マガジンのカバー画像

Web版 2022年2月

16
2022年2月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9…
¥950
運営しているクリエイター

#ラティーナ2022年2月

[2022.2]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑲】 トンガのために身を挺して ―トンガ・ナショナル・ラグビー・リーグ応援歌 Mate Ma'a Tonga―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  日本から東に向かって、ミクロネシア、メラネシアと太平洋の島々を渡ってきたこのエッセイは、いよいよポリネシアにたどり着きました。今回とりあげるのは、日本から約8,000km離れたトンガ王国。世襲制の国王を元首とする立憲君主制の王国で、面積は対馬とほぼ同じ720㎢、人口約10万5千人。1400~1600年代には、現在のソロモン諸島の一部、ニューカレドニア、フィジー、サモア、ニウエ、さらにフランス領ポリネシアの一部までを支配する大帝国を形

クリバスのリーダー、フアン・フェルミン・フェラリス(Juan Fermín Ferraris)の2ndソロ『Jogo』が間も無くリリース!

↓ご予約はこちらから。通常商品と、お得な角折れB級品がございます。  日本で今、最も受け入れられている現代アルゼンチンのグループの1つは、2014年にデビューしたクリバス(Cribas)ではないだろうか。その中心人物、フアン・フェルミン・フェラリス(Juan Fermín Ferraris|ピアノ)の『35mm』に続くソロ名義2作目となるアルバムは、伝統的ジャズ・トリオ編成でのオリジナル曲集となった。  ピアニスト兼作曲家であるフアン・フェルミン・フェラリス以外のトリオの

[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑰】 幾度もの歌詞変更、監督との対立も多かった映画の中で - 《A felicidade》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  前回のジョビン名作に関する記事では、ジョビンの名曲「Se todos fossem iguais a você」とともに、映画『黒いオルフェ』についても少しご紹介しました。  この映画は、ブラジル、イタリアとともに共同制作国となったフランスにおいて、1959年のカンヌ映画祭で最高位であるパルム・ドールを受賞し、更に翌60年の米国アカデミー賞においても外国語映画賞に輝き、広く

[2022.2]いま最も輝ける存在、サンパウロの女性シンガー、ヴァネッサ・モレーノ(Vanessa Moreno)へのロング・インタビュー

音、沈黙、強烈な感情。世界を感じ、それと相互に作用する歌とインストゥルメンツ。ブラジル音楽の新しい可能性を探るダイビングへのご招待。サンパウロの女性シンガー、ヴァネッサ・モレーノ(Vanessa Moreno)へのロング・インタビュー インタビューと文●伊藤亮介(大洋レコード)  サンパウロの新潮流、ノーヴォス・コンポジトーレスから彗星のように出現したスター。ヴァネッサ・モレーノの歌とフィ・マロスティカのベースからなる異色のデュオ作『Vem Ver』で我々の度肝を抜いてか

[2022.2]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り19】 琉球と奄美、歴史と歌舞のあいだ

文:久万田晋(沖縄県立芸術大学・教授)  奄美大島の八月踊り(連載第7回)の中に、「あじそえ」という曲がある。  この曲のハヤシ詞は「ヤイキュラキュラ ヤイキュラ ヤイキュキュラ シャンクルメ シャンクルメ」という親しみやすいもので、大島各地に広がっている曲である。ただし歌詞の音数律は5555型であり、琉歌形式8886型や近世小唄調7775型の歌詞が圧倒的に多い八月踊りの中では異例の曲となっている。  沖縄本島の臼太鼓研究に大きな業績を上げた故小林公江氏の研究によると、

[2022.2] 新しい会田桃子像の全貌を提示する器楽と歌の2枚組大作アルバム『MOMOKO AIDA』

文●花田勝暁  ポストクラシカル~ジャズ~ワールドミュージック(フォルクローレ / タンゴ)にまたがる新しい室内楽 + 主にスペイン語で歌われる胸に迫る名曲の数々 ⎯⎯ 歌声の魅力にも定評があったバイオリニストの会田桃子が、1枚がインストゥルメンタル、もう1枚が歌のアルバムという、2枚組の大作アルバム『MOMOKO AIDA』を発表した。  インストゥルメンタル・アルバムは、会田桃子のオリジナル楽曲(6曲)が中心となり、録音メンバーの藤本一馬、林正樹、西嶋徹が、新曲を提供

[2022.2]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史⑨】戦後の移民社会と救済活動① 移民の再開

文●月野楓子  沖縄の冬はそれなりに寒い。今日のように22度もあるのに寒いと書くことにはたしかに違和感があるし、太陽が出ると日差しが強く、そうなると途端にTシャツ・短パン・サンダルの人が増えるから、冬感はかなり低い。沖縄に住み始めて一年と少し経ったけれど、東京とのやりとりで、こちらが「寒いよ~」と言うと「またまた〜」と反応がかえってくるのは定番。でも曇っていて風が吹く日は気温にあらわれる数字よりずっと寒く感じるし、そういう日は人に会うとまず「寒いですね」なので、沖縄も冬なの

[2022.2]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑲】誰も放っておかない若き美女を憂う子守唄 — Noiva da cidade

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  今回は、1978年にアレックス・ヴィアニ監督が制作した映画『Noiva da cidade(街の花嫁)』の主題歌として委嘱され、シコ・ブアルキがピアニストのフランシス・ハイミと共同で作詞・作曲した作品「Noiva da cidade(都会の花嫁)」をご紹介します。1976年のアルバム『Meus caros amigos(親愛なる我が友よ。10回目でも収録曲を紹介)』の中に収め

[2022.2] 青木菜穂子 ⎯ ソロピアノ・アルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』

文●花田勝暁  「セレステ・セプテット(Celeste Septet)」「クアルテート・コンフェイト(Cuarteto Confeito)」「オルケスタ・アウロラ(Orquestra Aurora)」などで活躍するピアニストの青木菜穂子が、ピアノ独奏を中心とするソロアルバム『Tardes lejanas(遥かなる午後)』を2月15日、リリースした。   収録曲は以下の通りで、タンゴの名作①③⑦⑩の他、青木のオリジナルの新曲②⑥⑨、ワルツの名作④、フォルクローレ・ピアニスト

[2022.2] 【島々百景 第68回】 浜比嘉島・宮城島・伊計島 (沖縄県)

文と写真●宮沢和史  沖縄本島周辺の主要な島々にはフェリーを使って大体渡ることができる。西海岸を北部から見ていくと伊平屋島・伊是名島・伊江島・水納島・粟国島・渡名喜島・久米島・慶良間諸島。東海岸では津堅島・久高島がある。筆者が渡ったことのない島もまだまだ多い。北部では本部港・運天港、南部では那覇 泊港と各島々を結びたくさんのフェリーが行き来する。昨年は小笠原の大噴火に起因する軽石の漂着でいずれの港も一時フェリーが出航できず、人々のライフラインが滞った。奄美諸島や沖縄県の島々

[2022.2]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑯】この世のすべてが君と同じだったなら - 《Se todos fossem iguais a você》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  亡くなった愛妻エウリディケを、黄泉の国に出向いて連れ帰りたいという願いを受け入れてもらったものの、この世に戻る未知の最後で後方を振り向いてしまい、エウリディケが消えてしまうというギリシャ神話の主人公、音楽の天賦に恵まれたオルフェウス(ポルトガル語ではオルフェ)。その物語を、リオのスラム街の若者とカーニヴァルを舞台とするストーリーに置き換え、各国で好評を博した映画『黒いオルフェ

[2022.2]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年2月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

 e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Oki · Tonkori in the Moonlight(1996-2006)レーベル:Mais Um [-] 19位 Karolina Cicha & Spółka · Karaimska

[2022.2]【連載 シコ・ブアルキの作品との出会い⑱】愛着を込め描くリオのストリートチルドレン —《Pivete》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura   美しい風景が、随所に広がるリオ。しかし、治安が極めて優れた日本に住み慣れた者が、この街でうっかり風景に見惚れていると、ひったくりなどに遭う危険を相当伴う……というのも厳しい事実です。  例えば、有名なコパカバーナ海岸。タクシーを降りた歩道から波打ち際までは、数十mの距離が空いています。観光客が不用意に水際近くまで散歩し、カメラやスマホを使っていると、たちまちナイフで武装した

[2022.2]【中原仁の「勝手にライナーノーツ⑲」】『Elza Soares & João de Aquino』

文●中原 仁  1月20日、91歳で大往生した永遠のディーヴァ、エルザ・ソアレス。本誌の追悼記事にもあったように、世を去る2日前までDVDを収録、堂々たる現役のまま旅立った。  遺作となったアルバム『Planeta Fome』は「2019年ブラジル・ディスク大賞」関係者部門で10位にランクイン。僕は即決で関係者投票の1位に推した。晩年とは思えない勢いで歌い続け、守りに入ることなく攻め続けたエルザ。ジャイルス・ピーターソンのドキュメンタリー映画『Brasil Bam Bam