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Web版 2022年7月

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#ラティーナ2022年7月

~滞空時間4thアルバム『Majo』によせて【後編】~ インドネシアから日本へ ─ 体験がつなぐ影絵と音楽

インタビューと文/岡部徳枝  影絵師、音楽家の川村亘平斎がリーダーを務める「架空の島の民謡」をコンセプトにしたユニット、滞空時間。2021年6月にリリースされた4枚目のアルバム『Majo』によせて、その魅力を探る記事の【前編】では、本作が生まれるまでの伏線を辿るべく、2016年秋から1年間、川村亘平斎が過ごしたインドネシア・バリ島の話をお届けした。  【前編】でも書いたが、川村は滞空時間の活動と並行して、日本各地の民話を影絵作品として再生させるプロジェクトを続けている。そ

[2022.7]ラティーナ流 おいしいワールド・レシピ⑱ 沖縄の炊き込みご飯〜クファジューシー〜

文と写真●宮沢和史  近頃は沖縄料理が珍しいものではなくなり、すっかり市民権を得た感があります。「島唄」を発表した今から30年前には東京といえどもそう何軒も沖縄料理店を見つけることはできませんでした。今では大きな街ではほぼ沖縄料理店や居酒屋の暖簾をくぐることができますね。しかも、料理本やネットでのレシピサイトのおかげで家庭でも本格的な沖縄料理を再現できる時代になりました。  ご飯を使った沖縄料理のジューシーをご存知の方は多いと思いますが、ジューシーには二種類あるのをご存知

[2022.7]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ㉔】 「楽園」の創造 ―ポリネシアのイメージと音楽文化―

文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)  1891年フランスの画家ポール・ゴーギャン Paul Gauguin(1848-1903)は、「文明の影響から逃れるため」に、フランス領ポリネシアの中心地・タヒチに向かいました。しかし、その頃、すでにタヒチは南太平洋でも最も西洋化が進んだ地域でした。タヒチで制作した作品が売れず、滞在資金も尽きたゴーギャンは、フランスに帰国したもののパリの美術界で孤高となり、再びタヒチに戻って文筆活動をしました。  ゴーギャンは、かねてからマルケサ

[2022.7] 【島々百景 第73回】 読谷村(沖縄県)

文と写真:宮沢和史  今年2022年は沖縄にとってとても大切な一年である。言うまでもなく1972年5月15日に沖縄がアメリカから日本に返還されてから今年でちょうど50年。沖縄の人達の知る由のないところでの水面下の日米の合意による返還では米軍施設は残留したままとなり、沖縄の人々が望む完全なる形での本土復帰ではなかったことから、この50年の間、節目の年にはたくさんの意見が交わされてきた。その後、アメリカの軍事施設の一部が返還され開発されたりしたりと、それなりの進展はあったものの

[2022.7]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り24(最終回)】 奄美・沖縄の民俗芸能にみる性別と歌唱法 −島々の踊り歌を例として−

文:久万田 晋(沖縄県立芸術大学・教授)  これまで本連載において、奄美・沖縄の島々に伝わる様々な祭りや歌、芸能について紹介してきた。今回はそれらの中から、特に各地の踊り歌を例にとって男女の役割分担や歌い方(歌唱形式)の問題について考えてみたい。 【事例1】奄美諸島北部の八月踊り  奄美大島では旧八月のアラセツ、シバサシ行事や八月十五夜を中心として、地域の老若男女によって八月踊りが踊られる。踊り方には、ヤサガシ(家探し)といって集落の各家を回り踊る方法と、公民館などの広

【連載シコ・ブアルキの作品との出会い㉙】3度目の正直で居着いた人 — 《Teresinha》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  シコ・ブアルキというシンガーソングライターは、様々な形で権力と対決する音楽を編み出してきた一方で、慎ましく生きる人々の生き様や、それぞれの思いなどに焦点を当てた歌も数多く、時代背景を抜きにしても、真っ直ぐに人々の心を打つ作品がいくつもあります。この連載の第6回目でご紹介した、石切りで働き慎ましく生きる男への温かい眼差しを語った 「Pedro pedreiro」、第9回目でご紹

[2022.7]最新ワールドミュージック・チャート紹介【Transglobal World Music Chart】2022年7月|20位→1位まで【聴きながら読めます!】

e-magazine LATINA編集部がワールドミュージック・チャート「Transglobal World Music Chart」にランクインした作品を1言解説しながら紹介します! ── ワールドミュージックへの愛と敬意を込めて。20位から1位まで一気に紹介します。 20位 Vigüela · A la Manera Artesanaレーベル:ARC Music [6] 19位 Vieux Farka Touré · Les Racinesレーベル:World Cir

くちずさめる音楽を遺したい ⎯⎯ 新ユニット「ジュス(笹子重治+ゲレン大嶋+宮良牧子)」の活動をスタートした笹子重治とゲレン大嶋にきく

インタビュー・文●佐藤英輔  ギタリストの笹子重治と三線奏者のゲレン大嶋の出会いは、30年前の沖縄に遡る。飲み友達になった二人だったが、コロナ禍を引き金にソングライターのユニットを結成。そして、ゲレン大嶋と一緒のグループにいた石垣出身のシンガーである宮良牧子がそこに加わり、ジュスは結成された。早速仕上げられたデビュー作『サガリバナ~島をくちずさむ Vol.1』には沖縄に対する思慕を介しての得難いメロディと歌唱と演奏が付帯し、聴く者をもう一つの地へと誘う。そんな確かな訴求力を

[2022.7]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」㉔】 Jovem Dionisio 『Acorda, Pedrinho』

文:中原 仁  2022年上半期、ブラジル音楽シーン最大のサプライズ、そう言ってもいいだろう。ブラジル南部、パラナ州クリチーバの5人組ポップ・ロック・バンド、ジョーヴェン・ヂオニージオのファースト・アルバムのタイトル曲「ACORDA PEDRINHO」の大ヒットだ。  3月にデジタル・リリースした後、この曲はジワジワとストリーミング・サイトでの再生回数を伸ばし、5月下旬から6月初旬まで、Spotifyの「Top50 - Brasil」で1位になった。セルタネージョとファン

[2022.7] 【映画評】 『マルケータ・ラザロヴァー』 ⎯ チェコ映画史上最高傑作の異様なエネルギーと自由で過剰な表現を味わい尽くせ!

『マルケータ・ラザロヴァー』 チェコ映画史上最高傑作の異様なエネルギーと 自由で過剰な表現を味わい尽くせ! 文●圷 滋夫(映画・音楽ライター)  1998年、チェコの映画批評家とジャーナリストを対象に行われた調査で、チェコ映画史上の最高傑作が選出された。それが1967年に制作され、日本では初めての劇場公開が始まったばかりの本作『マルケータ・ラザロヴァー』だ。原作はヴラジスラフ・ヴァンチュラによる1931年のベストセラーで、チェコスロバキア(当時)の国家文学賞を受賞した同

[2022.7]【アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い㉖】 革新の一作、実は伝統的サウンドに合わせて着想 ⎯ 《Chega de saudade》

文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura  1958年、女王的な存在だったスター歌手エリゼッチ・カルドーゾの新アルバム『Canção do amor demais(溢れる恋の歌)』の中に収録されたジョビン作曲&ヴィニシウス作詞による「Chega de saudade」は、これを境に急速に広まっていく新しいボサノヴァと呼ばれるムーブメントの皮切りの曲だとも位置付けられる存在です。  この歌とともにその後大きく注目される

[2014.5] 新世代ミナス音楽 ⎯ 21世紀のクルビ・ダ・エスキーナ、その現代性と肥沃さを聴く|Nova Geração Mineira, Contemporaneidade e Erudição

[月刊ラティーナ2014年5月号掲載記事]  1960年代末のミルトン・ナシメントを中心とするクルビ・ダ・エスキーナ(Clube da Esquina)・ムーブメントがロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタなどミナス派の巨頭を輩出したように、2000年代初頭には自分たちのミナスの音楽シーンをスタートしようとする若い音楽家が集まり「ヘシクロ・ジェラル(Reciclo Geral)」という第一新世代が生まれた。このヘシクロ・ジェラルとはマケリー・カ(Makely Ka)、クリスト