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[2024.1] 決定! ブラジルディスク大賞2023
本誌とJ-WAVEの長寿番組「サウージ!サウダージ・・」が共同主催、28回目を迎えたブラジル音楽の年間アルバム・ベスト10「2023年ブラジル・ディスク大賞」。総数3,064通(前年比+131)の一般投票、関係者投票のベスト10が決定しました。投票にご参加くださった皆様、ありがとうございました。
関係者投票は21名の選者が各10作品を選出し、1位を10点、以下1点刻みで10位を1点と計算した。
関係者投票の順位は参考にとどめ、選者ごとのベスト10を通じ、ブラジル音楽に対する多様な価値観を読み解いていただきたい。
2023年はアナ・フランゴ・エレトリコの「ミ・シャマ・ヂ・ガト・キ・エウ・ソウ・スア」が、一般投票、関係者投票ともに第1位の二冠を獲得。アナをはじめフーベル、バーラ・デゼージョ(2022年1位)のメンバーなど新世代の音楽家が台頭、この先の展開が楽しみなランキングとなった。
【一般投票結果】
<1位>
アナ・フランゴ・エレトリコ「ミ・シャマ・ヂ・ガト・キ・エウ・ソウ・スア」
Ana Frango Eletrico / Me Chama de Gato que Eu Sou Sua
(198票)
27歳リオ生まれ。「2022年ブラジル・ディスク大賞」第1位のバーラ・デゼージョ「SIM SIM SIM」の共同プロデューサーもつとめたシンガー・ソングライターは、ブラジルZ世代のキーパーソン。「Little Electric Chicken Heart」(2019年関係者投票4位)に続くサード・アルバムで、70〜80年代のソウル、ファンク、ディスコ・サウンドを軸に、歌詞にはクィアの視点を反映している。CD、LPも発売中でアート・ディレクションも自ら行なったマルチな才女。(関係者投票1位)
【投票コメント】
「踊りたくなったり、キュンとなったり。知的で奔放でユーモアもあり。振り回される喜びと、仲間と作る音楽の楽しさが詰まった快作です」(男性)
「今年は、アナ・フランゴ・エレトリコの新作が、個人的ベストでした。去年のブラジル・ディスク大賞を受賞したバーラ・デゼージョのプロデュースも行なった彼女が、世界中の様々なエッセンスを取り入れたダンス・ミュージックを世に放った功績は大きいと思います」(男性)
「音楽研究者のような方ですよね。常に過去の音楽を学びながら、咀嚼し、現代的な解釈を含み込んだものを、自分の作品の内部に練りこんでいる。そんな佇まいが、音楽からも感じ取ることができて、好きなのかもしれません」(女性)
<2位>
ベベウ・ジルベルト 「ジョアン」
Bebel Gilbero / João
(182票)
亡父ジョアン・ジルベルトのレパートリーを歌ったアルバムで「Em México」(70年)「João Gilberto」(73年。通称 “ホワイト・アルバム”)「Amoroso」(77年)など、ベベウがジョアンと暮らしていた少女時代のアルバムの曲が中心。
【投票コメント】
「何より、ジャケットの “親子の写真” に、目を奪われました。愛娘への、そして大好きなパパへの愛が溢れていて、胸が熱くなりましたお父様の楽曲を娘さんが情感こめて歌っていて、お父様の歌とはまた少し違ったテイストに仕上がっており、何度聴いても飽きることはありません」(女性)
<3位>
フーベル 「アス・パラーヴラス、vol.1 & 2」
Rubel / As palavras, vol.1&2
(165票)
「Casas」(「2018年ブラジル・ディスク大賞」一般10位、関係者1位)以来の新作は、ブラジル文学や歌詞などの言葉(palavras)を研究し、サウンド面ではサンバ、フォホーからファンキまで再構築。ゲストもバーラ・デゼージョ、リニケル、ルエジ・ルナ、チン・ベルナルデスからミルトン・ナシメントまで多彩。(関係者投票2位)
【投票コメント】
「歌声にも、ゆとりと深みが滲み出て、他のアーティストと比べてフーベルは頭ひとつ抜き出ている。この作品は、そんな彼のスケールの大きさを感じさせる」(男性)
<4位>
マリア・ルイーザ・ジョビン 「アズール」
Maria Luiza Jobim / Azul
(157票)
アントニオ・カルロス・ジョビンの末娘のセカンドは、アルベルト・コンチネンチーノとの共同プロデュースによるオーガニック・ポップ。アドリアーナ・カルカニョット、アルナルド・アントゥニスとの共演から、小野リサと日本語でデュエットした「涙そうそう」まで。(関係者投票7位)
【投票コメント】
「海辺を舞台にした、キレイな映画の挿入歌みたいな世界で、ウットリ。すごくよい意味での、良家の子女らしい、穏やかさや平和さが心に沁みます」(男性)
↓国内盤が12/13に発売されました。
<5位>
ジョアン・ジルベルト 「アオ・ヴィーヴォ・ノ・セスキ1998」
João Gilberto / Ao vivo no SESC 1998
(152票)
1998年、サンパウロの劇場、SESC(セスキ)で行なったコンサートの音源が、25年の歳月を経て初めて世に出た。ジョアンの没後、続々とサブスクでリリースされた未発表ライヴ音源の中には音質が粗悪なものが多いが、これは素晴らしい音質。
【投票コメント】
「ジョアンの声もギターも、そして録音も素晴らしく、目の前で歌ってくれているような気分になります」(男性)
「発売された頃は、一日中、リピートして聴いていました。私にとって、ジョアン・ジルベルトの歌声は、唯一無二なのです」(女性)
<6位>
ホベルタ・サー 「サンバサー」
Roberta Sá / Sambasá
(133票)
昨年2位の「Sambas & Bossas」はデビュー当時の2004年にサンバやボサノヴァを歌った幻の企画盤の発掘だったが、これは正真正銘、最新録音のサンバ・アルバム。ホベルタ・サーは新作リリースのたびにランクインしており、人気が根強い。
【投票コメント】
「人の心を明るくしてくれる、天性の歌声が最高です」(男性)
<7位>
ゼー・イバーハ 「マルケス、256」
Zé Ibarra / Marques, 256.
(125票)
バーラ・デゼージョの盟友ルーカス・ヌネスと共同プロデュース。自宅マンションの内階段室で、ギター(一部ピアノ)の弾き語りで録音した、完全ソロの初リーダー作。美しい歌声が映え、選曲も興味深い。(関係者投票5位)
【投票コメント】
「バーラ・デゼージョで彼の声を聴いてから魅了されています。彼の声をシンプルに存分に楽しめる、静かな夜にぴったりのアルバムだと思います」(女性)
↓国内盤が12/13に発売されました。
<8位>
エヂ・モッタ「ビハインド・ザ・ティー・クロニクルズ」
Ed Motta / Behind the tea chronicles
(114票)
「AOR」(2013年4位)のヒットで日本でのファン層を広げたグルーヴ・マスター、エヂ・モッタがソウル、ファンク、ジャズ、AOR、映画音楽などをミックス。オリジナル曲を全て英語で歌った。
【投票コメント】
「ふくよかな歌声が素敵で、インパクトのあるルックスも、可愛く見えてしまいます」(女性)
<9位>
ルイーザ・ソンザ 「エスカーンダロ・インチモ」
Luísa Sonza / Escândalo íntimo
(97票)
25歳の大人気ポップ・シンガーのメガ・ヒット作。60年代以降のブラジル音楽もリファレンスしており、ボサノヴァ風の曲「Chico」はサブスクで記録的な再生回数となった。
【投票コメント】
「ビジュアル先行に見られてますが、彼女の世界観、アーティストとしての魅力を存分に発揮したアルバムです」(男性)
<10位>
ヴァネッサ・モレーノ 「ソラール」
Vanessa Moreno / Solar
(94票)
サンパウロの実力派シンガー・ソングライターが「Sentido」(2021年4位)、サロマォン・ソアレスとのデュオ作(2022年4位)に続き3作品・3年連続でランクイン、(関係者投票3位)
【投票コメント】
「歌が上手くアルバムにもハズレなし。来日してほしい方です」(男性)
▼
【関係者投票】
1位
アナ・フランゴ・エレトリコ「ミ・シャマ・ヂ・ガト・キ・エウ・ソウ・スア」
Ana Frango Elétrico / Me chama de gato que eu sou sua(88点)
(一般投票1位)
2位
フーベル「アス・パラーヴラス、vol.1 & 2」
Rubel / As palavas vol.1&2 1 & 2 (73点)(一般投票3位)
3位
ヴァネッサ・モレーノ「ソラール」
Vanessa Moreno / Solar(43点)
(一般投票10位)
4位
ナラ・ピニェイロ「テンポ・ヂ・ヴェンダーヴァル」
Nara Pinheiro / Tempo de Vendaval (31点)
ミナス出身のシンガー・ソングライター/フルート奏者のファースト。音楽監督はアントニオ・ロウレイロ。
5位
フッソ・パサプッソ、アントニオ・カルロス&ジョカフィ「アルト・ダ・マラヴィーリャ」
Russo Passapusso, Antonio Carlos & Jocafi / Alto da maravilha (30点)
バイアーナシステムのフロントマンと、60年代から活動しているバイーア出身のデュオチームとの、世代を超えたコラボ作品。
5位
ゼー・イバーハ / マルケス,256
Zé Ibarra / Marques,256. (30点)
(一般投票7位)
7位
マリア・ルイザ・ジョビン「アズール」
Maria Luiza Jobim / Azul(28点)
(一般投票4位)
8位
レオ・ミデア「ジェンチ」
Leo Middea / Gente (25点)
リオ出身、ポルトガルで活動しているシンガー・ソングライターのPop’n SoulなMPB。マルー・マガリャンイスとの共演も。
9位
ジュリア・メストリ「アヘピアーダ」
Julia Mestre / Arrepiada(24点)
バーラ・デゼージョ結成の立役者、セカンド・ソロ。肉感的な曲からスピリチュアルな曲まで自由奔放。
10位
エルザ・ソアレス「ノ・テンポ・ダ・イントレランシア」
Elza Soares / No tempo da intolerância (22点)
2022年1月20日、91歳で旅立つ直前までスタジオで録音していた遺作。女性たちと曲を共作、女性が抑圧されてきたことへの “NÃO” を最大のテーマに据えた、圧巻の遺作。
(ラティーナ2024年1月)
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