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世界の音楽情報誌「ラティーナ」

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#ブラジル音楽

[2024.3]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊹】 『Pérolas Negras – Um Tributo a Luiz Melodia』

文:中原 仁  サンバにブルース、ソウル、ロックをふりかけ、マランドロの服を着たシンガー・ソングライター、ルイス・メロヂーア(1951~2017)、73年のファースト・アルバム『Pérola Negra(黒真珠)』にトリビュート。多彩な歌手が10曲中6曲を歌ったEPが、2月6日にデジタルでリリースされた。  ルイス・メロヂーアはリオの中心部、カーニヴァル会場「サンボードロモ」に近いエスタシオ地区、サンカルロスの丘生まれ。72年、バンド活動していたがまだ無名だったルイスの作

[2024.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊸】 Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre 『Live at Grasshaus』

文:中原 仁  現在、ファースト・アルバム『SIM SIM SIM』のサイクルを終える国内ツアー中のバーラ・デゼージョ。“活動停止”、“解散” とは名言していないが、これがファイナル・ツアーで、4人のメンバーはソロやバンドの活動に戻るのだろう。そうなることは漠然と予期していたので、メンバーの一人(ルーカス・ヌネス)を欠いた編成ながら昨年、初来日が実現し、FESTIVAL FRUEZINHO2023で繰り広げた素晴らしいライヴ・パフォーマンスを生体験できたことは大きな喜びだっ

[2024.1]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊷】 Marisa Monte 『Portas (Ao Vivo)』

文:中原 仁  マリーザ・モンチが2023年12月、「2021年ブラジル・ディスク大賞」第1位を獲得した『Portas』のコンサートのライヴ・アルバムをデジタル・リリース、同時に公式映像もYouTubeに公開した。2022年から23年にかけて国内と欧米をめぐり、80超の都市で150超の公演を行ない、トータル50万人以上を動員した大規模なコンサート・ツアーの前半、2022年10月にマリーザの自宅があるリオのガヴェア地区、ジョッキークラブ(競馬場)内の会場、Arena Jock

[2024.1]2023年ブラジルディスク大賞 関係者投票④

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●松岡康史①③⑤などインディーズ感あるブラジル新世代をよく聴いた1年でした。①はたぶん誰もが選ぶであろう今年を代表するアルバムかと。来日もした(行ってない泣)④も彼の最高傑作かな。⑦はカエターノの聴き慣れた曲たちの斬新アレンジに驚いた。意外と大御所のリリースが少なくますます世代交代真っ只中って感じのブラジル。 1. アナ・フランゴ・エレトリコ / ミ・シャマ・ヂ・ガト・キ・

[2024.1]2023年ブラジルディスク大賞 関係者投票③

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●西島浩一郎再発を含め新譜のリリースがレコード盤で入手できるのは非常に嬉しい。10枚選んだ。1位は進化し続ける歌姫グレッチェン。卓越したリズム感とリオネルの打楽器的なギターは最高。エリスの1969作のカヴァーも素晴らしい。②③はジョアン親子がランクイン。⑤はブラジリアン・グルーヴマスターからの日本のシティポップス界への究極の挑戦状。⑦ドナートの歌伴名演奏。⑩はトニーニョの明る

[2024.1]2023年ブラジルディスク大賞 関係者投票②

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●高木慶太2022年との大きな違いはブラジル人アーティストの来日が圧倒的に増えたこと(一方でレジェンドたちの訃報を聞く機会も少なくなく。何度呆然としたことだろうか)。中でも Bala Desejo の本邦初登場は、のちに振り返った時に今以上に大きな意味を持つだろう。なにしろ来年には早くもブラジル本国でフェアウェルツアーが始まってしまうのだから。メンバーのソロ作品が充実一途だけ

[2024.1]2023年ブラジルディスク大賞 関係者投票①

※関係者投票の内容を五十音順でご紹介します。 (カタカナ表記のものは国内盤として発売されています) ●麻生雅人今年もR&Bのリリースはそれなりにあったけれどパッとしなかった印象。その一方でアナ・フランゴや、“クルビ・ダ・エスキーナ×ビージーズ” なフェスタ・テンペスターヂなど、MPBの作り手の間で70~80年代ソウルやディスコ・サウンドLOVEが目立った気がします。アナガブは、本年の選考には入れられないけど11月に出たアコースティック作品もいいです。ヴィニの歌声は父ジョルジ

[2024.1] 決定! ブラジルディスク大賞2023

本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、28回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2023年ブラジル・ディスク大賞」。総数3,064通(前年比+131)の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。 関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。 関係者投票の順位は参考にとどめ、選者ごとのベスト10を通じ、ブラジル音楽に対す

[2023.12]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」 ㊶】 Aguidavi do Jêje 『Aguidavi do Jêje』

文:中原 仁  80年代のオロドゥン、90年代のチンバラーダから随分と間が空いたが、バイーア発のパーカッション・アンサンブルによる新機軸の音楽が登場した! パーカッション奏者、ルイジーニョ・ド・ジェージ(Luizinho do Jêje)が率いるグループ、アギダヴィ・ド・ジェージ。結成から15年を経て2023年11月にファースト・アルバムを、デジタルとアナログ盤でリリースした。  ルイジーニョ・ド・ジェージは、故レチエリス・レイチ(Letieres Leite)が率いたオ

[2023.11]ミルトン・ナシメントが導く魔法の森の秘密〜映画『ペルリンプスと秘密の森』

文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  ブラジルのアニメーション作家アレ・アブレウ、9年ぶりの新作『ペルリンプスと秘密の森』(2022)がもうすぐ日本で公開される。世界最大規模のアニメ映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞と観客賞をダブル受賞した前作、『父を探して』(2013/日本公開は2016年)もこのコラムで紹介しているが、その中で “列車が山の間から煙を上げながら現れる” 場面について、「まるでミルトン・ナシメントの『ジェライス』(1976)のジャケットの

[2023.11]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㊵】 Edu Lobo 『Oitenta Anos』

文:中原 仁  8月29日に80歳を迎えたエドゥ・ロボが、その名も『80歳(オイテンタ・アノス)』と題するニューアルバムを発表した。最初にお伝えしておくと、11月リリースなので「2023年ブラジル・ディスク大賞」投票の対象外となる。  自作の24曲、歌は自身のほか、モニカ・サウマーゾ、ヴァネッサ・モレーノ、ゼー・ヘナート、そして28歳のアイルトン・モンタホーヨス。この4人。  プロデュースとアレンジは、ピアニストのクリストーヴァォン・バストス。ジョルジ・エルデル(ベース

[2023.10] 天橋立に降り立ったアフロ・ブラジリアンの宝石 〜ルエジ・ルナ インタビュー

インタビュー・文●中原 仁 協力●KYOTOPHONIE PR事務局  本誌9月号の初来日記念記事で “アフロ・ブラジリアンの宝石” と讃えられた、バイーア出身のルエジ・ルナ。宝石が日本三景のひとつ、天橋立(京都府)の砂浜に到着した。   今年、初開催されたボーダレス・ミュージック・フェスティヴァル「KYOTOPHONIE 2023 AMANOHASHIDATE」に出演したルエジ・ルナのバンドは、キーボード、ベース、ドラムス、パーカッションの4人編成。カーニヴァルで大声で

[2023.10]26年ぶりの来日公演 〜シコ・セーザル インタビュー

インタビュー・文・写真●ラティーナ編集部 協力●KYOTOPHONIE PR事務局  9月の以下の記事でご紹介したように、シコ・セーザルがこの度26年ぶりに来日した。日本三景の一つである京都・天橋立で10月7日(土)・8日(日)の二日間開催された「KYOTOPHONIE ボーダレス・ミュージックフェスティバル 2023 天橋立」に出演した。  シコのステージを待ち望んでいた多くのファンももちろん来場していたが、彼のことを全然知らずにフェスに来たお客さんもいたようだ。シコと

[2023.10]ショーロクラブ インタビュー 〜6年ぶりの最新作『Caleidoscópio』リリース!

文●中原 仁  結成34年を迎えた、笹子重治(ギター)、秋岡欧(バンドリン)、沢田穣治(コントラバス)の弦楽トリオ、ショーロクラブ。一時期、3人のうちの2人の健康上の問題で活動がストップしていたが、病が癒えて2022年晩秋からライヴ活動を再開。2023年9月27日、6年半ぶりとなるオリジナル・アルバム『Caleidoscópio(カレイドスコーピオ)』を発表した。オリジナル・アルバムとしては12作目、企画アルバムを加えれば26作目となる。  全14曲、すべて3人がそれぞれ