヘット監督が1983年に制作した映画『ガブリエラ、クローブとシナモン』のテーマ曲として、ジョビンが作詞作曲した

【松田美緒の航海記 ⎯ 1枚のアルバムができるまで④】 Flor Criolla ⎯ 褐色の大地の歌を花束にして ⎯

▼ Flor Criolla (2010) ⎯ 褐色の大地の歌を花束にして ⎯ 文●松田美緒  2007年真冬のブエノスで観たウーゴ・ファトルーソと絶対にいつか一緒に音楽をしたいと思ってから一年、思いがけなくその願いが叶った。共演したのは富山のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドで、ちょうどウーゴがヤヒロトモヒロさんと出演予定で、ヤヒロさんが二人のドス・オリエンタレスと私と いうユニットを提案してくれたのだ。  初めてウーゴと二人で音を出した時、その音楽のビッグバンのような創造

[2022.4] ブラジルの偉大なるグラフィック・アーティスト、エリファス・アンドレアート氏逝く!

文●本田 健治  コロナ禍により2年ぶりとなったアルゼンチン出張からの帰途、ウルグアイ、ブラジルを空から眺めていた ⎯⎯ 3月30日昼、成田空港について日本に降り立ってすぐ、編集部に電話すると、私はブラジルからの悲報を耳にすることになる。エリファス・アンドレアート(Elifas Andreato)の訃報だ。  エリファス・アンドレアートは、ブラジルを代表するグラフィック・アーティスト、セット・デザイナー、ジャーナリストで、われわれ音楽ファンには、シコ・ブアルキ、ヴィニシウ