記事一覧
[2021.11]【太平洋諸島のグルーヴィーなサウンドスケープ⑯】 移動・移住・観光―ヴァヌアツの記憶―
文●小西 潤子(沖縄県立芸術大学教授)
「島の人たちって、身軽に移動するんだなぁ」―さまざまな島を回って、感じることの1つです。こちらは、身勝手な調査者。そのときに会いたいと思う方を訪ねると、「〇〇さんは、××(別の島や外国)に行っている」とよく返ってきます。で、「いつお戻りですか?」と聞くと、大抵は「さぁ、知らない」と。日本に住んでいても、東京出張とか京都へ旅行など、ご不在のことはあるでしょ
[2021.11] 【島々百景 第66回】沖縄北部|沖縄県
文と写真●宮沢和史
緊急事態宣言からようやく解放された。第6波は確実にやってくるだろうが、もうひと我慢すれば第5波ほど新規感染者数が膨らまないんじゃないかと楽観視しそうになったが、ここへきて韓国やドイツなどで大きな波が再来したということをニュースで知ると、まだまだマスクは外せないのかと気が滅入る。
東京か沖縄のどちらかに緊急事態宣言が発令されていたら沖縄には行かない。沖縄の仕事は全てキャン
[2021.11]【中原仁の「勝手にライナーノーツ」⑯】 Pedro Sá 『Um』
文●中原 仁
───── 中原仁の「勝手にライナーノーツ」─────
近年、日本盤の発売が減少し、日本における洋楽文化の特徴である解説(ライナーノーツ)を通じて、そのアルバムや楽曲や音楽家についての情報を得られる機会がめっきり減った。
また、盤を発売しない、サブスクリプションのみのリリースが増えたことで、音楽と容易に接することが出来る反面、情報の飢えはさらに進んでいる。
ならば、やっ
[2021.11] PIRY REIS(ピリ・ヘイス)〜ミニマル & アンビエント・リバイバルで急浮上する幻のブラジル音楽家 1995年、自宅訪問の回顧録 【前編】
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文と写真●若杉 実 texto e fotos por MINORU WAKASUGI
たいした音楽人生ではないが、それでもいろんな “ふしぎ” と出会うことが稀にある。最近ならブラジルのシンガーソングライター、ピリ・ヘイス。彼のリイシュー作業がこの2、3年のあいだに過熱していた。
[2021.11]【沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り16】 沖縄・奄美における悲劇の女性伝説と歌
文:久万田晋(沖縄県立芸術大学・教授)
奄美から沖縄本島、そして宮古、八重山の島々には多くの悲しい女性の伝説が伝わっている。これらの島々に暮らす人々にとって、まだ文字もないはるかな昔から、「歌」とは衝撃的なできごとや皆で共有したい感情を心に留めるための、さらには後世に遺し伝えるための唯一の手段であった。いわば、歌とは出来事を人々の心に保管する記憶装置でもあった。
ある悲劇的な結末を迎えた女
[2021.11]【連載 アントニオ・カルロス・ジョビンの作品との出会い⑪】ボサノヴァ期以前の作品から - Foi a noite
文と訳詞●中村 安志 texto e tradução por Yasushi Nakamura
1958年の名曲 Chega de saudadeを皮切りに、ボサノヴァと呼ばれる作品を次々と世に出していったジョビンは、これに先立つ時期にも、既に多数の素晴らしい曲を作っています。そうしたボサノヴァ以前の作品として、今回は、1957年に発売された女性歌手シルヴィア・テレスのLP 『Carícia