マガジンのカバー画像

Web版 2022年7月

14
2022年7月に新規にアップした記事のみが収められているマガジンです。こちらでアーカイブ記事は読めませんので、アーカイブ記事も購読するには定期購読マガジンの「ラティーナ」(月額9…
¥950
運営しているクリエイター

#ワールドミュージック

~滞空時間4thアルバム『Majo』によせて【後編】~ インドネシアから日本へ ─ 体験がつなぐ影絵と音楽

インタビューと文/岡部徳枝  影絵師、音楽家の川村亘平斎がリーダーを務める「架空の島の民謡」をコンセプトにしたユニット、滞空時間。2021年6月にリリースされた4枚目のアルバム『Majo』によせて、その魅力を探る記事の【前編】では、本作が生まれるまでの伏線を辿るべく、2016年秋から1年間、川村亘平斎が過ごしたインドネシア・バリ島の話をお届けした。  【前編】でも書いたが、川村は滞空時間の活動と並行して、日本各地の民話を影絵作品として再生させるプロジェクトを続けている。そ

[2022.7]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉗】幾重にも情熱を歌い上げる - 《Eu sei que vou te amar》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  名曲「Eu sei que vou te amar(君が好きになるとわかっている)」は、作詞家ヴィニシウス・ジ・モラエスが書いた愛の告白の歌詞で知られるゆったりとした歌で、1958年にジョビンとの共同作業で生まれました。最初は、翌59年に女性歌手レニータ・ブルーノのアルバムで録音。もともとこのアルバムは、タイトルがこの歌の締めのフレーズ「Por toda minha vida

【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉙】3度目の正直で居着いた人 — 《Teresinha》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  シコ・ブアルキというシンガーソングライターは、様々な形で権力と対決する音楽を編み出してきた一方で、慎ましく生きる人々の生き様や、それぞれの思いなどに焦点を当てた歌も数多く、時代背景を抜きにしても、真っ直ぐに人々の心を打つ作品がいくつもあります。この連載の第6回目でご紹介した、石切りで働き慎ましく生きる男への温かい眼差しを語った 「Pedro pedreiro」、第9回目でご紹

[2022.7]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年7月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Vigüela · A la Manera Artesanaレーベル:ARC Music [6] 19位 Vieux Farka Touré · Les Racinesレーベル:World Cir

くちずさめる音楽を遺したい ⎯⎯ 新ユニット「ジュス(笹子重治+ゲレン大嶋+宮良牧子)」の活動をスタートした笹子重治とゲレン大嶋にきく

インタビュー・文●佐藤英輔  ギタリストの笹子重治と三線奏者のゲレン大嶋の出会いは、30年前の沖縄に遡る。飲み友達になった二人だったが、コロナ禍を引き金にソングライターのユニットを結成。そして、ゲレン大嶋と一緒のグループにいた石垣出身のシンガーである宮良牧子がそこに加わり、ジュスは結成された。早速仕上げられたデビュー作『サガリバナ~島をくちずさむ Vol.1』には沖縄に対する思慕を介しての得難いメロディと歌唱と演奏が付帯し、聴く者をもう一つの地へと誘う。そんな確かな訴求力を

[2022.7]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉔】 Jovem Dionisio 『Acorda, Pedrinho』

文:中原 仁  2022年上半期、ブラジル音楽シーン最大のサプライズ、そう言ってもいいだろう。ブラジル南部、パラナ州クリチーバの5人組ポップ・ロック・バンド、ジョーヴェン・ヂオニージオのファースト・アルバムのタイトル曲「ACORDA PEDRINHO」の大ヒットだ。  3月にデジタル・リリースした後、この曲はジワジワとストリーミング・サイトでの再生回数を伸ばし、5月下旬から6月初旬まで、Spotifyの「Top50 - Brasil」で1位になった。セルタネージョとファン

[2014.5] 新世代ミナス音楽 ⎯ 21世紀のクルビ・ダ・エスキーナ、その現代性と肥沃さを聴く|Nova Geração Mineira, Contemporaneidade e Erudição

[月刊ラティーナ2014年5月号掲載記事]  1960年代末のミルトン・ナシメントを中心とするクルビ・ダ・エスキーナ(Clube da Esquina)・ムーブメントがロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタなどミナス派の巨頭を輩出したように、2000年代初頭には自分たちのミナスの音楽シーンをスタートしようとする若い音楽家が集まり「ヘシクロ・ジェラル(Reciclo Geral)」という第一新世代が生まれた。このヘシクロ・ジェラルとはマケリー・カ(Makely Ka)、クリスト