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Web版 2020年12月

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記事一覧

[2020.12]12月11日はタンゴの日

文●編集部  毎年12月11日はタンゴの日。ブエノスアイレスはもちろん世界中で様々なイベントが予定されています。  まず、なぜこの日がタンゴの日かというと、タンゴを世界に広めた歴史的大歌手カルロス・ガルデルと、やはり歴史的指揮者兼バイオリン奏者フリオ・デ・カロの誕生日がこの日だから。アルゼンチンで盛り上がりを見せ、世界にもタンゴの団体が続々誕生しているのに、ブエノスアイレスにタンゴの日というのがないのは... ということで、作詞・作曲家協会(SADAIC)やアルゼンチン作

[2020.12]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑤】パラオ共和国における人と歌の命 ―うたうことで蘇る、財産としての歌―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  歌が上手い人って羨ましいなぁ、といつも思います…どんな島に行っても、みんなとすぐに仲良くなれるんじゃないかなぁって。これまでご紹介したミクロネシア北西部の島々では、グアムのビリンバオトゥーザンなど一部を除いて器楽はあまり発達せず、歌がさまざまな社会的な場面で重要な役割を果たしてきました。  今回取りあげるパラオ共和国では、かつては、村の集会に先立って年長の男性が相応しいジャンルの歌をうたい、参加者全員が唱和するしきたりがありました

[2020.12]【連載 アルゼンチンの沖縄移民史③】南米、ブラジルからアルゼンチンへ

文●月野楓子  前回、金武出身で「沖縄移民の父」と言われる當山久三について書いたが、私自身は金武町を訪れたことが無かった。行きたいなと思っていたら、先日北部へ向かう途中に金武を通ったので、銅像だけでも見られたらと思い立ち寄った。幸いなことに資料館を見学することもできたので、どんな場所であったか、少しだけ紹介したい。  久三の銅像は周囲より小高いところに建てられていて、そこからは海を望むことができる。海の方を向き指差しているポーズは、再建される前のステッキをついている別のポ

[2020.12]マラドーナと音楽(前編)

Grafitti de Diego Maradona en el barrio de La Boca, ciudad de Buenos Aires|Author=Cadaverexquisito  文●フアンホ・カルモナ  Text by Juanjo Carmona 「1日だけマラドーナじゃなければチャーリー・ガルシアになりたい」  あまり知られていなかったが、マラドーナは音楽と密接な関係があった。マラドーナに捧げられた曲が多く存在するのはご存知の方もいるだろうが

[2020.12]名盤で聴くウルグアイ音楽(Vol.2)

文●宇戸裕紀 Text By Hironori Uto  ラ・プラタ川。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスとウルグアイの首都モンテビデオを隔てる大きな川だ。日本人の感覚では対岸まで200キロ以上というのは大海だが両都市は同じ川の三角江(エスチュアリー)に位置する。川を一つまたいだくらいで音楽に大した違いはないだろうと思われるかもしれないが、ウルグアイ、アルゼンチンの音楽をごちゃ混ぜで聴いてみよう。「あ、これはきっとウルグアイだ」となんとなくわかることがある。アフリカ移民が

[2020.12]【ピアソラ再び~生誕100年に向けて】「超」実用的ピアソラ・アルバム・ガイド on Spotify Part 4

文●斎藤充正 texto por Mitsumasa Saito [著者プロフィール] 斎藤充正 1958年鎌倉生まれ。第9回出光音楽賞(学術研究)受賞。アメリカン・ポップスから歌謡曲までフィールドは幅広い。世界のピアソラ・ファンがピアソラのバイブル本として認めている『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』の著者であり、ピアソラに関する数々の執筆や翻訳、未発表ライヴ原盤の発掘、紹介などまさにピアソラ研究の世界的第一人者。  前回ご紹介したように、1960年のキンテート(五重奏団

[2020.12]ナタリア・ラフォルカデ ─ 深化を続けるメキシコのSSW。この10年の活動を追う ─

文●志田朝美   2020年11月、第21回ラテングラミー賞の結果が発表された。  主要部門である「Album of the Year(最優秀アルバム賞)」含む計3部門にノミネートされ、その全部門で受賞という快挙を果たしたのは、ナタリア・ラフォルカデ(Natalia Lafourcade)だ。  ナタリアは、ハープシコーディストの父とピアニストの母を持ち、クラシックに影響を受けたソングライティングを軸に17歳で音楽活動をスタート。デビュー当初よりグラミー&ラテングラミー賞

[2020.12]映画評|『ニューヨーク 親切なロシア料理店』 『この世界に残されて』|家族から切り離された孤独な心が結ぶ、他人との緩やかな関係が生み出す希望とは。

文●圷 滋夫(あくつしげお/映画・音楽ライター)  いつの時代でも、映画には家族が描かれる。そこには深い愛と強い絆、そして穏やかな安らぎがあり、これまで多くの観客の胸を熱く揺さぶってきた。しかしいつからか家族の在り方は多様化し、その関係性も変化してきた。今や綺麗事だけでは語れない断絶と絶望によって、家族が崩壊してしまうことも少なくない。また何らかの理由、例えば戦争や災害、事件などによって、家族との関係が突然断ち切られてしまうことだってあるだろう。  こうして家族から切り離

[2020.12]【「ラ米乱反射」電子版 第5回】ラ米の2020年重要ニュース

文●伊高浩昭(ジャーナリスト) ▼コロナ疫病COVID19猛威振るう ラ米最大のニュースは世界の他地域同様に、現在進行中のコロナ疫病「COVID19」の爆発的流行である。2020年12月半ばの時点で、世界最悪感染状況上位15カ国に、3位ブラジル、9位アルゼンチン、10位コロンビア、12位メキシコ、15位ペルーと、5カ国が名を連ねた。「暴君」型で反知性主義のジャイール・ボウソナロ大統領施政下のブラジルは、大陸国家の巨体を持て余してアマゾニアの森林を破壊したり、コロナ禍への的確

[2020.12]ラティーナ流 おいしいワールド・レシピ⑤ Pan Dulce〜パンドゥルセ〜 アルゼンチン

レシピ提供、文と写真●大城クラウディア

[2020.12]柳原孝敦【特集 私が選ぶラテンアメリカの本】

選・文●柳原孝敦  ラテンアメリカ関連の本を3冊紹介するよう依頼されたので、ここはぜひとも拙著『テクストとしての都市 メキシコDF』(東京外国語大学出版会、2019)を大々的に宣伝して、とも思ったのだが、どうも古い人間なせいか、自己宣伝ははしたないと思ってしまう。それに、膨大な数の文献の中からたった3冊しか選べないところへ自分のものを位置づけるなどおこがましい。  古い人間といえば、怠け怠けであったとはいえ、30年以上もラテンアメリカ関連の本を読んでいると、自身の人生や歴史

[2020.12]石橋 純【特集 私が選ぶラテンアメリカの本】

選・文●石橋 純  スペイン・ラテンアメリカ音楽を知るうえで必読の著者として3人を挙げたい。濱田滋郎(1935〜)、高場将美(1941〜2018)、YOSHIRO広石(1940〜)だ。濱田・高場は、達人のスペイン語能力をもってしてラ米音楽を紹介する先駆的存在であり、このふたりに匹敵する広さと深さでラ米音楽を評論できる日本語ライターは今後現れないだろうと私は思う。広石は、著作の副題によれば「世界を驚かせた伝説の日本人ラテン歌手」。彼もまた、スペイン語の達人である。

[2020.12]岡村 淳【特集 私が選ぶラテンアメリカの本】

選・文●岡村 淳  なさそうで、ホンキで探すとけっこうあるもの、さてなんでしょう?  日本語で書かれたラテンアメリカ関係の書籍です。今回も、こんな本が日本語で存在するのだとお伝えしたいのが多々あり、3冊に絞り込むのはまさしく身を切る思いでした。しかしそれらを身近に眺めて手に取れる場所となると…… 日本のとっておきの場所を紹介しましょう。競争率が増しそうで、できれば伏せておきたかったのですが…… 東京西荻窪のブラジリアンバー『APARECIDA』のSEBOコーナーです(セボと

[2020.12]月野楓子【特集 私が選ぶラテンアメリカの本】

選・文●月野楓子  「ラテンアメリカ文学」の魅力を紹介する書籍は少なからず出版されている。最近では、寺尾隆吉『100人の作家で知るラテンアメリカ文学ガイドブック』(勉誠出版、2020年)が、作家ひとりひとりの略歴・作品の紹介などを丁寧にまとめているだけでなく、面白いものを読むべし!と良書に狙いを定めた推薦書が紹介されていて、とても親切だ。同地域に関心を持つ者として、いろいろ読みたいなと思う一方、普段はつい関係無い本ばかりに目がいってしまう。そのため、ここではこの機会に読み直